【新型コロナウイルス】〝アベノマスク疑惑〟浮上の4日前、福島県に寄付されたサージカルマスク。伏せられた樋山社長の名。仲介した公明党県議は雲隠れ
- 2020/05/02
- 08:51
布マスク配布事業を巡る〝アベノマスク疑惑〟で、福島県福島市の「ユースビオ社」の名前が急浮上して以降、公明党福島県議会議員団の伊藤達也県議(49)が〝雲隠れ〟している。「ユ社」は5億2000万円分を「シマトレーディング社」とともに請け負ったが、伊藤県議は樋山茂社長と親しい。4月23日には、サージカルマスク2万5000枚が「ユ社」から福島県に寄付されているが、これを仲介したのも伊藤県議。本紙は直接取材を試みているが連絡が取れない。県議団も「取材に応じない。党本部に文書で問い合わせろ」の一点張り。早急な説明が求められる。

【疑惑浮上受け記者発表】
「これがそのマスクです」
福島県庁内のデスクに置かれた小さな箱。フランス語で大きく「Masquer」と書かれ、医薬品メーカー「Orange Pharma社」のロゴや「Made in Vietnam」の文字が印刷されている。英語の「Anti fog」(曇り止め)や、ベトナム語の「Khau trang y te」(医療機器)の文字も読み取れる。
このサージカルマスクこそ、〝アベノマスク疑惑〟の渦中にある「ユースビオ社」(樋山茂社長)が疑惑浮上の4日前に福島県に寄付したマスクなのだ。その数、2万5000枚。医療機関や高齢者施設、障害者施設などで使われるべく、県庁内の倉庫に保管されている。
「前日の22日、伊藤先生から『マスクが確保出来た』と電話で寄付の申し出がありました」
福島県新型コロナウイルス感染症対策本部住民支援班の渡邊重勝班長は困惑した様子で話す。その際には「ユースビオ社」の名は告げられず、トラックで県庁に搬入された23日も伊藤県議が1人で現れ、樋山社長の姿は無かったという。同日午前11時すぎの伊藤県議のツイッターには、マスク姿で荷卸しを手伝う伊藤県議の写真とともにマスクを寄付した事が書き込まれている。
県議からのマスク寄付は初めてだが、寄付自体は珍しいものでは無く、県側も具体的にどのようにマスクを確保したかなどについて確認しなかったという。「マスコミさんからの問い合わせがあったので確認したところ、出所が分かりました」と渡邊班長。4月27日付で県政記者クラブにプレスリリースされたが、一部で短く触れられた以外には、ほとんど報じられていない。



福島県に寄付された2万5000枚のサージカルマスク。「ユースビオ社」が手配したベトナム製マスクだが、段ボール箱に貼られた紙には伊藤県議の名前しか書かれてなく、「ユ社」の名は伏せられている
【「マスクの取材応じぬ」】
伊藤県議に話を聴くべく福島市内の自宅を訪れたが不在。新聞受けには地元紙が入れられたままになっていた。電話を何度かけても留守番電話サービスにつながるばかり。福島県議会には公明党議員が4人所属しているが、4月30日には3人が県庁内の会派控え室に姿を見せたものの、伊藤県議だけ不在。5月1日も姿を見せなかった。
そのため、会派控え室の女性に伊藤県議への取り次ぎを依頼したが、しばらくして筆者の携帯電話に折り返された電話は「完全拒否」だった。途中から会派の団長を務める今井久敏県議(郡山市)が電話に出て、改めて拒否だと繰り返した。
「マスクの件は党本部が対応する事で一本化しています。ただし、文書で問い合わせないと回答しないとの事ですよ。伊藤個人は答えません。これは党の方針ですから。逃げ隠れしている?いいえ。そんな事はありませんよ。あなただけでは無く、どこの記者に対しても同じ対応をしています。とにかくマスクの件に関しては党本部に質問してください。伊藤に取り次ぐ事はしません。個人では取材には応じません。どこにいるか?そんな事分かりませんよ」
筆者は公明党本部にも電話をかけたが、何度かけてもつながらなかった。
「ユ社」の窓には公明党・山口那津男代表のポスターが貼られており、室内には伊藤県議や福島市議のポスターが貼られている。樋山社長と伊藤県議の自宅は比較的近い場所にあり、県議選などで樋山社長が支援していたとみられる。公明党所属のある福島市議は取材に対し「市議選の際に力を貸してもらっているが、樋山社長の事は良く知らない。今回の事で名前が出てびっくりしている」と言葉少なに語った。
別の会派の県議は「伊藤さんだけ姿を見せないからおかしいなと思っていた。やましいところが無いのなら、きちんと取材に応じて説明するべきだ」と話している。



(上)「ユースビオ社」の室内には、伊藤県議や福島市議のポスターが貼られている
(中)〝アベノマスク疑惑〟を受け急きょ、県政記者クラブに出された記者発表
(下)伊藤県議の自宅を訪れたが不在。新聞受けには地元紙が入れられたままだった
【別名「アニマルいとう」】
伊藤県議は1970年、福島県伊達市保原町生まれ。県立福島高校を経て創価大学に入学。卒業後は証券会社に勤務した後に公明党代議士の公設秘書、政策秘書を務めた。自身のホームページでは「国会で20年間活躍」と記載されている。そのため、永田町とのつながりが深いとの見方もある。
2015年11月の福島県議選に出馬し初当選(1万2018票)。現在、2期目。県議選に初出馬した際の選挙公報には次のように綴られている。
「証券マン、そして国会議員秘書として培ってきた経験を活かしながら、希望ある福島の復興・創生へ、『とことん現場主義』で取り組んで参ります」
県議としての実績の1つに「犬猫殺処分の減少」を掲げている。ホームページには「関係者の間では『アニマルいとう』 と呼ばれるまでになっています」との記述も見られる。
福島県議会は大型連休中の4、5の両日、臨時会を開く。〝3密〟を避けるため、傍聴席も議員席として利用しながら席の間隔を空けて本会議を開く。〝アベノマスク疑惑〟を巡っては、県議会の他会派がユ社やシ社を視察するなど調査に乗り出している。伊藤県議は本会議も欠席するのだろうか。早急な説明が求められている。
(了)

【疑惑浮上受け記者発表】
「これがそのマスクです」
福島県庁内のデスクに置かれた小さな箱。フランス語で大きく「Masquer」と書かれ、医薬品メーカー「Orange Pharma社」のロゴや「Made in Vietnam」の文字が印刷されている。英語の「Anti fog」(曇り止め)や、ベトナム語の「Khau trang y te」(医療機器)の文字も読み取れる。
このサージカルマスクこそ、〝アベノマスク疑惑〟の渦中にある「ユースビオ社」(樋山茂社長)が疑惑浮上の4日前に福島県に寄付したマスクなのだ。その数、2万5000枚。医療機関や高齢者施設、障害者施設などで使われるべく、県庁内の倉庫に保管されている。
「前日の22日、伊藤先生から『マスクが確保出来た』と電話で寄付の申し出がありました」
福島県新型コロナウイルス感染症対策本部住民支援班の渡邊重勝班長は困惑した様子で話す。その際には「ユースビオ社」の名は告げられず、トラックで県庁に搬入された23日も伊藤県議が1人で現れ、樋山社長の姿は無かったという。同日午前11時すぎの伊藤県議のツイッターには、マスク姿で荷卸しを手伝う伊藤県議の写真とともにマスクを寄付した事が書き込まれている。
県議からのマスク寄付は初めてだが、寄付自体は珍しいものでは無く、県側も具体的にどのようにマスクを確保したかなどについて確認しなかったという。「マスコミさんからの問い合わせがあったので確認したところ、出所が分かりました」と渡邊班長。4月27日付で県政記者クラブにプレスリリースされたが、一部で短く触れられた以外には、ほとんど報じられていない。



福島県に寄付された2万5000枚のサージカルマスク。「ユースビオ社」が手配したベトナム製マスクだが、段ボール箱に貼られた紙には伊藤県議の名前しか書かれてなく、「ユ社」の名は伏せられている
【「マスクの取材応じぬ」】
伊藤県議に話を聴くべく福島市内の自宅を訪れたが不在。新聞受けには地元紙が入れられたままになっていた。電話を何度かけても留守番電話サービスにつながるばかり。福島県議会には公明党議員が4人所属しているが、4月30日には3人が県庁内の会派控え室に姿を見せたものの、伊藤県議だけ不在。5月1日も姿を見せなかった。
そのため、会派控え室の女性に伊藤県議への取り次ぎを依頼したが、しばらくして筆者の携帯電話に折り返された電話は「完全拒否」だった。途中から会派の団長を務める今井久敏県議(郡山市)が電話に出て、改めて拒否だと繰り返した。
「マスクの件は党本部が対応する事で一本化しています。ただし、文書で問い合わせないと回答しないとの事ですよ。伊藤個人は答えません。これは党の方針ですから。逃げ隠れしている?いいえ。そんな事はありませんよ。あなただけでは無く、どこの記者に対しても同じ対応をしています。とにかくマスクの件に関しては党本部に質問してください。伊藤に取り次ぐ事はしません。個人では取材には応じません。どこにいるか?そんな事分かりませんよ」
筆者は公明党本部にも電話をかけたが、何度かけてもつながらなかった。
「ユ社」の窓には公明党・山口那津男代表のポスターが貼られており、室内には伊藤県議や福島市議のポスターが貼られている。樋山社長と伊藤県議の自宅は比較的近い場所にあり、県議選などで樋山社長が支援していたとみられる。公明党所属のある福島市議は取材に対し「市議選の際に力を貸してもらっているが、樋山社長の事は良く知らない。今回の事で名前が出てびっくりしている」と言葉少なに語った。
別の会派の県議は「伊藤さんだけ姿を見せないからおかしいなと思っていた。やましいところが無いのなら、きちんと取材に応じて説明するべきだ」と話している。



(上)「ユースビオ社」の室内には、伊藤県議や福島市議のポスターが貼られている
(中)〝アベノマスク疑惑〟を受け急きょ、県政記者クラブに出された記者発表
(下)伊藤県議の自宅を訪れたが不在。新聞受けには地元紙が入れられたままだった
【別名「アニマルいとう」】
伊藤県議は1970年、福島県伊達市保原町生まれ。県立福島高校を経て創価大学に入学。卒業後は証券会社に勤務した後に公明党代議士の公設秘書、政策秘書を務めた。自身のホームページでは「国会で20年間活躍」と記載されている。そのため、永田町とのつながりが深いとの見方もある。
2015年11月の福島県議選に出馬し初当選(1万2018票)。現在、2期目。県議選に初出馬した際の選挙公報には次のように綴られている。
「証券マン、そして国会議員秘書として培ってきた経験を活かしながら、希望ある福島の復興・創生へ、『とことん現場主義』で取り組んで参ります」
県議としての実績の1つに「犬猫殺処分の減少」を掲げている。ホームページには「関係者の間では『アニマルいとう』 と呼ばれるまでになっています」との記述も見られる。
福島県議会は大型連休中の4、5の両日、臨時会を開く。〝3密〟を避けるため、傍聴席も議員席として利用しながら席の間隔を空けて本会議を開く。〝アベノマスク疑惑〟を巡っては、県議会の他会派がユ社やシ社を視察するなど調査に乗り出している。伊藤県議は本会議も欠席するのだろうか。早急な説明が求められている。
(了)
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