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【123カ月目の汚染水はいま】いわき市長が改めて海洋放出に反対表明 「国の決定は誠に遺憾」「現時点で承服できない」

2011年3月の福島第一原発事故後にたまり続ける「原発汚染水」の海洋放出方針を政府が決定した問題で、福島県いわき市の清水敏男市長が改めて海洋放出反対を表明した。14日に行われた市議会本会議で、一般質問に対し「再三の要望にもかかわらずいまだ十分な理解が得られたとは言えない状況の中、国が海洋放出を決定したことは誠に遺憾であり、現時点で承服できるものではない」などと答弁した。福島県内の市町村議会では海洋放出に反対する意見書を可決する動きが広がっており、汚染水処分への「理解」など到底深まっていない。
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【「再三の要望にもかかわらず…」】
 「いまだ十分な理解が得られたとは言えない状況の中、国が海洋放出を決定したことは誠に遺憾であり、現時点で承服できるものではない」
 内堀雅雄知事と違い、清水敏男市長の答弁は明快だった。
 14日午後のいわき市議会。一般質問に立った狩野光昭市議(いわき市議会創世会)に対し、清水市長は次のように答弁し、改めて原発汚染水の海洋放出に反対を表明した。
 「ALPS処理水が環境へ放出される場合には、市内の様々な産業に対して大きな影響を及ぼし、とりわけ海洋放出の場合には、本市水産業への打撃は計り知れないことから、わたくしはこれまで、経済産業副大臣を議長とする会議の場など様々な機会を通しまして、安全性にかかる科学的な根拠を明らかにするとともに関係者や国民の理解を得たうえで具体的な風評対策を示し方針を決定するよう繰り返し求めて参りました」
 「こうした本市の再三の要望にもかかわらずいまだ十分な理解が得られたとは言えない状況の中、国が海洋放出を決定したことは誠に遺憾であり、現時点で承服できるものではなく、市議会5月臨時会において意見書が可決されましたことにつきましても重く受け止めているところでございます。また方針決定に伴い、既に風評が上乗せされていると感じるところもございますことから、改めて国及び東京電力が責任をもって理解を得ることに全力を尽くし市民の皆さまがこれ以上風評に苦しむことがないよう、わたくしが先頭に立ち様々な機会をとらえて強く求めてまいりたいと考えております」
 午前には、自民党系の佐藤和美市議(いわき市議会志帥会)も海洋放出方針に対する市の姿勢を質したが、清水市長の答弁は一貫して「海洋放出反対」だった。

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14日の市議会本会議で改めて汚染水の海洋放出に反対する姿勢を示したいわき市の清水市長。狩野市議の一般質問に「国が海洋放出を決定したことは誠に遺憾であり、現時点で承服できるものではない」などと答弁した

【市議「住民説明会求めよ」】
 狩野市議はまた、「市町村長や関係団体だけに説明して住民の理解を得たと判断することはできない。住民一人一人の生の声を聴くべき」と住民説明会の開催を政府に要望するべきだと求めた。
 「トリチウム汚染水の海洋放出については福島県内の7割の市町村議会で反対または慎重に対応する意見書が採択されています。政府の海洋放出方針決定後の6月11日の時点では、県内9市町村議会で意見書が可決されています。既に海洋放出反対の意見書を可決した議会を含めると、20市町村議会となります。県民の理解のない中での海洋放出方針決定と言わざるを得ない」
 これには緑川伸幸危機管理部長が「市と致しましても、ALPS処理水の取り扱いにつきましては、国が責任をもって関係者や国民の理解を得たうえで実施されるべきであると考えておりますことから、先ほど市長が答弁申し上げました通り、国が前面に立って説明責任を果たし、理解を得ることに全力を尽くすよう、機会をとらえて強く求めてまいりたいと考えております」と答えるにとどまったが、否定はしなかった。
 いわき市議会は5月21日、国に対し「トリチウム等を含む処理水の処分方法について再検討を求める意見書」を提出。①処理水の処分方法については、漁業関係者など関係する全ての方の理解を受けた上で、改めて決定すること。②処理水は当面、陸上保管を継続し、諸課題の解決に取り組むこと。③政府及び東京電力は、福島県民との信頼回復を図るため、関係者とこれまで以上にリスクコミュニケーションを徹底し、関係修復を図るための最大限の努力をすること─を求めている。
 南相馬市議会は政府の基本方針が示された直後の4月27日に「トリチウム及び放射性核種を含むALPS処理水の海洋放出方針決定に強く抗議し決定の撤回を求める意見書」を全会一致で可決した。相馬市議会も5月31日に「東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の海洋放出方針決定に反対する意見書」を全会一致で可決している。

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いわき市議会が国に提出した意見書。「処理水は当面、陸上保管を継続し、諸課題の解決に取り組むこと」などを求めている

【23日東電が議会に説明】
 狩野市議は、賠償システムの問題点にも言及した。
 「東電は『風評被害が発生した場合には迅速かつ適切に賠償します』としていますが、そもそも被害者が加害者に対して被害を立証するシステム。救済されない申立者が続出しているのが現状です」
 東電への賠償請求手続きに同行した経験から、次のように市側に求めた。
 「東電は単に売り上げが下がっただけでは駄目なんです。原発事故との相当因果関係を客観的に立証しないと認められない。だから、原発事故からの年数が経つにつれて因果関係を否定する件数が増えています。今度の汚染水は30年から40年かかって流し続ける。一方で、賠償請求は民法上は10年が限度です。民法上の消滅時効との関連がきちんと明らかにされていないし、相当因果関係を立証する賠償基準も明らかになっていません。被害者の立場に立ったシステムに改正するよう国や東電に要請すべきです」
 緑川危機管理部長は、これに対しても「国及び東電に対し、被害者に寄り添ったきめ細やかな支援策を確実に実施するなど、原子力災害の原因者としての責任を最後まで果たすよう、引き続き強く求めてまいりたい」と答弁した。
 今年4月18日に開催された『第22回廃炉・汚染水・処理水対策福島評議会』や同月22日に東電の小早川智明社長と面会した際に、被害者が被害を立証しなければならない現在のシステムを見直すよう清水市長が意見を述べたという。
 閉会後、狩野市議は「清水市長は『誠に遺憾である』ときちんと言っており、今の時点での精一杯の答弁ではないか」と一定の評価をした。
 「汚染水の海洋放出に反対で、陸上保管継続が基本的な考え方。今月23日の全員協議会で東電が説明するというので、陸上保管を続けるべきだということや海洋放出前に濃度を測定しないと報じられていることなどについて、その場できっちり質問したい」(狩野市議)



(了)
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