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【115カ月目の汚染水はいま】漁師の怒り「海を汚されたら生業が成り立たぬ」 福島市で若者主催の緊急街宣「強引な進め方には声をあげていく」

福島県内の10代から30代の若者有志が集まる「DAPPE」(Democracy Action to Protect Peace and Equality=平和と平等を守る民主主義アクション)が24日午後、福島市内で緊急街宣を行い、原発汚染水の海洋放出に改めて反対の声をあげた。27日にも政府が最終決定をするとの報道が先行していたが、反対の声が高まったのを受けて延期。当面の最終決定は回避されたが、あくまで「先送り」で政府の基本方針は変わっていない。マイクを握った漁師らは「海を汚されたら生業が成り立たない」「強引な進め方には声をあげる」などと力をこめた。
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【「内堀知事は『NO』を」】
 「福島県の最北端で50年以上、漁師をしています。3人の息子も漁師になりました。この問題をずっと追いかけ、公聴会では意見も述べました。しかし、漁業者の想いが反映されているとは思えません」
 相馬郡新地町の漁師・小野春雄さん(68)は熱く語り始めた。2011年に海を汚され、再び海を汚されようとしている。海に生きる男としては我慢がならなかった。 
 「私は漁師3代目です。息子は4代目。孫は5代目。ずっと漁業を守って来たんですよ。海を汚されたら生業が成り立ちません。今は試験操業ですが、来年4月に本格操業になります。これまでの9年半は何だったのですか?再びマイナスから始めるんですか?われわれは9年半、我慢して我慢して来たんですよ。われわれは何も悪い事をしていないのに、海を汚されたら困るんです」
 小野さんは何度も何度も「おかしい」と口にした。
 「昨年の11月、一通のメールが届きました。分析したいので小野さん、汚染水20リットルを東電からもらってきてくださいという依頼でした。東電本社に連絡をして20リットル欲しいと言いました。『危険ですから駄目です』と言われました。危険なものをなぜ希釈して海に流すのですか?おかしいでしょ?」
 「私たちに何の説明も無くて、急に27日に方針が決まると報道があった。われわれ漁師は何も分からない。組合の執行部も『どこでどうやって決まったのか分からない』と言う。一番実害を被る漁業者にたった1回だけ説明して意見を聴いただけ。そんな話が通りますか?おかしいです」
 当事者不在。決めるのは東京。「原発事故の被害者である漁業者を守らないで、なぜ加害者である東電を守るんですか?なぜ2022年が期限だと決めてしまうんですか?延ばせば良い事でしょう」という怒り、疑問を誰が否定できよう。そして怒りは、内堀雅雄知事にも向けられた。
 「内堀知事が『海洋放出反対』を表明していません。県民を守る立場の知事ですから、『海に流しては駄目だ』とはっきりと言ってもらいたいです。肝心の親分が『NO』を言ってくれなかったら、県民を守らなかったら、誰が県民を守るんですか?」

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(上)相馬郡新地町の漁師・小野春雄さん。「海を汚されたら生業が成り立たない」と語気を強めた
(下)「DAPPE」が配ったビラ。メンバーの久保田さんは「反対の声を無視するのは民主主義を破壊する行為そのものだ」と語った

【「民主主義の破壊だ」】
 緊急街宣を主催した「DAPPE」からは、久保田亮さんがマイクを握った。
 「県内市町村議会の7割が海洋放出に反対、もしくは慎重な議論を求めています。パブリックコメントでも7割が反対。これほどはっきりと民意が示されているにもかかわらず、(最終決定が)延期されたとはいえ、海洋放出するという結論を出した事に、私たちは怒りを持って抗議したいです」
 久保田さんたちはこれまでもデモ行進などで汚染水を海に流すなと訴えてきた。海洋放出に反対するよう、内堀知事にも申し入れた。しかし、それらは全て無視され、報道が先行する形で「27日最終決定」が急浮上した。久保田さんはこれを「民主主義の破壊そのものだ」と力をこめた。
 「多数の市民がいくら反対の声をあげても、地方議会が意見書を届けても、これらの声は無視して自分たちの思い描く結論に沿って物事を進めるという民主主義を破壊する行為そのものだと思います。このような姿勢が変わらない限り、決定を延期したとしてもにタイミングを変えたにすぎませんこれだけ反対の声をあがっているのだから、やるべきなのは強引な決定では無く、議論の場を改めて設け幅広く意見を聴く事、話し合う事ではないでしょうか」
 この9年半。ずっとそうだった。まず結論ありき。理屈は後から。時には札束で住民の頬を叩くようなやり方で、国は〝合意形成〟をしてきた。そして今回も。
 「まずは反対の声を受け止めて、どう処分するべきか真剣に議論するべきです。陸上保管するだけの敷地が確保出来ないとか廃炉作業に支障をきたすとか言っていますが、県民の意見を聴く場、議論する場ををしっかりと設けるべきです。強引な進め方にはこれからも抗議していきます。優先するべきは国民の生活を守る事です。時間はまだまだあります」

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緊急街宣には立憲民主党の金子恵美衆院議員や日本共産党の高橋千鶴子衆院議員も参加した=JR福島駅東口

【「『処理水』は『汚染水』だ」】
 緊急街宣には国会議員も参加。
 立憲民主党の金子恵美衆院議員(伊達市出身、福島1区)は「『27日にも海洋放出を軸として処分方法を決める』という報道には驚くばかりでした。『パブコメの内容はきちんと公表します』と言っていたのに、全く何も知らされていないのです。昨日も、経産省の審議官と話し合いました。『ある程度はまとまっているが、まだパブコメを多くの方々に公表する段階では無い』と言っていたのに、夕方には公表した(首相官邸で開かれた廃炉・汚染水対策チーム会合で約4000件の意見を整理)。そういう流れなんです。」と語った。
 「2022年夏までに原発敷地内での保管がいっぱいになると言われていますが、本当にそうでしょうか。しっかり検討されたでしょうか。原発敷地外の利用について検討されたのでしょうか。福島第二原発の敷地はどのように使われるのでしょうか。国が言っている『処理水』は『汚染水』じゃないですか。海洋放出の決定は阻止しなければいけません」
 東電の小早川智明社長は5月21日に開かれた衆議院「東日本大震災復興特別委員会」に参考人として出席。日本共産党の高橋千鶴子衆院議員(比例東北)の質問に対し「海洋放出の場合に、海水中のトリチウム告示濃度限度である水1リットル当たり6万ベクレルに対して、福島第一における地下水バイパス及びサブドレーンの運用基準である1リットル当たり1500ベクレルを参考に希釈することを検討していることをここの報告書の中に記載させていただいておりますが、あわせて、水蒸気放出の場合においても、大気中のトリチウムの告示濃度限度である空気1リットル当たり5ベクレルに対して、海洋放出の場合と同程度の希釈ということを検討している旨を記載させていただいております」と答えている。一方で「現時点で決まっているものではございません」とも答えた。
 街宣で高橋議員は「原発事故がひとたび起きれば、これだけ長い時間、広大な範囲に被害が及ぶのです。新しい技術が確立するまでしっかりと陸上保管するべき。それが国と東電の責任です」と訴えた。
 漁師の小野さんは「若い人たちのおかげで、1カ月延びるのか1年延びるのかは分からないけれど、27日の発表はなくなりました。皆さんの協力のおかげです。本当にありがとうございました。これからも反対運動、よろしくお願いします」と深々と頭を下げた。単なる「先送り」にさせないために、声をあげ続ける。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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