【パンデミックと東京五輪】「私たち障害者は見せ物じゃない」 3人の当事者が語るパラリンピック反対への想い~第13回女性たちの抗議リレー
- 2021/08/26
- 21:29
東京オリンピック・パラリンピックに反対する女性たちが6月から続けている抗議リレー「私たちが止めるしかない東京オリパラ」の第13回が24日夜、パラリンピックの開会式が強行されるなかインターネット上で行われた。3人の障害当事者がリモート参加。「パラリンピックは優生思想のイベント」、「お金のかけるどころが間違っている」、「障害者は見せ物じゃない」などと語った。次回配信は31日20時。「人類最大規模のパンデミック下で自宅療養という名の医療崩壊が起きている最中、国際イベントは行うべきではない」と抗議リレーは続く。

【「優生思想のイベントだ」】
「自立生活センター札幌」理事の安積遊歩さんは、福島県出身。生後間もなく骨形成不全症と診断。車いすを利用しながら旧優生保護法の廃止を訴えるなど、活動を続けてきた。「多様性のレッスン~車いすに乗るピアカウンセラー母娘が答える47のQ&A」などの著書がある。だから、そもそもパラリンピックには否定的だった。
「障害を持つ私たちって、排除とか隔離とかいろんな目に遭いながら分けられて分けられて分けられてきたわけです。パラリンピックで、なぜ私たちが争わなくてはならないのか。争わなくて良い身体になった意味を考えられない時点で非障害者世界の優生思想に巻き込まれ、乗せられた人たちのつらいイベントだなと思ったわけです」
「大事な命なんだから、あっちが優れているとか、こっちは劣っていながらも頑張っているとか、余計なお世話だと思ってきた。命というのは、生きているというその1点で素晴らしい。できるできないとか、何かを証明しなきゃいけないとか、そういうところに右往左往する必要はないんです」
しかも、今は新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。
「世界的なパンデミックですよ。お金をかけるところが間違ってますよね。あまりに間違ってます。前代未聞の中止にならないかと毎日毎日、希望をもっています。声をあげても無駄だという無力感は持たないで欲しい。命が大事にされていないときに、こんなことに力を尽くしている場合じゃない。人々の屍のうえにメダルとか喜んだり感動したりするのは一切やめていただきたい」
「子どもたちには本当に幸せでいて欲しいし、良い未来であって欲しい。子どもの命を守って欲しい」と強調した安積さん。学校連携観戦プログラムにも反対している。
「学校連携観戦プログラムを聞いたときに、子どもたちに感染させるためのプログラムなのかと思いました。すさまじいブラックユーモア。完全に学徒動員ですよ」

13回目の「抗議リレー」には、3人の障害当事者がリモート参加。安積遊歩さんは出演依頼が続いて少し疲れた様子だったが、パンデミック下でのパラリンピックには「こんなことに力を尽くしている場合じゃない」と明確に反対した
【「障害者の姿が勉強になる?」】
「自立生活センター神戸Beすけっと」事務局長の藤原久美子さんとNPO法人「沖縄県自立生活センター・イルカ」代表の長位鈴子さんは前回に続いての参加。長位さんは「障害者って見せ物ではないんです」と語気を強めた。
「パラリンピックをなぜ喜べるのか分かりません。障害者が頑張れば健常者も頑張るのか。障害者が頑張る姿を見て、あなたたちも頑張ろうねというような教育に問題があると思います。私たちは普通の生活を送りたいし、スポーツが好きなら一生懸命やればいい。生まれてきた命を何かの物差しで測っていいはずがないし、生きて良い命とそうでない命なんてないはずなんです」
藤原さんは「学校連携観戦プログラムでパラリンピックを観せることが子どもの教育に良いことだという前提に立っていることに違和感があります。障害者の頑張ってる姿が勉強になるっていう前提は何なんだ。見せ物じゃない…」と話したが、藤原さん自身、周囲からほめられることがうれしかったと明かした。
「私は30代半ばで視覚障害者になりました。家族も腫れ物に触るように、何もさせてくれなくなった。家族も身近にいなかったからどう扱っていいか分からなかったんですよね。当時は『できる』ことがうれしかった。私たちの年代ってあまりほめられて育たなかったけれど、障害者になると名前を書いただけでほめられる。自分でも驚くくらいの反応があって、当初はそれがうれしくもありました。『障害者じゃないみたい』って言われるのもうれしかったんです。でも、ピアカウンセリングなどを通じて、それはおかしいよねと気づきました」
そもそもパラリンピック自体に反対。ましてやパンデミック下での開催は絶対に反対、と語る藤原さん。こんな言葉も口にした。
「子どもの頃は『参加することに意義がある』なんて言いましたよね。パラリンピックはより、そういうものだと思います」




安積さんたちが連名で公表した声明。感染状況の悪化がいかに障害のある人々の命を脅かしているか、オリパラなど開催している場合ではないという想いが伝わってくる
【「休校前提に計画を」】
医師の青木正美さん(公益社団法人「日本女医会」理事)は、「いまニュースでは、どれほど入院が大変か、どれほど往診のドクターが大変な想いをしているのか。そういうものが流されている。パラリンピックが行われようとしているのは、まるで異次元の世界のよう」と語った。
「いま起こっていることの半分以上は人災。特に政治がサボってしまっている。オリパラを中心として人が多く集まるという状況を人為的に作り出して対策は後手後手。検査も隔離もしなかったのでくるところまで来てしまった」
青木さんは「覚悟を決めてハードロックダウンをするしかない。もちろん補償とセットで」と強調。特に子どもたちの間に感染が拡がっていることを懸念しているという。
「デルタ株は子どもが感染しやすい。都内でも小児科医が忙しくなっています。夏休み明けの学校で子どもたちが感染して家に持ち込み家族が感染する、というとんでもない事態が待っている。保護者は休校になるかもしれないという前提に立って計画を立ててください。今の状態は断崖絶壁に立っているのと同じ。明日の私たちの命は分からないですよ」
「パラリンピックを中止するべきという議論は、報道も含めて五輪ほど出て来ない。中止を口にするのがタブーなんでしょうか。実際にパラリンピックの関係者のなかから150人以上の陽性者が見つかっているわけだし、今からでもやめて欲しい」と語ったのは、医師の前田佳子さん(「国際婦人年連絡会」共同代表)。
懸念される児童生徒の感染リスクについては「学校の授業こそ集まってやる必要はない。一方通行の授業が多いので、これこそオンラインでやることに何の問題もないと思う。学校単位でのPCR検査をしないのであれば、オンライン授業にするべきです」と語った。
(了)

【「優生思想のイベントだ」】
「自立生活センター札幌」理事の安積遊歩さんは、福島県出身。生後間もなく骨形成不全症と診断。車いすを利用しながら旧優生保護法の廃止を訴えるなど、活動を続けてきた。「多様性のレッスン~車いすに乗るピアカウンセラー母娘が答える47のQ&A」などの著書がある。だから、そもそもパラリンピックには否定的だった。
「障害を持つ私たちって、排除とか隔離とかいろんな目に遭いながら分けられて分けられて分けられてきたわけです。パラリンピックで、なぜ私たちが争わなくてはならないのか。争わなくて良い身体になった意味を考えられない時点で非障害者世界の優生思想に巻き込まれ、乗せられた人たちのつらいイベントだなと思ったわけです」
「大事な命なんだから、あっちが優れているとか、こっちは劣っていながらも頑張っているとか、余計なお世話だと思ってきた。命というのは、生きているというその1点で素晴らしい。できるできないとか、何かを証明しなきゃいけないとか、そういうところに右往左往する必要はないんです」
しかも、今は新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。
「世界的なパンデミックですよ。お金をかけるところが間違ってますよね。あまりに間違ってます。前代未聞の中止にならないかと毎日毎日、希望をもっています。声をあげても無駄だという無力感は持たないで欲しい。命が大事にされていないときに、こんなことに力を尽くしている場合じゃない。人々の屍のうえにメダルとか喜んだり感動したりするのは一切やめていただきたい」
「子どもたちには本当に幸せでいて欲しいし、良い未来であって欲しい。子どもの命を守って欲しい」と強調した安積さん。学校連携観戦プログラムにも反対している。
「学校連携観戦プログラムを聞いたときに、子どもたちに感染させるためのプログラムなのかと思いました。すさまじいブラックユーモア。完全に学徒動員ですよ」

13回目の「抗議リレー」には、3人の障害当事者がリモート参加。安積遊歩さんは出演依頼が続いて少し疲れた様子だったが、パンデミック下でのパラリンピックには「こんなことに力を尽くしている場合じゃない」と明確に反対した
【「障害者の姿が勉強になる?」】
「自立生活センター神戸Beすけっと」事務局長の藤原久美子さんとNPO法人「沖縄県自立生活センター・イルカ」代表の長位鈴子さんは前回に続いての参加。長位さんは「障害者って見せ物ではないんです」と語気を強めた。
「パラリンピックをなぜ喜べるのか分かりません。障害者が頑張れば健常者も頑張るのか。障害者が頑張る姿を見て、あなたたちも頑張ろうねというような教育に問題があると思います。私たちは普通の生活を送りたいし、スポーツが好きなら一生懸命やればいい。生まれてきた命を何かの物差しで測っていいはずがないし、生きて良い命とそうでない命なんてないはずなんです」
藤原さんは「学校連携観戦プログラムでパラリンピックを観せることが子どもの教育に良いことだという前提に立っていることに違和感があります。障害者の頑張ってる姿が勉強になるっていう前提は何なんだ。見せ物じゃない…」と話したが、藤原さん自身、周囲からほめられることがうれしかったと明かした。
「私は30代半ばで視覚障害者になりました。家族も腫れ物に触るように、何もさせてくれなくなった。家族も身近にいなかったからどう扱っていいか分からなかったんですよね。当時は『できる』ことがうれしかった。私たちの年代ってあまりほめられて育たなかったけれど、障害者になると名前を書いただけでほめられる。自分でも驚くくらいの反応があって、当初はそれがうれしくもありました。『障害者じゃないみたい』って言われるのもうれしかったんです。でも、ピアカウンセリングなどを通じて、それはおかしいよねと気づきました」
そもそもパラリンピック自体に反対。ましてやパンデミック下での開催は絶対に反対、と語る藤原さん。こんな言葉も口にした。
「子どもの頃は『参加することに意義がある』なんて言いましたよね。パラリンピックはより、そういうものだと思います」




安積さんたちが連名で公表した声明。感染状況の悪化がいかに障害のある人々の命を脅かしているか、オリパラなど開催している場合ではないという想いが伝わってくる
【「休校前提に計画を」】
医師の青木正美さん(公益社団法人「日本女医会」理事)は、「いまニュースでは、どれほど入院が大変か、どれほど往診のドクターが大変な想いをしているのか。そういうものが流されている。パラリンピックが行われようとしているのは、まるで異次元の世界のよう」と語った。
「いま起こっていることの半分以上は人災。特に政治がサボってしまっている。オリパラを中心として人が多く集まるという状況を人為的に作り出して対策は後手後手。検査も隔離もしなかったのでくるところまで来てしまった」
青木さんは「覚悟を決めてハードロックダウンをするしかない。もちろん補償とセットで」と強調。特に子どもたちの間に感染が拡がっていることを懸念しているという。
「デルタ株は子どもが感染しやすい。都内でも小児科医が忙しくなっています。夏休み明けの学校で子どもたちが感染して家に持ち込み家族が感染する、というとんでもない事態が待っている。保護者は休校になるかもしれないという前提に立って計画を立ててください。今の状態は断崖絶壁に立っているのと同じ。明日の私たちの命は分からないですよ」
「パラリンピックを中止するべきという議論は、報道も含めて五輪ほど出て来ない。中止を口にするのがタブーなんでしょうか。実際にパラリンピックの関係者のなかから150人以上の陽性者が見つかっているわけだし、今からでもやめて欲しい」と語ったのは、医師の前田佳子さん(「国際婦人年連絡会」共同代表)。
懸念される児童生徒の感染リスクについては「学校の授業こそ集まってやる必要はない。一方通行の授業が多いので、これこそオンラインでやることに何の問題もないと思う。学校単位でのPCR検査をしないのであれば、オンライン授業にするべきです」と語った。
(了)
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