【新型コロナウイルス】〝アベノマスク疑惑〟のキーマン、公明党福島県議が初めて取材に応じる。他会派からは「サージカルマスク寄付は公選法違反では?」との指摘も
- 2020/05/05
- 07:53
新型コロナウイルス感染拡大防止目的で配布された布マスクを巡る〝アベノマスク疑惑〟で、国から5・2億円分を受注した「ユースビオ社」(樋山茂社長、福島県福島市)との関係やサージカルマスク寄付問題について、福島県議会の伊藤達也議員(公明党福島県議会議員団)が4日午後、初めて取材に応じた。布マスク受注に関する自身の関与については明言せず、サージカルマスク寄付についても「樋山社長からの依頼で仲介しただけ」と語った。他の県議からは政治家の寄付を禁じた公選法違反を指摘する声もあがっている。

【「寄付をつないだだけ」】
「ああ、マスクですね。何かもう詳しく、県の方に取材しているようで…」
本会議に引き続いて開かれた常任委員会。福祉公安委員会の委員長を務めた伊藤県議は、会派控え室前の廊下でようやく取材に応じた。わずか5分間だったが、これまで全く連絡がつかず、会派にも取り次ぎを拒否されていたとは思えないほど、対応そのものはていねいだった。
「ユースビオ社の樋山茂社長からサージカルマスクを寄付したいとの申し出があって。確かに、樋山社長が自分で寄付すれば良かったのかもしれませんが、本人も表彰、表彰っていうか大々的にやるのでは無くて寄付したいとの申し出があったので、『では私がつなぎをやりますよ』という事です。ですので、私はあくまでも仲介したという事です。運送会社の方にマスクを県庁まで運んでいただいて、それを県の方に来てもらったというわけです。寄付したいというのをつないだだけなのです」
時折、笑顔を交えながら、柔らかい口調で話した伊藤県議。ユ社の樋山社長とは、2015年11月の県議選に初めて立候補した時からの付き合いだという。「私と同じ地域で公明党支援をしてくださっている方なので」。なぜユ社のような地元でもほとんど知られていない会社が布マスク配布事業を請け負えたのかについては、急に歯切れが悪くなった。
「それについては国や樋山さんとか、皆さんにきちんと説明してもらって…。ま、その辺になると、ちょっと私も分からないものですから…。そういう質問になったら私は答えられないんで。はい。そういう事で、よろしくお願いします」

〝アベノマスク疑惑〟が浮上する4日前、樋山社長から福島県にサージカルマスクが寄付された。しかし、マスクの入った段ボール箱(2500枚×10箱)に樋山社長の名前は無く、代わりに寄付元として「公明党 伊藤達也議員」と記載されている
【県選管の判断確認へ】
布マスク配布事業を巡る〝アベノマスク疑惑〟が浮上する4日前の4月23日に福島県に寄付されたベトナム製のサージカルマスク。しかし当初、福島県側には樋山社長の名は明かされず、前日に伊藤県議から電話で寄付の申し出があっただけ。サージカルマスクの入った段ボール箱には、「購入元(寄付元)」として「公明党 伊藤達也議員」と記載されたラベルが貼られている。
マスクがトラックで搬入された当日も樋山社長は福島県庁に現れず、伊藤県議が1人で荷卸しを手伝った。その様子は自身のツイッターで写真入りで紹介されている。
実は、この一連の伊藤県議の対応が、政治家の寄付行為を禁じた公職選挙法に違反するのではないかとの指摘が福島県議会の他会派からあがっている。ある県議は言う。
「単に間に入っただけだとしたら、なぜ県が貼ったラベルに『購入元(寄付元)』として伊藤さんの名前が記載されているのか。ユ社が布マスク配布事業を受注した事を伊藤さんは知らないはずが無いのだから、そんな怪しい会社からの寄付を仲介するなんて普通はしないはず。伊藤さんは荷卸しまで手伝って、わざわざツイッターにまで書き込んだ。政治家としてあまりにも認識が甘いと言わざるを得ない。なぜ『ユースビオ社』の名前を伊藤さんが伏せたのかも不可解だ」
この県議は、連休明けにも選挙管理委員会の判断を確認するという。サージカルマスクを受け取った福島県新型コロナウイルス感染症対策本部は27日になってマスクの出所がユ社である事を確認。慌てて県政記者クラブにプレスリリースしている。
別の県議は「県選管がどう判断するかだが、公選法違反を問うのは難しいのではないか」と慎重な見方。一方で「伊藤さんは国会議員秘書として20年間も永田町で働いていた人だから、国とのパイプがあるはず。布マスク配布事業をユ社が受注する過程で全く関与していなかったとは思えない」とも話した。
伊藤県議は筆者の取材に対し「サージカルマスクの寄付が私自身の寄付行為にあたる?いやー私は政治家だから寄付は出来ないので、それでつないだ。段ボール箱に私の名前でラベルが貼られているのも、仲介したから便宜上そうなったのではないでしょうか」と答えている。

伊藤県議は4月23日、自身のツイッターにサージカルマスクの荷卸しを手伝っている様子を写真付きで書き込んだ
【「党本部に文書で…」】
〝アベノマスク疑惑〟は4月27日、布マスク配布事業の発注先について、厚労省が福島瑞穂参院議員に対し「4社目はユースビオ社」と回答した事を福島議員が自身のツイッターで公表。官房長官も同日午前の会見で、伊藤忠商事、興和、マツオカコーポレーションの3社に加えて「ユ社」にも発注していた事を明らかにしている。翌28日午前の衆議院予算委員会では、加藤勝信厚生労働大臣が「輸出入をするもう一つの会社がある」、「(布マスクの)輸出入はその会社が担っている」として「シマトレーディング社」の名前を挙げた。
いずれも福島市内に本社を置く会社だが、法人登記簿によると、ユ社は布マスクとはこれまで全く無縁の「再生可能エネルギー生産システムの研究開発及び販売」や「バイオガス発酵システムの研究開発及び販売」などを主な事業としている。シ社は「生花および生花器具類の販売」や「園芸資材の販売」などを手掛ける会社だが、本来の拠点は千葉県富里市。登記簿上の住所には一軒家があるだけで、机も椅子も社員の姿も無い。
ユ社の事務所窓には公明党・山口那津男代表のポスターが貼られているほか、室内には伊藤県議や福島市議の選挙ポスターが掲示されている。
「何かあったら、また電話ください。公務があっただけで、別に逃げたり隠れたりしているわけではありませんよ。ただ話が全国的に大きくなっちゃってるので、基本的には党本部に文書で問い合わせていただくようになっていまして…」
伊藤県議はそう言って会派控え室に入って行った。この件は、福島の地元メディアではほとんど取り上げられていない。
(了)

【「寄付をつないだだけ」】
「ああ、マスクですね。何かもう詳しく、県の方に取材しているようで…」
本会議に引き続いて開かれた常任委員会。福祉公安委員会の委員長を務めた伊藤県議は、会派控え室前の廊下でようやく取材に応じた。わずか5分間だったが、これまで全く連絡がつかず、会派にも取り次ぎを拒否されていたとは思えないほど、対応そのものはていねいだった。
「ユースビオ社の樋山茂社長からサージカルマスクを寄付したいとの申し出があって。確かに、樋山社長が自分で寄付すれば良かったのかもしれませんが、本人も表彰、表彰っていうか大々的にやるのでは無くて寄付したいとの申し出があったので、『では私がつなぎをやりますよ』という事です。ですので、私はあくまでも仲介したという事です。運送会社の方にマスクを県庁まで運んでいただいて、それを県の方に来てもらったというわけです。寄付したいというのをつないだだけなのです」
時折、笑顔を交えながら、柔らかい口調で話した伊藤県議。ユ社の樋山社長とは、2015年11月の県議選に初めて立候補した時からの付き合いだという。「私と同じ地域で公明党支援をしてくださっている方なので」。なぜユ社のような地元でもほとんど知られていない会社が布マスク配布事業を請け負えたのかについては、急に歯切れが悪くなった。
「それについては国や樋山さんとか、皆さんにきちんと説明してもらって…。ま、その辺になると、ちょっと私も分からないものですから…。そういう質問になったら私は答えられないんで。はい。そういう事で、よろしくお願いします」

〝アベノマスク疑惑〟が浮上する4日前、樋山社長から福島県にサージカルマスクが寄付された。しかし、マスクの入った段ボール箱(2500枚×10箱)に樋山社長の名前は無く、代わりに寄付元として「公明党 伊藤達也議員」と記載されている
【県選管の判断確認へ】
布マスク配布事業を巡る〝アベノマスク疑惑〟が浮上する4日前の4月23日に福島県に寄付されたベトナム製のサージカルマスク。しかし当初、福島県側には樋山社長の名は明かされず、前日に伊藤県議から電話で寄付の申し出があっただけ。サージカルマスクの入った段ボール箱には、「購入元(寄付元)」として「公明党 伊藤達也議員」と記載されたラベルが貼られている。
マスクがトラックで搬入された当日も樋山社長は福島県庁に現れず、伊藤県議が1人で荷卸しを手伝った。その様子は自身のツイッターで写真入りで紹介されている。
実は、この一連の伊藤県議の対応が、政治家の寄付行為を禁じた公職選挙法に違反するのではないかとの指摘が福島県議会の他会派からあがっている。ある県議は言う。
「単に間に入っただけだとしたら、なぜ県が貼ったラベルに『購入元(寄付元)』として伊藤さんの名前が記載されているのか。ユ社が布マスク配布事業を受注した事を伊藤さんは知らないはずが無いのだから、そんな怪しい会社からの寄付を仲介するなんて普通はしないはず。伊藤さんは荷卸しまで手伝って、わざわざツイッターにまで書き込んだ。政治家としてあまりにも認識が甘いと言わざるを得ない。なぜ『ユースビオ社』の名前を伊藤さんが伏せたのかも不可解だ」
この県議は、連休明けにも選挙管理委員会の判断を確認するという。サージカルマスクを受け取った福島県新型コロナウイルス感染症対策本部は27日になってマスクの出所がユ社である事を確認。慌てて県政記者クラブにプレスリリースしている。
別の県議は「県選管がどう判断するかだが、公選法違反を問うのは難しいのではないか」と慎重な見方。一方で「伊藤さんは国会議員秘書として20年間も永田町で働いていた人だから、国とのパイプがあるはず。布マスク配布事業をユ社が受注する過程で全く関与していなかったとは思えない」とも話した。
伊藤県議は筆者の取材に対し「サージカルマスクの寄付が私自身の寄付行為にあたる?いやー私は政治家だから寄付は出来ないので、それでつないだ。段ボール箱に私の名前でラベルが貼られているのも、仲介したから便宜上そうなったのではないでしょうか」と答えている。

伊藤県議は4月23日、自身のツイッターにサージカルマスクの荷卸しを手伝っている様子を写真付きで書き込んだ
【「党本部に文書で…」】
〝アベノマスク疑惑〟は4月27日、布マスク配布事業の発注先について、厚労省が福島瑞穂参院議員に対し「4社目はユースビオ社」と回答した事を福島議員が自身のツイッターで公表。官房長官も同日午前の会見で、伊藤忠商事、興和、マツオカコーポレーションの3社に加えて「ユ社」にも発注していた事を明らかにしている。翌28日午前の衆議院予算委員会では、加藤勝信厚生労働大臣が「輸出入をするもう一つの会社がある」、「(布マスクの)輸出入はその会社が担っている」として「シマトレーディング社」の名前を挙げた。
いずれも福島市内に本社を置く会社だが、法人登記簿によると、ユ社は布マスクとはこれまで全く無縁の「再生可能エネルギー生産システムの研究開発及び販売」や「バイオガス発酵システムの研究開発及び販売」などを主な事業としている。シ社は「生花および生花器具類の販売」や「園芸資材の販売」などを手掛ける会社だが、本来の拠点は千葉県富里市。登記簿上の住所には一軒家があるだけで、机も椅子も社員の姿も無い。
ユ社の事務所窓には公明党・山口那津男代表のポスターが貼られているほか、室内には伊藤県議や福島市議の選挙ポスターが掲示されている。
「何かあったら、また電話ください。公務があっただけで、別に逃げたり隠れたりしているわけではありませんよ。ただ話が全国的に大きくなっちゃってるので、基本的には党本部に文書で問い合わせていただくようになっていまして…」
伊藤県議はそう言って会派控え室に入って行った。この件は、福島の地元メディアではほとんど取り上げられていない。
(了)
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