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【原発避難者から住まいを奪うな】〝切り捨て張本人〟福島県知事の証人尋問申請へ 被告女性は「避難継続の権利認めて」と意見陳述~第5回口頭弁論

福島県が一昨年3月、原発事故で〝自主避難〟した4世帯を相手取り、国家公務員宿舎「東雲住宅」(東京都江東区)の明け渡しと未納家賃の支払いを求めて提訴した問題で、うち審理が併合された2世帯に対する第5回口頭弁論が4日午後、福島地裁203号法廷(小川理佳裁判官)で行われた。被告にされた避難当事者の女性が「戻らない選択をした人たちにも責任をもって寄り添うべきだ」などと意見陳述。被告代理人弁護士は、次回期日で福島県の内堀雅雄知事に対する証人尋問を申請する意向を示した。尋問採用へのハードルは高いが、避難者切り捨ての張本人に政策決定過程を質したい考え。次回弁論期日は3月25日14時。
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【「私たちにも寄り添って」】
 ようやく落ち着けた住まいが「東雲住宅」だった。
 南相馬市で介護士の仕事をしていた被告女性は、自宅のある地域が2011年4月22日に「緊急時避難準備区域」に指定されたことを受けて次女とともに避難。宇都宮からJR在来線で東京に向かった。知人宅に身を寄せたが長居するわけにもいかず、都内の専門学校に通っていた長女とともに避難所になっていた赤坂プリンスホテルに入った。その間、都営住宅の募集に申し込んだが入居は叶わなかった。「全国町村会館」を経て、国家公務員宿舎「東雲住宅」での生活を始められたのは7月末のことだった。原発事故発生から4カ月以上が経過していた。
 避難指示は翌々月の2011年9月30日には解除されている。しかし、被告女性は自宅のある南相馬には戻れなかった。
 「放射線に対して大きな不安があり、納得できませんでした」
 南相馬での仕事は辞めざるを得ず、借家だった自宅は家主から解約を迫られた。まさに苦渋の選択だったが、女性は「わが子を放射線から守るための判断。間違っていなかった」と力を込めた。
 避難指示解除から5年後の2016年12月22日、福島県から書類が届いた。継続入居に関する意向調査だった。「住むところがなくなると思い提出しました」。だが、当時は無職で家賃支払いへの不安があったことから「セーフティネット契約」(2年間限定の有償入居)にはサインできなかった。すると、福島県職員が複数回にわたってやって来て「玄関先で待っているのですぐに契約書にサインして提出するように」と促したという。
 わが子への被曝影響から逃れるための避難生活は、経済的にも精神的にも負担は重かった。「住まいが無償であるからこそ生活が成り立ってきた」。しかし、福島県は2017年3月末で住宅の無償提供を打ち切った。都営住宅に入居したいが応募要件を満たさない。そしてついに県から訴えられ、「被告」として法廷の真ん中にいる。
 「県民に寄り添うと言っていた福島県が、なぜ私たち県民にひどい方針を立てているのか理解できません。『戻る権利』があるなら『戻らない権利』があって然るべき。(避難元に)戻らない選択をした人たちにも責任をもって寄り添うべきだと思います」

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被告として法廷で意見陳述した女性。「(避難元に)戻らない選択をした人たちにも責任をもって寄り添うべき」と福島県の〝追い出し〟に怒りをぶつけた

【「福島県は説明責任果たせ」】
 この日の弁論では、被告(避難者)側が1月31日付で提出した第6準備書面を陳述した。
 代理人を務める柳原敏夫弁護士は「原告(福島県)の第2準備書面によって①福島県は国と協議のうえ2017年3月末で応急仮設住宅の供与を終了するとの政策決定をした②この政策決定に基づき、東京都は原発避難者への国家公務員宿舎一時使用許可を国に申請しなかった─の2点が明らかになった。①の政策決定が誤りで違法だということになれば、②の東京都の決定も誤りで違法ということになる」として、今後さらに、福島県の住宅無償提供打ち切りなどが国際人権法から誤りで違法であるとの主張を展開していく方針を示した。
 「そもそも国は現実の原発事故発生に対する法令の備えが全くなく、行政庁の具体的な措置を決定するにあたっても、用意周到に調査を尽くす必要があった。福島県は国内避難民となった原発避難者の住まいの確保・継続という問題の措置を決定するにあたって、国内法に関する文献のみならず国際人権法の文献まで十分に収集・調査したうえで検討する必要があった。原告(福島県)は、国際人権法の文献も含め、いかなる情報に基づき、いかなる見地に立って応急仮設住宅の供与終了を決定したのか、説明する責任がある。しかし、2回にわたる求釈明にほとんど回答せず、説明責任を果たしていない。ぜひ次回までに回答して欲しい」
 だが、原告(福島県)代理人の湯浅亮弁護士は「求釈明に対して書面を出して主張することは特段、考えていない」と述べるにとどまった。「一般的な解釈、通説的な考え方として述べられていることについて争うつもりはないが、先生方の主張は独自の見解だと思われるので、反論は考えておりません」(湯浅弁護士)。
 原発被災県が避難県民(区域外避難者)に対する住宅無償提供を一方的に打ち切り、退去できないでいる避難者を裁判で追い出そうという異常事態。弁論では政策決定の過程やぜひなど本質的な審理が始まっていない。しかし、小川裁判官は「被告はこれで主張を尽くしたということでよろしいのか」、「被告が主張を尽くす期限が今日だった」などと審理の終結を急いでいるかのような発言が目立った。「人証(証人尋問)の申請もこの日が期限ではなかったのか」と迫る小川裁判官を制するように、柳原弁護士は今後の訴訟進行に対する考え方を述べ始めた。

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福島県の内堀雅雄知事。区域外避難者への住宅無償提供が打ち切られた2017年には、年末の定例会見で「共」の漢字を掲げていた

【被告本人尋問のみ採用か?】
 開廷前、支援者を前に「福島県知事が〝追い出し問題〟にどういう形で関わって、何を検討したのか。真実をきちんと明らかにして人権違反の問題をはっきりさせたいと考えている。石を投げます」と語っていた柳原弁護士。次回弁論期日で内堀雅雄福島県知事の証人尋問を申請する方針を示した。
 「いったい、どの行政過程で〝自主避難者〟に住まいの明け渡しを求める行政庁の決断(区域外避難者への住宅無償提供打ち切り)がなされたのか。原告(福島県)は第2準備書面で『決断をしたのは東京都であって福島県ではない。文句があるなら東京都に言ってくれ』と言わんばかりの反論をしてきてきた。ところが、同じ書面の別のページでは『原告は区域外避難者に対して平成29年3月末をもって応急仮設住宅の供与を終了するとの政策決定をした』とも反論している。これだと政策決定をしたのは福島県だと読める」
 都内に避難した区域外避難者から住まい(国家公務員宿舎)を奪う決定をしたのは避難者を受け入れ、国から使用許可を受けていた東京都なのか。それとも避難元の福島県なのか。その政策決定過程を明らかにするために、都知事と福島県知事を法廷に引っ張り出す。
 「決断を下した行政庁それぞれの責任者、具体的には福島県知事と東京都知事(あるいは幹部職員)の証人尋問を実施して内実を明らかにしたいと考えている。加えて国際人権法の専門家証人、被告本人に対する尋問を一括して次回期日に申請したい」
 小川裁判官は「採否は分からないが、人証の日にちを取ります」として、次回弁論期日を3月25日14時と指定したうえで、「一応、4月26日13時半に予定として入れておきたい。採用しなければ終結ということもあるかもしれない」とした。
 国家公務員宿舎「東雲住宅」を巡っては、福島県は退去できていない4世帯に対して明け渡しや未払い家賃などの支払いを求めて提訴。うち2件は既に結審しており、3月に判決が言い渡される予定。松川まゆみ裁判官は「必要性がない」として人証申請を却下した。
 内堀知事への証人尋問が実施されるとなれば「子ども脱被ばく裁判」での山下俊一氏への尋問と並ぶ重要な局面となるが、柳原弁護士は「尋問期日を1日しか指定しなかったところを見ると、被告本人への尋問だけを実施して結審するつもりなのではないか」との見方を示した。



(了)
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鈴木博喜

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