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【パンデミックと東京五輪】2人の女性医師が訴え続けた「オリパラ中止」と「感染爆発」と「政府の無策」~女性たちの抗議リレーより

パラリンピックが5日夜、閉幕した。6月1日から始まったオンライン抗議リレー「私たちが止めるしかない東京オリパラ」は、8月31日までに14回を数え、60人以上の女性たちが様々な視点でオリパラ中止を訴えてきた。7日夜の最終回を前に、医師として呼びかけ人に加わった青木正美さん(公益社団法人「日本女医会」理事)と前田佳子さん(「日本女医会」前会長、国際婦人年連絡会共同代表)の3カ月間の発言を振り返っておきたい。未曽有のパンデミック下で強行されたオリパラの問題点や感染爆発を前に有効な対応を取れなかった政府の無策ぶりが浮かび上がってくる。
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【「人が動けばウイルスも動く」】
 6月1日20時。第1回抗議リレーは青木医師のこんな言葉で始まった。
 「オリパラの中止を求めます。全国で行われようとしている事前キャンプの中止も求めます。臨床医の立場から、21世紀のこの日本で、患者さんが入院できず自宅で亡くなるという事実をどうしても許容できません。オリパラをやるのであれば、その前にやるべきことがたくさんありました。それをほとんどやっていないにもかかわらず強引に大会に突き進んでいくのは大きな間違いです。恐らく人類史上最大の疫病です。これだけの規模のパンデミックは人類は未だに経験したことがありません」
 ちなみに、この日発表された東京都の新規陽性者数は471人。全国でも2640人だった。その後、8月13日には東京都だけで1日5773人にまで新規陽性者数が増えた。国内全体でも2万5000人を上回った。青木医師は真夏の感染爆発を予言するように毎週、オリパラを中止して国民に命と暮らしを守るよう訴えた。
 「大災害に対峙する際の要諦は、リスクを大きく見積もることです。日本はそのイロハのイができていません。史上空前のパンデミックという大災害の最中に、まるで火に油を注ぐように世界中から人を集め、炎天下で運動をする。真夏の開催というだけで大反対なのに、そこに加えてパンデミック。本当に何が起こるか分かりません」
 「人が動けば必ずウイルスも動きます。オリパラによって感染が拡大し、日本だけではなく他国にも感染を拡大させてしまうかもしれない。それが予測できているのに止められないというのは許されないことなんです。事前合宿も始まりました。全国の自治体はどれだけの緊張や痛みを抱えるのでしょうか」
 新規陽性者数がどれだけ増えてもオリパラは中止されなかった。一方、五輪開会式の視聴率(7月23日)は56・4%に達した。青木さんは人々の移ろいやすさを見透かしたように、こう視聴者に語っていた。
 「大会さえ始まってしまえば、事前キャンプさえ始まってしまえば、国民はテレビに釘付けなのですか?後は野となれ山となれなのですか?」

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一貫してオリパラの中止のPCR検査の拡充、大規模仮設病院の設置などを訴えてきた青木正美さん。しかし「建物が崩れていない〝首都直下型地震〟が全国に波及してる状況」でもオリパラは強行され、政府のパンデミック対応は後手後手に回った

【子どもたちの感染懸念】
 「このまま強引に開催されたら、消極的とはいえ認めたことになります。共犯ですよ」(第3回)
 しかし、五輪は強行された。
 第9回で、青木さんは「いつでも、どこでも、誰でも無料で、何度でもPCR検査ができるようになるまで五輪など駄目。そういう共通認識を私たちが持たないで、ズルズル認めて来てしまった」と怒った。
 「日本の津々浦々から、ありとあらゆる人が東京に集結している。明日にも五輪を打ち切って欲しい。この状況を絶対に楽観視してはいけません。今すぐPCR検査を」
 菅政権はPCR検査を拡充するどころか、「入院は原則重症者のみ。軽症者は中等症者は自宅待機」との方針を打ち出した。青木さんは第10回で「堂々と〝棄民宣言〟した。あなたたちの命は保障できかねます、という大宣言」と語り、仮設病院の設置を訴えた。
 「コンベンションホールのような広い場所を借り上げてベッドを並べ、大規模な仮設病院をいち早く立ち上げていただきたい。少ないスタッフでも見渡せて、急変した人に対応出来ます。感染症の基本は検査して陽性者と陰性者を分けること。『パンデミック下の五輪』という人類のタブーを冒しておいて、なぜ日本政府はそれができないのか」
 「これから必要になるのはハードロックダウンと補償です。ちゃんと国会を開いて審議してください。日本国憲法下でハードロックダウンは認められています。憲法など変えなくても現行法で十分対応できます。でも、自民党がハードロックダウンをしないのはなぜか。補償をしたくないからですよ」
 五輪は8月8日に終わり、今度はパラリンピックが開幕した。「建物が崩れていない〝首都直下型地震〟が全国に波及してる状況」(第12回)でも強行された。
 第13回で「人が多く集まるという状況を人為的に作り出して対策は後手後手。検査も隔離もしなかったので来るところまで来てしまった」と語った青木さんは今、子どもたちの感染を懸念している。
 「デルタ株は子どもが感染しやすい。夏休み明けの学校で子どもたちが感染して家に持ち込み家族が感染する、というとんでもない事態が待っている。今の状態は断崖絶壁に立っているのと同じ。明日の私たちの命は分からないですよ」

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前田佳子さんも「これ以上、大切な命が失われるようなことがあってはならない」とオリパラ中止を訴えてきた。また「PCR検査と陽性者隔離の徹底」を何度も求めたが、菅政権は〝ワクチン一択〟で真逆の施策を続けた

【徹底されぬ「検査と隔離」】
 前田佳子さんは第1回で、「医療現場の疲弊はオリパラ開催ありきで突き進んできた安倍菅政権による人災。これ以上、大切な命が失われるようなことがあってはならない」とオリパラ中止を訴えた。
 「具体的な感染対策はなく、いまだにマスクと手洗い、そして飲食店の狙い撃ちです。国内でのクラスターは今や、多くが医療施設や老健施設などで発生しています。飲食店での発生はわずか5~6%。つまり、日本のやっている対策は科学に基づかない、説得力のない政策だと思います」
 「これだけ感染が拡大している中でも、東京都のPCR検査は日曜日になるとすごく少ない。ウイルスは勝手にいなくなってはくれません。度重なる緊急事態宣言中でも『PC検査』と『感染者の隔離』という基本原則すら行わない日本は、とても先進国とは言えないのです」
 しかし、菅首相は〝ワクチン一択〟でパンデミック下のオリパラ開催を強行しようとした。
 「(ワクチン接種で)重症化は抑えられるかもしれないが感染は止められないということが明確に報告されています。感染者を特定したうえで隔離しなければ感染はますます拡大する一方です」(第9回)
 第10回では「東京の場合は特に重症者の定義がダブルスタンダード。人工呼吸器やエクモを使っている人だけを『重症者』と呼んでいます。恐らく8倍から10倍くらい違っている。そこに含まれない人たちが今後、自宅待機を強要されるのではないか」と語ったが、現実のものとなってしまった。
 前田さんは何度も、「PCR検査と隔離の徹底」を求めた。しかし、家庭内感染が増えてしまう。
 「自宅待機は絶対にやってはいけない。同居家族が感染してしまうから隔離しないといけない」
 第12回では「感染状況は五輪前よりずっと悪い。(パンデミックの)出口が見えないなかで、世界から多くの人を集めるパラリンピックは本当に止めないといけない」と強く中止を訴えたが、パラリンピックも強行された。しかも、その陰でワクチンの効力が切れ始めているという。。
 「4月頃に接種を終えた医療従事者のなかから感染者が出始めている。接種したから良いわよね、と出かけている人がたくさんいますが、ワクチンの効果が薄れて感染してしまう可能性が非常に高いと思います。2回接種した高齢者が重症化した事例もある。まだ元の生活に戻ることを考える段階にはない」
 6日、公表された東京都の新規陽性者数は1000人を下回った。しかし、前田さんは楽観視していない。
 「東京都が無症状の人に駅などで任意で実施している検査の陽性者数が1カ月で18倍になっているということを考えれば、感染者数が減っているとはとても思えない。私には『明かり』は見えないです」



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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