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【自主避難者から住まいを奪うな】家賃補助申請受付始まる。全国からの無償提供延長求める意見書は〝無視〟する内堀知事。「反論の機会無い」と県職員は不満顔

原発事故により政府の避難指示の出ていない地域から福島県外へ避難している〝自主避難者〟向け住宅の無償提供が2017年3月末で打ち切られる問題で、福島県は3日、新たな支援策として打ち出した家賃補助の申請受付を福島市内に開設した「福島県民賃等補助金事務センター」で始めた。全国の地方議会から無償提供の延長を求める意見書が福島県知事宛てに提出されているが〝無視〟して計画を強行することで、無償提供延長の道を事実上、閉ざした格好だ。県職員も「意見書も良いが、問い合わせも視察も反論の機会も無い」と不満を口にする。打ち切り強行まであと5カ月。


【申請書類無いまま受付開始】
 自民党福島県支部連合会の入る中町ビル6階。9月29日に開設された「福島県民賃等補助金事務センター」には、人材派遣会社から派遣されている3人と、福島県職員2人の計5人が常駐。電話での問い合わせに対応するほか、県外避難者から送られてきた申請書類の受理、審査、「補助金交付決定通知書」(もしくは「補助金申請却下通知書」)の送付などを担う。「飯舘村防犯・防災巡回パトロール事業」や「伊達市学校給食放射性物質検査業務」など、原発事故に伴って生じた業務を多数請け負っている福島市内の人材派遣会社「トーネット」に業務委託した。現在は問い合わせも少なく少人数だが、福島県生活拠点課によると「業務が多忙になると予想される12月以降、最大で15人を派遣するよう派遣会社には依頼している」という。
 3日に補助金申請の受け付けが始まったものの、避難者には申請に必要な書類すら届いておらず、生活拠点課の幹部は「準備が間に合わなかった。申し訳ない」と平謝り。これから申請書類を郵送するが、避難者の手元に届くのは今月下旬頃になるという。「申請書類は福島県のホームページ(http://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/ps-minchin-shien.html)からもダウンロードできます」(生活拠点課)。
 しかし、福島県にとっては避難者の手元に申請書類が届いているか否かが重要なのではない。家賃補助という打ち切り後の「新たな支援策」に関する実務が始まるということは、避難者が求めている「無償提供の延長」の道が残念ながら閉ざされてしまう事を意味する。
 県生活拠点課の幹部は言う。「今から方針が変わるというものでは無い。内堀知事の考えが変わったら国も尊重する?そんな事絶対にありませんよ。だったらなぜ、国は無償提供打ち切りに同意したのでしょうか。同意したという事は、国も内堀知事と同じ考えだという事です。今後は、戸別訪問などで来春以降の住まいが決まらないという人を極力、減らすことに全力を尽くしたい」。
 誰が何と言おうと自主避難者への住宅無償提供は打ち切る。そんな福島県の意思が表れているのが、全国の地方議会から寄せられている意見書への対応だ。先の幹部はこう言い切る。
 「意見をいただいたからといって、方針が変わるものでは無い」


家賃補助の申請受付業務が始まった「福島県民賃等補助金事務センター」。しかし、避難者の手元には申請書類はまだ届いていない=福島市中町、10月3日撮影

【「議員からの問い合わせも無い」】
 福島県生活拠点課によると、2015年6月の東京都小金井市議会を皮切りに、全国の市町議会から自主避難者への住宅無償提供について継続や延長を求める意見書が寄せられている。
 2015年は小金井市のほか福島県郡山市、新潟県新潟市、千葉県佐倉市の4件。今年に入って意見書提出の流れは加速し、東京都千代田区、埼玉県嵐山町、東京都小金井市(再)、山形県米沢市、新潟県新潟市(再)、静岡県静岡市、山形県白鷹町、山形県飯豊町、山形県東根市、山形県寒河江市、山形県小国町、神奈川県横須賀市、山形県南陽市、山形県村山市、山形県川西町、山形県鶴岡市、京都府八幡市、神奈川県二宮町、山形県尾花沢市、山形県長井市の各議会から、安倍晋三首相や内堀雅雄福島県知事などに宛てて意見書が提出された。
 まだ生活拠点課には文書が届いていないが、神奈川県藤沢市、福島県南相馬市の議会も既に意見書を提出。京都府宇治市議会でも、今月3日に開かれた総務常任委員会で意見書の提出を求める請願が全会一致で採択された。もはや避難者のみならず、多くの地方議会が原発事故避難者に共感して住宅の無償提供を求める事態になっている。
 「原発事故被害者の救済を求める全国運動」のまとめでは、北海道釧路市、東京都武蔵野市、神奈川県茅ケ崎市、京都府木津川市などの議会からも住宅の無償提供を求める意見書が提出された。避難者や支援者が運動を継続しており、今後もさらに増える見通しだ。
 意見書には法的拘束力が無いため、福島県は意見書を淡々と受け取るばかり。そもそも民間団体の集計と一致せず、住宅無償提供打ち切りに反対する意見書を正確に把握していない可能性もある。
 「ご意見はご意見として承りますが、私の知る限り、意見書提出を審議なさっている議員から我が方の意見を尋ねるような問い合わせの電話は1件も無い。政府の避難指示が出ていない地域がどうなっているか、視察にも来ない。例えば米沢市は近いのだから来られるでしょう」と生活拠点課幹部は不満顔。 「個人的意見ではありますが、避難者の方々は各議会で意見を述べる機会があるでしょうが、我々にはありません。一方的、というわけでは無けれど…」と語った。


福島県は「除染が進み、生活環境は改善されている」と住宅の無償提供を打ち切る。「依然として被曝リスクは低くない」とする避難者との溝は埋まらない=川俣町中央公民館のモニタリングポスト。9月24日撮影

【「もはや応急救助の必要無い」】
 来春の住宅無償提供打ち切りを公表して以来、福島県の主張は次の点で一貫している。①除染で生活環境が改善した②多くの県民が避難していない─。生活拠点課の幹部は「政府の避難指示が出ている区域は別として、福島県中通りなど避難指示の出ていない区域は、もはや災害救助法でうたわれている『現に応急的な救助を行う必要がある場合』という状態では無く、同法を適用して『仮住まい』を無償提供するのは難しい。とはいえ、現実問題として避難者が存在するので何も支援しないわけにもいかない。そこで2年間の家賃補助(最大で60万円)を新たな支援策として打ち出した。県の財源も余裕がなく、用意できる精一杯の金額だ。公営住宅に入居できるよう、受け入れ先自治体にもお願いしている」と語る。
 避難者からは、災害救助法にこだわらず、避難者の負担した家賃を福島県が立て替えて東電に請求するよう求められているが、これについても「東電は区域外避難者(自主避難者)の避難費用を賠償していない。県が立て替えて請求するというのは個人賠償を肩代わりすることになってしまうので出来ない」と否定する。「原因者(東電)が特定されているのに、責任の範囲が明確ではない。区域外避難者の避難費用を東電が賠償しないのはおかしい」とも。内堀知事は避難者との面会を避けているが「これまでも交流会などで避難者の話は聴いているし、今後もそういう機会はある。知事が避難者の話を聴いていないという指摘はあたらない」と従来通りの主張を繰り返す。
 そもそも原発事故による自主避難者への住宅無償提供の新規受け付けは、原発事故からわずか2年足らずの2012年12月28日で終了。それ以降の避難は家賃も自己負担となり、避難を断念させた一因にもなった。今でも「住宅や仕事など条件が整えば避難していた」と語る人は少なくない。避難をしていない県民が多いことを根拠にして、現在の中通りに被曝のリスクが無いと語るのは無理がある。
 無償で住まいを確保出来たとしても、災害救助法の適用は2年間。その後は1年ごとの更新となり、避難者は毎年のように打ち切りの恐怖を抱きながら避難生活を送ってきた。そこに「これ以上の延長は難しい」と福島県からの一方的な打ち切り通告。結論を出してから避難者の意向を聴くという〝本末転倒〟ぶりで、しかも避難者の多くが「現在の住宅に住み続けたい」と望んでいるのに打ち切りを強行しようとしている。やむを得ない事情で転居したことで災害救助法の適用を外され、家賃を自己負担している避難者もいる。
 家賃補助にしても、21万4000円の収入要件を1円でも上回れば申請は却下され全額自己負担。福島県生活拠点課も「新たな支援策で全員救えるわけでは無い」と認めている。原発事故による被曝リスクを回避する、という自らに何ら瑕疵の無い理由で避難しているにもかかわらず、生活の根幹である住まいを巡って不安定な状態が続いているのだ。
 「避難者に寄り添う」と繰り返す内堀知事は、一方で「復興」を掲げて避難者に帰還を促す。国も2020年の東京五輪を見据え、空間線量が年20mSvを下回れば健康に影響無いとして帰還困難区域を除く避難指示の解除を加速させている。安倍晋三首相は五輪の場で福島の「復興」を世界にアピールする腹積もりで、それまでに原発避難者を限りなくゼロにしたい意思が透けて見える。
 住宅の無償提供打ち切りまで半年を切った。



(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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大手メディアが無視する「汚染」、「被曝」、「避難」を追い続けています。

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