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【国道6号】今年も高校生が清掃ボランティア。消えぬ高濃度汚染、舞う砂塵。根強い批判に主催者は「もっと放射線を勉強して」と反論

「みんなでやっぺ!!きれいな6国」が15日、福島県浜通りの国道6号線で今年も実施された。二ツ沼総合公園を起点とする「広野会場」では、東電やゼネコン、地元企業などから1000人以上が参加。「復興に貢献したい」と、14人の高校生も一緒に歩いてごみを拾った。昨年と異なり中学生の姿はなく、コースも若干変更。しかし、市民グループの測定では地表面で0.7μSv/hを超した個所も。砂塵舞う中、マスクをせずに歩く高校生も多く、子どもたちを危険にさらすと批判は多いが、主催したNPO法人「ハッピーロードネット」の西本由美子理事長は「ここで毎日暮らしている」と意に介さない。東京五輪での聖火リレーを見据えた清掃活動。「復興」ばかりが連呼され、子どもたちの健康はないがしろにされたままだ。


【マスクせず「街をきれいにしたい」】
 「放射性物質を吸い込む?うーん、全然意識した事ないですね。そうやって指摘される事も気になりません。もう慣れっこになっちゃったもんね」
 福島県立ふたば未来学園(広野町)の1年生女子は、マスク姿で一緒に参加した同級生の女子生徒と笑った。「復興に携わりたいんです。こういう事からまず始めたいと思って参加しました」と話す。引率の教師の姿はなく、同校から他の生徒は参加しなかった。閉会式では、参加者を前に「機会があれば、また参加したいです」と語り、関係者を喜ばせた。
 昨年は、子どもたちの班は二ツ沼総合公園を出発した後、北上。楢葉町の「道の駅ならは」(双葉警察署臨時庁舎として使用しているため休止中)付近で折り返して公園まで戻るコースを歩いたが、今年は変更。南下し、下北迫付近で旧道に入り公園に戻った。女子高生たちは「タバコの吸い殻が多いですね。運転しながらポイ捨てしちゃうんだなあ」と言いながら、ごみを拾っていく。すぐ横を大きなダンプカーが通り、砂塵が舞い上がる。大人も顔をしかめるほどだった。
 2017年3月末での休校が決まっている県立双葉翔陽高校(いわき明星大学内)からは、唯一の在校生である3年生全員が参加した。都内の専門学校への進学を目指している男子生徒は「僕は放射線云々というよりも、街をきれいにしたいという想いが強いんです。高校生にも何か出来ないかと考え、昨年も参加しました。両親も応援してくれています。僕たちの学年を最後に休校する事が決まっていますから、思い出になれば良いなとも考えています」と話した。マスクはしていなかった。
 気温が上がったせいか、軍手はするがマスクをする生徒の方が少ない。引率した双葉翔陽高校の若手男性教諭は「考え方は人それぞれ。子どもたちの『参加したい』という気持ちが一番大きい」とだけ語った。




清掃ボランティアには、ふたば未来学園と双葉翔陽高校の生徒が参加。マスクをしている生徒の方が少なかった。中学生は今年は参加していなかった=福島県広野町

【地表面0.7μSv/hでも安全?】
 国道6号での清掃ボランティアに関しては、子どもたちを参加させている事に対し「健康へのリスクが高い」、「復興に子どもたちを利用するな」などと批判が根強い。「子ども脱被ばく裁判」の柳原敏夫弁護士は「子どもたちの命と健康を危険にさらす、正気を失ったとしか思えないイベントだ」と語る。
 広野町議会の阿部憲一議員も「国道6号線は1000万Bq/kgのレベルの土壌汚染のある双葉町や大熊町を走った車両が大量に行き来して、町では最も危険なポイントです。吸い込んだらどうなるか知れないレベルの浮遊ダストでも、少量であればモニタリングポストや線量計は反応しない」と指摘する。「大勢で繰り出すことは大人でも大変危険。ところが町は、帰町の妨げになるからと危険な情報については一切周知しようとしないのです」。
 実際、清掃ボランティアに参加した遠藤智(さとし)町長は、取材に対し「専門家の意見も聴いている。大人だけで実施すれば良い?あなたのご意見は承りました」とだけ話し、高校生を参加させることへの是非には言及しなかった。閉会式では「復興への大きな一歩を踏み出した」と参加者を労っている。
 主催するNPO法人の西本由美子理事長(63)は、開会式でのあいさつで「高校生たちは通学路しかやりません」、「原発に賛成でも反対でもない。きれいな故郷を子どもたちに残したいだけ」と強調。取材に対しても「6号線すべてが大熊町や双葉町と同じように汚染されていると誤解されている。もっと勉強していただきたい。私たちは毎日、ここで暮らし、放射線量の事は都会の人たちよりもずっと分かっています」と語った。
 しかし、空間線量や土壌汚染の測定を続けている「ふくいち周辺環境放射線モニタリングプロジェクト」が高校生に同行したところ、地表面で0.7μSv/hを超す個所があった。国道6号に接する二ツ沼総合公園入口付近でも、地表面で0.6μSv/h超。地元企業から参加した女性社員(27)ですら「子どもたちはなるべく参加させない方が良いのではないでしょうか。私自身には子どもはいないけれど、甥っ子などを連れて来る事は出来ません」と複雑な想いを口にした。町の再興と被曝回避は分けて考えられるべきだが、復興の前に予防原則はかき消されてしまう。




(上)「6号線すべてが大熊町や双葉町と同じように汚染されていると誤解されている。もっと勉強していただきたい」と語った西本由美子理事長
(下)高校生がごみ拾いをした歩道では、地表面で0.7μSv/hを超した個所も。測定した「ふくいち周辺環境放射線モニタリングプロジェクト」のメンバーも吸い込んでの内部被曝を懸念している

【「国道6号で聖火リレーを」】
 西本理事長は言う。
 「考え方は十人十色ですから、良いとか悪いとかではないんです。嫌なら町に戻らなければ良い。でも、私も自分の意思で戻って来て住んでいますし、多くの人が戻って来ている(福島県によると8月25日現在の帰還率は約41%)。それは今の広野町に安心しているという事でしょう。戻って来てくださいとどれだけ言っても戻ってもらえない時期もあったんですから」。
 広野町は2012年3月末に避難指示を解除。立ち入りや居住に関する制限は一切無い。JR常磐線・広野駅近くの県立ふたば未来学園には1、2年生合わせて282人が通っている。西本理事長は「私の子どもも自分の意思で広野町に住んでいます。ここで毎日、暮らしているということを認めて欲しいですね。清掃ボランティアだって強制参加ではありません。保護者と話し合って納得して自分の意思で参加しています。昨年の事もあるので、何回も学校に確認したんですよ」と話す。「昨年は誹謗中傷が本当に酷かった。あなたもその1人ではありませんか」とも。〝前向き〟な復興イベントに異議を唱えると「誹謗中傷」になってしまうようだ。
 閉会式で、いわき国道事務所の女性所長は「全国に例を見ない清掃活動。道路管理者として感謝している」と感謝した。青年会議所の関係者は「人間には前を向く人、下を向く人、後ろを振り返る人がいる。でも、ここに集まっている人は前を向く闘士だ」と語った。
 二ツ沼総合公園の近くには、NPO法人ハッピーロードネットの「ふくしま浜街道・桜プロジェクト」の趣旨に賛同した安倍晋三首相の桜も植えられている。「ポケットマネーから『オーナー基金』(一口1万円から)に出してくださったんですよ」と西本理事長は笑う。清掃活動の先には、2020年東京五輪での聖火リレーが見え隠れする。西本理事長は高校生を引き連れて首相官邸を訪れて聖火リレーの実現を〝直訴〟している。
 復興、前向きが連呼される中、ないがしろにされる被曝リスク。そして東京五輪。高校生の地元への純粋な想いはやはり、別の形で叶えられるべきだろう。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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