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【121カ月目の汚染水はいま】ペーパー棒読みの経産大臣、物言えぬ福島県知事 シュプレヒコール響く中、わずか6分間の「海洋放出するから、よろしく」

政府は13日朝、原発事故後に大量発生している〝原発汚染水〟を2023年をめどに海洋放出するとの基本方針を決定。昼過ぎに梶山弘志経産大臣が福島県庁を訪れ、内堀雅雄知事に方針決定を伝えた。福島県民の懸念も国内外の反対意見も無視した決定に、福島県庁前には多くの市民が集結。改めて抗議と反対の声をあげた。しかし、大臣と向き合った内堀知事は「これから基本方針を精査する」と30秒間述べるばかりで意見表明は無し。原発事故被災県の先頭に立つリーダーの国追従、弱腰ぶりが改めて際立った。
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【「これから精査して意見言う」】
 わずか6分。しかも内堀知事からの意見表明は無し。静まり返った部屋にはあっけにとられる取材者だけが残った。
 「今日のポイントは内堀知事が何を言うか」
 取材者も反対の声をあげている人々も、注目している点は同じだった。朝日新聞社と福島放送が昨年2月に共同で実施した電話世論調査では、海洋放出に「賛成」と答えた人は31%にとどまった。県内7割の市町村議会から「反対」、「慎重な対応を求める」意見書が国に提出されている。だがしかし、これまでも国の意向に従い続けて来た内堀知事に期待するだけ無駄だった。いつものように表情一つ変えず、抑揚の無い声で次のように述べるだけだった。
 「ただいま、梶山経産大臣から処理水の処分についての、基本方針についての説明を受けました。この処理水の問題は福島県の復興にとって重く、また困難な課題であります。県としてこの基本方針について今後精査を行い、改めて福島県としての意見を述べさせていただきます」
 前週に地元紙が号外を出すなど、反対意見を無視した「海洋放出」強行は既定路線。しかし、基本方針を伝えにやって来た梶山 大臣に対する内堀知事の言葉は、たった30秒で終わった。それ以上何も語らなかった。「民主主義」や「地方自治」が音をたてて崩れていくようだった。
 前日の定例会見で記者からの質問が相次いでも、内堀知事は「まだ国として最終的な方針が出ているわけではありません。今後の国の動向を注視して参ります」、「仮定の前提においてのご質問については控えさせていただきます」、「処理水の問題については、まだ具体的に言及する段階にはありません」とはぐらかしていた。そしてその姿勢は、政府の基本方針が正式決定しても変わらなかった。

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福島県庁を訪れた梶山弘志経産大臣が官僚の用意したペーパーを読み上げ、内堀雅雄知事に「海洋放出」決定を伝えた。資源エネルギー庁廃炉・汚染水対策官として情報発信を担う木野正登参事官も同席した。しかし、内堀知事は何も語らず。「県民の声」は無視された

【「国民の理解は得ていない」】
 福島県庁庁舎前でのシュプレヒコールなど全く聞こえない静かな部屋。カメラのシャッター音だけが響く中、梶山経産大臣は官僚の用意したペーパーを読み上げた。
 「本日参りましたのは、今日朝、菅総理出席のもと行われました『廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議』におきまして、ALPS処理水の処分に関する基本方針を決定致しました。ALPS処理水については安全性を確保する、徹底的な風評対策を行う事を大前提に、海洋放出する方針と致しました」
 政府の基本方針は「東京電力には2年程度後を目途に福島第一原発の敷地から放出する準備を進めることを求める」。配布資料では「風評影響を最大限抑制するための放出方法」として「トリチウム濃度は、規制基準の1/40(WHO飲料水基準の約1/7)まで希釈(既に放出しているサブドレンの排水濃度と同レベル)。総量は事故前の管理目標値(年間22兆Bq)を下回る水準とする」、「その他核種は規制基準を下回るまで2次処理。更に上記のトリチウム濃度を満たすため、大幅に希釈。規制基準を大幅に下回ることで、安全性を確保し、風評を抑制」と記され、「放出前・放出後のモニタリングを強化」するという。
 海洋放出に反対している人々を刺激しないためか、梶山大臣も「風評対策」と「情報発信」、「モニタリングの強化」に関する言葉を口にした。
 「今回の基本方針には皆さんのご意見をしっかりと受け止めて、そしてご懸念を払拭しご要望に応えるための風評対策を盛り込み万全を期すこととしております。安全性について科学的な検証に基づくていねいな情報発信を行う事も明記されております」
 「政府として放出前の確認や放出後のモニタリング等にIAEAや地元自治体など第三者によるチェックを徹底する事で信頼確保に努めて参りたいと考えております」
 梶山大臣は「何卒ご理解のほどよろしくお願い申し上げます」と頭を下げてマイクを置いた。庁舎前には多くの市民が集まり「知事は県民の声をきけ」、「別の方法があるはず」、「国民の理解は得ていない」などのプラカードを掲げて抗議した。午前には「これ以上海を汚すな!市民会議」が基本方針を拒否し、国会での議論や公聴会の開催などを求める要請書を内堀知事宛てに提出している。
 筆者は県議会議長室から出てきた梶山大臣に「市民の反対の声は聞こえませんでしたか?」、「多くの人が反対していますよ」と声をかけたが、こちらを一瞥しただけで何も答えなかった。

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福島県庁前には梶山経産大臣に直接、反対を伝えようと多くの市民が集まった。海洋放出に反対しているのは漁業者だけでは無い。福島県民だけでも無い。国民的合意の無いまま、海に流されようとしている

【県議会も「風評対策」に軸足】
 政府が海洋放出の基本方針を決めた事を受け、福島県議会の各会派が内堀知事に緊急要望。自民党福島県議会議員会(29議席)は「放射性物質トリチウムを含んだ処理水の取り扱いに関する要望書」で「今回の判断と今後の取組が未だ根強く残る原発事故の風評被害に新たに上乗せされることがないよう、あらゆる機会を捉え、国内外に対し、科学的根拠に基づく海洋放出の妥当性・安全性についての丁寧な説明を繰り返すとともに、専門家等によるトリチウムの性質や処理水に関する正確な情報発信に全力で取り組むよう国に求めること」など3項目を求めた。
 立憲民主党系の福島県議会県民連合議員会(18議席)は「緊急申し入れ書」で「処分方法を含め安易な判断は避け、責任を持って県民に説明するよう、国に強く求めること」、「ALPS処理水の処分で本県に更なる風評被害が生じないよう、十分な対策を国に求めること」などを要望。日本共産党福島県議会議員団(5議席)は「東京電力第一原発汚染水の海洋放出方針決定に対し強く抗議し、撤回を求める緊急申し入れ」で「国に撤回を求めること」を申し入れた。
 公明党福島県議会議員団(4議席)は「多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針決定に対する緊急要望書」で「原子力災害から10年経った今でも風評は続いている現実を直視しながら、トリチウム水の安全性に対する情報発信や国民的議論喚起、国際社会の理解醸成のための具体的な施策を国は明確にすること」、「処理水放出は今後40年続く現状を鑑み、実証実験へのトリチウム水の提供」など、分離技術の確立に国が積極的に取り組むこと」などを求めた。公明党福島県本部内に「ALPS処理水海洋放出検証委員会」を設置したという。
 なお、共産党以外の3会派は内堀知事が直接対応したが、共産党の申し入れだけは原子力安全対策課長が対応した。
 浪江町の「希望の牧場・ふくしま」から街宣車で福島県庁に駆け付けた吉沢正巳さんは「内堀知事は及び腰、模様眺めで良いんですか?」、「知事は『汚染水を海に流されたら困る』と経産大臣に言ってください」、「佐藤栄佐久知事は本気で国や東電と闘って来たぞ」、「国が決めた事をただただ実行する。そんな県知事の姿勢が問題です」、「内堀さん、しっかりしてください」、「国の言いなりで汚染水の垂れ流しを認めるんですか?」と声をあげた。
 しかし、当の内堀知事は、これから政府の基本方針を精査するという体たらく。原発事故被災県のリーダーが何も物言えぬまま、汚染水の海洋放出に向けて大きく動き出した。



(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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