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【原発事故と復興大臣】平沢新大臣が就任会見で語らなかった「汚染」「被曝」 強調したのは「風評払拭」と「二本松市長」で、福島からは落胆の声

菅義偉内閣の発足に伴い、復興大臣が田中和徳氏から平沢勝栄氏に交代した。しかし、17日未明の就任会見では「風評払拭」を繰り返すばかりで、放射能汚染、避難者などへの言及は一切無し。福島の原発事故被害者から怒りや落胆の声があがった。これまでもロクな人材が登用されて来なかったが、被害者救済に後ろ向きだった復興庁はますます被害者切り捨てを進めるのか。深夜の会見で平沢大臣は「(ゆかりのある)二本松市長が就任を喜んでいる」と胸を張ったが、まずやるべきは原発事故被災地を歩き、当事者の声に耳を傾ける事ではないのか。
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【「被害者の切り捨てだ」】
 「本当に今更ではありますが、現地に何度も足を運んでおられながらも被曝問題には触れることもなく、『風評被害は根拠のない攻撃』、『けしからんことだ』というような大臣の発言には、原発事故の反省は微塵も感じられません。加害者擁護、被害者の切り捨てだと感じました。私たちのように未来を案ずる者たちの声もまた、『けしからん奴らの声』とますます排除されていくのだと思います」
 深夜2時にまで及んだ平沢復興大臣の就任会見。「いわきの初期被曝を追及するママの会」代表の千葉由美さんは、会見での平沢大臣の発言を動画で確認すると、落胆と懸念をこめた感想を寄せた。
 実際、25分間の会見では「原発事故」や「放射能汚染」、「被曝リスク」に関する言及は皆無。自身が幼い頃に福島県二本松市で過ごした事や「全く根拠の無い風評対策の必要性」、「希望の持てる街づくり」に終始した。原発事故で放射性物質がまき散らされた事による「実害」には一切触れず、「風評被害」について次のように語った。
 「今年の1月には河村建夫代議士と2人で韓国に行きまして、韓国では文在寅(ムン・ジェイン)大統領にはお会いしてませんけど、ナンバー2以下の方にはほとんどお会いしまして。いろんな話をした中で日本の産品に対して韓国が『安全上問題である』という形で排除しているところがありますけれども、これはおかしいんじゃないかという事も言いました」
 「風評被害対策については当然、各自治体に任せるのではなくて、国の、例えば外務省とか農水省とかそういったところがしっかり取り組まなければいけないなと。私が韓国に行ったときには、外務省は何やってるんだとつくづく思いました」
 「風評被害っていうんじゃなくて、要するに為にする、全く根拠の無い、いわばいやがらせ攻撃。今問題になってます。ネットでいろいろな嫌がらせ攻撃、妨害書かれると。そういった時に、じゃどう対応したらいいのかというケースがありますけど、そういった(自民党広報本部長の)経験や取り組みを活かして、今なおですね、『福島』というブランドだけでマイナスのイメージを貼りつけられてる。そういった被害に対してはどうしたら良いかという事にしっかりと取り組んでいく必要があるんじゃないか」

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(上)政府の避難指示が出されなかった区域からのいわゆる〝自主避難者〟は住まいの無償提供が打ち切られ、ついには国家公務員宿舎から退去するよう福島県から提訴される異常事態になっている
(下)放射能汚染は解消せず、原発敷地内に増え続ける汚染水の処分問題も解決していない。今年3月には、Jヴィレッジ周辺で「福島はオリンピックどころじゃない」のデモ行進が行われた

【〝残念〟すぎた歴代大臣】
 原発事故による避難者への言葉も無し。全国に離散した原発避難者をさらに苦しめているのが新型コロナウイルスの感染拡大だが、こちらについても、次のように一般論で語るにとどまった。
 「もちろん被災者の方も大事ですけれども、全国民がいま(新型コロナウイルスの感染拡大で)非常に苦しんでる。そういった事も加味しながら、しっかりと、被災者の方に何が出来るか。要するにみんな苦しんでいるわけですから、必死に闘っているわけですから、そういった中で何が出来るか考えていきたい」
 しかし、一方で「今まではですね、元の生活に戻してやるというのが一つの大きなあれで、避難された方々を帰還できるような状況に持っていこうと。これからは元の状態に戻すのは当然の事ですけれども、その先を行って、一言で言えば全くその地に関係ない方がぜひあの地に行ってみたい、住んでみたいと、そう思っていただけるような街づくりが求められるんじゃないかな」とも。
 これには、「避難の協同センター」代表世話人の松本徳子さん(福島県郡山市から神奈川県に避難継続中)は「汚染水の問題やデブリの取り出しなど原発の問題が何ひとつとして解決していません。果たして本当に『福島にどうぞ住んで下さい』と言うのでしょうか」と首をかしげた。
 松本さんには腹立たしい思い出がある。避難者支援に関して当時の吉野正芳復興大臣に〝直談判〟しに行った時の事だ。
 「大臣室に入った私たちに『大臣の椅子に座ってみろ』、『すごいだろう』と言うのです。『ここの窓からの眺めは素晴らしい』とも言っていました。面会時間はわずか30分間なのに、15分間も自慢話に使われてしまった。私たちの切羽詰まった想いを聴く耳は持っていなかったのでしょうね」
 2012年2月に復興庁が新設されて以降、復興大臣は平沢氏で9人目だが、ロクな人材が任命されなかった。
 根本匠氏は被曝リスクを全否定。今村雅弘氏は〝自主避難者〟に関し「自己責任」、「裁判でも何でもやれば良い」と言い放った。吉野正芳氏は「無料の住宅支援は打ち切ったけど、復興庁はきちんとお世話をしている」、「全国26カ所の相談拠点で個別事情に寄り添って対応している」と語ったが、実際には復興庁は福島県任せで主体性を発揮していない。前任の田中和徳氏に至っては自分の言葉で語る事無く、就任直後から事務方の用意したペーパーの棒読みに終始した。だから、平沢大臣に期待を寄せる原発事故被害者などいないと言って良い。

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(上)復興大臣として、ある意味最も〝爪痕〟を残したのは今村雅弘氏。数々の暴言に原発避難者たちの怒りが爆発。辞任要求運動に発展した=2017年4月、復興庁前で撮影
(下)前任の田中和徳氏は就任直後からずっと、事務方の用意したペーパーの棒読みに終始していた。新任の平沢大臣は自分の言葉で話すものの具体的な中身は無し。原発事故への言及も無い

【】
 会見で平沢大臣は、自身が小学生から高校生まで福島県二本松市で過ごした事を挙げ、「福島には良く行っておりまして、いろいろと震災の被災の状況等々についてお話もずっと伺ってきましたし、そして何とかしなきゃならないという想いも強くしていたところでございます」とアピールしたが、汚染の現場を歩き、住民の切なる想いに耳を傾けて来たわけでは無い。次の発言がそれを如実に表している。
 「つい2、3日前も二本松の三保(恵一)市長さんと話しましたけど、二本松の市長さんも、まだまだ震災の災禍というか被害に二本松はさいなまされていると。これを何とかして欲しいと。で、私が復興大臣になった事を最も喜んでくれた1人が二本松の市長さんでございまして。いずれにしましても、そうした方々の期待に応えられるようにしっかり取り組んでいきたいと思います」
 平沢大臣が所属する政策グループ「志帥会」は昨年9月、福島県郡山市のホテルで500人規模の研修会を開いている。それにあわせて浜通りにも足を伸ばしているが「『イノベーションコースト』と言うんですか?研究施設のあるところ、スポーツ施設のあるところ。特にロボットなんかのね、研究やってるとこ。それから、何て言うんですかね、ドローンですか?ドローンの研究をやってる施設だとかスポーツ施設。そういったところを見て来た」。ちなみに「スポーツ施設」とは「Jヴィレッジ」の事だが、果たしてどれだけ頭に入っているのか疑問だ。研修会の講師の1人は、福島県相馬市の立谷秀清市長。首長とばかり会っていて何が理解出来るのだろうか。南相馬市在住の女性も同様の想いだ。
 「『被災者に寄り添った現場主義』と会見で言っていましたが、これをどの様に政策に反映させてくださるのかは、未知数ですね。
社会の〝底辺〟で生活している者の事も考えてくれているのでしょうか?首長と話をしても何も変えられない様に思います」
 福島県中通りから県外に〝自主避難〟(区域外避難)した女性は、平沢大臣の発言について「あまりに想定通りだったので驚きもしなかった」とだけ話した。
 原発事故以降、被害者たちはずっと冷遇され続けて来た。今さら国に期待などしていないが、きちんと事故の責任を果たさなければならない。平沢大臣は〝復興五輪〟にも言及しているが、原発事故10年を「節目」などとして無かった事にしてはならない。平沢大臣が取り組むべきは風評払拭や街づくりだけでは無い。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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