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【119カ月目の郡山市はいま】「聖火リレー?そんなのやってる場合じゃない!」 新型コロナに大地震… 冷ややかな市民「感染症対策が先」

オリンピック・聖火リレーに疑問を投げかけているのは福島県の新地町民だけでは無い。中通りの中心部に位置する郡山市でも、多くの市民が「五輪どころじゃない」と口にしている。新型コロナウイルスの感染拡大が終息しない中、追い打ちをかけるような13日夜の大地震。復旧は郡山市内でも緒についたばかりだ。同市では3月27日に聖火リレーの実施が予定されているが、介護施設などでクラスターも発生。感染拡大防止と復旧で精一杯だ。地域経済も疲弊し切っていて、聖火リレーを盛り上げるどころかこんな声さえ聞かれる。「早く中止を決めて欲しい」。
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【「早く中止を決めて」】
 「早く中止を決めて欲しいけれど、やる方向で動いてるみたいだね。でも、こちらは冷ややかに見ているというのが正直なところですよ」
 聖火リレーコース沿いで酒販店を営む女性は言った。
 郡山市は2011年3月11日の大地震で震度6弱の揺れを記録。2433棟が全壊した。原発事故で飛来した放射性物質で被曝リスクも生じた。あれから10年。〝復興五輪〟などという空虚な掛け声で行われる聖火リレーを目前にした今月13日夜、再び震度6弱の大地震。郡山市が把握しているだけで14人が負傷し、発災から5日間での罹災証明書申請件数は700件を超えている。新型コロナウイルスの感染拡大も終息していない。
 先の女性は「10年経ってもこんなに大きな地震が来るんだねえ。マンションの9階に住んでいるせいか、『3・11』より揺れは強く感じました。家の中はぐちゃぐちゃでしたよ。まだ余震が続いているから、不安であまり眠れません」と話す。陳列棚は10年前に補強したため酒類の被害は最小限で済んだが、シャッターがずれるなどした。感染症の問題で落ち込んだ売り上げも回復出来ていない。一昨年秋には台風19号水害もあった。五輪どころじゃないのも無理も無い。「うちは台風19号水害で倉庫が水没して商品が全滅。自費で直しました。直したと思ったら今度は感染症。ホテルのラウンジも呑み屋さんもお客さんが入らないから酒が全然動かない。納品が激減しました」。
 為政者が盛んに口にする〝復興五輪〟も〝感染症に打ち勝った証としての五輪〟も響かない。
 「昨年の今ごろは聖火リレーのチラシが配られて、警察官が不審者がいないかなどを確認しに来たりもしてましたよ。今年はそういう動きは無いね。でもね、私はそれどころじゃないでしょって思います。地震も原発の状況も怖いし、感染症がね。もしオリンピックを開催したとして外国からどれだけの人が来日するか分からないけれど、人が動く事によってまた陽性者が増えちゃうんじゃないかな。陽性者数が増えたらまた営業自粛?そしたら商売にならないよ。だから、気持ちは全然盛り上がらないです。この辺りじゃ、誰もが思ってますよ」

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JR郡山駅の改札前には五輪開幕までのカウントダウンボードが設置されているが、「五輪どころじゃない」が市民の本音。今月13日夜の大地震の被害は大きく、復旧は緒についたばかりだ

【「今年も直前に中止かも」】
 郡山市では3月27日の夕方に聖火リレーが予定されている。郡山駅西口の駅前広場を出発し、福島県郡山合同庁舎を経由し、開成山公園までの約4キロメートルを走る計画。Jヴィレッジから始まる福島県内の聖火リレーを締めくくる。
 だが、駅構内にある郡山市観光案内所のスタッフは聖火リレー開始まで30日を切っても「駅前を出発するみたいですね。具体的な情報がまだ来ていないので、やるとかやらないとか分からないんです」と話すばかり。土産物店で話を聴いても「どうなるのか良く分からないですね。実施しそうな雰囲気にはなっていますけど…」。別の観光案内所でも、女性スタッフが「新聞には多少、聖火リレーの情報が出てきてはいるのですが…。感染症の問題もありますし、旗のようなものが道路沿いに掲げられている程度ですね。一応、実施する方向のようですが、昨年のように直前になって中止という事もあるかもしれないですね」と素っ気無い。これが実情だった。
 「緊急事態宣言が解除される地域で再び新規陽性者数が増えるようだと、オリンピックにかなり影響しそうですね。郡山でもクラスターが発生してますし…。オリンピック・聖火リレーを楽しみにしているお子さんも多いですから大いに盛り上がって欲しいですが、確かにそれどころでは無いですよね。感染症に加えて、この間のあの大地震ですからね」
 聖火リレーコース沿いにあるショッピングセンター「ザ・モール郡山」は、23日に1階の「リヴィン食品館」の営業を再開したばかり。シャッターの前では「無印良品」の女性販売員が13日夜の大地震での傷みが比較的少なかった商品を売っていた。
 駐車場の一角には復旧工事で生じたガレキなどがフレコンバッグに入れられて山積みされている。食料品の女性販売員は「2階はスプリンクラーが作動してしまって水浸しになったし、建物にも被害がありました。ガレキはもっと多かったんですよ。いつになったら全館の営業が再開出来るやら…」とため息をついた。

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福島県も郡山市もホームページや広報紙で聖火リレーの開催をアピールしているが開催の可否は不透明だ

【「希望の道をつなごう」?】
 「ザ・モール郡山」近くのビジネスホテルも13日夜の大地震で館内が損傷し、一部の部屋を使って営業を再開したばかり。フロントの女性は「聖火リレーは…いつでしたっけ?先日の地震の影響でまだ全室を使える状況では無いんです。正直なところ、聖火リレーどころではありません。そもそも、実施するかどうかまだ分からないですよね」と話した。
 別のビジネスホテルスタッフも「この前の道を走る予定です。実施されれば、ですけど。まだ微妙ですね」と話す。別のホテルでは、フロントの男性が「まだ主催者から宿泊の問い合わせもありません。お部屋は空いています」と話した。ちなみに、野球・ソフトボールが開催される福島市内のホテルは昨夏、組織委員会が押さえたため一般客の宿泊予約受付を一時取りやめたが、今年は今のところ何の連絡も無いという。
 「やるのかやらないのか、早く決めて欲しいですよ。身動きがとれません」
 郡山市は広報紙3月号で「震災から10年 希望の道をつなごう!」と題して聖火リレーを特集。「マスクを着用」、「大声を出さない」などの感染症対策を明記したうえで中学校吹奏楽部の演奏や東京五輪音頭披露など聖火リレー当日のイベント開催を告知している。
 しかし、今回取材した人のうち、オリンピック・聖火リレーに前向きな言葉を口にした市民は1人もいなかった。多くの人が首を傾げる中、国も組織委員会も開催に向けた歩みを止めない。3月6日には、露払いをするように菅義偉首相が福島県を訪れ、浜通りの「福島ロボットテストフィールド」などを視察する予定だが、為政者は相変わらず〝きれいな所〟しか見ない。オリンピック・聖火リレー実施に疑問を投げかける郡山市民の声も届かない。空虚なカウントダウンだけが刻まれていく。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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