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【121カ月目の汚染水はいま】「安易な海洋放出許されぬ」 福島駅前で若者主催の緊急街宣 学者も生産者も軒並み反対 「海洋放出以外の選択肢ある」

海洋放出反対の声が止まらない。12日夜には、福島県内の10代から30代の若者有志でつくる「DAPPE」(Democracy Action to Protect Peace and Equality=平和と平等を守る民主主義アクション)がJR福島駅前で緊急街宣を行い、〝原発汚染水〟を海に流さないよう訴えた。いよいよ13日12時半、梶山弘志経産大臣が福島県庁を訪れ、内堀雅雄知事に海洋放出決定を伝えるもよう。放射性物質による海洋汚染はもはや福島だけの問題では無い。当日は党派や団体の垣根を越えて市民が福島県庁に集まり、反対の声を直接、梶山大臣にぶつける。
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【「海洋水は地球規模で循環」】
 専門的な立場から汚染水の海洋放出に反対しているのは柴崎直明さん(福島大学共生システム理工学類教授)。「安易な海洋放出は許されるわけでは無いと思います。やはり抜本的な地下水流入対策をやってくださいと言いたいです。それを真面目にやらずに水がたまったから海洋放出するというのは、あまりにも安易な考え方だと思います」とマイクを握った。
 「私の専門は地下水や地質学です。福島県の『原子力発電所の廃炉に関する安全監視協議会』専門委員を2013年から務めています。主に地下水に関係して廃炉作業が安全に進められるかどうかという事で委員に加わっていますが、ご存じのように2013年から汚染水の問題が顕在化して、東電や国の対応が後手後手に回って今に至っているというのが率直な感想です」
 「今でも地下水の流入は続いています。当初の400トンとか500トンとか言っていた量からは減りましたが、それでも10年経っても140トンも建屋に入っている。しかも、あくまで平均値です。7月のように雨が降れば、一週間の平均値で1日あたり300トンを超えます。今年も梅雨や台風のシーズンになったら、どれだけ汚染水が増えるのか…」
 「そもそも地下水の流入を止められないところに根本的な問題があるのです。東電や国が汚染水対策を考える時に、地下地盤や地下水の様子をきちんと把握していなかった。調査もしないままゼネコンの意向も受けて、300億円以上もかけて凍土壁を造った。それなのに、今でも1日あたり平均200トンもの水があの凍土壁を通過しているというデータを東電自らが出しています。抜本的な地下水対策はやっていません。雨水流入対策ばかりをやっていて、雨が降らなくても入り込む地下水流入対策は何もやっていないというのが実情です」
 1年生160人を相手に「地球科学」という授業をしてきたばかりという柴崎教授。「福島県沖は親潮と黒潮がぶつかるところで、大変良好な漁場です。ところが汚染水が放出されるとその後の潮の動きが大変複雑になる」と懸念を口にした。
 「海洋の水というのは何も太平洋の中だけ、日本近海だけにとどまっている事は無くて、地球規模での海洋水の大循環が分かって来ています。2000年くらいで地球をぐるっとひと回りするのです。放射性物質だけでは無く、マイクロプラスチックなど人類が出したごみが遠く離れた海、海洋の底にも沈んでいるのが続々と見つかっています。安易な海洋放出は許されるわけでは無いと思います」

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福島大学の柴崎教授や福島県農民連・佐々木事務局長など多くの人が「海洋放出すべきでない」と訴えた緊急街宣=JR福島駅東口

【「原発構内にタンク敷地ある」】
 「最大の風評被害対策は、汚染水を海に流さない事です。私たちは汚染水の海洋放出に断固抗議・反対致します」
 福島県農民連事務局長の佐々木健洋さんは語気を強めた。
 「福島県の農業被害は『風評被害』と言われていますが、私たちは原発事故による『実害』だと考えています。残念ながら福島県の農地は放射能で汚染されました。現在、流通している農産物は検査で基準値以下であり検出限界未満であり、安心して食べていただく事が出来ます。ただそれでも、汚染された農地でつくられた農産物を避けたいという気持ちも理解出来ます。そういう消費者だって被害者の1人です。原発事故以降、他県の農産物に切り換えられたスーパーの陳列棚をもう一度取り戻すには大変な努力が要ります。その努力を続けてきた10年であるとも言えます」
 「東電は来秋までに汚染水を保管しているタンクが満杯になり、それが廃炉作業に支障をきたすとしています。本当にそうでしょうか。原発構内北側には広大な用地があり、ここに原油などを入れる大型タンクを設置すれば50年近く保管する事が出来ます。長期間保管する事によって放射能の減衰も期待出来ます。政府は以前から言っていました。『世界の英知を結集するべきである』。まさにそれが求められているのではないでしょうか。不祥事を続ける東電の言う事を唯々諾々と聞き、海洋放出を認める事は出来ません。海洋放出以外の選択肢もあるのです」
 武藤類子さん(ひだんれん共同代表)も「原発事故を起こした東電や国が汚染水が完全に安全になるまで保管・管理すべき。なぜ海に流すのか。許しがたい」と訴えた。
 「汚染水はなぜ生まれたのでしょうか。原発事故が起きたからなのです。菅総理は『福島の復興のために避けて通れない』と言いました。しかし、私たちが望んでいる『復興』というのは、多くの県民、多くの被害者の声を無視してふるさとの海に放射性物質をさらに流す事なのでしょうか。10年間かけて必死の努力で再開を目指してきた漁業者たちの声を無視して、さらに海を汚そうとする。それが本当に『復興』なのでしょうか。信じがたいです」
 「薄めて海に流すと言っていますが、年間22兆ベクレルの放射性物質を40年間も流すのです。それは運転中の原発から流される放射性物質の20倍です。海は私たちだけのものではありません。世界につがなっています。原発事故によって大量の放射性物質が既に海に流れています。それは『テラ』の単位なのです。これ以上、大切な海を汚してはいけません」

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参加者たちは海洋放出せず陸上保管を続ける事を求めている。また、福島だけの問題に矮小化せず自分事として考える事を望んでいる

【「傷口に塩を塗るようなもの」】
 緊急街宣には、国会議員もリモート参加。福島瑞穂参院議員(社民党)は「トリチウムは日常的に原発から放出されている、他の原発も流しているという言われ方をされますが、その事自体が原発の問題なのです。事故後ですから、トリチウム以外の核種も含まれています。いくら処理しても残りますし、いくら希釈しても総量は変わりません。海を汚す事に断固反対です」。地元選出の金子恵美衆院議員(立憲民主党、伊達市出身)は「昨秋にも反対の申し入れを経産省などにしましたが、それから全く何も進んでいません。十分な国民的議論もありません。半年間、何もやって来なかったじゃないか。恐らく、明日の午前中にも決定されるでしょう。でも、これであきらめてはいけません。一丸となって変えさせなくてはいけません」と呼びかけた。
 岩渕友参院議員(日本共産党、喜多方市出身)も「福島県内でも全国でも反対の声が多数です。国民の声を無視して海洋放出を決める暴挙は断じて許されません。いわき市の漁業者から話を聴きましたが、皆さんからは怒りの声があがっていました。今日、衆議院で高橋千鶴子議員が菅総理に『息子に漁師を続けさせて良いものか』という父親の苦悩を質問しました。菅総理は『続けさせて良い』と答える事は出来なかったんです。別の人は『海洋放出は傷口に塩を塗るようなもの。賠償すれば良いというものではない』と言っていました。海洋放出は風評被害にとどまらない甚大な被害を招きます。それは賠償では取り戻せないのです」と海に流さないよう訴えた。
 柴崎教授は、次のような言葉でスピーチを締めくくった。 
 「トリチウム、トリチウムと言われますが、タンクの中にはトリチウム以外にもALPS(多核種除去設備)で除去し切れていない放射性物質がまだたくさん残っています。ALPSでは62核種を除去できると言っていますが、これまでの東電の評価ではそのうちの主要7核種だけを測って、他は推定して放出出来る濃度を下回っているかと判断しています。ところが昨年、いくつかのタンクのサンプルを細かく測ったところ、ALPSでは除去出来ない核種も含まれている事が判明しました。海に流すと言うのなら、きちんと測るべきです。どのような技術的方法で薄めて流すのか。今もって東電から説明はありません。非常に心配になります。ましてや、一部の核種だけ測って流すというのは非常にまずいと思います」



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)
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