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【原発避難者から住まいを奪うな】「占有権原なし」福島県が反論の準備書面 「国内避難民」との関連性も否定~〝東雲追い出し訴訟〟第5回口頭弁論

福島県が昨年3月、原発事故で政府の避難指示が出されなかった区域から〝自主避難〟した4世帯を相手取り、国家公務員宿舎「東雲住宅」(東京都江東区)の明け渡しと未納家賃の支払いを求めて提訴した問題で、1世帯に対する第5回口頭弁論が28日午前、福島地裁206号法廷(松川まゆみ裁判官)で行われた。福島県が第4準備書面を陳述。改めて国に代わって明渡請求権を行使することに問題は無いこと、4世帯には2017年3月末で建物を占有する権原が消滅していることを主張した。次回期日は7月16日14時。避難者側の主張・反論をまとめた準備書面を陳述する予定。
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【「使用許可申請に瑕疵ない」】
 第4準備書面はA4判で6頁。被告(避難者)が4月に陳述した第3準備書面に反論する形になっている。被告(避難者)側が争点として挙げているのは①使用許可が無効である②使用許可があったとしても追い出されない権限がある─の2点。
 ①は、当該避難者は福島県との間でセーフティネット使用契約を結んでおらず、調停も不成立に終わるなど話し合いが続けられた事実も無いのにそれを隠して国に使用許可を申請したのは「虚偽申請」であるという主張だ。
 これに対し、福島県は「本件建物の使用許可を国に申請したのは、一旦セーフティネット使用契約締結の申込みを行った世帯等について、原告(福島県)が主体となって、セーフティネット使用契約の締結や建物の明渡し等に向けた協議などを行うため」、「使用許可の申請に当たり事前に国に事情や経過を説明しており、目的を秘匿していた事実はない」と反論。「使用許可申請自体に何らの瑕疵もないし、国の使用許可自体にも何らの瑕疵もない」と述べている。
 そもそも福島県は国家公務員宿舎の所有者でも管理者でもない。なぜ国に代わって原告となっているのか。避難者側は「福島県による国の明渡請求権の代位行使は認められない」と主張しているが、福島県は国から明渡請求権の代位行使を求められた事実は無いと認めたうえで、次のように反論した。
 「原告(福島県)が債権者代位権の行使をする要件として、国が原告(福島県)に明渡請求権の代位行使を求めることは必要ではない。あくまで、国が自ら所有権に基づく明渡請求権を行使しない状況であれば十分である」
 被告代理人を務める平松真二郎弁護士は「福島県は避難者に明け渡しを求める立場に無い。福島県とのセーフティネット契約を締結する意思が無いことが分かっていながら、国に継続して使用許可を申請している。ましてや、昨年3月25日の提訴以降に申請しているというのは、もはや住居として使用させる目的ではなく、単に形式的に追い出す権限を確保するために使用許可を申請しているのだろう」と話した。

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今も原発避難者が入居している「東雲住宅」。福島県は「区域外避難者に占有権原がないことは明らか」として退去と家賃支払いを求めている=東京都江東区

【「代位行使するしかない」】
 ②についても、福島県側は「平成29年(2017年)3月末日をもって期間満了により当該使用貸借関係が終了しているから、被告が本件建物を占有する権原も消滅している」と重ねて主張した。
 被告(避難者)側は、第3準備書面で「国際人権規約や国内避難民原則からすれば、災害救助法に基づくみなし仮設住宅としての本件建物の提供打ち切りをもって、直ちに被告の占有権原が消滅すると解することは許されない」と主張している。
 「被告は、福島第一原発事故による放射能汚染から自身やその子どもらの生命・身体を守るために東京都内に避難しており『国内避難民』に該当する」
 「退去明渡しを迫ることは、未だに放射能汚染の危険がある避難元に強制的に帰還(移動)させるに等しいものであり、避難住宅の提供の打切りによって被告の使用占有権原を奪うことは許されるものではない」
 これについても、原告(福島県)は「被告が国内強制移動に関する指導原則にいう『国内避難民』に該当するかどうかと、被告に本件建物の占有権原があるかどうかとは関連性はない」と一蹴。「被告に本件建物の占有権原がないことは明らか」と反論した。
 そして改めて「原告(福島県)が本件建物の使用収益権を有しているにもかかわらず、被告(避難者)が本件建物を無権原で占有していることで、原告の使用収益が妨げられていることは明らか」、「国自らが被告に対して所有権に基づく明渡請求権を行使しない以上、この使用収益が妨げられている状況を改善するには原告(福島県)が国の所有権に基づく明渡請求権を代位行使する以外にない」などとして、訴えの正当性を主張した。

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原告・福島県が陳述した第4準備書面。「被告が『国内避難民』に該当するかどうかと、本件建物の占有権原があるかどうかとは関連性はない」などと反論している

【「公金支出の点でも問題」】
 平松弁護士とともに避難者の代理人を務める山川幸生弁護士は「国が自ら原告になるといろいろ言われるし反対の訴訟を起こされる可能性があるので絶対に嫌。一方、福島県は今回の原発事故の直接の加害者ではないので、反対の裁判が起きにくい。だから福島県を使っているという側面もあるんだと思う」と語る。
 「そもそも国家公務員宿舎は公務員の住居用に確保しているものであって、それ以外の目的に使用するのは基本的に想定されていない。特別な理由や必要性があって許容できる場合に許可される。福島県は国との間で避難者に対して住居を提供するということを取り決めて、それに基づいて使用許可を申請しているが、その際の『避難者と契約を結んで貸す』が『特別な理由や必要性』に該当する」
 「それが前提となっているにもかかわらず、セーフティネット契約が締結できなかった。できないのに締結を前提に国が使用許可を出すこと自体が間違っている。許可の目的は契約のため、避難者に貸すためのはず。避難者と契約を結んで貸せないということがはっきりしたら福島県は国に使用許可を返上しないといけない。でもそれをしないで漫然と使用料を国に支払い続けている。これは福島県の財政上も極めて問題がある。本来の目的が達成できなくなった時点で国と話し合って契約を打ち切って、使用料を少なくするのは財政的には当然のこと。嘘をついて使用料を支払い続けるという無駄をやっている。そこは、違法な公金支出だという住民訴訟が起きてもおかしくないくらいだ」
 「東雲住宅」を巡っては福島県が2020年3月25日、区域外避難者5世帯を相手取り〝追い出し訴訟〟を福島地裁に起こした(1世帯は後に退去)。うち2世帯に関する弁論が昨年10月に開始。残り2世帯は東京地裁での審理を求めて移送を申し立てていたが却下され、今月から福島地裁での審理が始まっている。



(了)
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鈴木博喜

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