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【県民健康調査】学校での甲状腺検査は「コロナ」で1学期中止、「妊産婦に関する調査」も終了へ~第38回検討委員会は〝3密〟避けweb会議、トラブル続きで議論低調

原発事故後、福島県が実施している「県民健康調査」の第38回検討委員会が25日午後、福島市のホテル「ザ・セレクトン福島」で開かれた。〝3密〟を避けるため、星北斗座長以外の全委員がリモート出席。甲状腺検査で「悪性ないし悪性疑い」と判定された人が2019年12月末現在で237人だった事が報告されたほか、「コロナ」で学校での甲状腺検査を1学期を中止する事、「妊産婦に関する調査」を今年度をもって終了する事が確認された。しかしweb会議の回線が悪く音声が途切れるトラブルが続出。議論は低調に終わった。
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【手術実施は192人】
 配布資料によると、2019年12月末までに甲状腺検査で「悪性ないし悪性疑い」を判定された人数は計237人で、同年9月末時点での集計と変わらなかった。内訳は「先行調査」116人、「本格検査(検査2回目)」71人、「本格検査(検査3回目)」30人、「本格検査(検査4回目)」16人、「25歳時の節目の検査」4人。このうち手術を受けた人は192人で、前回報告より5人増えた。
 今年度と2021年度で実施する予定になっている甲状腺検査の「本格検査(検査5回目)」について、学校での検査は1学期に関しては中止される事が決まった。「新型コロナウイルス感染対策のための臨時休業等により、当初計画に基づく検査の実施が困難」と福島県県民健康調査課。検査を希望する子どもに対しては、一般会場や医療機関での検査を案内する。学校での検査が中止されている事について、今のところ福島県庁や福島県立医大に問い合わせなどは寄せられていないという。
 学校での甲状腺検査を巡っては、2月13日の第37回検討委員会で津金昌一郎委員( 国立がん研究センター・社会と健康研究センター長、当日欠席)から「学校での検査には反対」、「任意性を担保するために授業時間外に実施されるべき」などとする意見が出されていた。
 これを受け、星座長が「学校の現場でどんなふうなやられ方をしているのかは僕らも理解していない」として、今回会合までに学校から聴き取った内容を提出するよう県に求めていた。しかし、学校での検査が2学期以降に延期された事で聴き取りも延期された。
 委員が学校に足を運んで実際の検査の様子を視察する可能性について、星座長は記者会見で「われわれがゾロゾロと行って『見に来たぞ』という姿は、どこに行くにしても優れた方法では無いと思っている。現実に、学校現場がどのような対応をとっているのか、まずは聴き取る。その結果を検討委員会に報告していただく。そこをスタート地点として、どうしても現場に行かなければならないと仮に議論としてなれば、形を考えないといけない。現時点では想定していない」と否定した。

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当初、写真撮影は冒頭の5分間しか許可されなかったが、福島県が用意した「記者控え室」で音声が流れないトラブルが発生。結局、記者も間隔を開けて会場での取材を続けた=福島県福島市のホテル「ザ・セレクトン福島」

【遺伝的影響36%が懸念】
 委員会では、2018年度「こころの健康度・生活習慣に関する調査」の結果も報告された。
 この調査は福島県内の市町村のうち広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村、南相馬市、田村市、川俣町、伊達市のうち特定避難勧奨地点に指定された区域に201年3月11日時点で住民登録をしていた約20万人を対象に続けられている。
 被災で生じた「トラウマ反応」に関する設問では、支援が必要と判断された人の割合は9・7%だった。2011年度の21・6%と比べると半減しているが、ここ3年は横ばい。依然として10人に1人は地震や津波、原発事故によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)の可能性がある事が分かった。
 また、「放射線の健康影響」については、「可能性は極めて低い」と「可能性は低い」が合わせて66・4%に達した(2011年度は51・9%)。一方で「可能性は高い」と「可能性は非常に高い」の合計は33・5%で2011年度の48・1%と比べると減ったが、依然として3人に1人が被曝による健康影響を心配している事が分かる。
 「放射線の次世代影響」(遺伝的影響)を懸念する回答も2011年度の60・2%より減って36・0%だったが、こちらも下げ止まり。依然として不安が少なくないが、高村昇委員(長崎大学・原爆後障害医療研究所教授)は記者会見で「広島や長崎での原爆被爆者二世調査やチェルノブイリ原発事故などの調査では、これまでのところ人における放射線の遺伝的影響は証明されていない。これは重要な科学的知見」と全否定した。
 やはり2011年度から継続している「妊産婦に関する調査」は、「低出生体重児出生率」や「先天奇形・先天異常発生率」が全国平均と比べて高くない事、自由記載欄に「胎児・子どもへの放射線の影響」について書き込む回答が1・8%に減った(2011年度は29・6%)事などを理由に、今年度調査をもって終了する事が確認された。支援は継続し、フォローアップ調査継続の必要性については「検討を継続する」とされた。

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甲状腺検査で「悪性ないし悪性疑い」と判定された人は2019年12月末現在で237人。前回報告から増えなかった。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、学校での甲状腺検査が1学期は中止される

【web会議「やりにくかった」】
 この日の会合は〝3密〟を避けるために初めてweb会議形式で行われた。星座長と福島県県民健康調査課の職員だけがホテルにいて、他の委員は全員、インターネット回線を利用してリモート参加した。傍聴者もゼロ。県外から福島市に駆け付ける必要が無くなった事もあり、欠席した委員はいなかった。
 宴会場のスクリーンに委員全員の顔が映し出され、星座長がそれを見ながら進行したが、画面が固まったり音声が途切れたりずるトラブルが続出。議論がスムーズに進まず、低調に終わった。また、個々の滑舌やマイクの性能などで発言が不明瞭な事もあった。
 星座長は会合中や記者会見で「クオリティが上がってくれないとストレスがたまる」、「大事なところが聴こえず、非常にやりにくかった」、「もっと金をかけろと県に言う」、「web会議をいろいろとやってきたが、今までで最悪の出来だった」などと発言。福島県県民健康調査課の職員は「機器の問題なのかインターネット回線の問題なのか、何が悪かったのか検証したい」と話した。議事録作成に影響が出る可能性もある。
 一般傍聴を認めなかったため、具体的な会場名は事前告知せず、事前申し込みをした取材者だけにメールで場所が知らされた。当初、会場内での取材はビデオ撮影者のみで、記者やスチールカメラマンは冒頭5分間の〝頭撮り〟だけが許可されていた。そのため、記者が会議の動画を観るための「記者控え室」が用意されたが、冒頭から音声が出ないアクシデントが発生。結果的に、筆者も含めた記者は会場内のテーブルに間隔を開けて座り、取材した。取材にあたってはマスク着用が求められ、受付に消毒液が置かれた。



(了)
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鈴木博喜

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