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【パンデミックと東京五輪】「障害のない人を元気づけるためのパラリンピック?」3人の当事者が改めて開催に反対~第14回女性たちの抗議リレー

東京オリンピック・パラリンピックに反対する女性たちが6月から続けている抗議リレー「私たちが止めるしかない東京オリパラ」の第14回が8月31日夜、インターネット上で行われた。2人の国会議員のほか、今回も3人の障害当事者がリモート参加。「障害のない人を元気づけるためのパラリンピックなのか」、「本当に命を大事にするのなら、途中でも中止して欲しい」などと語った。次回配信は7日20時。大会は5日に閉幕する予定だが「オリパラが明らかにしたものは何かというまとめの会にしたい」と主催者は話している。
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【「障害あるのにすごい?」】
NPO法人「沖縄県自立生活センター・イルカ」代表の長位鈴子さんは8月30日、沖縄県精神保健福祉会連合会と連名で要望書を県知事と県議会議長宛てに提出した。命の選別をしないこと、分かりやすい情報公開を求めたという。
 「クラスターのなかに具体的に障害者が何人いるとか県に問い合わせるのですが、個人情報保護の関係で答えられないと言われてしまう。どこでどうなっているのか本当に分からないんです。感染防止で今は家族すら面会できないので、どんな状態になっているのかも分かりません」
 沖縄県は、直近7日間の新規陽性者数を人口100万人あたりに換算すると全国ワースト1位。世界的に見てもアメリカ、イギリスに次ぐ水準になっている。だからこそ長位さんは「観光客の来県を止めて欲しい」と繰り返し訴えている。
 「経済を回さなければいけないと言って観光客を止めない。宮古島の市長は『観光や帰省で島に来ないで欲しい』と言いました。沖縄県だけではどうしようもないので国が止めて欲しいです」
 「パラリンピックの教育的価値」に改めて疑問を投げかけたのは「自立生活センター神戸Beすけっと」事務局長の藤原久美子さん。
 「目が見えない『のに』すごい?見える自分はもっと頑張らなくちゃ?障害のない人を元気づけるためのパラリンピック?だから障害者が頑張っている姿を見るの?」
 「私が中途失明する前と白状を使うようになってからとでは、周囲の態度が違います。もちろん親切にサポートしてくれる人が多いのですが、特別な人という感覚ですよね。それで『多様性』や『共生』と言っているのが許せないです。グループホームなど施設をつくろうとすると反対運動が起きます。では、パラリンピックがそれを変えられるのか。私はそうはならないと思います。もっと障害者が普通に生きる社会にならないと『多様性』や『共生』にはなりません」
 「自立生活センター札幌」理事の安積遊歩さんは「自分の命さえ大切に思っていないからオリパラを強行するのでしょうね」とつぶやいた。
「本当に命を大事にするのなら(開催が)間違いだったと認めて、途中でも中止して欲しい。学校連携観戦プログラムも中止するべきです」

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今回も3人の障害当事者が参加した抗議リレー。改めて感染への不安やパラリンピックへの反対を語った

【「1日も早く中止を」】
 社民党党首の福島瑞穂さん(参院議員)は「パラリンピックを開催できる状況ではない、1日でも早くやめるべきです。医療資源や体制、エネルギーやお金はコロナ禍で困っている人にこそ振り向けるべき。『臨時病院』について今日、自治体議員300人以上の署名を添えて開設せよと厚労省に要請しました」と語った。
 「ラムダ株が五輪開会式前に見つかっていたのに一切公表しなかった。五輪をやらなければこんなことにならなかったというのは明確ではないでしょうか。7月23日には『ラムダ株』というのを感染研から厚労省が報告を受け、WHOにも報告しているんです。にもかかわらず、首相と官房長官に連絡がいくのが8月13日で、厚労大臣にはもっと遅いんですよ。だから、少なくともラムダ株は五輪を開催しなければ入って来なかった可能性がある」
 そのうえで、学校連携観戦プログラムに改めて反対した。
 「子どもの命をなぜ危険にさらすのか。子どもたちを地雷の上を歩かせるようなものです。人の命が木の葉のように軽く扱われていいのか」
 共産党の田村智子さん(参院議員)は、今年5月の国会審議を挙げ、コロナ禍での障害者の苦労を語った。
「通常国会で障害者差別解消法の改正があり、5月27日の参議院内閣委員会に全日本視覚障害者協議会の方に来てもらいましたが、コロナ禍で苦労なさっているのがよく分かりました。距離を空けて並んでくれと言われたって分かりません。介助の際には誰かに触れることが大事なのに、触れること自体が感染リスクを招く…」
 藤原さんも「マスクをしていると方向感覚が無くなっちゃう。以前だったら道行く人にちょっとすみませんと声をかけたのに、今はすごく躊躇してしまう。簡単に助けてもらいにくくなりました」と話す。
 国会で当事者が挙げたのが不動産業者での対応だった。
 「合理的配慮って何を求めますかと尋ねたときに、住まいだと。就職して自立しようと考えたが、独り暮らしをするなんてとんでもないと全部断られたそうです。だから就職も独り暮らしもあきらめたというのです。数十年前の話ですが、この差別はどこまで解消されているのでしょうかと問題提起されたときに、本当にグサリときました」
 いま、私たちに求められているのはパラリンピックに感動することだろうか。

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東京都医師会が8月31日の臨時記者会見で配布した資料。尾﨑治夫会長は「私たちは今、歴史的な戦いのなかにいます」などと呼びかけるメッセージを発表した

【「ピークアウト」に否定的】
 都内でクリニックを開く青木正美さん(公益社団法人「日本女医会」理事)の元にも、東京都医師会からの協力要請があったという。
 「在宅医療を充実させるために手伝えるドクターは名乗りをあげてください。大規模仮設病院ができたら参加して欲しい。ワクチン接種のお手伝いをしてくれませんか。8月31日正午までにできる人はエントリーして欲しいという内容でした」
 新学期が始まり、青木さんは学校経由で家庭内感染が拡がることが心配だという。
 「学校感染が家庭内に持ち込まれて両親が感染し、それを子どもが学校に持って行って違う子どもから家庭に移す…と永遠に続くのが怖いです。新たな変異株も発見されました。アルファ株とデルタ株が混ざったらどうなってしまうのか。しかも、医療従事者からだんだん、ワクチンの効果が切れる時期になってきている。だからこそ、パラリンピック中止が1つの大きいサインになる。もう止められないから最後までやりましょうなんて言っているうちに、自分の命も危うくなりますよ。しっかりとわが身に引き寄せて、子どもたちの命を考えなければいけないと思います」
 医師の前田佳子さん(「国際婦人年連絡会」共同代表)は「ワクチンを接種しても出歩かないで」と話した。
 「4月頃に接種を終えた医療従事者のなかから感染者が出始めている。接種したから旅行に行っても良いわよね、と出かけている人がたくさんいますが、ワクチンの効果が薄れて感染してしまう可能性が非常に高いと思います。2回接種した高齢者が重症化した事例もある。まだ元の生活に戻ることを考える段階にはないと思います」
 前田さんは以前から、都内の本当の感染者数が把握されていないと指摘し続けている。
 「東京都が無症状の人に駅などで任意で実施している検査の陽性者数が1カ月で18倍になっているということを考えれば、感染者数が減っているとはとても思えないですよね。何をどうしようと考えているか分からないから、私には『明かり』は見えないです」。もはやピークアウトしたのではないか、という声があることについては、青木さんも否定的な見方をしている。
 気づけば報道は、自民党総裁選(17日告示)や総選挙の話題ばかり。
 「障害の種別を越えてやるべきことはたくさんあるのに、自民党総裁選にお金をかける?もっとやるべきことはあるだろうと思います」(長位鈴子さん)



(了)
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鈴木博喜

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