【原発避難者から住まいを奪うな】避難者「親族住所の照会手続きに問題あり」 福島県「適正な対応だった」~国家公務員宿舎巡る話し合いは平行線
- 2021/12/01
- 09:21
災害救助法第4条に基づく避難者親族住所の照会は果たして適正なのか。そもそも原発避難者を国家公務員宿舎から退去させる前提での取り組みは逆なのではないか─。11月25日午前、福島県庁で行われた避難当事者と福島県当局の25回目の話し合い。避難当事者たちは時に厳しい口調で県の姿勢を質したが、県側は「未退去解消も供与の一環」、「適正な対応だった」などと繰り返すばかりで平行線に終わった。県は7日に始まる県議会に調停申し立て議案の提出も視野に入れており、転居が難しい避難者はじわりじわりと追い詰められている。

【「「未退去解消も『供与』」】
「県としての答えはこれまでと変わっておりません。『適正な対応だった』という根底も変わっておりません」
生活拠点課の佐藤広威主幹は、国家公務員宿舎から退去できていない避難者の親族住所を調査したことや、親族への文書送付・家庭訪問で「退去への協力」を求めたことは、あくまでも「必要な行政の行為」と繰り返した。
「親族の方々に強制的に協力してくださいとお願いしているわけではありません。『協力』がどのような内容で、どこまでならできるのか確認したにすぎない。われわれとしてはやり過ぎだとは思っておりません。必要な行政の行為だと思っているところです。民法にも家族なり夫婦なりの扶養が規定されています。あくまで親族の考えを確認したまでです」
佐藤主幹は、避難者の〝追い出し〟を「未退去対策」と呼び、災害救助法第4条でうたわれている「救助」の1つ「避難所及び応急仮設住宅の供与」の「供与」に含まれる取り組みだと強調した。
「大前提として、応急仮設住宅の供与が終わった後、新しい住まいの見通しが立たない方のために、『未退去対策』の1つとして2年間の『国家公務員宿舎のセーフティネット使用貸付』が行われた。その後、退去されない、転居できない、見通しが立たないという方については、『未退去対策』という位置付けは引き続き残っている。ですので『災害救助法の関連業務』という位置付けは変わっていない」
福島県は、あくまで「未退去解消」のために動く。そのためには親族の「協力」も求める。避難者本人の同意を得ることもなく、戸籍や住民票を入手して親族住所を探り当て、退去を促すよう求める文書を送り、訪問までした。
「ご自身のお力だけでは転居が難しい、新しい住まいを確保するのが難しいという方があれば、ご家族の協力についてはどうなのか、ご家族はどのようにお考えなのかを確認する必要が出てきた。支援策である『国家公務員宿舎のセーフティネット使用貸付』が終わってから2年近く経った。長い期間、未退去状態が続いていたということから、ご親族の意向を伺うために文書を送付する、あるいは福島県内の親族には会って直接、お話をする必要があるということで、このような取り組みを行った。全ては未退去の方々が1日も早く生活再建が図られるように活動しております」



福島県庁内で行われた25回目の話し合い。福島県生活拠点課の佐藤広威力主幹は、国家公務員宿舎から転居できずにいる避難者の親族住所を入手して〝協力〟を求めたことについて「未退去解消も供与の一環」「適正な対応だった」と繰り返した
【「虚偽申請ではないか」】
「ひだんれん」幹事の村田弘さん(南相馬市小高区から神奈川県横浜市に避難継続中)は、3つの点から「虚偽申請に基づく親族住所の入手は問題だ」と繰り返し指摘した。
「理由は3点。①国家公務員宿舎は災害救助法の対象ではない。それにもかかわらず、親族住所を照会した申請書類の『目的』には『災害救助法第4条に基づく応急仮設住宅入居者の調査』と書かれている。しかも、災害救助法第4条は被災者に対して住宅を提供するための規定。申請目的と明らかに違っているではないか。②『入居者の調査のため』となっているが、実際に行われたのは『親族の住所調査』だった。誤記載か、意図的に違うことを書き込んだと判断せざるを得ない。③『入居者の調査』となっているが、実際には親族に文書を送るために使われた。しかも、文書は『退去するよう協力して欲しい。できなければ法的手段に移行する』という内容。避難者本人ではなく関係ない親族の住所を入手するというのは、県の個人情報保護条例からみても問題がある」
しかし、佐藤主幹は「『応急仮設住宅の供与』と『未退去解消の取り組み』はワンセット」と繰り返すばかりだった。
「『災害救助法に基づいて行われていた応急仮設住宅の供与』。この『供与』は『提供』だけではない。転居されない方がいれば、入居し続ける方がいれば、その方の転居が進むまでは影響下に入っている。退去が済むまでの一連の業務が『応急仮設住宅の供与』のなかに含まれる。供与が終わったからと言って突然、位置づけが変わるものではない。供与を受けた方がすべからく退去されるまで、転居されるまで支援は続く。お手伝いは続く」
「福島県の独自施策に移行しても、建物としては変わっていない。国家公務員の方が入居するものであって、災害関係で福島県が特別に国から使用許可を受けて独自施策として転居できるまで2年間、何とか引っ越しについて考えていただきたいと。繰り返しになるが『未退去対策』の1つ。そこは変わらない。『応急仮設住宅供与』のなかの『未退去対策』のなかの『独自施策』。一連の業務ですから『関連業務』。そこも変わらない。詭弁ではないかという言葉が投げかけられているが、私の答えは基本的に変わっていない。『供与』という言葉に『未退去の解消』が含まれる。包含される。だから『ワンセット』。その業務自体が『供与』のなかに含まれる。一連のものなのだという考え方があるわけですから、解釈を拡げているという考え方ではないです」


時折机を叩きながら、避難者を〝追い出し〟をやめるよう訴えた村田弘さん。「災害救助法第4条に『未退去の解消』なんて書いてありますか?」とも詰め寄ったが…
【「『未退去対策』おかしい」】
国家公務員宿舎からの退去を前提として動く福島県。個別事情に寄り添った施策を展開するべきだと訴える避難当事者。しかし、話し合いは平行線のまま。
佐藤主幹は、何を言われても「未退去解消の活動は、生活保護の規定とは別のもの。準拠しなければならない、縛られる業務であるということはない」、「あくまでも親族の方に転居について協力ができるかどうかのお考えを尋ねただけ。そこからさらに転居に向けた行動を強要したわけではございません」、「親族のご意向を確認することが行き過ぎた内容だとは考えておりません。必要な確認事項の1つと考えておりました。今も考え方に変わりはありません」などと繰り返すばかりだった。
札幌からリモート参加した中手聖一さん(「『避難の権利』を求める全国避難者の会」共同代表)は長年、障害者の自立支援に携わっている経験から次のように提案したが、県側は「ご意見として承ります」と答えるにとどまった。
「本人の承諾なく親族に協力を求めたことで避難当事者の神経を逆なでしてしまって、話し合いによる解決は難しいと思う。県が直接やるのでは退去は無理だろう。災害ケースマネジメントのスキルを持った方々にお願いして個別具体的な事情を勘案した解決策を模索しないといけないと思う。もちろん、前提として親族への戸別訪問は二度としませんと謝罪する。考え方を変えた方が良いのではないか」
100分に及んだ話し合いでは、確かに村田さんの語気が強くなることもあった。7日に始まる福島県議会に調停申し立ての議案を9月議会に続いて提出するかどうか繰り返し問われたところでは、佐藤主幹が「何度、強めの口調で責められるように質問を投げかけられても答えは変わらないです」、「答えろと強く言われても変わらないですという答えしかできない。私も精神的に非常に苦痛を感じているので、この件に関してこれ以上のやり取りは勘弁していただけないでしょうか」と求める場面も。
しかし、精神的苦痛に直面しているのは住まいを追われようとしている原発避難者も同じ。頼りになるはずの福島県にあらゆる手法で追い出されようとしているのだから。
「ひだんれん」事務局の大河原さきさんは次のように指摘したが、まさにこの言葉に尽きるのだった。
「『未退去対策』とおっしゃるが、『未退去対策』ではなく、次の住まいを確保してスムーズに転居できるようにするのが県の仕事ではないのか。いつから『未退去対策』になったのか。『避難者を退去させるための対策』としか受け止められない。言葉の使い方が全く違うと思う」
(了)

【「「未退去解消も『供与』」】
「県としての答えはこれまでと変わっておりません。『適正な対応だった』という根底も変わっておりません」
生活拠点課の佐藤広威主幹は、国家公務員宿舎から退去できていない避難者の親族住所を調査したことや、親族への文書送付・家庭訪問で「退去への協力」を求めたことは、あくまでも「必要な行政の行為」と繰り返した。
「親族の方々に強制的に協力してくださいとお願いしているわけではありません。『協力』がどのような内容で、どこまでならできるのか確認したにすぎない。われわれとしてはやり過ぎだとは思っておりません。必要な行政の行為だと思っているところです。民法にも家族なり夫婦なりの扶養が規定されています。あくまで親族の考えを確認したまでです」
佐藤主幹は、避難者の〝追い出し〟を「未退去対策」と呼び、災害救助法第4条でうたわれている「救助」の1つ「避難所及び応急仮設住宅の供与」の「供与」に含まれる取り組みだと強調した。
「大前提として、応急仮設住宅の供与が終わった後、新しい住まいの見通しが立たない方のために、『未退去対策』の1つとして2年間の『国家公務員宿舎のセーフティネット使用貸付』が行われた。その後、退去されない、転居できない、見通しが立たないという方については、『未退去対策』という位置付けは引き続き残っている。ですので『災害救助法の関連業務』という位置付けは変わっていない」
福島県は、あくまで「未退去解消」のために動く。そのためには親族の「協力」も求める。避難者本人の同意を得ることもなく、戸籍や住民票を入手して親族住所を探り当て、退去を促すよう求める文書を送り、訪問までした。
「ご自身のお力だけでは転居が難しい、新しい住まいを確保するのが難しいという方があれば、ご家族の協力についてはどうなのか、ご家族はどのようにお考えなのかを確認する必要が出てきた。支援策である『国家公務員宿舎のセーフティネット使用貸付』が終わってから2年近く経った。長い期間、未退去状態が続いていたということから、ご親族の意向を伺うために文書を送付する、あるいは福島県内の親族には会って直接、お話をする必要があるということで、このような取り組みを行った。全ては未退去の方々が1日も早く生活再建が図られるように活動しております」



福島県庁内で行われた25回目の話し合い。福島県生活拠点課の佐藤広威力主幹は、国家公務員宿舎から転居できずにいる避難者の親族住所を入手して〝協力〟を求めたことについて「未退去解消も供与の一環」「適正な対応だった」と繰り返した
【「虚偽申請ではないか」】
「ひだんれん」幹事の村田弘さん(南相馬市小高区から神奈川県横浜市に避難継続中)は、3つの点から「虚偽申請に基づく親族住所の入手は問題だ」と繰り返し指摘した。
「理由は3点。①国家公務員宿舎は災害救助法の対象ではない。それにもかかわらず、親族住所を照会した申請書類の『目的』には『災害救助法第4条に基づく応急仮設住宅入居者の調査』と書かれている。しかも、災害救助法第4条は被災者に対して住宅を提供するための規定。申請目的と明らかに違っているではないか。②『入居者の調査のため』となっているが、実際に行われたのは『親族の住所調査』だった。誤記載か、意図的に違うことを書き込んだと判断せざるを得ない。③『入居者の調査』となっているが、実際には親族に文書を送るために使われた。しかも、文書は『退去するよう協力して欲しい。できなければ法的手段に移行する』という内容。避難者本人ではなく関係ない親族の住所を入手するというのは、県の個人情報保護条例からみても問題がある」
しかし、佐藤主幹は「『応急仮設住宅の供与』と『未退去解消の取り組み』はワンセット」と繰り返すばかりだった。
「『災害救助法に基づいて行われていた応急仮設住宅の供与』。この『供与』は『提供』だけではない。転居されない方がいれば、入居し続ける方がいれば、その方の転居が進むまでは影響下に入っている。退去が済むまでの一連の業務が『応急仮設住宅の供与』のなかに含まれる。供与が終わったからと言って突然、位置づけが変わるものではない。供与を受けた方がすべからく退去されるまで、転居されるまで支援は続く。お手伝いは続く」
「福島県の独自施策に移行しても、建物としては変わっていない。国家公務員の方が入居するものであって、災害関係で福島県が特別に国から使用許可を受けて独自施策として転居できるまで2年間、何とか引っ越しについて考えていただきたいと。繰り返しになるが『未退去対策』の1つ。そこは変わらない。『応急仮設住宅供与』のなかの『未退去対策』のなかの『独自施策』。一連の業務ですから『関連業務』。そこも変わらない。詭弁ではないかという言葉が投げかけられているが、私の答えは基本的に変わっていない。『供与』という言葉に『未退去の解消』が含まれる。包含される。だから『ワンセット』。その業務自体が『供与』のなかに含まれる。一連のものなのだという考え方があるわけですから、解釈を拡げているという考え方ではないです」


時折机を叩きながら、避難者を〝追い出し〟をやめるよう訴えた村田弘さん。「災害救助法第4条に『未退去の解消』なんて書いてありますか?」とも詰め寄ったが…
【「『未退去対策』おかしい」】
国家公務員宿舎からの退去を前提として動く福島県。個別事情に寄り添った施策を展開するべきだと訴える避難当事者。しかし、話し合いは平行線のまま。
佐藤主幹は、何を言われても「未退去解消の活動は、生活保護の規定とは別のもの。準拠しなければならない、縛られる業務であるということはない」、「あくまでも親族の方に転居について協力ができるかどうかのお考えを尋ねただけ。そこからさらに転居に向けた行動を強要したわけではございません」、「親族のご意向を確認することが行き過ぎた内容だとは考えておりません。必要な確認事項の1つと考えておりました。今も考え方に変わりはありません」などと繰り返すばかりだった。
札幌からリモート参加した中手聖一さん(「『避難の権利』を求める全国避難者の会」共同代表)は長年、障害者の自立支援に携わっている経験から次のように提案したが、県側は「ご意見として承ります」と答えるにとどまった。
「本人の承諾なく親族に協力を求めたことで避難当事者の神経を逆なでしてしまって、話し合いによる解決は難しいと思う。県が直接やるのでは退去は無理だろう。災害ケースマネジメントのスキルを持った方々にお願いして個別具体的な事情を勘案した解決策を模索しないといけないと思う。もちろん、前提として親族への戸別訪問は二度としませんと謝罪する。考え方を変えた方が良いのではないか」
100分に及んだ話し合いでは、確かに村田さんの語気が強くなることもあった。7日に始まる福島県議会に調停申し立ての議案を9月議会に続いて提出するかどうか繰り返し問われたところでは、佐藤主幹が「何度、強めの口調で責められるように質問を投げかけられても答えは変わらないです」、「答えろと強く言われても変わらないですという答えしかできない。私も精神的に非常に苦痛を感じているので、この件に関してこれ以上のやり取りは勘弁していただけないでしょうか」と求める場面も。
しかし、精神的苦痛に直面しているのは住まいを追われようとしている原発避難者も同じ。頼りになるはずの福島県にあらゆる手法で追い出されようとしているのだから。
「ひだんれん」事務局の大河原さきさんは次のように指摘したが、まさにこの言葉に尽きるのだった。
「『未退去対策』とおっしゃるが、『未退去対策』ではなく、次の住まいを確保してスムーズに転居できるようにするのが県の仕事ではないのか。いつから『未退去対策』になったのか。『避難者を退去させるための対策』としか受け止められない。言葉の使い方が全く違うと思う」
(了)
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