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【原発避難者から住まいを奪うな】証人尋問もせず年明け早々に結審か? 「次回期日で終結もあり得る」と裁判官~第9回口頭弁論

福島県が昨年3月、原発事故で〝自主避難〟した4世帯を相手取り、国家公務員宿舎「東雲住宅」(東京都江東区)の明け渡しと未納家賃の支払いを求めて提訴した問題で、うち1世帯に対する第9回口頭弁論が14日午前、福島地裁206号法廷(松川まゆみ裁判官)で行われた。原告・福島県が第5準備書面を陳述。避難者に住む権原がないことや国に代わって明け渡し請求することの正当性を改めて主張した。次回期日は1月27日13時半。松川裁判官は「終結もあり得る」と言及。避難当事者や行政担当者の話も聴かぬまま結審する可能性も出てきた。
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【「占有権原は当然に喪失」】
 この日の弁論は3分ほどで終了した。
 原告・福島県が陳述した第5準備書面(A4判5ページ)には、これまで通り紋切り型の表現が並んだ。被告(避難者)に国家公務員宿舎の一室を占有する権原がないことや、所有者でない福島県が所有者である国に代わって明渡請求権を行使することの正当性などを繰り返し主張。「とにかく出て行け」の一点張りだった。
 「そもそも、被告の指摘する社会権規約の規定によって被告の具体的権利(本件建物の占有権原)が発生するわけではない」
 「国内強制移動に関する指導原則は、あくまで国連の一委員会が作成した一つの意見にすぎず、条約や国際慣習法といった法規範とはいえない」

 「被告と東京都との間の使用貸借関係(筆者注:住宅無償提供が打ち切られるまでは、国家公務員宿舎は国が東京都に使用許可を出し、それを受けて都が避難者に無償提供されていた)は、期間満了により終了し、被告は本件建物の占有権原は当然に喪失しているのであって、社会権規約等を根拠に当該規定が実質的に修正されるような解釈がなされるべきとする理由が全く不明である」
 「原告(福島県)による国の明渡請求権を代位行使することに何ら問題はない。また、原告が被告に対して本件建物の明渡しを求めることが、信義則違反となるべき事情も全くない」
 「原告は、使用許可の申請に当たり事前に国に事情や経過を説明しており、虚偽申請をした事案や許可を騙取(へんしゅ)したといった事実も全くない」
 「本件は、原告が自らの使用収益権を保全するために国の権利を代位行使しているにすぎず、形式的にも、原告が国から権利を譲り受けているわけでもないし、実質的にも、濫訴を招いたり紛議を助長するおそれも、弁護士法72条本文の禁止を潜脱する行為としての弊害が生じるおそれもない」

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原告・福島県がこの日陳述した第5準備書面の一部。まだ避難者本人への尋問も終わっていないが、松川裁判官は早ければ次回1月の弁論期日で結審する可能性に言及した

【本人尋問のみ採用も?】
 原告(福島県)の反論はこれで出尽くした。被告側は次回期日までに避難者本人の避難から現在までに至る事情などをまとめた陳述書を提出する。
 被告側は前回11月の弁論期日で、復興庁被災者支援班の責任者、関東財務局東京財務事務所長、福島県生活拠点課長(いずれも氏名不詳)、そして被告本人の所在尋問(東京地裁での出張尋問)を申請している。
 松川裁判官は「人証の採否は次回決められると思います。採用しない場合には終結もあり得るのかなと思っております」と述べ、避難者本人や福島県の担当職員の話も聴かないまま、早ければ次回期日での結審の可能性に言及した。
 被告(避難者)の代理人を務める平松真二郎弁護士は、閉廷後「被告本人については、東京地裁での出張尋問ではなく福島地裁に出向くということで強く希望すれば、3月に予定されている弁論期日での本人尋問は採用される可能性はあるかもしれない。福島県や財務省の担当者を呼んで尋問するというのは難しそうだ」と話した。
 証人尋問に関しては、そもそも松川裁判官は消極的。
 前回11月の弁論期日では「尋問事項が概括的すぎる。それぞれどういうことをお聞きになるのかイメージができない」、「尋問事項を個別具体的にしていただかないと採否を決められない」と申請に〝注文〟をつけている。
 なぜ国家公務員宿舎の所有者でもない福島県が原告となったのか。なぜ調停が不成立に終わっている避難者の分まで使用許可を申請したのか。〝追い出し訴訟〟を起こすための使用許可ではないのか…。財務省や福島県の担当者への尋問は重要なポイントとなるが、平松弁護士は「法的な判断や評価は裁判所がするものだと。使用許可申請や許可については証拠で明らかだから、別に国や福島県の担当者の話を聴かなくても判断できる─。それが裁判所の理屈なのでしょう。しかし、こちらが明らかにしたい事実関係について、なぜ裁判所が目をつぶるのだろうか」と話す。

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福島県は本件〝追い出し訴訟〟に続き、国家公務員宿舎「東雲住宅」から退去できていない避難者に対する調停申し立て議案を立て続けに県議会に提出。既に退去した避難者に対しても、未払い賃料の支払いを求めている

【共産党以外は容認】
 福島県は2020年3月25日、国家公務員宿舎「東雲住宅」から退去できていない4世帯に対し明け渡しと賃料などの支払いを求めて福島地裁に提訴。避難者側は東京地裁への移送を申し立てたが却下された。この日、9回目の弁論が行われた避難者については、昨年10月から福島地裁での審理が続いている。最も進行が速く、松川裁判官の判断が他の2件にも大きく影響するとみられる。
 争点も避難者側の主張も同じだが、裁判は3つ(2世帯分が1件に併合)に分かれて進行しており、被告団や弁護団のようなものは結成されていない。うち1件は非公開で審理され、もう1件(併合された裁判)は今月4日に4回目の口頭弁論が行われた。
 この間、福島県との話し合いを続けている「原発事故被害者団体連絡会」(ひだんれん)は訴えを取り下げるよう何度も求めているが、福島県は応じていない。
 調停や提訴は福島県議会での審議を経るが、肝心の県議会は共産党以外は〝知事与党〟のため議論すらまともになされていないのが現状。
 12月議会では、10日の本会議で共産党の宮川えみ子県議が代表質問で取り上げたが、避難地域復興局の守岡文浩局長は「国家公務員宿舎の明け渡し等につきましては、現地での相談会などを通じて個別の事情をていねいに伺い、関係機関とも連携しながら安定した住まいの確保など生活再建に向けた支援に努めてまいりましたが、明け渡しに応じていただけず、使用料未納分の時効が到来することから、民事調停の申し立てもやむを得ないとの判断に至ったものであります」と答弁するにとどまっている。



(了)
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鈴木博喜

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