【参院選2022】県民健康調査検討委座長が自民県連の出馬要請を受諾 揺らぐ検討委の中立性
- 2021/12/19
- 12:35
来夏の参議院議員選挙に向け、自由民主党福島県支部連合会(県連)が福島県医師会副会長で県民健康調査検討委員会の星北斗座長(星総合病院理事長)に出馬を要請。星氏は18日午後、郡山市内で受諾を伝えた。県連会長の根本匠代議士が「即戦力だ」と絶賛するあたり、星座長の委員会運営が、原発事故後の被曝リスクに関する政府自民党の意向に沿ったものであったかが良く分かる。委員会の中立性も揺らぎかねない。県連は週明けに党本部に公認を申請。年内にも出馬会見を開く予定という。一方、立憲民主党は女性の擁立を視野に新人擁立の準備を進めている。

【「評価うれしかった」】
郡山市内のホテルで行われた「第26回参議院議員通常選挙福島選挙区における出馬要請式」に出席した星氏。県連幹部たちに三顧の礼で迎えられた。
県連幹事長の西山尚利県議に「星北斗様には一週間にわたりまして時間をとっていただきまして誠にありがとうございます。先週土曜日、11日に第26回参議院議員通常選挙福島選挙区における自由民主党公認の最適任者として強い決意をもって星北斗さんに出馬を要請致しました。本日改めて出馬を要請致します。ご回答をお願い致します」と振られる形で、次のような表現で受諾を伝えた。
「本日はありがとうございます。先週要請をいただき、熟考してまいりました。私にできることをしっかりさせていただく。福島県の役に立つ。それをここに誓って出馬を受け入れたいと思います。よろしくお願い致します」
セレモニーは4分足らずで終了。続いて行われた囲み取材で、改めて出馬を決めた理由を語った。
「要請を受けた時にも申し上げましたが、震災以降、一生懸命やってきたことを評価されて、そして『お前にできることがあるはずだ』と言っていただいたことを、本当にうれしく思ったという表現を使わせていただきましたが、本当にそう思いました。そしてわたしまだ57ですので、これから精一杯です、この力を福島県のためにという想いに立って、そして出馬をさせていただく…非常に重い決断であることは分かっていますが、そういう決断をさせていただきました」
テレビ局記者から具体的な公約について問われたが、星氏は「具体的な公約を公表する段にはありませんが、先ほど来おっしゃっていただいているように、県民の健康、特に子どもたちの健康の問題。そして街の様々な資源を活かした街づくり。人口が増えるような、そんな県土。そういうものをつくっていきたいというのが基本的な考え方です」と答えるにとどまった。


自民党県連幹部に三顧の礼で迎えられ、出馬要請受諾を伝えた星北斗氏。県連会長の根本匠代議士は「即戦力だ」と絶賛した=郡山ビューホテルアネックス「山桜」
【座長職「関係者と相談」】
参院選には捲土重来を目指す岩城光英氏(元法務大臣、2016年7月の参院選で落選)も出馬を模索しているが、西山幹事長は「県連としては星さんを選んだということ」としたうえで、「ちょっと生意気だけど、最初からわれわれは、福島県のために複数期にわたって活躍できる人材を育てるんだ、育成するんだと。それが大原則だった。それに復興創生もまだこれからですし、県民の健康とか子どもたちの健康もこれからも守っていってもらいたい。やっぱり福島に愛着がないと駄目。そういった観点から、どちらかというと医療の色が強いが、われわれが最適任だと福島のなかから選定させてもらった」と星氏擁立の理由を語った。
県連会長を務める根本匠代議士は、受諾を受けて「即戦力だ」述べた。
「非常に熱い想いで決断していただきました。受諾をしていただきました。心から御礼を申し上げます。なぜ星さんを擁立したいと考えたのか。2点申し上げたい。1つは東日本大震災以降、福島県民の命を預かり、健康を管理してきた。星北斗さんが中心となって県をはじめ行政当局と、そして医療関係者を束ねてしっかりと制度を作り上げた。そして分かりやすい納得のできる説明責任を果たしていただいた。そしてコロナ対応。行政当局と医師会を中心に関係団体と中心になって協力して引っ張ってきた。この医療提供体制、福島県は非常に優れた医療提供体制を作り上げていただいたと思っています。その意味でこの間の星北斗さんのリーダーシップ、そして制度を作り実現をする政策調整能力、政策実現能力、これがまさに参院候補として即戦力だと思っております」
星氏は福島県医師会副会長を務めるとともに、医師会から推薦される形で県民健康調査検討委員、そして委員の互選で座長を務めている。筆者は囲み取材で質したが、星氏は「すぐにここで辞めるとか辞めないとかではないと思いますので、関係者ときちんと話をしたうえで然るべき対応をとりたいと思います。具体的な様々な役職につきましても皆さんと相談したうえで適切に対応したいと思います」と答えるにとどまった。


星座長の運営を巡っては委員会内外からの批判も根強い。委員会後の記者会見ではリュックを抱えたまま臨み、終了と同時に会場を飛び出したことも
【10月に再任されたばかり】
実は、星氏は10月15日に開催された第43回委員会で座長(任期2年)に再任されたばかり。「もうこりごりだ、という想いが全く無いと言えば嘘になるかもしれない」、「非常に大変で疲れる仕事」と筆者に語ったこともあるが、2013年から山下俊一氏から引き継いで4期8年にわたって座長を務めてきた。
今回が5期目となるが、出馬となれば「医師会副会長も含めて辞めなければならない」(県連幹部)。ではなぜ10月の委員会で座長就任を断らなかったのか。水面下での打診があったはずだ。
星氏は「そんなことを言われてもその時には全くこの話はなかったわけだから。もうちょっと早く言ってくれれば対応の仕方もあったのに」と筆者に苦笑交じりに答えただけだった。
「『県民健康調査』検討委員会設置要綱」では「座長に事故があるとき又は座長が欠けたときは、座長代行が、その職務を代理する」と定められている。筆者は、座長代行を務める稲葉俊哉委員(広島大学原爆放射線医科学研究所教授)への相談や報告についても問うたが、星氏は「相談したのは家族だけ」と回答。他の委員への報告に関しても「その義務があるのかないのか分からないけど、県と相談します」と答えた。
星氏の出馬について、県民健康調査検討委員会をウォッチし続けている医療関係者は「熟慮した結果、出馬要請を受諾したというような形になっているが、周到に準備されたものでしょう。福島県医師会報の12月号では旧民主党政権を批判しています。まるで立候補表明のような特別寄稿です。検討委で環境省の言いなりになっていたのも選挙のためでしょう。自民党支部の会計担当もしていたようですし…」と検討委の中立性について疑問を呈している。
参院選まで半年以上あるが、いち早く名乗りを挙げた自民党。一方の立憲民主党は女性を軸に新人候補の擁立を模索しているという。共産党関係者は「野党共闘を前提に準備を進めている」と話しており、元職の岩城氏が非公認で出馬すれば参院選は星氏、岩城氏、野党共闘候補、現職の増子輝彦氏(無所属、自民系会派に所属)による争いになりそうだ。
(了)

【「評価うれしかった」】
郡山市内のホテルで行われた「第26回参議院議員通常選挙福島選挙区における出馬要請式」に出席した星氏。県連幹部たちに三顧の礼で迎えられた。
県連幹事長の西山尚利県議に「星北斗様には一週間にわたりまして時間をとっていただきまして誠にありがとうございます。先週土曜日、11日に第26回参議院議員通常選挙福島選挙区における自由民主党公認の最適任者として強い決意をもって星北斗さんに出馬を要請致しました。本日改めて出馬を要請致します。ご回答をお願い致します」と振られる形で、次のような表現で受諾を伝えた。
「本日はありがとうございます。先週要請をいただき、熟考してまいりました。私にできることをしっかりさせていただく。福島県の役に立つ。それをここに誓って出馬を受け入れたいと思います。よろしくお願い致します」
セレモニーは4分足らずで終了。続いて行われた囲み取材で、改めて出馬を決めた理由を語った。
「要請を受けた時にも申し上げましたが、震災以降、一生懸命やってきたことを評価されて、そして『お前にできることがあるはずだ』と言っていただいたことを、本当にうれしく思ったという表現を使わせていただきましたが、本当にそう思いました。そしてわたしまだ57ですので、これから精一杯です、この力を福島県のためにという想いに立って、そして出馬をさせていただく…非常に重い決断であることは分かっていますが、そういう決断をさせていただきました」
テレビ局記者から具体的な公約について問われたが、星氏は「具体的な公約を公表する段にはありませんが、先ほど来おっしゃっていただいているように、県民の健康、特に子どもたちの健康の問題。そして街の様々な資源を活かした街づくり。人口が増えるような、そんな県土。そういうものをつくっていきたいというのが基本的な考え方です」と答えるにとどまった。


自民党県連幹部に三顧の礼で迎えられ、出馬要請受諾を伝えた星北斗氏。県連会長の根本匠代議士は「即戦力だ」と絶賛した=郡山ビューホテルアネックス「山桜」
【座長職「関係者と相談」】
参院選には捲土重来を目指す岩城光英氏(元法務大臣、2016年7月の参院選で落選)も出馬を模索しているが、西山幹事長は「県連としては星さんを選んだということ」としたうえで、「ちょっと生意気だけど、最初からわれわれは、福島県のために複数期にわたって活躍できる人材を育てるんだ、育成するんだと。それが大原則だった。それに復興創生もまだこれからですし、県民の健康とか子どもたちの健康もこれからも守っていってもらいたい。やっぱり福島に愛着がないと駄目。そういった観点から、どちらかというと医療の色が強いが、われわれが最適任だと福島のなかから選定させてもらった」と星氏擁立の理由を語った。
県連会長を務める根本匠代議士は、受諾を受けて「即戦力だ」述べた。
「非常に熱い想いで決断していただきました。受諾をしていただきました。心から御礼を申し上げます。なぜ星さんを擁立したいと考えたのか。2点申し上げたい。1つは東日本大震災以降、福島県民の命を預かり、健康を管理してきた。星北斗さんが中心となって県をはじめ行政当局と、そして医療関係者を束ねてしっかりと制度を作り上げた。そして分かりやすい納得のできる説明責任を果たしていただいた。そしてコロナ対応。行政当局と医師会を中心に関係団体と中心になって協力して引っ張ってきた。この医療提供体制、福島県は非常に優れた医療提供体制を作り上げていただいたと思っています。その意味でこの間の星北斗さんのリーダーシップ、そして制度を作り実現をする政策調整能力、政策実現能力、これがまさに参院候補として即戦力だと思っております」
星氏は福島県医師会副会長を務めるとともに、医師会から推薦される形で県民健康調査検討委員、そして委員の互選で座長を務めている。筆者は囲み取材で質したが、星氏は「すぐにここで辞めるとか辞めないとかではないと思いますので、関係者ときちんと話をしたうえで然るべき対応をとりたいと思います。具体的な様々な役職につきましても皆さんと相談したうえで適切に対応したいと思います」と答えるにとどまった。


星座長の運営を巡っては委員会内外からの批判も根強い。委員会後の記者会見ではリュックを抱えたまま臨み、終了と同時に会場を飛び出したことも
【10月に再任されたばかり】
実は、星氏は10月15日に開催された第43回委員会で座長(任期2年)に再任されたばかり。「もうこりごりだ、という想いが全く無いと言えば嘘になるかもしれない」、「非常に大変で疲れる仕事」と筆者に語ったこともあるが、2013年から山下俊一氏から引き継いで4期8年にわたって座長を務めてきた。
今回が5期目となるが、出馬となれば「医師会副会長も含めて辞めなければならない」(県連幹部)。ではなぜ10月の委員会で座長就任を断らなかったのか。水面下での打診があったはずだ。
星氏は「そんなことを言われてもその時には全くこの話はなかったわけだから。もうちょっと早く言ってくれれば対応の仕方もあったのに」と筆者に苦笑交じりに答えただけだった。
「『県民健康調査』検討委員会設置要綱」では「座長に事故があるとき又は座長が欠けたときは、座長代行が、その職務を代理する」と定められている。筆者は、座長代行を務める稲葉俊哉委員(広島大学原爆放射線医科学研究所教授)への相談や報告についても問うたが、星氏は「相談したのは家族だけ」と回答。他の委員への報告に関しても「その義務があるのかないのか分からないけど、県と相談します」と答えた。
星氏の出馬について、県民健康調査検討委員会をウォッチし続けている医療関係者は「熟慮した結果、出馬要請を受諾したというような形になっているが、周到に準備されたものでしょう。福島県医師会報の12月号では旧民主党政権を批判しています。まるで立候補表明のような特別寄稿です。検討委で環境省の言いなりになっていたのも選挙のためでしょう。自民党支部の会計担当もしていたようですし…」と検討委の中立性について疑問を呈している。
参院選まで半年以上あるが、いち早く名乗りを挙げた自民党。一方の立憲民主党は女性を軸に新人候補の擁立を模索しているという。共産党関係者は「野党共闘を前提に準備を進めている」と話しており、元職の岩城氏が非公認で出馬すれば参院選は星氏、岩城氏、野党共闘候補、現職の増子輝彦氏(無所属、自民系会派に所属)による争いになりそうだ。
(了)
スポンサーサイト