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【パンデミックと東京五輪】「開催止められず悔しい」女性たちの抗議リレーが終了~オリパラが遺した〝負のレガシー〟

東京オリンピック・パラリンピックに反対する女性たちが6月1日から続けてきたオンライン抗議リレー「私たちが止めるしかない東京オリパラ」の最終回が7日夜、インターネット上で行われた。呼びかけ人の5人がリモート出演。3カ月間で悪化した感染状況やオリパラがあぶり出した課題、中止させられなかった悔しさなどを<1時間にわたって語り合った。これまでに指摘されたオリパラの暴力性や差別性、そしてパンデミック下での強行をどう総括し、これからの社会に活かしていくか。ネット上に残る15本の動画が〝教科書〟となる。
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【進んだ〝感染格差〟】
 「パンデミックが始まってから1年半。日本は世界各国とかなり差がついてしまいました」
 抗議リレーの開催を呼びかけた医師の青木正美さん(公益社団法人「日本女医会」理事)。最後のスピーチをそんな言葉で始めた。
 「PCR検査というのは元々、社会のための検査。社会のためであり、家族のためであり、自分が生活する地域社会が感染から免れるためにはどうすれば良いのかと考えるきっかけになるのがPCR検査の本質です」
 「しかし、検査を受けなくても容認される社会ができてしまった」と指摘する。
 「無症状だからPCR検査を受けなくても良いんじゃないか、と。背景には仕事の問題があります。シングルマザーが陽性が分かって10日間も仕事を休んだら死活問題。それなら検査など受けない方が良いのではないか、と考えるのが日本の社会。〝感染格差〟が生じてしまった」
 「世界では、検査を受けて陽性だと分かったら安心して仕事を休める社会が実現している。自分を守るため、社会を守るため、他人に感染させないためということを子どもですら理解しているのに、日本では実現しなかった」
 そして、第11回で指摘した「アンフェアな職域接種」のために進んでしまった〝ワクチン格差〟。
 「ここのところ、都内では30~50代くらいの方々が重症化してしまって命を落とすケースが多いと言われています。恐らくこの方々は、零細企業に勤めているか非正規雇用、フリーランスで職域接種を受けられなかったのではないか」
 政府がオリパラ開催にまい進した裏でPCR検査は拡充されず、ワクチン格差を生じさせた。
 「PCR検査を充実させて現状把握ができれば、次々と課題も見えてくる。検査数があまりにも少なすぎて、ピークアウトしたのかどうかも分からない。これでは向こう10年も感染症から抜け出せないのではないかとさえ考えてしまいます」
 オリパラであぶり出された課題に今後も取り組んでいきたい、と語る青木さん。
 「PCR検査が足りない、空気感染、オリパラが全国に感染を拡げた…。特にデルタ株は、すれ違っただけでも感染してしまう『空気感染』であるのに、政府は大々的に言っていない。この課題をしっかりと心に抱きつつ、今後も感染症に向き合っていく。オリパラが残した〝負のレガシー〟をしっかりとかみしめていきます」

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〝ワクチン一択〟で突き進んできた菅首相。しかし、青木さんは「アンフェアな職域接種が〝ワクチン格差〟を生じさせてしまった」と指摘する

【〝感染症ムラ〟の思惑】
 同じく医師の前田佳子さん(「日本女医会」前会長、「国際婦人年連絡会」共同代表)は「もはや『濃厚接触者』の定義そのものに意味がない」と語った。
 「最初にこのウイルスを知ったときからずいぶん状況が変わってきた。最初は飛沫や接触での感染がメインだと言われていたが、今年3月くらいから、世界では空気感染ということが言われています。論文も発表されていたのに、いまだに厚労省が公表しているガイドラインはアップデートされていない。空気で感染するということが明確に言われていません。デルタ株はウイルス量が1000倍。空気感染がより顕著であるにもかかわらず、いまだに厚労省の濃厚接触者の定義は『マスクを外して15分以上、2メートル以内で会話をした』となっている。すれ違うだけでも感染するのだとしたら、その定義自体が意味がない」
 PCR検査が拡充されなかった背景には〝感染症ムラ〟の思惑があるという。
「オリパラのことがあるから隠したかったのか分からないが、最初から最後までPCR検査をきちんとやらない、足りない。背景には厚労省の医系技官や国立感染症研究所の人たちの思惑がかなり大きく絡んでいるんじゃないか。次のリーダーが誰になるのか分からないが、今からでもできることは是非やっていただきたい」
 前田さんは改めて、オリパラ開催を強行したことが感染拡大につながったと指摘した。
 「第1回を行った6月1日、東京都の新規陽性者数は471人でした。最も多かったのが8月13日で5773人。10倍以上ですよね。今日(7日)の時点で1629人ですので、オリパラでたくさんの人が移動した、海外からたくさんの方がいらしたことが関係していないとはとても思えない。こういうことも含めて振り返ってもらいたいです」
 そして、危惧するのが「ブレイクスルー感染」だ。
 「ワクチン2回接種を終えた人が既に感染しています。命を落とすくらいに重症化した人もいる。それから、まだ接種できない年齢の子どもたちがたくさん感染している。海外では子どもが亡くなった症例も増えて来ているようなので、これからどうしていかなければならないかということにも目を向けないといけない。これからもウイルスは変化を遂げると思うので、常に注視して新しい情報と向き合って行かなければいけません」

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呼びかけ人の5人が3カ月間を振り返った抗議リレー。宮子あずささんは、長引く自粛生活が心に与える悪影響を指摘。福島県郡山市で開かれている絵手紙展でも〝自粛疲れ〟を綴った作品が目立つ

【長引く自粛とメンタル】
 訪問看護師の宮子あずささんは、20年以上、精神科の領域で仕事をしてきた。パンデミック下で感染予防が最優先にされる必要性は十分に理解したうえで、あえて重要な問題提起をした。
 「感染防止のためにはもちろん家に居るのが良い。でも、家にずっといることでダメージを受ける人もいる。アルコール依存症の人、断酒会とつながって何とか呑まずに来られた人が、断酒会が開けなくなったりすると再飲酒(スリップ)してしまう。それで亡くなった人を訪問時に発見したこともありました」
 そして、感染への不安から生じる他人への厳しさ。
 「確かにウレタンマスクは良くないのだろうし、出歩いているのはよろしくないというのは感染予防という意味で分かります。でも、他人の行動に対してこんなに批判的で、常に監視をしてイライラするということがあったでしょうか。自分も出かけているのに、『電車が混んでる』などと怒ってツイッターに書き込んいる。それって怖い。その人だってそこに居る。それなのに他人に対してはすごく怒っている。果たしてパンデミックが落ち着いたときに、そういう人たちが他人への寛容さを取り戻して行かれるのだろうか。ものすごく心配です」
 福島県郡山市で開かれている絵手紙展でも「コロナ忘れたい」、「みんなとおしゃべりしたい」などと〝自粛疲れ〟などの心情をつづった作品が目立つ。
 「ずっと自粛を続けていくのは無理ですよね。どこかで変えていかないといけない。長丁場なら長丁場なりにゆるめる形でやっていかないと、自粛で死んでしまう人が増えてしまう。感染予防中心にしなきゃいけないけれど、ネガティヴな面もあるということを感じながら暮らしていきたいです」
 「フラワーデモ」の北原みのりさんは「この国の政治は人の命や暮らしを全然見ていない。いろいろなことに鈍くなっている。この3か月間で亡くなった命がどれだけあったかと思うと、これほど人を殺す政治ってなかったのではないか」と指摘。
 ずっと司会を務めてきた松尾亜紀子さん(「フラワーデモ」)は「私自身はコロナ禍の非常時でなければオリパラの暴力性に気付けなかった。特にパラリンピックが持つ差別性や暴力性に気付いていなかった。オリパラを止められなかったというのは本当に悔しいです。本当に止めたかった。これからは、開催してしまったことによる被害を止めなければいけないと思っています」と語った。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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