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【新型コロナウイルス】「関係ない質問するな」「次は無いですよ」 福島県広報課長が筆者に〝質問させない宣言〟 県政記者クラブからも疑問の声

新型コロナウイルスの感染者が65人に達している福島県。感染者が判明するたびに毎回、開かれている記者会見に関し、司会を務める県広報課長が「質問の内容があまりにもかけ離れている」として今後、筆者が会見で挙手しても指名しないと〝宣言〟した。当局が質問内容でメディアや記者を選別するのは自由な取材活動を妨害する問題行為。福島県庁内の県政記者クラブに所属する記者からも「〝明日は我が身〟だ」と広報課長の姿勢を問題視する声があがっている。しかし、広報課長は「結論は変わらない」としており、筆者の質問権は奪われたままだ。
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【「ああいう質問するなら…」】
 よほど頭に来たのだろう。福島県広報課・高橋和司課長の表情はこわばっていた。
 「次は無いですよ。ああいう質問をするのであれば、質問は控えていただきますから」
 要するに、「お前にはもう質問させない」という〝宣言〟だった。
 問題視されているのは今月16日夜に開かれた福島県新型コロナウイルス感染症対策本部の記者会見。高橋課長は毎回、司会を務めている。
 この日は、福島県での1日あたりの感染確認者数としては最高の9人の感染が判明。内堀雅雄知事に続き、20時30分から会見が開かれた。会見には「感染症対策アドバイザー」を務める福島県立医科大学の金光敬二教授(感染制御学)も同席。これまでの金光教授の発言に疑問を抱いていた筆者は、会見で金光教授に直接、次の3点を質した。
 ①県内の現役高校生が県立高校の休校を求めてネット上での署名運動を行っている事を知っているか
 ②集団感染の場となってしまった二本松郵便局や、園児の感染が確認された福島市内の保育園など現場を確認したか
 ③高校生の行動も知らない、現場も見ないで、どうやって県に「アドバイス」するのか
 金光教授は質問から逃げる事無く、筆者の方を向いて「ごめんなさい。その事(高校生によるネット署名)も存じ上げませんでした」、「私もこれだけにですね…言い訳はしたくないんですけれども、これだけに専念しているという状況にはございませんので、なるべく自分の出来る限りの範囲においては、アドバイスをしたいというふうに考えておりますが、なかなか全ての現場に立ち入るとかそういう事は出来ないという事も現実としてあろうかと思います」、「今のご意見をですね、真摯に受け止めて、出来る限り足を運んで現場を見て、実際に動ければなと思います」などと答えた。

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今月16日夜に開かれた記者会見で、筆者は福島県「感染症対策アドバイザー」を務める金光敬二教授(福島県立医科大学)の資質を問う質問をした。これが県広報課長の怒りを買い、筆者は今後の会見では指名されない

【「資質問う場では無い」】
 金光教授は会見終了後も取材に応じた。会見でのやり取りは17日付で報じ、アドバイザーとしての資質を改めて問うた。回答に不満は残るものの、少なくとも金光教授との〝キャッチボール〟は出来ていた。しかし、筆者の取材姿勢が県広報課長の怒りを買ったようだ。
 翌17日、別件で福島県庁を訪ねた筆者は広報課にも顔を出した。前夜の礼を言うためだった。会見場では高橋課長から特に抗議される事も無かったが、課長の表情は怒りに満ちていた。とにかく「こちらが想定している以外の質問をする場では無い」の一点張り。やり取りは、わずか数分で一方的に打ち切られた。
 「昨日のやつは…。ご説明させていただくと、県しては、その日に確認された陽性者に関する説明の場なんですよ。それに対してのご質問をマスコミさんからお受けする場なんです。それとちょっと違う質問が出てしまっているので。あの件は違いますよね?あの会見は、金光先生のアドバイザーとしての資質を尋ねる場では無いんです。だから、昨日の質問は趣旨が違うと思いますね。私はそう考えているんです。なので次、もし会見に来ていただいても、ご質問は控えていただくようになりますから。すいません、そういう事ですので」
 気に入らない質問をする記者は司会者の一存で排除する。質問内容でメディアや記者を選別するような事は、永田町でも地方自治体でもあってはならない事だ。しかし、高橋課長は「あの質問は会見の趣旨と全く異なる」、「あの質問があの場とどうして関係あるのか分からない」、「ああいう質問であれば、挙手しても指名しない」、「ああいう事を尋ねたいのであれば、会見では無く直接、取材すれば良い」と繰り返すばかり。
 22日夕方に改めて広報課を尋ねた。結論は変わっていなかった。
 「記者クラブ側から特に抗議があったわけではありません。私の判断。あの質問はあまりにもかけ離れていますよ」
 この理屈がまかり通れば、当局の顔色を伺う〝忖度記者〟が続々と出来上がっていく。それで不利益を被るのは読者であり、視聴者。つまり県民なのだ。

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今月16日夜に県庁で開かれた福島県新型コロナウイルス感染症対策本部の記者会見。発表事項に関する質問以外は許されないのだという

【「〝明日は我が身〟だ」】
 では、記者クラブ加盟社の記者が高橋課長の〝想定質問〟と大きくかけ離れた質問をしたら、やはり今回と同じような措置を講じるのか。高橋課長は「どうでしょうね。今までそういう事は無いですけどね」と前置きしたうえで、次のように答えた。
 「よっぽど酷い質問があれば、記者クラブと話はするでしょうね。その後は指名しない?どうなんでしょうね。その時々での対応はあると思いますけどね。その場になってみないと分かりません」
 フリーランスの筆者は問答無用、記者クラブとは話し合い。そこで既に差が生じている。そもそも、質問内容でメディアや記者を選別する権限など広報課長にあるはずが無い。これは自由な取材活動を妨げる重大な問題だ。
 福島県庁の県政記者クラブに所属するある記者は「あれが全く関係の無い、的外れな質問だったとは思わない」として、次のように話した。
 「見解の相違というのはどんな場面でもあるし、記者の質問が気に食わない事もあるでしょう。しかし、それと質問内容で記者を選別するのとは別問題です。広報課長は単なる司会者。その胸先三寸で指名するかどうかが決まるのはおかしな話。私だっていつ、同じような扱いをされるか分かりません。〝明日は我が身〟ですよ」
 この記者は広報課長に直接、自身の想いをぶつけたが、高橋課長の答えはあいまいだったという。
 以前、県政記者クラブに所属していた事のある別の記者も「当局側が想定していること以外質問するなというのは、無理な注文です。質問内容への介入は、大上段に振りかぶれば『公権力による報道の自由への介入』なので憲法違反の懸念があります」と指摘している。
 様々な記者が様々な角度から取材をするのは民主主義の根幹。記者会見はその1つの場である。今や記者会見はユーチューブで広く公開されている時代。質問の良し悪しを判断するのは視聴者であり読者だ。当局では無い。



(了)
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鈴木博喜

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