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【ふるさとを返せ 津島原発訴訟】提訴から5年余で結審 「欲しいのは金じゃない!原発事故前の地域」 判決は7月「帰還困難区域の原状回復」へ司法の判断は?

原発事故で帰還困難区域に指定された福島県双葉郡浪江町津島地区の住民約640人が国や東電に原状回復と完全賠償を求めている「ふるさとを返せ 津島原発訴訟」の第33回口頭弁論が7日、福島地裁郡山支部303号法廷(佐々木健二裁判長)で終日行われた。原告7人が最終意見陳述。原告代理人弁護士も、原発事故に対する国や東電の責任や住民たちの損害の大きさ、原状回復請求に対する住民たちの想いなどについて最終弁論し、結審した。2015年9月の提訴から5年余。「原発事故前の津島を返して欲しい」という訴えに対する判決は、7月30日15時に言い渡される。
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【「今のままでは廃村棄民だ」】
 意見陳述の一番手は、DVD「ふるさと津島」でナレーターを務めた窪田たい子さん。
 「人間関係も壊され、田んぼは柳の森。放射能で自然豊かなふるさとを汚されてしまいました。ほんの一部の除染が始まりましたが、全てをきれいにしてもらえなければ、人は津島に帰って来ません。お金の問題ではありません。私たちのふるさとを返してください」
 佐々木茂さんは改めて、法廷のど真ん中で「津島に帰ります」と口にした。
 「自宅のある大昼行政区は、大柿ダムの建設に協力した事で住民が三分の一に減りました。今度は、国や東電の不始末で全ての住民がいなくなりました。私は、強い言葉で『ふるさとを返せ』と言いたい。高線量の汚染で大昼行政区は崩壊し、取り返しがつきません。今のままでは廃村棄民です。国も東電も、口先だけで無くふるさと津島の復旧と再興をしっかり考えていただきたい」
 原告団事務局長を務める武藤晴男さんの妻は、過酷な避難生活のストレスでパニック症候群を発症。現在も治療中だ。慣れない土地での生活と親の介護で、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状を調べる「出来事インパクト尺度」による評価は49点にも上ったという。
 「いま住んでいる家は確かに新しく建てた家ですし、近くにはスーパーやコンビニもあります。暮らしやすい所だと思われるかもしれません。でも、妻にとっては、心から安心して暮らせる場所では無いのです。私たちが本当に心から安心出来る場所は、たくさんの仲間とともに学び、家族をつくり、仕事をし、地域活動をし、長年にわたって築いてきた絆の中で生活出来ていた津島なのです」
 原発避難者が直面して来た差別や偏見について述べたのは三瓶春江さん。
 「この10年間、津島の若者たちは生きるために泣く泣く現実的な選択をし、避難先で生活の基盤をつくってきました。それなのに、もし津島から避難してきた事を周囲に知られたら差別を受けるかもしれない。そんな事を考えたら、家族を守るために津島出身である事を隠したくなるのも当然です。差別や偏見のために声をあげたくてもあげられない若者が大勢います。この事をどうか忘れないでください」

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(上)6日、結審を翌日に控えた原告団と弁護団が記者会見を開いた。原告団長の今野秀則さんは「国や東電が私たちの地域を事故前と同じような生活が出来る状態に戻してくれるのであれば、お金なんか要りません」と原状回復への想いを語った(左は武藤晴男さん)=郡山市役所内の記者クラブ
(下)弁論の合い間に、原告団は「公正判決を求める署名」を福島地裁郡山支部に提出。署名数は3万8000を超えた

【「代替不可能な生きる場所」】
 石井ひろみさんは、国や東電の加害責任に触れた上で、嫁ぎ先の津島で得た地域のつながりについて述べた。
 「幼い頃から転居続きだった私が40年かけて手に入れたふるさとは、伝統や自然の豊かさだけではありません。お互いの事情が分かっているので助けを求める前に声をかけてくれ、SOSを出せばすぐに駆けつけてくれる人が身近にいる。かぎもかけずに安心して暮らせる。日常生活そのものでした」
 「私たちの裁判では『生業訴訟』の仙台高裁判決からもう一歩踏み込んで、『ないがしろにして来た汚染地区の原状回復のため、技術開発や研究を加速させよ』と国・東電に言い渡していただきたい」
 今野正悦さんは先祖代々、庭元として三匹獅子舞や田植踊という伝統芸能を守ってきた。伝統と歴史の詰まった自宅の解体を苦悩の末に決断したつらさを訴えた。
 「自宅が特定復興再生拠点区域に含まれているので除染をし、希望があれば自宅も解体すると連絡を受けました。迷いました。思い悩みました。このままなら朽ちていくだけ。特定復興再生拠点区域だけ除染されて戻ったとしても、今までのような生活は出来ないのではないか。除染されたとして本当に安全だと言えるのだろうか。何回も家族に相談しました。でも、自分の意思で解体した方が楽なのではないか、と苦渋の決断をしました。昨年11月30日、解体終了の確認のために立ち会いました。自然と涙があふれました。朽ち果てる家を見続けるのもつらいけど、解体されて何もかも無くなってしまった自宅跡を見るのも苦しい。どちらを選んでも、心が落ち着く事はありません。留まるも地獄、行くも地獄、です」
 陳述を締めくくったのは原告団長の今野秀則さん。「代替不可能」という言葉を使って、改めて原状回復を求めた。
 「被告・東電が主張するような単なる郷愁、ノスタルジーではありません。私たちにとっては代替不可能な地域に根ざす生活そのものであり、それを失う事は人生を奪われるに等しい事なのです。だからこそ、私たちは原状回復を訴えているのです」
 「津島地区のわずか1・6%が特定復興再生拠点区域として整備されても、地域の復興・再生は困難です。山林を含む津島地区全体が除染されて元に戻らない限り、私たちの生活は取り戻せません。私たちのふるさと津島を取り戻す事は、代替不可能な生きる場所を取り戻す事なのです」

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この訴訟の主軸は「原状回復」。2015年9月に提出された訴状にも、「ゼニかねの問題じゃない」などと強い言葉で原状回復への原告たちの想いが綴られている

【家を建てたら避難終了?】
 この日は、被告・東電代理人の棚村友博弁護士が準備書面の補足説明という形で最終弁論。「原告たちの事情はここに異なるにも関わらず、一律1450万円という最大限の賠償をしている」などと改めて主張した。
 東電は「事故後、賠償金を活用して住居を確保するなどして平穏な生活を取り戻した避難者」については「避難生活を終了した」との認識。「避難生活の継続によって平穏な生活利益が侵害される事によって発生する損害については新たに発生していない」
これは「進学や就職、転勤、婚姻など本件事故に起因しない諸事情」も同じで、それらによって新たな住まいを確保した場合には「避難生活は終了」。つまり、ふるさを奪った側が、被害者に対し「こちらが支払った賠償金で新しい住まいを得られたんだからそこで『避難生活』は終わりだ」と言い放っているのだ。棚村弁護士は「帰還困難区域住民への一律1450万円の賠償金など、既払い金を上回る精神的損害は存在しない」として、裁判所に「慎重な判断」を求めた。
 午後にも発言の機会を求めた棚村弁護士は、「被害を軽視しているのでは無い」、「非常に大きい精神的苦痛があるだろう」と繰り返しながらも、やはり「未払いの精神的損害は認められない」と訴えた。原告たちが強く求めている「原状回復」については一切、言及しなかった。
 これに対し、原告代理人の山田勝彦弁護士は次のように反論した。
 「移住等で避難が終了したと言えるのか。原告が原状回復を求めているのは津島に戻る事を予定しているから。決して帰らないと決めたわけでは無い。そもそも、被告は事故から10年が経とうとしているにもかかわらず、除染計画すら示していない。10年間、仮設住宅や借り上げ住宅で生活しろと言うのか」
 「東電の主張は『既に多くの金を支払っているのだから黙っていろ』と言っているのに等しい。札束で頬を叩く事を実践しているとしか思えない。原告が求めているのは『津島を返せ』であって、別にお金が欲しいわけでは無い。原発事故が無ければ賠償も生じなかった」
 判決は7月30日に言い渡される。「帰還困難区域の原状回復」という住民の請求に司法はどのような判断を下すのか。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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