FC2ブログ

記事一覧

【東日本大震災・原子力災害伝承館】主眼は〝原発事故のリアル〟ではなく「復興の歩み」 初代館長の高村昇氏が福島県知事を表敬訪問 「私はアーカイブの専門家では無い」とも

福島県が双葉郡双葉町中野地区に今秋、オープンさせる予定のアーカイブ施設「東日本大震災・原子力災害伝承館」はやはり、原発事故からの「復興」がメインだった。初代館長への就任が決まっている長崎大学の高村昇教授(51)が17日午前、福島県の内堀雅雄知事を表敬訪問。改めて「復興の歩み、プロセスの発信が伝承館の主眼」と語った。自身を「アーカイブの専門家では無い」と認めながらも「9年間、地域の復興に携わってきたのでお手伝い出来る」と語る高村氏。総事業費50億円超の館長として5年間、非常勤で〝復興PR館〟の指揮を執る。
20200717181431dde.jpg

【事故の反省や責任は?】
 伝承館は〝原発事故のリアル〟を伝えないのではないか─。高村館長は、そんな懸念を払しょくするどころか、むしろ肯定してみせた。新型コロナウイルス感染拡大の影響でオープンが延び延びになっている施設は、「原発事故から立ち直った福島の姿」を国内外に発信するための施設だったのだ。
 「私自身は原子力災害があってそこから福島に来て、住民に対する説明会などを行って参りました。その後川内村、富岡町…復興の支援をやって参りました。この9年間の福島の復興の歩みというものを見て来た1人として今回、このような機会を与えていただきありがたく思っております。伝承館がオープンした後はスタッフの方々と一緒に、福島のこれまでの経験を皆さんに伝えていくという事、そして資料収集し、それを情報発信していく、あるいは、いろんな人にそういったものを見ていただくという事をやって参りたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します」
 「復興の歩み」、「復興のプロセス
 福島県庁2階の廊下で行われた囲み取材の間、高村館長はこれらの言葉を何度も口にした。
 テレビユー福島の記者が「原発事故の責任だとか反省だとか、そういう視点も必要なのではないか」と質したが、やはり高村館長は「復興のプロセス」を繰り返すばかりだった。
 「伝承館の一番の主眼はですね、復興のプロセスというものを保存してそれを情報発信していく事じゃ無いかなというふうに考えております。この9年間ですね、福島県民が原発事故に向き合って、最初の時期は大きな混乱があってそれで復興を進めていく、地域を元に戻していく、戻っていく…。そういったプロセスを伝える。それを主眼としたものにしていければなと考えております」
 後世に「伝承」するのは原発事故の悲惨さや被害の甚大さでは無い。「原発事故が起きても立ち直れる」という〝原子力ムラ〟からのメッセージだった。

20200717115437aca.jpg
福島県の内堀雅雄知事を表敬訪問した高村昇氏。囲み取材では「私はアーカイブの専門家ではありませんので、自分で良いのかなと確かに思いました」と語る場面も=福島県庁

【就任要請には「驚いた」】
 筆者は4月3日号で「高村氏はそもそも、博物館や『アーカイブ』の専門家では無い」と指摘。高村氏の館長就任に疑問を投げかけた。囲み取材でその点を質問すると、高村氏はあっさりと認めた。
 「ご指摘の通り、私自身はいわゆるアーカイブを専門としているわけではございません。それは事実。しかし、この伝承館の1つの主眼というのが、原子力災害からの復興に関する資料収集という目的がある。それを展示する。収集して展示して情報発信するという目的がある。原発事故直後の説明会から、地域の復興、県民健康調査もそうですが、そういった形で原子力災害からの復興に多少なりともかかわった人間としてですね、そういった側面から伝承館の館長としての役割を果たしていきたいと考えています」
 アーカイブの専門家では無いのに、なぜ就任要請に応じたのか。
 「私も最初、この依頼があった時はかなり驚きました。まさに今おっしゃったとおり、私はアーカイブの専門家ではありませんので、自分で良いのかなと確かに思いました。ただし、今言ったように伝承館というのは原子力災害からの復興という事を主眼としていると聞きましたので、それであれば、この9年間福島で地域の復興に携わってきた者としてお手伝い出来る事があるんじゃないかと考えました」
 一方で〝原発事故のリアル〟を発信する事については「福島県内には様々な施設がございますので、そういったところとの役割分担もあるでしょうし、有識者の方々のご意見も踏まえながら進めていきたい」と答えるにとどまった。やはり「復興」のPRなのだ。
 ちなみに、伝承館の指定管理者である「公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構」(斎藤保理事長、以下機構)に高村氏を推薦した福島県生涯学習課の担当者は、推薦理由についてこう語っている。
 「考え方に偏りが無い、人格的に温厚で高潔な方である。これが1つ目の理由です」

20200718074713fa3.jpg

20200717115143da8.jpg
(上)伝承館のリーフレットには「復興に向けて力強く進む福島県の姿と国内外からの支援に対する感謝の思いを発信する施設です」と記されている。年間入館者数7~8万人を目指すという
(下)JR東日本が発行する新幹線車内サービス誌「トランヴェール」2020年7月号にも広告が掲載されているが、ここにも「復興のあゆみ」と書かれている

【「人材育成も重要」】
 機構の伊藤泰夫専務理事とともに福島県庁を訪れた高村氏を、内堀知事は「改めて、伝承館館長にご就任をいただき、ありがとうございます。高村先生には震災・原発事故以降、まさに専門家としてすぐに福島県に駆け付けていただいて、本当に多くの場面でわれわれに対する支援を行っていただきました」と迎えた。
 「やはり10年近く時間が経ちますと、いろいろな意味で風化が進んでいく。特に近年は昨年の台風災害であったり、今目の前で起きている九州・西日本の豪雨災害であったり、あるいは新型感染症の問題であったり、新しい問題がどんどん積み重なっていって、どうしても2011年の大震災や原発事故が風化してしまう恐れがあります」
 「まず記録をしっかりと保存し、後世の皆さんに伝えていく。また、福島の今を国内外に情報発信していく。そういった重要な役割があります。高村先生はもう、非常に福島の事をご存知でいらっしゃる。また、災害に対応するという自分自身の実践の経験もあります。長崎県における歴史、これまでの活動についても良くご存知でありますので、ぜひ、そういった経験、識見を活かして館長として御尽力いただければと思います。今後ともよろしくお願い致します」
 「双葉郡の役場の中を見ても、実は職員さんの半分くらい、あるいは半分以上が震災を経験していない方。そういう現実があります。若い世代であったり、地域復興の担い手である役所の方が伝承館で見て、聞いて、学ぶ事が大切な場になるんじゃないかと思います」
 これに対し、高村氏は「ぜひイノベーション構想の一翼を担って行きたい」、「学校教育と連携しながら、今後の福島を担っていくような若い世代に、福島がどのように復興して行ったかをきちんと学んでいただく。人材育成も重要なミッションだと考えております」などと応じた。国や福島県の求めに忠実に働く、という決意表明のようでもあった。
 取材陣は9分ほどで応接室からの退室を求められた。囲み取材も「次の予定がある」との理由で質問は3人で打ち切られた。



(了)
スポンサーサイト



プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)
https://www.facebook.com/taminokoe/


福島取材への御支援をお願い致します。

・auじぶん銀行 あいいろ支店 普通2460943 鈴木博喜
 (銀行コード0039 支店番号106)

・ゆうちょ銀行 普通 店番098 口座番号0537346

最新記事

最新コメント

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ニュース
33位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
時事
19位
アクセスランキングを見る>>

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ニュース
33位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
時事
19位
アクセスランキングを見る>>