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【原発避難者から住まいを奪うな】「懲罰的家賃2倍請求も〝追い出し訴訟〟もやめない」 具体的解決策示さず、頑なに方針変えない福島県 話し合いは平行線のまま

原発事故に伴う避難者などでつくる「原発事故被害者団体連絡会」(ひだんれん)や「『避難の権利』を求める全国避難者の会」が20日午後、福島県生活拠点課の職員らと話し合いの場を持った。両団体とも、国家公務員宿舎に入居する〝自主避難者〟への家賃2倍請求や〝追い出し訴訟〟をやめるよう求めたが、福島県側は改めて拒否。コロナ禍であっても追い出し方針には変わりないとの姿勢を示した。話し合いは何年も続けられているが平行線のまま。原発避難者打ち切りの責任者である内堀雅雄知事は一度も顔を出さず、避難者の切り捨てが粛々と進められている。
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【「個別事情、集計していない」】
 両団体は3月27日、内堀雅雄知事宛てに緊急要請書を提出。次の4点を求めていた。
 ①国家公務員宿舎入居者に対する「2倍家賃請求」を止めること
 ②国家公務員宿舎入居者に対する立ち退き提訴を止めること
 ③帰還困難区域からの避難者の住宅提供打ち切り通告を撤回し、すべての避難当事者の意向と生活実態に添った住宅確保を保障すること
 ④新型コロナウイルスによる経済状況が改善するまで避難者への立ち退き要求や未退去者への損害金請求を行わないよう、民間賃貸住宅の家主や避難先自治体に対し要請すること

 これに対してどのような検討・対応がなされたかを団体側は質したが、福島県側は今回も〝ゼロ回答〟。
 福島県生活拠点課の担当者は「今までと回答は同じ」、「国家公務員宿舎から退去しない避難者に対して2倍の家賃請求を続けるという大方針は変わらない」と繰り返すばかり。コロナ禍で振り込むのが難しい世帯には「銀行窓口が落ち着くなど納入期限が過ぎた後の納入も可能という通知を出している」としたが、コロナ禍を理由とした2倍家賃請求の留保に関して財務省との協議はしていないという。
 福島県から両団体に事前に寄せられた回答によると、懲罰的家賃2倍請求は2019年4月分の家賃から始まったが、その時点での対象世帯は63世帯。今年3月分の納付書を5月29日付で郵送しているが、それは34世帯だった。避難者への懲罰が始まってから1年が経つが半減していない。そこにコロナ禍が追い打ちをかけている。
 「われわれの方では、新型コロナウイルスの感染拡大で収入にどれくらい影響が出ているのか、電話連絡等でつかめるところはそういう形で把握しておりますし、それぞれの個別の事情というのは伺っているているつもり」と生活拠点課。
 これに対し、村田弘さん(福島原発かながわ訴訟原告団長、南相馬市小高区から神奈川県横浜市に避難継続中)は「具体的に何人の避難者に電話をして個別事情を把握しているのか」と質問した。しかし、福島県側は「集計をしていないので具体的に答える事が出来ない」、「電話の内容は世帯ごとに記録しているが、集計していない」と突っぱねた。ある職員はこうも発言した。
 「数を出してどうするんですか?」

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話し合いの冒頭、家賃2倍請求をやめるよう求める署名が提出された。署名提出は4回目で、計2万9362筆に上る=福島市の中町会館

【「転居費用が払えない」】
 「反貧困ネットワーク」の事務局長として、コロナ禍で苦しむ人々の救済に奔走している瀬戸大作さん(避難の協同センター事務局長)は、何度も何度も「解決策を具体的に提示しないと駄目」と福島県職員に求めた。
 「都内には今、4000人の〝ネットカフェ難民〟がいます。アパートを借りるお金が無くて、日雇い労働で食いつないでいる人たちに、居住支援など具体的な支援を続けています。今日も福島に来る前に対応して来たが、生活保護を受けている人がアパートに入居しようとすると、初期費用だけで25万円かかるんです。貯金も無く、手取り収入が10万円も無い人がどうやって初期費用を工面するのか。避難者も同じです。退去しないとは言っていません。退去するために必要なお金が無いんです。皆さんが出て行けと言うのであれば、具体的に転居費用の支援だとか、民間の空き家を福島県が借り上げるとか、具体的な方策を示さないと終わらないですよ。このまま退去するまで家賃2倍請求を続けるんですか?どうしたら退去出来るようになるのか、方法を具体的に教えてください」
 これに対して、生活拠点課の担当者は「ちょっと待ってください。そこまでの議論が進んでいる方がいるのかどうかも含めて…。そこまでいけば、具体的に言える事があろうかと思うが。本当にそこまで議論が進んでいる方がいるんですか?」と反論したが、瀬戸さんの言う具体的な方策は示されなかった。
 村田さんは「(国家公務員宿舎を管理する)財務省と話し合ってください」と求めたが、福島県側は「約束は出来ません。そういうお話があったという事だけは受け止めたい。そういう御意見があった事を植えの者にも報告します」と答えるばかりだった。
 原発事故後、国家公務員宿舎に入居した〝自主避難者〟を巡っては、2017年3月末の住宅無償提供打ち切りと同時に無償提供が終了。激変緩和措置として、新たな住まいを確保するための2年間の猶予期間が設けられた。その際、福島県と「国家公務員宿舎セーフティネット使用貸付契約」(有償で2年間の入居を認める契約)を交わした避難者のうち、2019年4月以降も入居を続けている世帯に対して「損害金」として2倍の家賃請求が続いている。

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福島県職員に厳しい視線を送る瀬戸大作さん。「解決策を具体的に提示して欲しい」と繰り返し訴えた

【「ぜひ内堀知事も同席を」】
 一方、福島県と「国家公務員宿舎セーフティネット使用貸付契約」を交わさず入居を続けている4世帯に対して、福島県は3月25日、退去と家賃支払いを求める訴状を福島地裁に提出。判決をもって避難者を追い出そうとしている。
 これに対し、避難者団体側から「なぜ避難者が住んでいる東京地裁ではなく福島地裁に提訴したのか」との質問が出たが、福島県側は「訴訟費用は県の税金。被告の方々も県民だが、福島県内に居る方の考えも当然、意識しないといけない」と答えた。明言はしなかったが、「なぜ訴える側が交通費などをかけてまで東京地裁に出向かなければいけないのか」との想いがあるようだ。
 〝追い出し訴訟〟は、被告4世帯が東京地裁での審理を求めて「移送」の申し立てをしたが福島地裁が却下。避難者側が即時抗告をした。5月に第1階口頭弁論期日が決まっていたが、コロナ禍で延期。いまのところ弁論期日は決まっていない。
 福島県側は「相手方から経済的理由等により他裁判所への移送申立がなされていますが、移送については、今後裁判所が判断するものです。なお、第1回口頭弁論の指定期日については、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、裁判所の判断により、4世帯いずれも取り消しされています」との回答を寄せたが、提訴の取り下げや被告4世帯との提訴後の面談や状況聴き取りなどについては全く答えなかった。
 福島県は、大熊町と双葉町を除く帰還困難区域からの避難者に関しても、今年3月末で住宅提供を打ち切った。県によると今年4月1日現在、36世帯が新たな住まいを確保出来ていないという。これらの人々への対応についても、県は「98・4%が新たな住まいを確保出来ている。見通しの立っていない世帯に関しては引き続き、関係自治体等と連携を図りながら、戸別訪問などを通じて、一日も早く安定した住まいが確保できるよう支援します」と答えるにとどまった。
 最後に改めて「もう一度施策を見直して欲しい」と求めた村田さん。「毎度お願いしているが、ぜひ内堀知事にも同席していただいて、お考えを伺いたい」と訴えたが、県は事前に寄せた回答で改めて拒否した。 
 なお、避難者団体側から「避難指示区域からの避難者に対する医療費免除が今年度末で打ち切られるという情報がある。県は把握しているか」との質問が出たが、福島県側は「聞いていない」と答えた。復興庁福島復興局の担当者は取材に対し「そのような情報は把握していない。仮に減免措置を廃止する場合にはかなり早い段階で事前にお知らせをするはずで、いきなり打ち切るという事は考えにくい。2021年度以降、段階的に減免措置をなくす方向にあり、受益者負担の考えからも最終的には病院での窓口負担がゼロではなくなるのは事実だが、来年度からいきなりというのは無いのではないか」と話した。



(了)
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鈴木博喜

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