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【自主避難者から住まいを奪うな】逃げ回る福島県知事。「話し合いの場を」と被害者団体が県庁に訴え

「原発事故避難者から住まいを奪うな」と福島県内外の被害者らが30日、初めて一堂に会し、福島県庁に打ち切り撤回と内堀雅雄知事との話し合いを共同で求めた。福島県は、2017年3月末をもって「自主避難者」への住宅無償提供を打ち切る方針を発表。避難者らの度重なる撤回要求にも応じていない。政府の避難指示を受けていないというだけで冷遇され続ける自主避難者たち。「このまま切り捨てられてはたまるか」と、逃げ回る内堀知事に迫る。県は6月10日までに文書で回答することを約束した。


【「避難生活見てから決めろ」】
 「あと10カ月で1万2500もの家族の住まいが奪われる」
 南相馬市から神奈川県内に避難中の村田弘さん(福島原発かながわ訴訟原告団長)は、デモ行進に先立って開かれた集会で鬼のような形相で語った。原発事故、国や東電の恣意的な線引きが多くの〝自主避難者〟を生んだ。そして2017年3月末をもって、無償で提供している住まいを奪おうとしている。村田さんもこれまで、国や福島県との交渉の場で何度も悔しい思いをしてきた。「このまま切り捨てられてたまるか」という強い意思が表情に表れていた。
 原発賠償京都訴訟原告団共同代表の福島敦子さん(南相馬市から京都府)も「住宅打ち切りは命に関わる死活問題だ」とマイクを握った。「交渉のたびに、福島県の職員は『福島では皆、普通に暮らしている』と口にするが、本当にそうだろうか。誰もが被曝を避けたい、被曝を避ける権利があるという大事な点が彼らには欠落している」。住宅の打ち切りは帰還や被曝の強要につながるという危機感が強い。
 「故郷を追われた被災者がどういう生活をしているのか。内堀雅雄知事に見てもらいたい」。福島市から山形県に避難中の武田徹さん(福島原発被災者フォーラム山形・福島代表)は、当事者不在のまま一方的に打ち切りが決められたことに激しく反発する。「順序が全く逆でしょう。今からでも遅くない。知事には全国を巡っていただきたい」。鴨下祐也さん(ひなん生活を守る会代表、いわき市から東京都)も「内堀知事は土壌汚染も把握せずに打ち切りを決めた。私たちは無い物を恐れて避難しているわけではない。ぜひ知事に出てきてもらって間違った決定を撤回してもらいたい」と語った。
 これまでの抗議行動と違い、今回は複数の被害者団体が自主避難者のために一堂に会した。強制避難者とて、避難指示が解除された瞬間に自主避難者になる。原発事故被害に本来、線引きはないはずだ。中島孝さん(原発被害者訴訟原告団全国連絡会共同代表、「生業を返せ!地域を返せ!」福島原発訴訟原告団長)は「分断を乗り越える大きなチャンス」と話した。「年20mSvという根も葉もない数字を持ち出しての切り捨て宣言は許しがたい。断固として反対する」と力を込めた。

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(上)住宅の無償提供打ち切りまで10カ月。住まいは命に関わる問題だけに、集会でマイクを握った避難者らの表情は一様に厳しかった=福島市市民会館
(下)福島市内をデモ行進する避難者ら


【切り捨てて逃げ回る内堀知事】
 福島市役所にほど近い市民会館から福島県庁までデモ行進をした参加者らは、県職員に対し住宅の無償提供継続や内堀雅雄知事との話し合いを求める文書を提出した。
 「住宅の無償提供打ち切りは経済的困窮を引き起こす」、「帰還を迫るやり方は生きる権利を否定する暴挙だ」。文書には、様々な事情で参加出来ない全国の避難者の名前がずらりと添えられた。避難者の怒りや不安を可視化しようと、多くが名前と避難元、避難先の記載を了承した。その数は、一週間足らずで541人に上った。県職員の前で深々と頭を下げた参加者の背後には、多くの避難者がいるのだ。
 「被害者抜きに決めてもらっては困るんです。責めるとかそういうことではなく、内堀知事ときちんと話し合いの場を持ちたいのです。今日は皆、抑えて話していますが、想いは強いことを分かってください」。武藤類子さん(原発事故被害者団体連絡会共同代表)は県職員に語りかけた。提出した文書では、内堀知事との話し合いの場を6月中旬までに設けるよう求めている。
 回答期限は6月10日。対応した避難地域復興課の総括主幹は「どのような対応が出来るか、早急に文書で回答したい」と答えたが、住宅の無償提供打ち切りの決定者である内堀知事はこれまで、当事者との話し合いには一切、応じていないのが実情。切り捨てておいて逃げ回る知事の姿勢に、参加者からは「私たちの想いをどのように受け取ったか、報道陣も含めた公開の場で、内堀知事の口から直接聴きたい」、「県は国の出先機関では無いですからね。県民を守るのが仕事ですよ」との声があがった。
 総括主幹らは多くを語らず、避難者支援課から住宅問題を引き継いだ生活拠点課の担当者は参加者の言葉をメモしていた。しかし避難者の想いをよそに、公営住宅に入居している避難者に対する個別訪問が既に始まっている。福島県職員と避難先自治体職員が「今後、どのようなお手伝いが出来るか検討するために避難者の事情を伺う」のが趣旨だが、避難者らは「追い出しに向けた準備だ」と反発を強める。実際、東京都の担当者は「福島県の方針が覆らない限り、都営住宅から退去していただく事になる」と話す。

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(上)住宅の無償提供継続と内堀知事との話し合いを県職員に申し入れる避難者たち。「被害者抜きに決めるな」と怒りを口にした=福島県庁
(下)申し入れ文書には、趣旨に賛同する避難者の名前がびっしりと書かれた紙も添えられた。その数は一週間足らずで500人を超えた


【「岩手や宮城と同様に延長を」】
 内堀知事に直接、訴えたい─。その想いは記者クラブで開かれた記者会見でも強調された。
 武田徹さんは言う。「宮城や岩手では、一部の市町村で応急仮設住宅の提供がさらに1年間、延長された。自然災害で住宅提供が延長されてなぜ、原発被害者のみなし仮設住宅提供は打ち切られるのか。5年経ち、子どもたちは避難先での生活にようやく馴染んだんです。その間にはいじめもありました。それなのに、無理矢理福島に戻れと言うのでしょうか」。
 「なぜ避難したのか。原発事故が起きたからに他ならない。便乗して逃げた人などいません。最も苦しんでいる人の意見を聴かずに決めると、安全神話で福島県民を懐柔してきた同じ過ちを繰り返すことになる」。いわき市の佐藤三男さん(原発被害者訴訟原告団全国連絡会事務局長)も、知事との直接対話を求めた。
 武藤類子さんは「住宅が打ち切られると避難者でなくなってしまう。今日の申し入れには避難者の切実な想いが詰まっています」と訴えた。しかし、記者たちの胸にはあまり響かなかったようだ。そもそも、集会にもデモ行進にも申し入れにも、一部のメディアしか足を運んでいない。狭い記者クラブの一角で、参加者らは大粒の汗を拭いながら話したが、記者からはほとんど質問も出なかった。「復興、復興と片方の意見ばかり報じないで欲しい」という言葉で、機嫌を損ねてしまったのかもしれない。
 原発事故が起き、放射性物質が降り注いだ。少しでも遠くへ逃げるのは当然の行動だ。年20mSvを振りかざして戻って来いと言われても、汚染が解消しない状況で帰れるはずもない。しかし福島県は県民の避難の権利を守るよう国と闘うどころか、むしろ被曝隠し、避難者減らしに加担していると言わざるを得ない。その意味では地元メディアも同罪だ。公共事業中心の「復興」が叫ばれる陰で進められる棄民。その先頭に立つ内堀知事はそれでも逃げ続けるのだろうか。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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