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【鹿児島県知事選2020】福島や宮城の親子に向き合い続ける2人のドクターが目指す「原発ゼロ社会」。女性医師が立候補。相模原から応援演説に駆け付けた女性医師の想いとは…

12日に投開票される鹿児島県知事選挙に、遠く神奈川から熱い視線を送っている医師がいる。2011年3月の原発事故後、甲状腺ガンを軸に福島県や周辺県の親子を支援している相模原市の牛山元美さん(63)=さがみ生協病院内科部長、循環器内科=。「川内原発の20年延長運転に反対」、「3号機増設の知事の同意は白紙撤回」を掲げて立候補した医師・横山富美子さん(73)=医療法人清水会理事長、霧島市=の応援演説に駆け付けた。横山さんとともに疫学調査を続けている牛山さんが応援演説で何を訴えたのか。県知事選に寄せる期待も併せて取材した。
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【私財投じた姿に感銘】
 今月4日。鹿児島中央駅近くで牛山さんはマイクを握った。
 「福島では240人ほどのお子さんたちが甲状腺ガンになりました。放射性ヨウ素を吸い込んだり食事で摂り込んだりすると、小さなお子さんほど甲状腺ガンになる事がチェルノブイリの例でも分かっています。でも、福島県は放射線の被曝と甲状腺ガンに関連性は無いという事を毎年のように発表しています。放射性ヨウ素の被曝量をきちんと調べたわけでも無いのにです」
 「原発事故の後、たくさんの不安を抱えたお母さんたちを対象にした相談会がいろいろとありました。私も参加してお話を聴いたとき、一番驚いたのは皆さん、福島県内の医師から怒られたと言うのです。何を怒られたのか。医師から『何で国の言う事を信じないのか』、『親たちが心配しているから子どもたちが具合悪くなっちゃうんだよ』と言われたのです。医師として、不安を声に出す事も出来ない世の中って何なんだと、すごくおかしいと思いました。でも、原発事故に関しては、こんな事がたくさんまかり通っています」
 「相談会に来ていたお母さんにチラシをもらいました。『私たちの事を心配して鹿児島の先生が無料で20年間検診すると書いてあるんですよ』。彼女たちにとってどんなにうれしかったことでしょうか。私は、でもちょっと待って、このお金はどこから出ているの?お金の出所が問題だなと思いました。そこで、横山先生に連絡をとってお会いしました。仙台から鹿児島に帰る途中に、羽田空港で飛行機を乗り換えるたった1時間の間にお会いしました。緑色のニットを着て、クリオネみたいに小さくて可愛くて、少し心配になったんですけど、横山先生の口から出てきた言葉は本当に正義感にあふれて力強かったです。さらに、疫学調査の費用は全て横山先生が私財を投じてらっしゃるとのことでした。驚きました。原発事故後の健康調査に私財を投じた医師がどこにいますか?横山先生だけです。私は本当に感激しました。今は私もその疫学調査に参加させてもらっています」

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鹿児島県がつくったパンフレット「原子力防災のしおり」には、川内原発からの距離を表した地図も掲載されている。5km以上30kmまでを「緊急防護措置を準備する地域」としているが、福島県では、原発から60km以上離れた「中通り」にも大量の放射性物質が降り注いだ

【「明日はわが身の原発立地地」】
 緊張していたこともあり、「考えていた事の半分も話せなかった」も振り返るが、内科医として母親の1人として、原発事故後の福島と向き合ってきた想いが応援演説に凝縮されていた。鹿児島県薩摩川内市には、九州電力の川内原発がある。万が一事故が起きれば、鹿児島の人々も福島と同じような扱いをされる恐れがある。事前に用意していた原稿には、次のようなくだりもあった。
 「原発事故の被害や健康影響について、日本はきちんと調べない国です。もし、鹿児島の川内原発の事故が起きても、国は、被害を正確に調べないまま、過小評価して、補償もろくにせずに幕を引こうとするでしょう」
 「みなさん、ご存知ですか。原子力緊急事態宣言というものがあります。9年前、原発事故後に出されてから今も、解除されていません。住民が帰れないほどの汚染が残る地域がある限り、緊急事態宣言は解除できないのです。ふるさとに、自宅に、自分の畑に戻れない、と、悲しんでいる人たちが今も沢山います。そして原発がある限り、明日はわが身かもしれません。いいんですか?こんな日本で」
 「福島では今、甲状腺ガンのことも、故郷に帰れない住民の事などほとんど報道されず、社会から置き去りにされています。福島で起こっていることは、原発が事故を起こせば、どこででもまた繰り返されます。被害は隠され、無視されます。声を上げると、復興の邪魔をするなと言われるでしょう」
 牛山さんは4年前、川内原発再稼働反対の集会やデモに参加するため、鹿児島を訪れている。「その後に三反園訓知事が当選したので良かったね、と喜んでいたのに…。だから今回は、原発ゼロを唱えて良いんだ、唱えることこそ子どもたちや日本の未来を愛してる証拠、という事を1人でも多くの人に伝えたくて応援演説に行ってきました」
 知事は就任後間もない2016年12月1日の鹿児島県議会で「私に原発を稼働させるか稼働させないかの権限はない」と答弁。脱原発を託した有権者らを落胆させた。しかし、横山さんは自身が設立したNPO法人「11311疫学調査団」による健康調査をコツコツと続けている。東北と鹿児島で約1600人が定期的な健診を受けている。

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横山さんが続けている「11311疫学調査」のチラシ。福島や宮城、鹿児島県から約1600人が登録。定期的な健診を行っている

【「選挙で『原発ゼロ』広がって」】
 牛山さんは、原発事故当時福島に住んでいて現在は避難などで首都圏に暮らしている人や、福島で暮らしながら保養などで首都を訪れる人たちを健診するという形で、「11311疫学調査」に携わっている。
 「原発事故当時、福島に住んでいた方は無料という事もあり、たくさんの親子が健診を受けています。でも、今年はコロナ禍で春も夏も保養が中止となり、健診を受けられない方が多いです」
 私財を投げ打って健康調査を続けている横山さんに触発されるように、牛山さん自身も病院勤務の傍ら、福島や宮城などで講演を行っているほか、NPO法人「3.11甲状腺がん子ども基金」が行う電話相談会に「日本女医会」(大谷智子会長)に所属する他の女性医師とともに参加。甲状腺ガンなど原発事故後の健康影響について傾聴し、アドバイスをしている。
 6月25日に告示された鹿児島県知事選には横山さんのほか、現職の三反園訓氏(62)や前回知事選で敗れた伊藤祐一郎氏(72)など計7人が立候補している。三反園氏と伊藤氏の一騎打ちだった前回投票率は56・77%だった。
 地元紙の情勢分析では厳しい選挙戦になっているが、牛山さんは「横山さんが、そう簡単に鹿児島県知事になれるとは思っていません」と語る。
 「選挙を通じて彼女の主張を読んだり聞いたりする事で、『私もそう思う』、『脱原発を望んで良いんだ』と考える人が増えて欲しいんです。そういう人が増えてくれたら、仮に今回の選挙は駄目でも、きっと次の選挙では『原発ゼロ』への支持者が増えると思います。彼女への投票は、原発ゼロを望む意思表示。そういう意味で今後の県政にアピール出来るのではないかと思っています」



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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