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【台風19号水害】コロナだけじゃなかった遅すぎる支給 国の「被災者生活再建支援金」いまだに2割近くが支給待ち 早くて3カ月後、半年待って振り込まれた被災者も

支援金の支給が遅いのは新型コロナウイルス関連だけでは無かった。昨秋の台風19号に伴う「10・12水害」などで自宅が激しく損傷した被災者のうち、国の「被災者生活再建支援金」を申請した世帯の約2割がいまだに支給待ちでいる事が分かった。中には、書類の不備など無かったにもかかわらず、申請から半年待ってようやく100万円が振り込まれた被災者もいる。調べると、書類は何段階ものチェックを経た末に、わずか20人のスタッフが東京で処理していた。水害発災から8カ月余。被災者救済システムの煩雑さと遅さが改めて浮き彫りになった。
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【半年遅れた自宅再建】
 「他の行を塗りつぶしても良いのなら、通帳をケータイで撮影して送りますよ」
 福島県中通りで被災したAさんから送られて来た写真には、今年5月26日付で「公益財団法人都道府県センター」(東京都千代田区。以下、センター)から100万円が振り込まれた通帳が写っていた。Aさんが申請書類を提出したのが昨年11月下旬だから、振り込まれるまでに実に半年を要した。これが「被災者生活再建支援金」(以下、支援金)の現実だった。
 5月に入っても「支援金」が振り込まれず、Aさんは「まだ振り込まれてないですよ。生活再建と言うならば、早くして欲しいですね。支援金がまだだと、この先どうしたら良いのか。話が進みません。もう半年ですよ。いつ振り込まれるのかモヤモヤします」と語っていた。そして26日午前、ようやく振り込まれた事を確認。「半年間、自宅再建の話は進みませんでした。これでやっと来月から進みそうです」と胸をなでおろした。
 「全壊」と判定された自宅を新築する事になったため、わずか100万円では家具を買い揃える一助にしかならない。それでも、共働きで3人の子どもを育てている夫婦にとっては貴重な100万円。これでようやく具体的に動き出せる。それにしても、わずか100万円が振り込まれるのになぜ半年も要したのか。Aさんのモヤモヤは今も晴れない。
 「申請書類に不備はありませんでした。もし不備があれば連絡があるはずですから」
 書類に不備が無いのに半年も要したのはなぜか。疑問を福島県災害対策課にぶつけると、担当者はあっさりとこう言った。
 「スムーズに処理されたとしても、振り込まれるまでに3カ月から3カ月半はかかりますよ」

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福島県中通りで被災したAさんの通帳。5月26日に100万円が振り込まれたが、申請書類を提出したのは昨年11月下旬。支給されるまでに実に半年間を要した

【福島県「早くて3カ月」】
 福島県災害対策課によると今年5月29日現在、福島県内の市町村で受け付けた申請書類は4586件。そのうち3747件に既に「支援金」が振り込まれており、支給率は82%だという。この数字はホームページなどで公開されておらず、情報公開制度を利用して開示された文書で分かった。
 支援金には、全壊、解体、長期避難世帯に100万円が支給される「基礎支援金」と、全壊、解体、長期避難世帯が住宅を建設・購入した場合に重ねて支給される「加算支援金」の2種類あるが、開示された数字は申請時期や支援金の種類を問わずに集計されているという。82%は一見、高い数字だが、逆に言えば発災から8カ月が経過してもなお、2割近い世帯に支援金が振り込まれていない事になる。申請時期が遅い被災者が含まれている事を考慮しても遅すぎないか。
 「申請窓口は市町村ですので、被災された方はまず、住んでいる市町村に書類を提出します。役所(役場)で提出書類を確認し、問題が無ければ書類は私ども県に送られてきます。こちらでも再度、提出書類をチェックします。ここでも問題が無ければセンターに週1回、まとめて郵送します。センターでも当然、提出書類を確認し、問題が無ければそこで初めて被災者の申請した口座に直接、支援金が振り込まれるという流れになっています。だから、提出された書類に不備が無くても、支援金が振り込まれるまでに最短でも3カ月から3カ月半はかかるのです」(福島県災害対策課)
 福島県の担当者は「書類に不備があれば当然、時間がかかります。書類の不備は意外と多いです。半年もかかるケースというのは、書類に不備があったのではないでしょうか」と話したが、Aさんには書類の不備を指摘する連絡は一切無かった。本当に「書類の不備」が理由なのか。今度はセンターに電話取材をした。

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福島県のまとめtでは、いまだに2割近い被災者が支援金の支給を待っている。新型コロナウイルスでも問題視されたが、水害被災者の救済も非常に時間がかかっている事が分かる

【月数千件を20人で処理】
 「『収受日』と呼んでいますが、申請書類が当センターに届いてから被災者の口座に振り込むまでの日数は、こちらとしては1カ月から1カ月半を目標に処理しています。ただ、最初に書類を受理した市町村でも中身をチェックして県に送っていますし、県も書類をチェックしたからこちらに郵送して来ます。ですので被災者からすれば、実際に振り込まれるまでにはそれ以上の時間はかかっていると思います」
 取材に応じた都道府県センター・被災者生活再建支援基金部の担当者は話した。センターには20人のスタッフがいるが、支援金の対象となる災害は昨秋の水害だけでは無く、東日本大震災や熊本地震など多岐にわたるため、毎月数千件の申請を処理しているという。
 「東日本大震災の時は100人ほど人数を増やして対応しましたが、やはり委託費がかかります。センターは都道府県の分担金で運営しているので、出来るだけ早く支給出来るように努力していますが、費用との兼ね合いもあります」
 確かに毎月数千件の申請を処理するのに20人というのは決して多くないが、コロナ禍でさらに処理能力が下がってしまったのだという。
 「緊急事態宣言が発令されて解除されるまでの間、出勤制限や在宅勤務で実際に動けるスタッフが半分くらいになりました。その時期は若干、遅れ気味だった事は確かです」
 センターの作成したパンフレットには「被災者の皆様におかれましては、被災者生活再建支援制度を十分に活用されて、一日も
早い生活の再建を実現されますことを祈念申し上げます」と書かれている。処理するスタッフが少ないか否かは、支援金を待っている被災者には関係ない。
 「月に数千件を20人で処理をしていたのですか…。そりゃ遅いですよね」とAさん。「自宅を新築するためにやっと動き出したところです。自己資金が無かったという要因もありましたが、支援金が年明け早々にでも振り込まれていたら、もっと早く動けました」と残念がった。
 今年も大型台風の襲来を予想している気象予報士もいる。生活再建がままならないまま台風シーズンを迎えてしまう被災者をうみ出してはいけない。



(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)
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