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【パンデミックと東京五輪】コロナ自宅療養の厳しさ見た医師「五輪中止が最大の予防医学」 子どもたちは「運動会は中止されたのに…」と不信感~第6回女性たちの抗議リレー

再来週から一部競技が始まる予定の東京オリンピック・パラリンピックに反対する女性たちの抗議リレー「私たちが止めるしかない東京オリパラ」の第6回が6日夜、行われた。今回も医師や看護師、記者、臨床心理士らがリモート参加。「医療従事者としては五輪を止めること、これが最大の予防医学なのです」、「政府は五輪のために莫大なお金を使っている一方で、私たちの健康のためにどれだけのことをしてきたのか」などと怒りの声があがった。次回配信は13日20時。8日にはIOCのバッハ会長が来日したが「私たちは無力ではありません」と抗議リレーを続ける。
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【「日本に来ない方が良い」】
 「医療従事者としては五輪を止めること、これが最大の予防医学なのです」
 都内の病院に勤める医師、高岡直子さんはそう語った。「五輪後に東京でも医療崩壊するかもしれないから経験しておきたい」と5月下旬、新型コロナウイルスに感染し自宅療養をしている女性の訪問診療支援に参加した。しかし、現実は「経験しておきたい」というようなものではなかったという。
 「酸素飽和度90%未満という、普通ならすぐに救急車を呼んで入院しなければならないような重度の肺炎の方が、ろくな治療も受けられずに独りで在宅でいらっしゃいました。つい一週間前まで元気に働いていた基礎疾患のない中高年の一人暮らしの女性です。熱は39度でしたし、血中の酸素濃度が下がり過ぎてしまって、数メートル先のトイレに行くのも息苦しいような状態。もちろん、食事など喉を通りませんでした」
 これを機に「五輪を止めることが最大の予防医学」と考えを改めた。
 「海外から何万という五輪関係者が来たら東京も同じ状況になるでしょう。私が多少コロナ診療に慣れたところでどうなる問題でもないんです。それで五輪を止めようとツイッターデモに参加もしました。愛知医労連は毎週スタンディングをやっていて、すごく頑張っています。患者さんを守るという意味では医療従事者が全国でこれをやらなきゃいけないなと思いました。6月23日の都庁デモにも参加しました」
 都庁デモでは、「日本になるべく来ない方が良い」と英語で書かれた自作のプラカードを掲げた。「私たちは五輪の犠牲者を診る余裕は無いよ、すごく疲れているからごめんなさいと書きました。海外メディアのカメラマンにたくさん写真を撮られましたが、日本の医療がいかに脆弱で簡単に医療崩壊してしまうかを、もっと海外にアピールするべきだと思います。1月だって東京は医療崩壊して、22人の方が在宅で亡くなったんですから」
 外来の患者と接していると、五輪に否定的な声が多いという。
 「五輪反対を言いにくい空気ができちゃっているように感じますが、反対を言い続けることが大事だと思います。自分の身を守るためにも黙っていてはいけないと思います。私たちは無力ではありません」

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新たに6人が五輪反対の声をあげた「抗議リレー」。医師の高岡さんは都庁デモで掲げた英文のプラカードを披露した

【「家父長制的な態度」】
 東京新聞埼玉支局長の柏崎智子さんは、2004年に行われたアテネ五輪を半年間、取材。五輪には「それなりの親しみを持っていた」と話した。
 「なので今回、五輪がここまでめちゃくちゃになった、ここまで歓迎されない存在にしてしまった。なおかつ強引に進めようとしていることが、五輪を愛している人のやることなのかなと思いました。こんなに嫌われ者にしちゃってどうするのだろう。コロナ禍などを置いておいたとしても、やらなければ良かったのになと深く思います」
 強引な進め方には「家父長制的なもの」を感じるという。
 「『俺が決めたんだから従え』、『従うのは当然だろ』という視点、態度なんですよね。決まったことなんだから粛々とやるのは当然。どんなに反対しようと。そこに家父長制的なものを感じています。『お父さんが言っているんだからそれに逆らうなんてないでしょ』、『お父さんが決めたんだから言うことききなさい』というような感じです」
 「その違和感をずばり言ってくれたのが前首相の安倍晋三さん。『五輪に反対する奴は反日』と表現して、さすが安倍さんだなと思いました。もちろん逆説的にです。このごり押しするパターンが定着するということが、五輪開催で失われる一番大きなことかなと思っています。もちろんコロナ禍が悪化するということもあるでしょう。ウイルスの危険性を口にする科学者たちの声に耳を傾けない、聴いているようで全然聞いていないというところも知や文化に対する敬意の無さというものが全部いっしょくたになって、『お父さんが言っているんだから言うこと聞きなさい』、『言うこときかないと勘当ですよ』というような感じがしています」
 中絶問題研究者の塚原久美さんも「政府は五輪のために莫大なお金を使っている一方で、私たちの健康のためにどれだけのことをしてきたのか。政府のやってきたことはDV男と一緒です。外面は良い。外ではお金を振りまく。でも、内側の人間に対しては我慢を強いる。国民に対して我慢を強いて暴力を振るっている。DV男と同じ体質だと思います。これは変えなければいけません」と語った。

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「いのちと暮らしを支える医療・介護・福祉の会」が公表した五輪中止を求める声明文。「この夏の日本でのオリンピック開催は、大切ないのちを犠牲にするリスクとなります」と訴えている

【「子どもに説明できない」】
元衆院議員の井戸まさえさん(立憲民主党)は「都議選では五輪について政党として明確に主張したのは共産党だけだった」と振り返った。
 「五輪と新型コロナウイルスというのが都民の主な関心事であったにもかかわらず、立憲民主党もそうなんですが、最終的には投票してもらわないといけないので世論の動向に非常に敏感になっていました。それに、都知事が入院したことで五輪の是非じゃなくなっちゃっった。『疲れてかわいそうな小池さんに反対を言っちゃ駄目』というような空気が生まれて、五輪反対が言えない雰囲気になってきたのを感じました。本来であれば、どうやったら中止にできるのか、開催されてしまった場合に中断できるのか、感染が拡大したときにどのように対処するのかなどを議論できる機会が都議選だったのですが…」
 臨床心理士で「原宿カウンセリングセンター」顧問の信田さよ子さんは「甚大な被害が生じた東日本大震災の、特に福島の人々に何もしないでお祭りを持って来ればいいだろうと(いう発想が)本当に腹立たしい」と語気を強めた。
 「DV男は支配が巧みです。強制と思わせないでそっちの方向に持って行く。そして責任を取らない。政治も同じです。菅政権、もちろん安倍政権もそうですが、誰がやったのか分からないようにして『俺じゃないよ』と逃げてしまう。運動会を楽しみにしていた子どもたちから『どうして僕たち私たちの運動会は中止されて、五輪は中止されないんですか』って尋ねられます。どうしてって説明つかないですよね。即刻やめて欲しいです」
 「誰が考えても観戦が拡大します」と話したのは、社民党党首の福島みずほさん(参議院議員)。
 「尾身茂会長(新型コロナウイルス対策分科会)も政府も、バブル方式で競技者関係者と一般の人が交わらないから大丈夫と延々言ってきました。でも、それは穴があって駄目だと分かりました。五輪関係者はコンビニに行っても良いということです。穴だらけなのです」
 ようやく辞退が増え始めた「学校連携観戦プログラム」についても「熱中症と感染の心配があるのになぜやるのか。雷雨のなかを歩かせて被雷するようなもの。全面的に中止させたい」と語った。



(了)
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