【いわき市議選2020】放射能汚染測り続ける鈴木さおりさんが初挑戦 「原発事故、大規模災害から命を守りたい」 昨秋の台風水害でも奔走 13日投開票へラストスパート
- 2020/09/10
- 06:32
任期満了に伴ういわき市議会議員選挙が6日、告示。原発事故や大規模災害などから「命を守る街づくり」を進めようと、新人の鈴木さおりさん(51)=いわき市平下平窪=が立候補した。「原発問題」はなかなか得票に結びつかないのが現実だが、逃げずに公約に掲げ、街頭演説でも「原発事故はまだ収束していない」と訴える。昨秋の「10・12水害」でも救援物資の配布などに奔走した鈴木さんは、「誰一人命を落とす事の無い、いわき」を目指す。前回2016年の投票率は46・66%だった。投開票日は13日。41人が37の議席を争っている。

【「事故収束していない」】
「命を守る事、命を育てる事。この2つの大きな柱を考えています。まず急いで取り組まなければいけないのが、何と言っても災害対策です。災害に強い町づくり。昨秋の台風被害は完全に復旧したわけではありません。今年も台風が心配です。そして、まだまだ収束していない原発事故後の放射能問題。医療の充実や子ども・高齢者見守り隊の活性化。それらの事を全部含めて『命を守る』ととらえております。ぜひスタートラインに立たせてください」
6日朝、いわき市平下平窪地区の鈴木さんは出陣式で語った。心配された雨は降らず、強い陽射しの下での遊説開始。選挙カーはまず、地元のスーパーマーケットに向かった。ここでも「命」という言葉を何度も口にした。
「9年前の東日本大震災と原発事故。昨年秋の台風19号。そして、新型コロナウイルスの感染拡大。日本各地で災害が続いております。いわき市でも、昨秋は甚大な被害が出ました。これからもっと大きな災害が増えるとも言われています。どんな災害が起きても誰一人、命を落とす事無く、全員が助かるような体制をとらなければいけません。『想定外』という言葉は、これからは通用しないと思います」
「そして、原発事故後の放射能問題。まだまだ収束しておりません。あちらこちらに目に見えない放射性物質が残っております。トリチウムが含まれている処理水の問題もあります。海に流すのには反対です」
6月のインタビューでは「原発事故による放射能汚染や被曝の問題を前面に出すと反感を買ってしまいます。考える事に疲れちゃったという側面もあるでしょうね。かといって、その問題は絶対に外したくありません」と語っていたが、街頭演説でも原発事故問題を口にした。

出陣式で「がんばろう」と拳を突き上げた鈴木さん。「命を守り、育てる街づくり」を公約に掲げて支持を訴えている=福島県いわき市平下平窪
【「原発問題」封印せず】
「原発事故から10年目を迎え、行政に被曝問題を訴える窓口が限られてしまっています。ましてや、母親の目線で考えてくれるような場はありません。フタが閉じられてしまいそうなんです。鈴木さおりさんにぜひ議会に入ってもらい、連係プレーで行政を動かしたいですね。放射能の影響を心配している母親がまだいるんだという事を消したくないのです」
「いわきの初期被曝を追及するママの会」代表の千葉由美さんも、鈴木さんを応援している1人。鈴木さんは「ママの会」から派生した「TEAM ママベク子どもの環境守り隊」のメンバーとして活動。学習塾を経営する傍ら、学校や幼稚園などの空間線量や土壌汚染密度を測り続けている。学校などに設置されたモニタリングポスト(リアルタイム線量測定システム)の撤去計画が浮上した2018年4月には、千葉さんたちと一緒に清水敏男市長に要請書を提出した。それだけに議席獲得への期待は大きい。
一方、福島県内の選挙では「原発事故問題は票にならない」、「あまり原発事故問題を口にしない方が良い」という声が常に大きい。立候補を決めた途端、周囲からの〝アドバイス〟で「原発事故問題」を一切口にしなくなった議員もいるほどだ。「党派を越えて応援してもらっているだけに口にしにくい」と打ち明ける議員もいる。ある県議は「福島県の復興が原発に賛成する事を前提に進められてきたから。だからあまり騒がない。その延長線上にあるのが汚染土の再利用、汚染水の海洋放出。それに、〝原発安全神話〟に基づいて、長年にわたって『原発問題は票にならないぞ』というイメージが定着した結果だろう」と話す。
鈴木さんの耳にも厳しい声は届いている。選挙戦で原発事故問題に触れないという選択肢もあったが、逃げまいと決めた。

モニタリングポスト(リアルタイム線量測定システム)の撤去計画に反対。他の母親たちと一緒に清水敏男市長に要請書を提出した鈴木さおりさん(中央)=2018年4月23日撮影
【男性ばかりの議会】
新型コロナウイルスの感染拡大が影響し、茶話会やミニ集会などを積極的に開く事が難しい。有権者と握手をして顔と名前を憶えてもらう事も出来ない。知名度の低い新人候補にとっては厳しいが、女性議員が増えて欲しいという想いもあり、何とか滑り込みたいと辻立ちを続けて来た。「男性ばかりでも女性ばかりでも駄目なんです。バランスが取れて意見を出し合うのが一番良い」。
福島県男女共生課がまとめた2018年度版「市町村における男女共同参画データ集」によると、福島県内市町村議会における女性議員の割合は、わずか7・8%(2018年4月1日現在)。いわき市議会に占める女性議員の割合は議員総数が20人以上の市町村議会の中でトップだが、それでも16・2%にとどまっている(以下、喜多方市議会11・5%、郡山市議会10・5%、会津若松市議会10・3%、相馬市議会10・0%、南相馬市議会9・5%の順)。
ちなみに、女性議員が全くいない「女性ゼロ市町村議会」は福島県内に20もある。鈴木さんの目指す「バランスが取れて意見を出し合う議会」になっているとはとても言えない。
初めて尽くしの選挙は後半戦。命を守る市政へ、バランスの取れた議会へ。原発事故から10年目の挑戦が続いている。
(了)

【「事故収束していない」】
「命を守る事、命を育てる事。この2つの大きな柱を考えています。まず急いで取り組まなければいけないのが、何と言っても災害対策です。災害に強い町づくり。昨秋の台風被害は完全に復旧したわけではありません。今年も台風が心配です。そして、まだまだ収束していない原発事故後の放射能問題。医療の充実や子ども・高齢者見守り隊の活性化。それらの事を全部含めて『命を守る』ととらえております。ぜひスタートラインに立たせてください」
6日朝、いわき市平下平窪地区の鈴木さんは出陣式で語った。心配された雨は降らず、強い陽射しの下での遊説開始。選挙カーはまず、地元のスーパーマーケットに向かった。ここでも「命」という言葉を何度も口にした。
「9年前の東日本大震災と原発事故。昨年秋の台風19号。そして、新型コロナウイルスの感染拡大。日本各地で災害が続いております。いわき市でも、昨秋は甚大な被害が出ました。これからもっと大きな災害が増えるとも言われています。どんな災害が起きても誰一人、命を落とす事無く、全員が助かるような体制をとらなければいけません。『想定外』という言葉は、これからは通用しないと思います」
「そして、原発事故後の放射能問題。まだまだ収束しておりません。あちらこちらに目に見えない放射性物質が残っております。トリチウムが含まれている処理水の問題もあります。海に流すのには反対です」
6月のインタビューでは「原発事故による放射能汚染や被曝の問題を前面に出すと反感を買ってしまいます。考える事に疲れちゃったという側面もあるでしょうね。かといって、その問題は絶対に外したくありません」と語っていたが、街頭演説でも原発事故問題を口にした。

出陣式で「がんばろう」と拳を突き上げた鈴木さん。「命を守り、育てる街づくり」を公約に掲げて支持を訴えている=福島県いわき市平下平窪
【「原発問題」封印せず】
「原発事故から10年目を迎え、行政に被曝問題を訴える窓口が限られてしまっています。ましてや、母親の目線で考えてくれるような場はありません。フタが閉じられてしまいそうなんです。鈴木さおりさんにぜひ議会に入ってもらい、連係プレーで行政を動かしたいですね。放射能の影響を心配している母親がまだいるんだという事を消したくないのです」
「いわきの初期被曝を追及するママの会」代表の千葉由美さんも、鈴木さんを応援している1人。鈴木さんは「ママの会」から派生した「TEAM ママベク子どもの環境守り隊」のメンバーとして活動。学習塾を経営する傍ら、学校や幼稚園などの空間線量や土壌汚染密度を測り続けている。学校などに設置されたモニタリングポスト(リアルタイム線量測定システム)の撤去計画が浮上した2018年4月には、千葉さんたちと一緒に清水敏男市長に要請書を提出した。それだけに議席獲得への期待は大きい。
一方、福島県内の選挙では「原発事故問題は票にならない」、「あまり原発事故問題を口にしない方が良い」という声が常に大きい。立候補を決めた途端、周囲からの〝アドバイス〟で「原発事故問題」を一切口にしなくなった議員もいるほどだ。「党派を越えて応援してもらっているだけに口にしにくい」と打ち明ける議員もいる。ある県議は「福島県の復興が原発に賛成する事を前提に進められてきたから。だからあまり騒がない。その延長線上にあるのが汚染土の再利用、汚染水の海洋放出。それに、〝原発安全神話〟に基づいて、長年にわたって『原発問題は票にならないぞ』というイメージが定着した結果だろう」と話す。
鈴木さんの耳にも厳しい声は届いている。選挙戦で原発事故問題に触れないという選択肢もあったが、逃げまいと決めた。

モニタリングポスト(リアルタイム線量測定システム)の撤去計画に反対。他の母親たちと一緒に清水敏男市長に要請書を提出した鈴木さおりさん(中央)=2018年4月23日撮影
【男性ばかりの議会】
新型コロナウイルスの感染拡大が影響し、茶話会やミニ集会などを積極的に開く事が難しい。有権者と握手をして顔と名前を憶えてもらう事も出来ない。知名度の低い新人候補にとっては厳しいが、女性議員が増えて欲しいという想いもあり、何とか滑り込みたいと辻立ちを続けて来た。「男性ばかりでも女性ばかりでも駄目なんです。バランスが取れて意見を出し合うのが一番良い」。
福島県男女共生課がまとめた2018年度版「市町村における男女共同参画データ集」によると、福島県内市町村議会における女性議員の割合は、わずか7・8%(2018年4月1日現在)。いわき市議会に占める女性議員の割合は議員総数が20人以上の市町村議会の中でトップだが、それでも16・2%にとどまっている(以下、喜多方市議会11・5%、郡山市議会10・5%、会津若松市議会10・3%、相馬市議会10・0%、南相馬市議会9・5%の順)。
ちなみに、女性議員が全くいない「女性ゼロ市町村議会」は福島県内に20もある。鈴木さんの目指す「バランスが取れて意見を出し合う議会」になっているとはとても言えない。
初めて尽くしの選挙は後半戦。命を守る市政へ、バランスの取れた議会へ。原発事故から10年目の挑戦が続いている。
(了)
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