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「完全に除染して」「放射線のない海でいて」… 10年経ったら未除染解除に汚染水海洋放出? 為政者は今こそ読め、8年前に綴られた〝なみえっ子〟たちの想い

私の部屋に大切に保管している資料の中に、少し汚れた冊子がある。2011年3月の原発事故で全町避難を強いられた福島県双葉郡浪江町が、2012年4月に発行した「なみえの子どもたちの想い 復興に関する子ども向けアンケート自由意見」。当時小中学生だった〝なみえっ子〟たちの回答が直筆でそのまま掲載されている。ここに来て汚染水の海洋放出や帰還困難区域の未除染解除など、原発事故の後始末を一気に進めてしまおうという動きが出ているが、改めて8年前の子どもたちの想いを紹介したい。今こそ為政者に読んで欲しい言葉が並んでいる。
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【完全除染で事故前の浪江に!】
 アンケートは原発事故から10カ月後の2012年1月、小学校1年生から中学校3年生を対象に郵送で行われた。A4判で76ページの冊子には、当時の子どもたちの言葉が直筆で掲載されている。活字に置き換えられていないだけに、子どもたちの想いがより、強く伝わってくる。
 「大人になったとき、浪江町はどんな町になってほしいですか?」という問いには、972件の回答があった。目立つのは「震災・原発事故前の浪江町に戻っていて欲しい」という願いだった。
 ↓
 ・放射能がいつものように0・0マイクロシーベルトに近づいて、いつもの浪江町にもどってほしい
 ・とにかく帰れるようになってほしい。帰れるなら、3・11までの浪江町のままで良い。何も変わらなくて良いので、住めるようにだけしてください
 ・津島に住めるような環境になってほしい
 ・幾世橋地区以外の地域も放しゃ線量がへり、元の良い浪江町にしてほしいです
 ・原発事故が起きる前の空気がきれいで、川・海で魚がとれ、安心して食べられ、元の生活に戻れるような町にしてほしい
 ・放射線が『全て』なくなり、浪江町全体が元の浪江町と同じような楽しくて自然がきれいな浪江町に戻ってほしいです

 「完全除染」への強い期待が伺える答えも多かった。
 ↓
 ・すべて何もなかったようになって、浪江小学校ももとにもどって、ほうしゃのうが全部無くなってほしいです。そして皆、浪江町が明るく元気な町になってほしいです
 ・除染が完全にしてあり、いつでも帰れる、元通りの浪江町になってほしい
 ・除染を徹底的に行ってもらって、昔の浪江町に戻ってほしい
 ・放射能を完全に除去してほしい
 ・放射能が無く、安全で、他地区から『きれいな町』と言われる町になってほしい
 ・除染が完璧に行われた町(森林も海も川も家も)→誰もが安心してくらせる町(お年寄りだけじゃなく子どもも)
 ・放射線量が前と同じにさがるまで20年でも30年でもかかってもいいから放射能をなくしてくれれば、そこに住めるようになれる。カンペキになるまでは、どうせ帰らないから
 ・ほうしゃせんが1まいくろしーべるともないで、あんぜんなつしまにもどってほしいし、つしま小学校のみんなと先生とあそんだり、勉強とかをしたいです

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浪江町が2012年1月に実施したアンケート。当時の小中学生たちの率直な想いが直筆のまま掲載されていて胸を打つ

【故郷を原発から取り返して!】
  自然豊かな浪江。山の幸、海の幸を再び味わいたいという記述も多かった。
 ↓
 ・地震前のように豊かになってほしい。また請戸で釣りをして、おいしい魚を家族で食べたい!
 ・まえのようにすめるようになってほしい。おいしいさけが食べられるような町にもどしてください。ぼくたちはすこししかすんでいなかったけど
 ・元の浪江町のように海あり川あり山ありのような自然がきれいなところ。海がきれいでぼくは漁師になりたいので、ほうしゃせんのない海で食べられる魚がいてほしい
 ・何十年かかっても、元の自然豊かで明るい浪江に戻ってほしい。放射能が高い地域の除染が進んでほしい。この震災を通じて、この浪江の復興ぶりと良いところをみんなに知ってもらいたい!!
 ・ほうしゃのうがなくなり、家の前をながれる川でつりをしたり、バーベキューをみんなでたのしみたいです
 ・しぜんにかこまれた津島のままでいてほしい!
 ・ほうしゃのうがない浪江町になってほしい。海でおよげるようになってほしい

 「その他、町長にお願いしたいことはありますか?」には、737件の回答が寄せられた。
 ↓
 ・時間がなくて、家にたくさん大切なものをおいてきてしまいました。早く浪江にもどれるように除染してください
 ・津島も被害にあっているのだから、津島のこともきちんと話してほしい
 ・浪江町には放射線が怖くて帰りたいけれど帰れないので、除染のためにあてている費用を私達の補償金にあててください 
 ・きちんと除染して、結婚して子どもを安心して産める町にしてください
 ・しっかりと放射能を完璧に除去してもらい、震災前以上の浪江町になるように努力をお願いします
 ・私達の『故郷』を原発から取り返してください

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浪江町役場が作ったアンケートの「まとめ」。あれから8年。町の〝人口〟は1400人弱にとどまっている。私たちはあの頃の〝なみえっ子〟たちの想いを無視して良いのだろうか?

【期待とあきらめ入り混じる記述】
 実は、冊子の2ページ目に、こんな言葉がある。
 「大人になったらというしつもんがとてもかなしいですが…」
 突然、避難生活を強いられた子どもたちが、どんな気持ちでアンケート用紙に想いを綴ったのかを想像すると、胸が痛む。アンケートには、将来への期待とあきらめが入り混じっている。
 ↓ 
 ・私が大人になった時には、浪江町がまえのような町になっていてほしい。でも、もうそれは90%ムリなことだと思います。とりあえず、早く住めるようにしてほしいです
 ・自分は津波で家がなくなってしまい、戻っても放射線の影響があるので大変だが、昔の町に戻ってほしい
 ・被ばくしたくないので住んでいないと思う
 ・もとどおりの浪江町。もう、もとの浪江町にはもどらない。じょせんしても、じょせんしきれないとおもう
 ・何も思いうかばない。町はなくなっていると思う
 ・放射能があるので浪江町にはもどりたくないです。じょせんしても、かわらないと思います

 「テレビで10年間は帰れないと聞いたので、10年後、以前の浪江町みたいに戻れることを願っています!」という記述が哀しい。「大人になって帰れるの?」という問いかけもあった。確かに帰還困難区域以外の避難指示は解除されたが、胸を張って「被曝リスクは無くなった」と言えるだろうか?
 原発事故から10年近くが経ち、帰還困難区域は除染せずに避難指示を解除するのか。請戸の海を汚染水で汚して良いのか。最後に、自ら社会を変えようと意欲を綴った子どもたちの言葉を紹介したい。
 ↓
 ・東京電力に物が言える政治にしたい。放射能が無い町にしたい
 ・しんさい前みたいに、もとの生活でくらしたい。また友達といっぱい遊んで、いっぱいしゃべったりしたい。ぼくが町長になって、くらしやすい浪江町をつくっていきたい

 8年も前の、しかも子どもの言葉じゃないかと一蹴して良いのだろうか。私たち大人が試されている。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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