【原発事故と被曝リスク】聖火リレー出発式で「放射能で病気になった福島県民いない」 相馬市長の暴言に福島県民から続々と怒りの声
- 2021/04/01
- 19:38
聖火リレーの出発式で福島県相馬市の立谷秀清市長が言い放った暴言に、福島県内外から怒りの声が噴出している。虚飾イベントに乗じて放たれた言葉は「放射能によって病気になった福島県民はおりません」。医師でもある首長の乱暴な物言いに、福島県在住者も県外避難者も「原発事故から10年しか経っていないのに断言するな」と憤る。「福島の光と影の両面から現状を発信する」(内堀雅雄知事)はずの聖火リレーでの暴言は、期せずして〝復興五輪〟の真の役割をさらけ出した。被曝リスクの矮小化に加担する立谷市長の責任は重い。

【「将来の健康影響無視するな」】
3月26日午前。聖火リレー2日目の出発式でマイクの前に立った立谷市長は突然、「マスコミの皆さんに申し上げます」と口にし始めた。これこそが〝復興五輪〟で発信すべき言葉なのだ、と言わんばかりに語気を強めた。
「われわれは復興ならびに原発対策で大きな成果を成し得たのであります。マスコミの皆さんに申し上げます。原発事故はし烈なものでしたが、放射能によって病気になった福島県民はおりません。われわれ福島県は放射能による病気の人間を誰一人出さないという、皆の大きな力を結集して、その成果を成し遂げたわけであります。もちろん、今ふるさとに帰れない、あるいはいまだに高線量の状態が続いているという地域はありましょう。しかしながら、われわれは何とか頑張って踏ん張って、この地で健康を守って来たわけであります」
市の広報も地元メディアもスルーしたこの暴言は、現場で取材していた朝日新聞・三浦英之記者によって動画がツイッター上にアップされた。視聴回数は28万を超え、大きな反響を呼んだ。
この発言に、矢吹町の40代男性は「放射能による病気は、次の世代やその次の世代に影響が出てくる可能性が怖いのであり、そこまで考えていない発言ですね。 この市長さんでは今以上の安心安全な街づくりは不可能という事になりますね、頭の中が『安全』になってしまっていますから。(放射線被曝による病気が)まだ出てきていないだけなんだと思います。実際に健康影響など出ないかもしれません。ですが『この先、もしかしたら放射能による病気になる人が出るかもしれない』という危機意識は欲しいところです」と話した。
伊達市の60代男性も「相馬市長は医師ですから、そう言いたいのでしょう。でも、鈴木眞一医師は甲状腺ガンの疑いのある子どもたちを相当数、手術しました。あれは何だったのでしょうか。今のところ私の甲状腺がんの疑いは消えていません。身体に変化は出ていないから放射能の影響では無いのかもしれませんが、『影響は無い』などとは言い切れないと思います」と疑問を投げかけた。
会津若松市の女性は「首相の発言だったら、その根拠はどこにあるのかと問われるでしょう。一自治体の首長だからといって看過されるものでは無いはずです。発言の根拠を問いたい。『アンダーコントロール発言』と根っこは同じだと思います」と語る。

聖火リレー出発式で「原発事故はし烈なものでしたが、放射能によって病気になった福島県民はおりません」と言い放った立谷市長に福島県内外から怒りの声が続出している(写真は朝日新聞・三浦英之記者がツイッターにアップした動画のスクリーンショット画像です)
【避難者「市長の資格無し」】
「行政の長として最低な発言。相馬にも、いまだ不安が解消されてない住民はいるはずです。この発言は被曝への不安を全て否定し、聞く耳は持たない〝絶対賢者〟のように見えます。傲慢な発言です。多くの方々が勘違いされているようですが、そもそも福島第一原発は安心安全な状況では無いのです」と話すのは田村市の男性。飯舘村の伊藤延由さんは、次のような表現で批判した。
「これが市長の見解ですか?怒り心頭と言うところですが劣化極まれり、ですね。自分の任期中だけ良ければ良い輩。どこかの町議は孫が甲状腺ガンと診断された途端に態度を変えた。自分の身に降り掛からなければ分からない。市長がこれでは市民が気の毒だ。 もっとも、市長を選んだのは相馬市民であるわけで、日本が劣化している現れでもある」
三春町の女性も「事故から10年しか経っていない今、放射能によって病気になった人はいないと断言するのは、放射線障害に関して無知であるという事をさらけ出しているだけだと思います。過去の放射線被害に目をつぶり、また現実に起きている小児甲状腺ガンの多発なども無視するのであれば、住民の健康を守らなければならない市長の役割として失格ではないでしょうか」と厳しく批判した。
いまなお避難を続けている人々からも怒りの声があがっている。
浪江町津島地区から避難している男性は「はっきり言って、コメントするに値しない発言です。なぜ私たちは避難したのでしょうか?何故に人が住めないのでしょうか?健康に悪影響が生じるからですよね。それに、避難したことで大勢の人が『関連死』しています。病気に罹患した人もたくさんいます。ふざけるな!と言いたいです。市民に寄り添わず、国にこびへつらう酷い市長の見本。市長の資格は無いです」と憤る。
郡山市から静岡県に避難した長谷川克己さんも「体調を崩しても、因果関係が証明出来なければ放射能に由来する病気とは認めてもらえない。原発事故が起きた直後から福島県民のみならず、少なからず日本人が抱いた不安であったと思います。 しかし10年後、市町村の首長が市民の心の奥底に根強く残る不安を逆手に取るかの如く、極めて一方向に傾いた見解で住民、国民を鼓舞し世界に誇るというスピーチをする事を予想出来た人はどれだけ居たでしょうか?願わくば、このスピーチを見聞した方々が『見て見ぬふりをしてきた自分』、『考えないように生きてきた自分』の至らなさに気づくきっかけになって欲しいです」とのコメントを寄せた。

相馬市のホームページに掲載されている立谷市長の「経歴書」。医師である市長が被曝影響を全否定した事の罪は重い
【「たった10年で断言できぬ」】
郡山市から神奈川県に避難した松本徳子さん(「避難の協同センター」代表世話人)は「何を根拠に発言したのか、直接聴いてみたい」と語る。
「原発避難者について、国も福島県も実態調査をしていません。避難して病気になったとしても、その因果関係を自ら証明しなければいけません。そんなメチャクチャな現状を立谷市長は知っているのでしょうか?どれだけの福島県民と話をされたのでしょうか。現実を直視していない権力者が本当に市民の命と暮らしを守ることなど出来るのでしょうか」
中通りから県外に避難している女性は「とても乱暴ですね。『原発さえなければ』と書き遺して自殺なさった方もいる。 病気が出なかったのかどうかなんて分かりません」。別の区域外避難者も「寝言言ってんでねーよ」と怒りを口にした。
「どちらを向いて政治をしているのか。誰を守ろうとしているのか。これでは私たちが〝気のせい〟や〝神経質〟で避難していると言っているようなものです。小児甲状腺ガンが272人見つかっても、再手術をしても、全て気のせいだと言うのでしょうか」
市町村議員からも否定的な意見が相次いだ。
郡山市議・蛇石郁子さんは「相馬市長の発言は間違っていると思います。原発事故後の健康影響については、病院関係者が一番実態を知っているはずです。医療関係者等は守秘義務があるので、真実を語れないのです」と話し、ある双葉郡町村議会議員は「放射能に関しては現在進行形。原発事故から10年経ったくらいで『病気になった県民はいない』とは言えないと思います。実際、甲状腺ガンが見つかった知人もいます。ふるさとを追われ、慣れない環境での避難生活で亡くなっている方も多くおられます」と語った。別の双葉郡町村議会議員も「放射能によって病気になった県民は『いない』のではなくて『認められてない』、『因果関係が証明されてない』だけではないでしょうか」と首を傾げた。
「子ども脱被ばく裁判」など様々な訴訟で原発事故被害者と向き合っている井戸謙一弁護士は、こんな表現をした。
「被曝による健康被害は特異性がありません。被曝以外の原因でも発症するため、見たくなければ見えないのです。調べなくては分かりません。死者が増えても、ストレスのせいにすれば一応の説明ができます。信じるものは救われます。嘘だと知っていても信じるふりをする輩もいます。嘘を振りまく科学者がいます。科学者が信頼されなくなった不幸な国です」
これらの声に、立谷市長は何と答えるだろうか。
(了)

【「将来の健康影響無視するな」】
3月26日午前。聖火リレー2日目の出発式でマイクの前に立った立谷市長は突然、「マスコミの皆さんに申し上げます」と口にし始めた。これこそが〝復興五輪〟で発信すべき言葉なのだ、と言わんばかりに語気を強めた。
「われわれは復興ならびに原発対策で大きな成果を成し得たのであります。マスコミの皆さんに申し上げます。原発事故はし烈なものでしたが、放射能によって病気になった福島県民はおりません。われわれ福島県は放射能による病気の人間を誰一人出さないという、皆の大きな力を結集して、その成果を成し遂げたわけであります。もちろん、今ふるさとに帰れない、あるいはいまだに高線量の状態が続いているという地域はありましょう。しかしながら、われわれは何とか頑張って踏ん張って、この地で健康を守って来たわけであります」
市の広報も地元メディアもスルーしたこの暴言は、現場で取材していた朝日新聞・三浦英之記者によって動画がツイッター上にアップされた。視聴回数は28万を超え、大きな反響を呼んだ。
この発言に、矢吹町の40代男性は「放射能による病気は、次の世代やその次の世代に影響が出てくる可能性が怖いのであり、そこまで考えていない発言ですね。 この市長さんでは今以上の安心安全な街づくりは不可能という事になりますね、頭の中が『安全』になってしまっていますから。(放射線被曝による病気が)まだ出てきていないだけなんだと思います。実際に健康影響など出ないかもしれません。ですが『この先、もしかしたら放射能による病気になる人が出るかもしれない』という危機意識は欲しいところです」と話した。
伊達市の60代男性も「相馬市長は医師ですから、そう言いたいのでしょう。でも、鈴木眞一医師は甲状腺ガンの疑いのある子どもたちを相当数、手術しました。あれは何だったのでしょうか。今のところ私の甲状腺がんの疑いは消えていません。身体に変化は出ていないから放射能の影響では無いのかもしれませんが、『影響は無い』などとは言い切れないと思います」と疑問を投げかけた。
会津若松市の女性は「首相の発言だったら、その根拠はどこにあるのかと問われるでしょう。一自治体の首長だからといって看過されるものでは無いはずです。発言の根拠を問いたい。『アンダーコントロール発言』と根っこは同じだと思います」と語る。

聖火リレー出発式で「原発事故はし烈なものでしたが、放射能によって病気になった福島県民はおりません」と言い放った立谷市長に福島県内外から怒りの声が続出している(写真は朝日新聞・三浦英之記者がツイッターにアップした動画のスクリーンショット画像です)
【避難者「市長の資格無し」】
「行政の長として最低な発言。相馬にも、いまだ不安が解消されてない住民はいるはずです。この発言は被曝への不安を全て否定し、聞く耳は持たない〝絶対賢者〟のように見えます。傲慢な発言です。多くの方々が勘違いされているようですが、そもそも福島第一原発は安心安全な状況では無いのです」と話すのは田村市の男性。飯舘村の伊藤延由さんは、次のような表現で批判した。
「これが市長の見解ですか?怒り心頭と言うところですが劣化極まれり、ですね。自分の任期中だけ良ければ良い輩。どこかの町議は孫が甲状腺ガンと診断された途端に態度を変えた。自分の身に降り掛からなければ分からない。市長がこれでは市民が気の毒だ。 もっとも、市長を選んだのは相馬市民であるわけで、日本が劣化している現れでもある」
三春町の女性も「事故から10年しか経っていない今、放射能によって病気になった人はいないと断言するのは、放射線障害に関して無知であるという事をさらけ出しているだけだと思います。過去の放射線被害に目をつぶり、また現実に起きている小児甲状腺ガンの多発なども無視するのであれば、住民の健康を守らなければならない市長の役割として失格ではないでしょうか」と厳しく批判した。
いまなお避難を続けている人々からも怒りの声があがっている。
浪江町津島地区から避難している男性は「はっきり言って、コメントするに値しない発言です。なぜ私たちは避難したのでしょうか?何故に人が住めないのでしょうか?健康に悪影響が生じるからですよね。それに、避難したことで大勢の人が『関連死』しています。病気に罹患した人もたくさんいます。ふざけるな!と言いたいです。市民に寄り添わず、国にこびへつらう酷い市長の見本。市長の資格は無いです」と憤る。
郡山市から静岡県に避難した長谷川克己さんも「体調を崩しても、因果関係が証明出来なければ放射能に由来する病気とは認めてもらえない。原発事故が起きた直後から福島県民のみならず、少なからず日本人が抱いた不安であったと思います。 しかし10年後、市町村の首長が市民の心の奥底に根強く残る不安を逆手に取るかの如く、極めて一方向に傾いた見解で住民、国民を鼓舞し世界に誇るというスピーチをする事を予想出来た人はどれだけ居たでしょうか?願わくば、このスピーチを見聞した方々が『見て見ぬふりをしてきた自分』、『考えないように生きてきた自分』の至らなさに気づくきっかけになって欲しいです」とのコメントを寄せた。

相馬市のホームページに掲載されている立谷市長の「経歴書」。医師である市長が被曝影響を全否定した事の罪は重い
【「たった10年で断言できぬ」】
郡山市から神奈川県に避難した松本徳子さん(「避難の協同センター」代表世話人)は「何を根拠に発言したのか、直接聴いてみたい」と語る。
「原発避難者について、国も福島県も実態調査をしていません。避難して病気になったとしても、その因果関係を自ら証明しなければいけません。そんなメチャクチャな現状を立谷市長は知っているのでしょうか?どれだけの福島県民と話をされたのでしょうか。現実を直視していない権力者が本当に市民の命と暮らしを守ることなど出来るのでしょうか」
中通りから県外に避難している女性は「とても乱暴ですね。『原発さえなければ』と書き遺して自殺なさった方もいる。 病気が出なかったのかどうかなんて分かりません」。別の区域外避難者も「寝言言ってんでねーよ」と怒りを口にした。
「どちらを向いて政治をしているのか。誰を守ろうとしているのか。これでは私たちが〝気のせい〟や〝神経質〟で避難していると言っているようなものです。小児甲状腺ガンが272人見つかっても、再手術をしても、全て気のせいだと言うのでしょうか」
市町村議員からも否定的な意見が相次いだ。
郡山市議・蛇石郁子さんは「相馬市長の発言は間違っていると思います。原発事故後の健康影響については、病院関係者が一番実態を知っているはずです。医療関係者等は守秘義務があるので、真実を語れないのです」と話し、ある双葉郡町村議会議員は「放射能に関しては現在進行形。原発事故から10年経ったくらいで『病気になった県民はいない』とは言えないと思います。実際、甲状腺ガンが見つかった知人もいます。ふるさとを追われ、慣れない環境での避難生活で亡くなっている方も多くおられます」と語った。別の双葉郡町村議会議員も「放射能によって病気になった県民は『いない』のではなくて『認められてない』、『因果関係が証明されてない』だけではないでしょうか」と首を傾げた。
「子ども脱被ばく裁判」など様々な訴訟で原発事故被害者と向き合っている井戸謙一弁護士は、こんな表現をした。
「被曝による健康被害は特異性がありません。被曝以外の原因でも発症するため、見たくなければ見えないのです。調べなくては分かりません。死者が増えても、ストレスのせいにすれば一応の説明ができます。信じるものは救われます。嘘だと知っていても信じるふりをする輩もいます。嘘を振りまく科学者がいます。科学者が信頼されなくなった不幸な国です」
これらの声に、立谷市長は何と答えるだろうか。
(了)
スポンサーサイト