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【130カ月目の汚染水はいま】「海に流されるのは放射性物質だけではない!」専門家が危惧する燃料デブリ内の有毒な化学物質~いわきで講演会

日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)の元主任研究員で工学博士の天野光さんが22日午後、福島県いわき市内で講演し、「燃料デブリには放射性物質はもちろん、水銀やヒ素など様々な種類の有毒物質も含まれている。それらがどれだけ汚染水に溶け出すのか、多核種除去設備(ALPS)でどの程度取り除けるのか全く分からない」として、国や東電による情報開示の必要性を強調。そのうえで改めて海洋放出に反対の姿勢を示した。福島県の市民団体「これ以上海を汚すな!市民会議」(織田千代、佐藤和良共同代表)の主催。
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【水銀やヒ素、カドミウム、テルル…】
 「汚染水を海に流してはいけないというのが私の意見です。海や海の生物が様々な人工放射能や化学毒物で汚染する可能性があるからです」
 福島第一原発敷地内にたまり続ける汚染水(国や東電は「ALPS処理水」と呼ぶ)の海洋放出を巡っては、ALPSで取り除けないトリチウムなど、放射性物質の危険性が指摘されることが多い。天野さんももちろん放射性物質について言及しつつ、有毒な化学物質の存在についても指摘した。
 「燃料デブリには水銀やヒ素、カドミウム、テルル、鉛などが含まれています。汚染水にどのような化学毒がどの程度含まれているかについては、現時点では分かりません。燃料デブリからどの程度溶け出すのか、ALPSでどの程度取り除けるのかも不明です。東電は汚染水中の重金属などの詳細な分析結果を公表するべきです」
 この指摘には、これまで汚染水の海洋放出反対の声をあげてきた人々も驚きの声をあげた。海を汚す原因に放射性物質だけでなく有毒な化学物質も含まれるとなれば、ますます海に流す事など認めることはできない。
 天野さんは「汚染水のなかに有毒物質が全部含まれているわけではありません。接触した燃料デブリのなかに含まれているということ」と前置きしたうえで、燃料デブリに含まれている化学物質の危険性について語った。
 「例えばテルルは青酸カリに匹敵する毒物です。0・25ミリグラムの摂取で中毒症状を発症します。『イタイイタイ病』の原因物質であるカドミウムの毒性も強く、いったん体内に取り込まれると、その量が半分になるまでに数十年かかります」
 だからこそ、国や東電には有毒な化学物質に関する詳細なデータを開示する必要があるというのだ。

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講演で、燃料デブリに含まれる有毒な化学物質の危険性について指摘した天野光さん。汚染水中にどの程度溶け出すのか、ALPSでどの程度取り除けるか不明のため「国や東電は汚染水中の重金属などの詳細な分析結果を公表するべき」と語った=いわき産業創造館

【「放射性炭素も取り除けぬ」】
 もちろん、放射性物質に関する問題点も多い。
 「トリチウムの本当にリスクはまだ分かっていません。予防原則に従って放出してはいけないと思います」
 「低レベル放射線のリスクが判明してきています。これ以下なら安全、という放射線レベルはありません。環境放射線にもそれなりのリスクがあります」
 「告示濃度以下であっても、公表されている62核種が福島の海に流されることになります。ひとたび汚されてしまった海は、なかなか元には戻りません」
 東電は「ALPSで二次処理する」として2020年9月に試験を始めているが、「トリチウムや放射性炭素は全く取り除けません。放射性ヨウ素やストロンチウム、放射性セシウムなども完全には取り除けません」と天野さん。
 ALPSは万能ではないうえ、吸着剤を交換する際には2日から14日間は運転を停止しなければいけないため、稼働率を上げるために東電は「吸着剤交換による処理量の低下の影響が大きい場合は、告示濃度限度を大きく超えない範囲において交換時期を調整」という運用方針(「多核種除去設備等処理水の性状について」)を2018年10月に公表している。天野さんは「要するに『除去しきれなくても海に流す』ということです」と批判した。
 東電が昨年11月に公表した「多核種除去設備等処理水(ALPS処理水)の海洋放出に係る放射線影響評価報告書」についても「海水ですぐに希釈されると仮定されているが、そもそも放出される水は密度や温度、塩分の違いにより容易に希釈・拡散されません。そもそも放出されるのは64核種だけではありません。30年以上放出し続けるはすですが、放出期間の記述もありません。沖合の放射能濃度も過小評価しています」と、天野さんは複数の問題点を指摘した。

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汚染水の海洋放出問題が抱えるリスクは放射性物質だけに限らない。水銀やヒ素、カドミウム、テルル、鉛なども重大なリスク要因となり得る(講演会の配布資料より)

【「豊かな海が汚染される」】
 質疑応答も含めて90分間にわたって講演した天野さん。改めて「海に流してはいけない」と強調した。
 講演会を主催した「これ以上海を汚すな!市民会議」の共同代表・織田千代さんは講演の冒頭、「国は『海に流そうとしているのは処理水であり、市民が汚染水という言葉で周りの人に宣伝するのはやめて欲しい』と私たちに釘を刺したが、事故のあった原発から流される水は、トリチウムなど処理しきれない放射性物質を含む水。今後も汚染水と呼びます。事故のあった原発から何が流されようとしているのか。流そうとしている水にはどんな物質が含まれ、どんな影響が予想されるのか。海洋放出の問題点をより深く理解しながら反対の声をあげ続けたいと思います」とあいさつした。
 やはり共同代表の佐藤和良さん(いわき市議)は「燃料デブリには、放射性物質のほかに化学物質が存在するということでした。130万トン近いタンク貯蔵水の中身はどうなっているのか。東電は自分たちに都合悪い情報は公表しないという体質が抜け切れていないが、公害(原発事故)の原因者(東電)が情報を開示して、環境にも人体にも無害であると証明しなければなりません」と、改めて情報開示を求めた。
 天野さんは東北大学を卒業後、日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)の室長や主任研究員などを歴任。環境中の放射性核種の測定や動きに関する研究を行った。2014年からはNPO法人「いわき放射能市民測定室たらちね」の顧問に就任。また茨城県常陸太田市で暮らしながら、茨城県内の放射能汚染調査も続けている。
 昨年11月にいわき市小名浜で行われた海洋放出反対集会にも参加し、「海に放出される放射能が基準値以下であったとしても海産物は濃縮します。生物濃縮と言います。たとえ基準値以下の放出であっても、福島の豊かな海が放射能で汚染されることは容易に予想できます」などとスピーチした。



(了)
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鈴木博喜

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