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【311子ども甲状腺がん裁判】「裁判に勝ってサポート体制実現したい」「私以外の子どもたちのためにも」~原告たちがオンライントーク

原発事故後に小児甲状腺がんを罹患したのは被曝が原因であるとして若者6人(事故発生当時福島県内で暮らしていた6歳から16歳)が東京電力を相手取り損害賠償を求めた「311子ども甲状腺がん裁判」。原告たちが2日夜のオンライントークイベントで、提訴に至った心情や小児甲状腺がんが見つかった他の子どもたちへの想いを語った。国や福島県が原発事故との因果関係を否定するなか、訴訟に臨むまでには時間と勇気が必要だった。しかし、原告たちは異口同音に言う。「他の子どもたちの力になれば…」。なぜ若者たちは立ち上がったのか。「311」を前に耳を傾けたい。(原告たちの名前は全員仮名)
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【「私たち=風評被害?」】
 「この11年間で、私のほかに300人もの子どもたちが甲状腺がんになっています。このような状況にもかかわらず、検査を始めた序盤から『甲状腺がんと原発事故との因果関係は認められない』と言われていました。検査縮小に向けての動きや、過剰診断論などを主張する動きもあります。福島県の子どもたちの健康、私以外の甲状腺がんと診断された約300人の子どもたちのためにも、この裁判に挑みました。裁判に勝つことでこれらの動きを止めて、甲状腺検査の継続や甲状腺がんと診断された子どもたちへのしっかりとしたサポート体制を実現していきたいと考えています」
 ちひろさんは、原告団に加わった理由をそう話した。
 「県外に避難した人が、ガソリンスタンドで帰れと言われたとか福島県出身ということで婚約を破棄されたという話を聴いていました。福島県民というだけで差別される環境が続いていて、それに加えて復興に向けた動きが加速して、私たちの話題は風評被害につながると捉えられるようになった。なかなか声をあげられるような状況ではなかったのですが、時効を迎えてしまったらどうしようもないので、このタイミングで声をあげることを決めました」
 ゆうたさんは「女性特有の甲状腺がんをなぜ罹患してしまったのか、ずっと疑問を抱いていた」という。
 「放射能に関する様々な情報が流れていますが、どれが真実かどれが嘘か、僕1人では判断できないです。この裁判を通して何が真実なのかを証明できたらいいなと思っています。裁判に勝つことで僕たち以外にも声を出せずにいる人たちのサポートが少しでもできたらなと思って参加しています」
 あおいさんは、次のようなメッセージを寄せた。
 「高校生のときに甲状腺がんと診断され、手術を受けました。その後再発。遠隔転移もしていて完治することは極めて難しい状態にあります。将来のことを考えると不安で、結婚や出産など先のことはまだ考えられないです。原発事故との因果関係はないと言われていますが、原発事故後、多くの子どもたちが甲状腺がんに罹患しているのはなぜか。原因を認めて欲しいです。この裁判が、少しでも孤立している他の甲状腺がんの皆さんの力になればと思います」

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福島県の県民健康調査で確認されているだけでも266人の小児甲状腺がんが確認されており、うち222人が既に手術を受けている

【「偏見やバッシング哀しい」】
 原告の家族も参加して本音を吐露した。
 こはくさんの母親は「あまりにもショックで頭が真っ白になりました。どうしてうちの子が甲状腺がんになったのだろうという気持ちが大きかったです」と告知された時を振り返った。
 しかし、そういう想いに寄り添ってもらえるどころか、まるで復興の足を引っ張るかのような風潮が続いた。今年に入り、5人の元首相がEU欧州委員会宛てに連名で送った書簡に「多くの子供たちが甲状腺がんに苦しみ」という17文字を盛り込んだだけで自民党や福島県の内堀雅雄知事が猛烈に抗議した。
 「いろんなことがあった11年でした。『福島県』や『甲状腺がん』というキーワードがなぜいけないのでしょうか一部の方々からの偏見やバッシング、陰口、SNSなどでの炎上は本当に哀しいです。二度目の手術から間もないですが、退院後の定期テストや模擬試験など大変な三学期でした。体調が万全ではないはずなのに、よくがんばっていると思います。今回、コロナ禍での入院・手術となってしまい、面会はほとんどできませんでした。地震、原発事故、甲状腺がん…いろいろな選択肢がありました。今も悩みは尽きません」
 祖母は孫を思いやると同時に、自分を責めてしまったという。
 「私の対策(放射線防護)が間違っていたのかなと思いました。自分なりに最良の対策を講じていたつもりだったんですけど、もう少し離れていれば、もう少し空気を吸わないようにすれば良かったんじゃないか…。再発したときにはさらに後悔しました」
 みつきさんの母親も同じだ。
 「医師からは『取っちゃえば大丈夫ですよ』と言われました。結局、再発を繰り返していて、一生薬を飲み続けなければいけない。大変なことを子どもに課してしまったんじゃないかという想いもあります」
 「どこでどうなって甲状腺がんになったのか理由が分からなくて…。でも、この裁判を起こしたことで何かしらのことが分かるのではないかという強い気持ちがあります。他の方たちにもつなげられるような裁判にしたいと思っています」

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福島県の内堀雅雄知事は2月3日の定例会見で、改めて小児甲状腺がんと原発事故の因果関係を否定した

【「〝少数派〟じゃなかった」】
 ゆうたさんは、こんな言葉も口にしている。
 「僕のなかでは手術をした時点でもう終わったんだなと考えていた時期もありました。でも、まだ苦しんでいる人たちがいる。ここで終わりにするのは違うなと感じました。正直、ここまで支援してくださるとは考えていませんでした。少数派だと思っていたので、本当に感謝しています」
 こはくさんも「少数派」という言葉を使った。
 「少数派だと思っていたんですけど、こんなにも支援してくれる人がいると思うと本当にありがたい。感謝の気持ちしかないです」
 しかし、広報担当の北村賢二郎弁護士が「現時点で寄付が1221万円にもなりました。とても驚きました」と語ったように、支援の輪が広がっている。しかも、若い原告たちが口にしているように、決して自分のためだけに裁判に臨んでいるわけではない。弁護団長の井戸謙一弁護士は、改めて〝決意〟を語った。
 「原告の6人には、再発の不安を抱え、医療保険にも入れないというなかで正当な補償を求めたいという気持ちは当然あります。でもそれだけではなく、自分が苦しんできたのと同じように300人近い若者が苦しんでいる。その人たちに勇気を与えるような裁判にしたいという強い気持ち、最終的にはきちんとした制度につなげたいという想いがあります。広島、長崎の原爆被害者の方々には被爆者支援法という法律があって、生涯にわたって支援を得られることができる。同じように福島第一原発事故による被曝で健康を害した人にも安心して生活できる枠組みが欲しい。それにつなげていきたいという気持ちも持っておられます。そういう方向に進むための裁判にしたい」
 田辺保雄弁護士はさらなる支援を求めた。
 「県民健康調査を実施している福島県や一部の専門家は、原発事故と甲状腺がんの因果関係を否定しています。被告として相手取っている東京電力は大企業です。お金の力で、あらゆる専門家に自分たちに都合の良いことだけをつまみ食いするように証言させることが可能です。楽勝な裁判ではありません。医学論文は英語で公表されます。証拠として裁判所に提出するためには翻訳しなければなりません。それには大変な費用がかかります。また日本の偏見に満ちた状況から、協力してくれる研究者を海外に求めることも考えなければなりません。これにも多額の費用がかかります」
 訴訟への寄付は⇒こちらをクリック



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)
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