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【原発避難者から住まいを奪うな】「コロナ禍にあえぐ避難者救います」 3団体共同で緊急アンケート開始。「本来は国や福島県が実態調査すべき」と怒りの声も

原発事故避難者に追い打ちをかける新型コロナウイルス問題。コロナ禍で避難者たちがどのような事に苦しんでいるのか把握し、救済に結び付けようと市民団体が立ち上がった。3団体がインターネット上で緊急アンケート調査を開始。急を要する案件にはすぐに対応する構え。本来ならば、国や福島県が原発避難者の生活実態調査を行うべきだが動きは鈍い。しかし、生活苦は日々、深刻さを増していく。窮状にあえぐ原発避難者を見捨てまい、孤立させまい、命をおうと避難当事者や支援者が連携して奔走している。
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【既に「家賃苦しい」の声】
 「新型コロナ災害下における原発事故避難者の暮らしと住まいの不安に関する緊急アンケート調査」を始めたのは、「原発事故被害者団体連絡会」(ひだんれん)「『避難の権利』を求める全国避難者の会」「避難の協同センター」の3団体。27日午後に北海道札幌市、福島県福島市、東京都の3カ所で記者会見を同時に開いて発表した。
 アンケート調査は既に今月26日から始まっており、6月30日まで行われる予定。「新型コロナウイルスによる家賃への影響」など14項目にわたって質問している。今回は紙に記入するのでは無く、パソコンやスマートフォンでインターネット回線上にある〝回答用紙〟にアクセスして入力する。27日までに8件の回答が寄せられ、うち3件が「家賃の支払いが苦しくなった」と答えているという。
 福島県庁での記者会見に出席した、武藤類子さん(ひだんれん共同代表)はアンケート調査の趣旨について「原発事故から9年が経ち、避難指示が解除され、避難者に対する支援が次々と打ち切られています。福島県が国家公務員宿舎に入居している避難者を相手取って裁判を起こしたり、家賃の2倍請求を行ったりしています。帰還困難区域からの避難者に対しても、3月末で応急仮設住宅の提供が終了しました(大熊町、双葉町を除く)。そこに新型コロナウイルスの問題が重なりました。コロナ禍で原発避難者の方々が実際にどんな暮らしをしているかを把握し、緊急対応が必要な方に手を差し伸べるために始めました」と語った。
 インターネットを活用した理由については①緊急対応が可能②より多くの声を集められる③アンケート用紙の配布や回収、集計が容易─を挙げた。結果がまとまった時点で公表し、国や福島県にも提出する予定だという。

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避難当事者団体、支援団体が共同で始めた緊急アンケート調査。「新型コロナウイルスによる家賃への影響」など14項目にわたって質問している

【「何度も調査求めた」】
 「私たち区域外避難者(いわゆる〝自主避難者〟)は2017年3月末でいろいろな支援策が打ち切られ、福島県から棄民扱いされた。私たち区域外避難者はもはや、『避難者』として人数にカウントされていません。国も福島県も避難者の実情を調べようとしない。避難者として、福島県民として扱われていないのです」
 会見に出席した松本徳子さん(「避難の協同センター」代表世話人、福島県郡山市から神奈川県に避難継続中)は、ぐっと怒りをこらえるように語った。避難当事者と福島県との交渉は20回に上る。話し合いのたびに避難者の暮らしについて実態調査をするよう福島県に求めて来たが、実行される事は無かった。
 「避難の協同センターには毎日のようにSOSが寄せられ、瀬戸大作事務局長が動いています。その中で『反貧困ネットワーク』が中心となって『緊急ささえあい基金』が出来て、他の団体の力も借りながら、所持金が無い方などの救済を行っているのが実情です。福島市から母子避難した家族の転居もお手伝いしました。そういう事を福島県は認識していないと思います」
 今回の新型コロナウイルス問題での国や福島県の対応を、松本さんは「2011年の原発事故と全く同じ」と話した。
 「福島県は『県内での感染者数ゼロが続いている』と言っているが、どれだけPCR検査を行ったのでしょうか。原発事故もそうです。実態調査をしないのです。調べなければ分からない。調べなければ施策を実行できないわけです。ぜひ実態調査をしていただきたいです」
 原発事故以降、本来は国や福島県がやるべき事を市民団体がやむなく担ってきた。目の前に苦しんでいる避難者がいるからだ。SOSを発しているからだ。しかし、内堀雅雄知事には耳を傾けようとしない。
 「福島県はなぜ、いつも民間に丸投げなのか。市民団体が出来る事には限界があります。報道機関はぜひ、幅広い実態調査の意義を伝えてください」

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(上)福島県庁で開かれた記者会見。避難当事者であり支援団体の代表も務める松本徳子さんは「市民団体が出来る事には限界がある」と、改めて県による実態調査を求めた
(下)2人の福島県職員が記者会見場を訪れ、発言をメモした。市民団体の関係者は「声をかけていないのに…」と驚いていた

【実態調査拒む福島県】
 記者会見場の一角には、福島県生活拠点課や避難者支援課職員の姿もあった。2人の男性職員が発言を熱心にメモしていた。また、廊下では別の男性職員が聞き耳を立てるようにペンを走らせていた。「ひだんれん」の関係者は「県には記者会見を開くと知らせていないのに…」と驚いていた。日頃から避難当事者や支援者のSNSでの発信をつぶさに確認している事で記者会見を知ったようだった。しかし、そこまで市民団体の動向を詳細に〝監視〟するくらいなら、原発避難者の生活実態調査を行って施策に反映させるべきではないのか。
 松本さんたちはこれまで、何度も原発避難者の生活実態調査を国や福島県に求めて来たが、そのたびに拒まれ、無視され続けて来た。
 瀬戸さんは2017年7月に都内で行った講演で「避難者の実態も把握せずに住宅の無償提供を打ち切ったのは間違いだった」と語っている。しかし2018年7月に開かれた福島県との12回目の交渉では、福島県側は家賃補助の延長も避難者実態調査も改めて明確に拒否した。
 2018年12月17日の内堀知事定例会見では、朝日新聞の男性記者が「自主避難者が例えばどこへ避難しているのか、または福島に戻ったのか。生活の実態がどうなのか、実態調査をするというのを福島県は求められている。これまでそうした調査を行っていなかったと思いますが、今後どういう風にお考えなのか。もしその必要が無いというのであればその理由を教えてください」と質している。
 しかし、内堀知事は「避難元あるいは避難先自治体等と連携を図りながら、速やかに住まいを確保出来るよう引き続き支援を行って参ります。また、住まいを確保された世帯に対して家賃補助はじめ必要に応じ戸別訪問あるいは全国各地の生活再建拠点における相談対応を行うなど支援を継続しているところであります。今それぞれの御世帯それぞれの状況もあろうかと思います。そういった方々に対し引き続き個別に事情を伺いながら県として出来る限りの対応を続けて参ります」と繰り返すばかり。実態調査もせずに、どうやって避難県民を救うと言うのか?
 着々と進められてきた〝避難者切り捨て〟に追い打ちをかけるコロナ禍。国や福島県の動きは鈍いが、原発避難者を見捨てまい、孤立させまい、命を救おうと奔走している人たちもいる。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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