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【119カ月目の福島はいま】「撤去などあり得ない」 大地震で再確認したモニタリングポストの必要性 揺れでよぎる「空間線量上がった?」の不安

13日夜に発生した福島県沖を震源とするマグニチュード7・3の大地震は、福島の人々に改めてモニタリングポスト(MP)の必要性を実感させた。国は3年前、避難指示が出されなかった区域に設置されているNP約2400台の撤去方針を表明したが、住民たちの猛反対を受け白紙撤回した経緯がある。誰もが「原発は大丈夫か」「空間線量は上がっていないか」と不安が頭をよぎった大きな揺れ。学校や公園など身近な場所で放射線量を確認する手段の大切さが改めて浮き彫りになった形だ。
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【「最低限の『知る権利』」】
 「原発が心配で、私も友人たちもそれぞれに眠れない夜を過ごしました」
 いわき市の千葉由美さんは大地震から一夜明けた14日朝、フェイスブックに自身の無事を報告するとともに、そう綴った。
 福島第一原発のライブ映像を観ながら「まだまだこんな状況なのに、〝復興五輪〟で『福島の復興を世界にアピールしなきゃ』と避難指示を解除し、原発の近くに住民を戻してしまった事にも怒りが込み上げた」という。
 そして、改めて強く実感したのが、モニタリングポスト(リアルタイム線量測定システム、以下MP)の必要性だった。
 千葉さんは3年前、国の原子力規制委員会が避難指示が出されなかった区域に設置されたMP約2400台の撤去計画を打ち出した際、中通りや会津の友人たちと「モニタリングポストの継続配置を求める市民の会」を発足。原子力規制庁や福島県内市町村に撤去しないよう求めた。当時、保育士の女性は「大きな地震が起きると、私たち幼稚園の職員も、また『3・11』の時のようになるのではないかとドキドキしてしまいます。MPは、何も起きていない事を確認するためになくてはなりません。どうか撤去はしないでください」と撤去に反対していた。
 原子力規制庁が福島県内15市町村で開いた住民説明会で撤去に反対する意見が噴出した事もあり、最終的に国は「当面の存続」に方針転換したが、千葉さんたちがMP設置継続を求めていた理由の一つが、今回のような大地震の際の被曝リスクの可視化だった。2018年4月、原子力規制委員会の更田豊志委員長あてに提出された要請書には、次のように書かれている。
 「原発事故はいまだ継続中であることを踏まえ、空間線量の可視化により安全を確認することのできるモニタリングポストは、私たち住民の最低限の『知る権利』を保障するものです」
 撤去反対運動から3年。今回の大地震で、千葉さんはMPの必要性を改めて実感したという。そして、そのように考えていたのは、千葉さんだけでは無かった。

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誰もが10年前を思い出した13日夜の大地震。「原発は大丈夫か?」「空間線量は上がっていないか?」と心配が募った。だからこそ、モニタリングポストは必用なのだ

【「原発事故終わっていない」】
 「私も今回の大地震で改めてMPは必用だと感じました」
 郡山市の男性教諭は言う。中通りでは空間線量が大幅に上昇するような事態にはならなかったが、それはあくまでも結果論だ。「撤去なんて、あり得ないと思います」。
 中通りのある中学校長は「10年前を思い出しました」と語った。
 「もちろん、福島第一原発は大丈夫なのか、空間線量は上昇していないか。そういう事も頭をよぎりました。テレビなどを通じて公表される情報(原発に異常は無い、放射線量に変化無いなど)を心から信用して良いものか迷いました」
 だからこそ、学校や公園など生活空間に設置されているMPの数値は、被曝リスクを判断する一つの目安として重要なのだ。自分で数値を確認し、判断する。それこそが、千葉さんたちの言う「最低限の『知る権利』」だ。
 福島市の女性は、「揺れが収まってから友達と無事を確認し合いましたが、やっぱり最後には『原発は大丈夫かな』という話題になりました」と話す。この女性は、自身で購入した線量計を久しぶりに使ってみたが、動作しなかったという。
 「電池切れだったのかな?使えませんでした。引き出しの中に入れっぱなしでは駄目ですね。目に見えるところに置いておかないといけないなと反省しました。MPがあれば、今回のように線量計が使えなくても空間線量を確認する事が出来ますよね。大事だなとつくづく思いました」
 激しい揺れが思い出させた「3・11」。絶対に壊れないと言われ続けたはずの原発から大量の放射性物質が降り注いだ。大きな揺れのたびに募る不安。福島市の女性は言う。「原発事故は終わったわけでは無いんですよ」。

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原子力規制庁が2018年に福島県内15市町村で開いた住民説明会では「撤去反対」の声が大半を占めた。今回の大地震は当時の住民たちの想いが裏付けられた格好となった

【「もし原発で何かがあったら…」】
 当時、MP撤去に「NO」の声をあげた住民たちは、次のように口にしていた。
 「今後、もし福島第一原発で何かがあった場合、MPは情報をキャッチする要となるはず。私たち市民には、原発事故が起きた時に空間線量もSPEEDI情報も知らされなかった〝苦い思い出〟がある。数値を簡単に目にする事が出来るMPはぜひ残して欲しい」
 「幼い子どものいるお母さんたちは、数値を見ていないようで結構見ている。『今日は普段と変わらない』とか『今日はちょっと高くなってる』とか、そういう声を聞く。まだまだMPは必要」
 「ちょっと大きな地震が起きると保育園の先生たちはMPの数値を確認しに走ると聞いている。インターネットを使っていない人も多くいる中で、見てすぐに確認出来るMPの存在は本当に私たちの生活の一部になっている。これから(福島第一原発が)どうなるか分からないので、このまま継続して設置しておいて欲しい」
 「原発事故は継続中。私たちは何が起こるか分からないという心配の中でここで暮らしている。MPの撤去は親として不安」
 原子力規制委員会が挙げた撤去理由の一つに「コスト」があった。年間5億とも6億とも言われる維持費が継続配置のネックになると住民説明会などで説明していた。
 ちなみに、福島県の2021年度当初予算で計上された「東京2020オリンピック・パラリンピック関連復興推進事業」には、6億6455万4000円が充てられている。これで「延期後の東京2020大会において、これまでの支援に対する感謝の思いや本県の現状を発信する取組を実施する。また、大会簡素化の方針や感染症対策等を踏まえ、安全・安心な大会となるよう準備を進めるとともに、大会が本県の復興や風評払拭等につながるレガシーとなるよう関連事業を実施する」という。
 数億円の維持費を出し渋る国。五輪での風評払拭に6億円費やす福島県。住民が求める安全安心にきちんと予算が使われているのか。福島市の木幡浩市長は当時、MPの存在そのものが風評を招くと話している。3月25日の聖火リレー初日を前に福島県沖で発生した大地震は、「復興五輪」に覆われた福島の住民たちの本音を改めて浮き彫りにしたのだった。



(了)
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鈴木博喜

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