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【原発避難者から住まいを奪うな】国家公務員宿舎「東雲住宅」からの4世帯〝追い出し訴訟〟が福島地裁で始まる 避難者側「国の使用許可自体が有効性欠く」

福島県が今年3月、原発事故で政府の避難指示が出されなかった区域から〝自主避難〟した4世帯を相手取り、入居を続ける国家公務員宿舎「東雲住宅」(東京都江東区)の明け渡しと未納家賃の支払いを求めて提訴した問題で、1世帯に対する第1回口頭弁論が16日午後、福島地裁205号法廷(松川まゆみ裁判官)で行われた。コロナ禍や東京地裁への移送申立で弁論期日が延期されていた。4世帯はバラバラに審理され、うち2世帯については代理人弁護士が移送申立をした。原発事故の被災県が被災県民を提訴するという異例づくめの〝追い出し訴訟〟。「伝承館」では語り継がれない原発事故被害がここにもある。
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【「無権限占有では無い」】
 提訴日は今年3月25日。訴状で福島県は①国家公務員宿舎(建物と駐車場)の明け渡し②2019年4月1日から退去時までの家賃支払い─を求めている。提訴については昨年の9月県議会で議案が賛成多数で可決された。その時点では5世帯が対象だったが、今年に入り1世帯が退去したため4世帯が被告となっている。集団訴訟では無いため1世帯ずつ審理される。
 この日の弁論は原告(福島県)側が提出した証拠の確認など書面の確認のみ。6分ほどで閉廷した。
 今月9日付で提出した答弁書で、「区域外避難者である被告については2017年3月31日をもって応急仮設住宅としての本件建物の供与が終了になった事」は認めつつ、「本件建物の占有権限が無くなった事」や「現在も無権限で本件建物を占有している事」については否認。国家公務員宿舎の所有者である国(財務省)が福島県に対して行った使用許可の有効性についても「否認ないし争う」として請求の棄却を求めている。
 「国が被告に対し、所有権に基づき建物の明渡請求権を有している事」や「福島県が国の所有権に基づく明渡請求権を有している事(代位行使)」、「国から使用許可を受けている福島県は、被告が無権限で本件建物を占有している事により使用収益権が侵害された事」についても「否認ないし争う」としている。
 今後の進行について、松川裁判官が「次回を弁論準備手続き(非公開)に移行する事についてのご意見は?」と質したのに対し、福島県の代理人弁護士は「然るべく」と回答。避難者の主任代理人である平松真二郎弁護士は「求釈明に対する福島県の回答によって対応を考えたい」などと異議を唱えた。山川幸生弁護士も「小法廷ではメディアや傍聴人が入れないほど社会的関心の高い事案。全ての争点について容易に傍聴出来ない状態で裁判手続きを続行するのは適当では無い」と反対した。松川裁判官は「弁論準備手続きと弁論に分ける事は出来ない」として次回期日を12月4日13時半に設定した。
 当初、弁論は204号法廷で開かれる予定だった。しかし、感染防止の観点から8人しか傍聴席に座れず取材者も含めて傍聴出来ない人が続出したため、205号法廷に変更して行われた。被告側は単独審ではなく合議審で審理する事も求めている。

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国家公務員宿舎「東雲住宅」。福島県は「区域外避難者への無償提供も有償提供も終了した」として、入居を続けている4世帯に対し、退去と家賃支払いを求めて福島地裁に提訴。原発避難した県民が被告になるという異常事態になっている=東京都江東区

【「国が避難者と話し合うべき」】
 被告・避難者側が求釈明で原告・福島県に質しているのは次の3点。
 ①福島県が財務省から2017年3月31日付、2018年3月29日付、2019年3月28日付で使用許可を受けるに際して国に提出した使用許可申請書の「使用しようとする理由」蘭の記載内容。
 ②今年4月1日以降、福島県は財務省に使用許可を申請したか。申請した場合、使用許可申請書の「使用しようとする理由」蘭の記載内容と国の使用許可決定の内容。申請していない場合は、申請しなかった理由は何か。
 ③国が妨害排除権を自ら行使していないにもかかわらず、福島県に対して明渡請求権の代位行使を求めた事実があるのか。
 閉廷後、囲み取材に応じた平松弁護士は「明け渡し請求の根拠となっている国の使用許可自体が有効性を欠くというのがわれわれの主張。住宅セーフティネット契約を交わすという理由で使用許可を国に申請しているはずだが、被告と福島県との間に契約は結ばれなかった。使用許可を申請するにあたり、福島県はどういう使用目的を示したのか。国が明け渡しを求めているのなら話は別だが、明け渡しを求める権限は福島県には無い。家賃を肩代わりして国に支払う必要も無い」と述べた。
 山川弁護士も「国がきちんと出てくるべき話。原発避難者の住宅問題というのは、訴訟で解決するのでは無く被害救済の観点からきちんと話し合いをして問題解決する、政策的に問題解決するのが本筋だ。国も原発事故を起こした当事者なのだから。そのような問題解決の努力を完全に放棄している」と語り、次のように指摘した。
 「国は自分で裁判をやりたくなかったというだけの話だろう。だから代わりに福島県にやらせた。原発事故の加害者である国が、被害者の代表である福島県に加害者のお先棒担ぎをさせようとしている。とんでもない話。国は正々堂々と出てきて、原発事故被害者である避難者と向き合うべきだ。それをしたくないから福島県に使用許可を与えているのではないか。そうだとすれば、そんな目的で与えられた使用許可が果たして法的に有効なものなのか。極めて問題だと言わざるを得ない」

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閉廷後、福島地裁の敷地外で囲み取材を受けた平松弁護士(右端)と山川弁護士。「国が明け渡しを求めているのなら話は別だが、福島県にはその権限は無い」、「国は正々堂々と出てきて、原発事故被害者である避難者と向き合うべきだ」などと語った

【東京地裁への移送叶わず】
 福島県議会での県当局の説明を総合すると、国家公務員宿舎「東雲住宅」は東京都が所有者である国から使用許可を受け、原発避難者である被告に対し、駐車場も含めて応急仮設住宅として無償提供された。
 避難指示区域外からの避難者に対する応急仮設住宅としての無償提供が2017年3月31日に終了。本来であれば避難者は住み続ける権利を失ったが、その時点で新しい住まいが確保出来ていない(新しい住まいの見通しが立っていない)避難者に関しては福島県が国から使用許可を受け、新たな住まいが見つかるまで最長で2年間、有償で引き続き住む事を認めた。その際、避難者には賃貸借契約(いわゆる「セーフティネット使用契約」)を県と締結するよう求めた。
 今回被告となっている4世帯は、当時の意向調査で「セーフティネット使用契約」の申し込みをしたもにもかかわらず、契約書への調印を拒んだ。未契約入居となったため、契約の締結などを求めて東京簡易裁判所に民事調停を申し立てたが、調停は不成立に終わった。今後も話し合いによる解決が見込めないため、提訴の議案を昨年9月県議会に提出。賛成多数で可決された。可決から5カ月後の今年3月、訴状が福島地裁に提出された。
 「2019年3月31日をもって有償で入居する権利も失っているにもかかわらず、避難者は退去せずに国家公務員宿舎の部屋と駐車場を占有し続けている。そのため、国に対して使用許可に基づく使用料を支払っているから、退去して家賃も支払え」というのが福島県の主張だ。
 提訴された4世帯は交通費負担の重さなどを理由に東京地裁への移送を福島地裁に申し立てたが却下。仙台高裁でも認められなかった。今年5月にいったん弁論期日が設定されたが感染拡大防止を理由に延期。4世帯の2世帯は代理人弁護士が改めて移送を申し立てたため、弁論期日が取り消されている。
 山川弁護士は「4世帯のうち3世帯は、私も平松弁護士も弁護団に加わっている『福島原発被害東京訴訟』の原告。ある意味〝裁判つぶし〟なのではないか。そう勘繰られても仕方がない。なぜうちの原告ばかりが明け渡し訴訟で狙い撃ちされるのか非常に不可解だ」とも述べた。



(了)
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鈴木博喜

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