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【128カ月目の浪江町はいま】平行線の帰還困難区域説明会 「全域を除染しろ」住民の怒り 「拠点外は帰る人だけ除染」除染範囲を限定したい官僚

とにかく除染範囲を狭めて「避難指示解除」という形をつくりたい政府。範囲を限定せず全域を除染して欲しい住民。両者を隔てる壁は高く、溝は深い─。10月に引き続き今月も、浪江町の「帰還困難区域に関する説明会」が16、17、23の3日間、二本松、郡山、東京で行われた。しかし、どの会場でも「特定復興再生拠点区域」以外は帰還意向のある住民の自宅周囲だけを除染したい国と、帰還意向にかかわらず全域除染をして欲しい住民の想いが対立。怒りをぶつける住民に官僚は詫びて理解を求めるばかりだった。
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【「国や東電が買い取れ」】
 「あんた、あの土地を買いますか?」
 東京会場。室原行政区を追われた男性の怒りが爆発した。
 「一度汚染した土地を買いますか?私だったら汚染した土地なんて買うはずがない。売れないでしょ。そしたら、私がずっと固定資産税を払わなくちゃいけないんですよ。年に何回か草むしりに来なくちゃいけない。その辺はどう思ってる?」
 内閣府官僚との押し問答が続いた。
 「土地の取り扱いについて国で何かさせていただけることはございません」
 「何言っているんですか。汚染させておいてそういう言い方はないでしょ」
 「申し訳ございません。しっかり除染させていただいて…」
 「埼玉から年に何回も管理をしに行かなければいけないんですよ。そこまでおたくらは考えているんですか?申し訳ありませんと言えば済むと思ったら大間違いですよ」
 「国で何かできるというものではございません。申し訳ございません」
 「希望者には国や東電が買い取らなきゃいかんですよ」
 「国で買い取るということをお示しするのは難しいと考えております」
 「東電の人にも言ったけど、あんたたちは私たちが死ぬのを待っているんじゃないか」
 「そんなことはございません。申し訳ございませんが、国で買い取るのは難しい」
 「じゃ東電が買い取るようにやりなさいよ」
 「しっかり除染させていただいていますので、基本的には地権者様で…」
 「一生、固定資産税を払って、一生、草むしりをしないといけないということなんですか?私たちは原発事故で強制的に追い出されたんですよ。その辺のところまであんたらは考えているんですか?考えてないでしょ」
 「10年8カ月、ご迷惑をおかけして本当に申し訳ございません」
 「あんたに謝ってもらったってしょうがないんだよ。結論を出してくれよ、結論を」
 「繰り返しになりますが、国で何か処分ができるものではございません」
 業を煮やした男性は、こう言って話をやめた。
 「無駄だよ。こんな会、やめた方が良いよ。前進がないんだもん」

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内閣府の官僚は何度も頭を下げ、何度も詫びた。しかし住民が求めているのは謝罪ではない。いや、謝罪も欲しいが、もっと欲しいのは原発事故前の生活環境だ。汚染されていない浪江だ

【「みんな帰りたいんです」】
 怒っているのは、この男性ばかりではない。
 10月18日号でも報じたように、現時点で決まっているのは①帰還困難区域のうち津島、室原、末森地区のごく一部を「特定復興再生拠点区域」(以下、拠点)として除染し、再来年(2023年)にも避難指示を解除する②拠点に含まれなかった区域は、避難元自宅に戻る意思を示した住民の自宅周囲だけを除染して避難指示を解除する─の2点のみ。他は「残された課題」として「これからしっかり検討する」。それでは、町民の怒りや疑問が噴出するのも当然だ。
 「なぜ拠点外だけは帰還を希望する人の自宅周囲だけを除染するのか。既に避難指示が解除された地域と何が違うんですか?違いを説明してください」(酒井行政区の男性、二本松会場)
 「私たちが帰りたいと思うくらいに除染をして、それから帰るか帰らないか意向を尋ねるべきではないか。逆にして欲しい。『これだけきれいにしましたから、どうぞ帰ってください』としてくれたら希望が持てる」(南津島行政区の女性、二本松会場)
 「なぜ帰還困難区域だけ帰還意向を尋ねられるのか。なぜ差別するのか。虫食い除染されても安心して帰れない。面的除染をして欲しい」(酒井行政区の男性、郡山会場)
 「除染は全てやって欲しい。全部を除染して欲しい。戻らなかった場合、私名義の土地は買い取って欲しい」(津島行政区の男性、郡山会場)
 南津島行政区の女性は、二本松会場で官僚たちに怒りをぶつけた。
 「10年以上も避難して、苦悩して、中傷を受けて、苦しい生活をしたり精神的にも病んだりして来たが、政府の資料がたった3枚で終わり…。帰りたい人は帰る?そうじゃないでしょ。みんな帰りたいんです。ただ、いろいろな事情があって帰れないんです。政府が帰りたい人だけ帰らせるように決めちゃった。自宅に戻って生活はできないけれど、ちょっと帰って一服して、景色を眺められれば良いんです。帰りたくても帰れない人のことを考えて欲しい。『ていねい』『ていねい』と言うが口ばかり。みんなの苦労を考えて内容の詰まったものを示して欲しい」
 会場から拍手が起こった。別の男性は「中身があれば資料なんか1枚で良い。『全面除染します』『いつでも戻れるようにします』と書いてあれば、5、6行で良いんです。1日も早く戻れるように除染してください。そうすればさっさと戻りますから」と語った。時折、涙声になっていた。
 
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帰還困難区域からの避難を強いられている町民たちは様々な言葉で官僚に想いをぶつけた。共通するのは「帰還意向にかかわらず帰還困難区域全域を除染して欲しい」という当然の願いだ

【「避難者を馬鹿にしてる」】
 赤宇木行政区の男性は「避難者を馬鹿にしてる」と語気を強めた。
 「亡くなった父は自宅に帰りたい一心で、仮設住宅から誰もいない津島に逃げ帰ったことがあるんです。誰かの車に乗せてもらったんですね。『自分の家に住むのは当たり前』と言った。それが帰還困難区域の住民の想いですよ。それを帰りたいのか帰らないのかなんて尋ねること自体が本末転倒だ。ふざけている」
 「官僚は『お気持ちは分かります』なんて言うが、分かってくれたなんて思いません。みんな帰りたい。でも、意向調査で『帰る』って書かないと除染してもらえない。面的除染をして返すのが当たり前でしょ。そういうことをやったんだから。自分の家と土地なのだから、きれいにして返して欲しい。(全域除染をすると)面積が広くなるなんて、そちらの勝手な言い分だ。こっちはやられた側なんですよ」
 これにも、内閣府の官僚は「みんな帰りたい。おっしゃる通りだと思う。ただ、ここまでしか示せるものがない。この段階ではこれが精一杯。申し訳ないが、ご理解いただきたい」と繰り返した。
 吉田数博町長に至っては「いろんな悩みがあると思いますが、前を見すえてやっていくことが今日の説明会。何とかこの状況を打破していく。前向きに取り組まなければ難局は乗り越えられないだろう。ご理解たまわりたい」(東京会場)と、町民の不満や怒りを封じるかのような言葉まで口にした。これでは「忌憚のないご意見を」と呼びかけた内閣府官僚の言葉まで否定されてしまう。何のための説明会だったのか。
 春が来たら、原発事故発生から丸11年。高齢の町民にとって、残された時間が少ないという想いもある。南津島行政区の男性は、懇願するようにマイクを握った。
 「1日も早く帰りたい。ふるさとに骨をうずめたいんだ。アンケートには『2011年3月11日の状態に戻してくれ』と何度も書いて来た。アンケートが先なのか除染が先なのか帰還が先なのか…。われわれ年寄りは今日死ぬか明日死ぬか分からない。国も町長もよろしく頼みます」
 これに対しても、内閣府の官僚は「戻りたいと言っていただければ速やかに除染作業に着手する。除染をしっかりとやらせていただく。時間が経ってしまって申し訳ございません」と答えるばかり。男性が最後にぶつけた言葉は非常に重かった。
 「手遅れだよ。どれだけ頭を下げたって、われわれ年寄りは年をとっていくんだ」
 役場職員によると、説明会の議事録や動画は町のホームページには掲載せず、主なやり取りを「広報なみえ」2022年2月号に掲載するという。



(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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