【パンデミックと東京五輪】「五輪より国民の命を守れ」「大義なき五輪などやめろ」国内外からあがり続ける反対の声~第3回女性たちの抗議リレー
- 2021/06/17
- 22:31
来月に開会が迫った東京オリンピック・パラリンピック開催に反対する女性たちの抗議リレー「私たちが止めるしかない東京オリパラ」の第3回が15日夜、行われた。医師や弁護士のほか、在米ジャーナリストなど11人がリモート参加。「人の命を守ることが第一優先です。国民の命を守る事が政治家の仕事です」、「餓死するかもしれない人々を置き去りにして、パンデミックが収まらないのにそれでも開催すべき大義なんかどこにもありません」などと語った。次回配信は22日20時。「あきらめたら試合終了」と声をあげ続ける。

【「戦争マラリアの再来だ」】
アメリカ在住のジャーナリスト大矢英代さんはビデオメッセージを寄せた。
「アメリカでは、今や国民の50%がワクチン接種を終えたと言われています。私自身も4月に接種することができました。ところが、家族は全員日本に暮らしていますが、60歳を超える両親でさえ、いまだにいつ接種するのか分かっていません。そのような状況の中でオリパラを開催することに全精力を注いでいる日本政府に対しては、非常に深い懸念と怒りすら感じます。人の命を守ることが第一優先です。国民の命を守る事が政治家の仕事です。オリパラによって経済を動かすこと、経済を発展させることを目的とするならば、国民の命は真っ先に犠牲にされていきます」
沖縄県の八重山諸島を10年にわたって取材した経験も五輪開催に反対する背景にあるという。沖縄での取材テーマは「戦争マラリア」だった。
「戦争マラリアは76年前に起きた悲劇です。米軍の上陸も地上戦もありませんでしたが、3600人もの住民がマラリアで亡くなっています。これは全住民の10人に1人です。コロナ禍に生きる私たちは国民の10人に1人が亡くなるという状況がどれだけ悲惨なのか簡単に想像つくと思います。なぜ爆発的なマラリア感染が起きたのか。現地に滞在していた日本軍が住民たちをマラリア流行地帯に押しやったためでした。強制移住によって3600人以上が亡くなったのです。単なる戦時中の病死ではありません。日本軍が住民の強制移住という作戦をつくり、住民たちに強制したからです。住民たちの命を守るためではありませんでした。マラリアの流行地帯に住民を押しやれば犠牲が起きるということを十分に承知していたにもかかわらず、軍の作戦を優先したのです」
「オリパラが開かれることは『戦争マラリア』の悲劇の再来だと感じています」と語った大矢さん。「歴史が教えているのは、日本政府、政治家が私たち国民の命をどのように扱うかということです。命は自分たちで守るしかありません。オリパラというあまりにも無謀な国策が開かれようとしているなか、全力で止めなければなりません。私の命を守るためでもあるし、大切な人たちを守るためです」と訴えた。

「明日の自由を守る若手弁護士の会」共同代表の黒澤いつきさんは「餓死する方まで現実に出ているというのに、なぜ五輪にお金をかけるのか。怒りでいっぱいです」と語気を強めた
【「人権保障の対極が五輪」】
「日々の食事に困る人、学校給食だけで何とか栄養を摂っている子ども、餓死する方まで現実に出ているというのに、なぜ五輪にお金をかけるのか。怒りでいっぱいです」と話したのは黒澤いつきさん(「明日の自由を守る若手弁護士の会」共同代表)。
「コロナ禍以前から、五輪は国民の暮らしを犠牲にする政治と商業の癒着イベントでしかなかったのです。感染拡大によってそれがグロテスクなほどに露呈したという印象です。これだけ医療従事者が足りないのにオリパラのために医療従事者の確保に走るとか、ステイホームと言いながらボランティアを集めるとか、行事をことごとく中止や延期にせざるを得なくて我慢している学校に対して、平気で五輪を観戦させようとするとか…。小学生の子どもを育てる親としても、この国に生きる1人の人間としても五輪は耐えられないという思いです」
黒澤さんは、五輪開催に躍起になっている人々を「性差別の根深い組織」と表現した。
「なりふり構わず五輪開催に暴走している人たちは、軒並み中高年の男性です。あと〝わきまえる女性〟として男性社会から認められた女性たち。五輪の暴力性を象徴しているような気がしてなりません。彼らは庶民の命や暮らしとかけ離れた生活をしていられる人たち、民主主義や人権保障など気にしなくてもいい特権を持っている人たち。そういう人たちによって五輪が開催されようとしています。五輪開催は人権保障の対極にある暴挙です」
そして「あきらめたら試合終了です」と語気を強めた。
「餓死するかもしれない人々を置き去りにして、パンデミックが収まらないのにそれでも開催すべき大義なんかどこにもありません。『大義なんかないんだからやめてくれ』という単純明快な抗議をずっと言い続けたいです。どうせ何を言っても通用しないんでしょという、あきらめの空気を子どもにすりこんではいけないし、あきらめた大人の背中を絶対に見せたくない。あきらめないで反対し続けようと思います。疲弊してしまうのですが、疲弊してしまったら終わりだと思っているので、最後の最後まで反対を言い続けたいと思います」

田中眞希さんが理事を務める東京保険医協会は5月、五輪中止をIOCに打診するよう求める意見書を菅首相などに宛てて提出した
【〝五輪株〟で提訴の恐れも】
医師の田中眞希さん(東京保険医協会理事)は「昨年と比べて、決してネガティヴな話ばかりではないんです。もちろん問題点もありますが、昨年よりは前進しているんです。それが五輪開催で無駄になるということが想定されるわけです。無駄にしてはいけません」と話した。
「前進はしているんですが、いっぱいいっぱいです。第4波で感染者数は少し落ちてはいるのですが亡くなった方はむしろ増えています。重症者数も高止まりしています。東京や大阪は確かに病院は多いですが、人口で割れば決して多くは無いです。急患を診ることができる人、設備、病床数は少ないです。コロナ禍が無くても熱中症などで観戦の観光客が倒れた場合にそれを受け止めるのはすごく大変な状況だったんです。東京の夏はスポーツには過酷すぎます。歩くだけでも過酷です」
「女性たちの抗議リレー」呼びかけ人の1人、青木正美医師は最悪のシナリオを口にした。
「五輪を機に来日する関係者などは20万人とも言われています。この人たちが真夏の東京で動き回るわけです。もし五輪を機に新たな変異株が出て多くの人が感染したら、本州全体をハードロックダウンしなければならなくなります。新たな変異株を選手が母国に持ち帰ったとしたら提訴されます。世界中から賠償金を払えと言われてしまいます。その後何が起こるのか。税金が上がり、社会保障はほぼゼロになり、この国はどんどん没落します。それが日本にとって最悪の想定です」
最悪の事態を想定したうえで、それでも五輪開催に賛成するのか反対の声をあげ続けるのか。
「このまま強引にオリパラが開催されてしまったら、消極的とはいえ認めたことになります。共犯ですよ」(青木さん)
あなたは〝共犯者〟になりますか?
(了)

【「戦争マラリアの再来だ」】
アメリカ在住のジャーナリスト大矢英代さんはビデオメッセージを寄せた。
「アメリカでは、今や国民の50%がワクチン接種を終えたと言われています。私自身も4月に接種することができました。ところが、家族は全員日本に暮らしていますが、60歳を超える両親でさえ、いまだにいつ接種するのか分かっていません。そのような状況の中でオリパラを開催することに全精力を注いでいる日本政府に対しては、非常に深い懸念と怒りすら感じます。人の命を守ることが第一優先です。国民の命を守る事が政治家の仕事です。オリパラによって経済を動かすこと、経済を発展させることを目的とするならば、国民の命は真っ先に犠牲にされていきます」
沖縄県の八重山諸島を10年にわたって取材した経験も五輪開催に反対する背景にあるという。沖縄での取材テーマは「戦争マラリア」だった。
「戦争マラリアは76年前に起きた悲劇です。米軍の上陸も地上戦もありませんでしたが、3600人もの住民がマラリアで亡くなっています。これは全住民の10人に1人です。コロナ禍に生きる私たちは国民の10人に1人が亡くなるという状況がどれだけ悲惨なのか簡単に想像つくと思います。なぜ爆発的なマラリア感染が起きたのか。現地に滞在していた日本軍が住民たちをマラリア流行地帯に押しやったためでした。強制移住によって3600人以上が亡くなったのです。単なる戦時中の病死ではありません。日本軍が住民の強制移住という作戦をつくり、住民たちに強制したからです。住民たちの命を守るためではありませんでした。マラリアの流行地帯に住民を押しやれば犠牲が起きるということを十分に承知していたにもかかわらず、軍の作戦を優先したのです」
「オリパラが開かれることは『戦争マラリア』の悲劇の再来だと感じています」と語った大矢さん。「歴史が教えているのは、日本政府、政治家が私たち国民の命をどのように扱うかということです。命は自分たちで守るしかありません。オリパラというあまりにも無謀な国策が開かれようとしているなか、全力で止めなければなりません。私の命を守るためでもあるし、大切な人たちを守るためです」と訴えた。

「明日の自由を守る若手弁護士の会」共同代表の黒澤いつきさんは「餓死する方まで現実に出ているというのに、なぜ五輪にお金をかけるのか。怒りでいっぱいです」と語気を強めた
【「人権保障の対極が五輪」】
「日々の食事に困る人、学校給食だけで何とか栄養を摂っている子ども、餓死する方まで現実に出ているというのに、なぜ五輪にお金をかけるのか。怒りでいっぱいです」と話したのは黒澤いつきさん(「明日の自由を守る若手弁護士の会」共同代表)。
「コロナ禍以前から、五輪は国民の暮らしを犠牲にする政治と商業の癒着イベントでしかなかったのです。感染拡大によってそれがグロテスクなほどに露呈したという印象です。これだけ医療従事者が足りないのにオリパラのために医療従事者の確保に走るとか、ステイホームと言いながらボランティアを集めるとか、行事をことごとく中止や延期にせざるを得なくて我慢している学校に対して、平気で五輪を観戦させようとするとか…。小学生の子どもを育てる親としても、この国に生きる1人の人間としても五輪は耐えられないという思いです」
黒澤さんは、五輪開催に躍起になっている人々を「性差別の根深い組織」と表現した。
「なりふり構わず五輪開催に暴走している人たちは、軒並み中高年の男性です。あと〝わきまえる女性〟として男性社会から認められた女性たち。五輪の暴力性を象徴しているような気がしてなりません。彼らは庶民の命や暮らしとかけ離れた生活をしていられる人たち、民主主義や人権保障など気にしなくてもいい特権を持っている人たち。そういう人たちによって五輪が開催されようとしています。五輪開催は人権保障の対極にある暴挙です」
そして「あきらめたら試合終了です」と語気を強めた。
「餓死するかもしれない人々を置き去りにして、パンデミックが収まらないのにそれでも開催すべき大義なんかどこにもありません。『大義なんかないんだからやめてくれ』という単純明快な抗議をずっと言い続けたいです。どうせ何を言っても通用しないんでしょという、あきらめの空気を子どもにすりこんではいけないし、あきらめた大人の背中を絶対に見せたくない。あきらめないで反対し続けようと思います。疲弊してしまうのですが、疲弊してしまったら終わりだと思っているので、最後の最後まで反対を言い続けたいと思います」

田中眞希さんが理事を務める東京保険医協会は5月、五輪中止をIOCに打診するよう求める意見書を菅首相などに宛てて提出した
【〝五輪株〟で提訴の恐れも】
医師の田中眞希さん(東京保険医協会理事)は「昨年と比べて、決してネガティヴな話ばかりではないんです。もちろん問題点もありますが、昨年よりは前進しているんです。それが五輪開催で無駄になるということが想定されるわけです。無駄にしてはいけません」と話した。
「前進はしているんですが、いっぱいいっぱいです。第4波で感染者数は少し落ちてはいるのですが亡くなった方はむしろ増えています。重症者数も高止まりしています。東京や大阪は確かに病院は多いですが、人口で割れば決して多くは無いです。急患を診ることができる人、設備、病床数は少ないです。コロナ禍が無くても熱中症などで観戦の観光客が倒れた場合にそれを受け止めるのはすごく大変な状況だったんです。東京の夏はスポーツには過酷すぎます。歩くだけでも過酷です」
「女性たちの抗議リレー」呼びかけ人の1人、青木正美医師は最悪のシナリオを口にした。
「五輪を機に来日する関係者などは20万人とも言われています。この人たちが真夏の東京で動き回るわけです。もし五輪を機に新たな変異株が出て多くの人が感染したら、本州全体をハードロックダウンしなければならなくなります。新たな変異株を選手が母国に持ち帰ったとしたら提訴されます。世界中から賠償金を払えと言われてしまいます。その後何が起こるのか。税金が上がり、社会保障はほぼゼロになり、この国はどんどん没落します。それが日本にとって最悪の想定です」
最悪の事態を想定したうえで、それでも五輪開催に賛成するのか反対の声をあげ続けるのか。
「このまま強引にオリパラが開催されてしまったら、消極的とはいえ認めたことになります。共犯ですよ」(青木さん)
あなたは〝共犯者〟になりますか?
(了)
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