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【女川原発再稼働】「県民の大多数は再稼働に同意していない」 村井知事同意から約1年、仙台で再稼働反対の集会とデモ行進

東北電力女川原発(宮城県石巻市、女川町)の再稼働に反対する「さようなら原発宮城県民大集会」が26日午後、仙台市内で行われた。村井嘉浩知事は昨年11月、安全性が確認できたなどとして2号機の再稼働同意を表明したが、実は地元紙の調査でも約7割が反対。再稼働の是非を決める県民投票条例制定に向けた署名は11万筆を超えた経緯がある。新型コロナウイルスの感染拡大で延期されていた集会は今回も開催が危ぶまれたが、11月までに実施される知事選挙を控えており、参加者は改めて再稼働反対と民意を無視しない知事誕生を訴えた。
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【「再稼働反対が多数派だ」】
 勾当台公園で行われた集会で、多々良哲さん(女川原発再稼働を許さないみやぎアクション世話人)は「私たちは福島原発事故を決して忘れない。被災原発である女川原発を再稼働させてはならない。避難計画に実行性のない原発は動かしてはならないんです」と呼びかけた。
 「この集会は『3・11』から10周年だった今年3月に行われるはずでしたが、新型コロナウイルスの感染拡大で延期されていました。この9月は開催できるだろうか、実行委員会はずいぶん迷いました。」
 感染防止のためスピーチの時間を短縮し、デモ行進も無言。それでも集会を中止しなかったのは、遅くても11月までに実施される県知事選挙を控えているからだ。「知事選の前に県民の民意を示す必要がある。女川原発再稼働反対の県民の意思を形にして見せる必要があると考えた」(多々良さん)。
 5選を目指す現職の村井嘉浩知事は昨年11月「女川原子力発電所2号機の安全性についてはしっかり確認が出来たものと判断した」、「避難計画の基本となる部分の実効性は確保されたものと認識している」などと再稼働同意を表明。記者会見で、こう述べた。
 「原発がある以上、事故が起こる可能性は私はあると思います。しかし、事故があったから駄目だという事であれば、全ての乗り物も全ての食べ物もですね、それによって事故が起こった過去経験があるでしょうから、それを否定する事になってしまう。事故を教訓として、さらに高みを目指して発展させて行く、技術革新をして行く。このようにして人類は発展してまいりました」
 多々良さんは改めて、村井知事の考え方を批判した。「あの原発事故から何も学んでいないのでしょうか。いまだに故郷に帰れないでいる福島の人々の前で同じことが言えるのか」
 「福島第一原発の事故から10年。何度世論調査をしてもアンケートをとっても、宮城県民の約7割が女川再稼働に反対なんです。私たちは決して〝少数の反対派〟ではありません。多数派なんです。村井知事は県民の意見を聞こうともせず、県民投票も拒否しました。であれば選挙で、県民の意思を示そうじゃありませんか」

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勾当台公園で行われた集会。多々良哲さんや原伸雄さんらがスピーチをし、県民の民意を無視した女川原発再稼働同意を改めて批判。11月までに実施される知事選挙での勝利を訴えた

【「被曝せず避難などできぬ」】
 「人類が到達している科学では、原子力発電所の制御が不可能であることは原子力ムラの一部の御用学者を除いて多くの科学者の皆さんが警告を発し続けてくれています。原発から出る放射能も汚染廃棄物も、二酸化炭素と同様に地球からも宇宙からもなくさなくてはなりません。これはまさに人類史的課題です。まともな科学が通用する世の中をつくろうではありませんか」
 そう訴えたのは、石巻市の原伸雄さん。東北電力を相手取り、17人で女川原発再稼働の差し止めを求めて5月に提訴。原告団長を務める(弁護団長は小野寺信一弁護士)。第1回口頭弁論期日は11月8日15時、仙台地裁101号法廷に決まった。原さんは提訴の理由について、原告団ニュースの中で次のように綴っている。
 「原発からの避難計画など、誰がつくっても被曝せず逃げることなどできないことは明白です。しかし、法治国家である以上、政治を変えるか法と証拠で裁判に勝つ以外ありません」
 ステージで「第1回口頭弁論期日には多くの方に集まっていただき、村井知事が再稼働に同意しても県民の大多数は同意していないことを示す一大示威の場にしたい」と語った原さん。「みんなで知恵を尽くし、声をあげて全県民の力を集め、女川原発の再稼働をストップさせましょう」と呼びかけた。
 集会には「子ども脱被ばく裁判」原告代表、今野寿美雄さんの姿もあった。一審、福島地裁は3月の判決で被曝リスクや福島県内の被曝リスクを否定し全面的に訴えを棄却(一部却下)。仙台高裁での控訴審第1回口頭弁論が今月22日に予定されている。
 「浪江町の自宅は昨年9月、放射性廃棄物となって解体されてしまいました。当時5歳だった息子は高校1年生です」
 集会でのスピーチをそんな言葉で始めた今野さんは、改めて国や東電の原発事故対応への怒りを口にした。
 「年20ミリシーベルトまでの被曝を強要したりとか、やってることがメチャクチャです。今の状態では、子どもたちに未来なんか与えられないです。子どもを守れるのは大人なんです。大人の義務であり責任なんです。今私たちができることは原発を止める。そのためには声をあげないと駄目なんです。黙っていては認めたことになってしまうんですよ。福島の二の舞にならないためにも再稼働をしない。大きな声でNOと言い続けましょう」

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県民投票への賛同署名が11万筆を超えるなど、宮城県民の多くが女川原発再稼働に否定的な見方をしている。デモ行進では「最も安全な避難計画は再稼働しない事」と掲げた参加者も

【民意無視した村井知事】
 集会後、参加者は勾当台公園から仙台駅までをデモ行進。シュプレヒコールはせず、プラカードやのぼりを手に無言でアーケードを歩いた。参加した女性は「別に共産党や左翼と呼ばれる人たちだけが反対しているわけではありません。今日も来られなかったお母さんたちもいます。原発問題だけでなく水道民営化や病院の統合、美術館移転など、村井県政の独裁的な部分に反対している人は多いと思います。それが投票行動に結びつけばいいなと思います。やはり選挙は大事ですから」と話した。
 実は多々良さんたちは2018年、「再稼働の是非を自分たちで決めたい」と県民投票条例の制定を求める署名運動を展開。法で定められた4万筆(宮城県内有権者の2%)を大きく上回る11万筆異常が集まった。中でも、有権者に占める市区町村別の署名率は、女川原発が立地する女川町が21・9%で断トツの1位だった。
 しかし、自公議員が多数を占める宮城県議会は2019年3月の本会議で県民投票条例案を否決。11万を超える民意は無視された。そして村井知事の再稼働同意。民主主義とは何か、合意形成プロセスとは何かが問われているという意味では、福島第一原発からの汚染水海洋放出問題と構図は同じだ。
 多々良さんは昨年12月のインタビューで次のように語っている。
 「一番許せなかったのは、村井知事が『宮城県民の反対を押し切って独断で同意したのでは無い。県民の民意なんだ』という趣旨の発言をした事です。県民の民意を置き去りにして自分が決めたと言うのであれば、まだ筋は通りますが…」
 「本気で県民の声を聴こうとする場面は全く無かった。それをやっちゃうと再稼働への道筋が破たんしてしまうからです。河北新報が実施した世論調査でも、県民の6割以上が再稼働に反対している。8割が県民投票を実施して欲しいと答えている。それが『民意』じゃないですか。原発に対する考え方はともかく、一人一人の意見を出し合って決めようと考える人がほとんどだという事なんです。それなのに、村井知事は国策ありき、再稼働ありき」
 関係者は「正直、誰が立候補しても県知事選で村井知事には勝てないという分析もある。どこまで食い込めるか」と明かした。宮城県民の民意は女川原発再稼働を認める村井知事に県政を託すのか。任期は11月20日に満了する。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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