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【参院選2022】「汚染水海洋放出」や「原発避難者切り捨て」への関心低い? 野党統一候補・小野寺彰子氏が出馬会見で「イノベ構想」や「教育旅行」にばかり言及

参議院議員選挙(6月22日公示、7月10日投開票の見通し)に向け、フリーアナウンサーの小野寺彰子氏(43)が12日午後、立憲民主党福島県総支部連合会(県連)からの出馬要請受諾を福島市内で伝えた。同日午後には〝非自民・反共産〟の五者協議会の候補者として無所属で出馬することを表明。「国の責任のもと、国民・県民の理解を得たうえでのALPS処理水対応の堅持」など8項目にわたる基本政策を締結したが、記者会見では個別の政策に対する質問は封じて「復興」を連呼。「福島イノベーションコースト構想をもっと知って欲しい」と語る一方で、原発汚染水海洋放出問題や原発避難者切り捨て問題には言及なし。物足りない船出となった。
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【イノベ「雇用拡大にもなる」】
 震災・原発事故後の課題より「復興」を重視するのか。
 記者会見で震災・原発事故後の課題について問われると、小野寺氏は「アナウンサーとして、復興に関する県や市町村の主催するイベントで司会をする機会があった」と前置きしたうえで、次のように答えたのだ。
 「国家プロジェクトとして『福島イノベーションコースト構想』がありますが、県民の皆様にまだ周知されていない部分があります。福島の復興のために力を尽くしてくれている方も多いので、多くの皆様に知っていただきたいです。雇用拡大にもつながると思うので注視しています。震災・原発事故で修学旅行など『教育旅行』も減少しました。徐々に回復している傾向にはありますが、状況が改善したとまでは言えません。もう少し力を入れて欲しいなと思います」
 そして、最後に原発避難者に少し触れた。
 「11年経っても避難されている方々、故郷に帰れていない方々が多くいらっしゃる。そういう人たちへのきめ細やかな対応もしっかり考えていかなければいけないのではないか」
 基本政策締結式が終わり、五者(連合福島、立憲民主党福島県連、県民連合、国民民主党福島県連、社民党福島県連)代表のあいさつの後に行われた記者会見。小野寺氏が「詳しい政策につきましてはまた改めて時間をちょうだいできればと思います」と語れば、司会役の男性(連合福島事務局長)も「これから五者協議会と候補者で協議をしてまいりますので、個別の政策に対する具体的な質問はお控えいただきたい」と釘を刺す。そのため、地元記者たちからは「お召し物が大変きれい」など政策と全く関係のない質問が相次いだ。
 あいさつのなかで、小野寺氏自身が「震災から昨日で11年。いまだ解決していない問題が様々山積していて、それは人の数だけ存在している」と語ったが、最後まで「いまだ解決していない問題」とは何なのか、それを解決するために何をするべきなのか具体的な言及はなかった。

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野党統一候補として夏の参院選に出馬することになった小野寺彰子氏。しかし、記者会見では「復興」を口にするばかりで「汚染水海洋放出問題」や「避難者切り捨て問題」などに言及することはほとんどなかった=ホテル福島グリーンパレス

【「私の原点はラジオです」】
 これには会見後、関係者の1人は「司会として復興をPRする仕事をしてきたこともあるだろうけど、まさかイノベ構想の話をするとは思わなかった」と驚いた表情で語った。
 この日合意された8つの基本政策のうち7番目が「原子力に依存しないエネルギー政策の確立と、福島県内原発10基廃炉の確実な推進」、8番目が「国の責任のもと、国民・県民の理解を得たうえでのALPS処理水対応の堅持」。基本政策に盛り込まれなかったが、区域外避難者(いわゆる自主避難者)の住宅問題や国や東電を相手取った裁判、小児甲状腺がんなど被曝による健康影響など原発事故だけをみても課題は山積している。
 しかし、出馬あいさつのなかで小野寺氏はこれらについて一切触れず、自身が長く携わってきた「ラジオ」の話に終始した。
 「私の原点はラジオです。パーソナリティの楽しいおしゃべり、新しい音楽との出会い。小学生の時に初めてラジオに触れた私にとって、一方通行ではない双方向だからこそ生まれるコミュニケーションに夢中になりました。多くの皆様とのご縁もあり、20年以上アナウンサーとしてラジオの仕事に携わることが出来ました。これは感謝以外の何物でもありません」
 「東日本大震災のとき、私も現場にいました。見えない心の手と手を携えながら暗闇を進んで行くようなそんな感覚でした。当時の放送は忘れられない、思い出すと涙があふれるようなこともたくさんあります。金子先生からもありましたが、震災から昨日で11年。いまだ解決していない問題が様々山積していて、それは人の数だけ存在している。皆さんがちょっとでも政治に関心を持って自分事として感じていただけるように全力で動いていきます」
 連合福島の今野泰会長は「決断をしてくれる方がいなかったことも事実だが、女性の候補者ということで、時代にマッチした潮流に乗った候補者であろう」と小野寺氏を賞賛。福島選出の国会議員も「素晴らしい候補者」(金子恵美代議士)、「ベストな候補者が立ってくれたと喜んでいる」(玄葉光一郎代議士)と絶賛したが、原発事故被災県の候補者としては物足りない船出となった。

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野党が出遅れるなか、自民党は公認候補の星北斗氏をラジオ福島の番組に4日連続で出演させるなど着々と準備を進めている

【「今後レクチャーしたい」】
 終了後、社民党の関係者は「文章表現としてはああなったが、解釈としては『海洋放出を認めない』ということは五者協議会での話し合いのなかで確認している。海に流さないことが前提。今日は触れていなかったが、そこは大丈夫だと思う。小児甲状腺がんの問題もあるし、脱原発などについて今後レクチャーをしたい」と話した。
 福島県議会の会派「県民連合」に所属する県議の1人は、汚染水海洋放出問題について基本政策のなかで賛否を明確にしなかったことについて「うちらは共産党じゃないから。これは五者協議会での皆さんの共通項だから。『国民と県民の理解を得たうえで、というのを堅持しなさい、まず守りなさい』ということ。国民民主党は賛成できないという想いを持っているわけだから。で、社民党と立憲民主党はどちらかというと反対。連合福島の中にも右も左もいろいろある。それらの共通項としてこうなった。各政党さんと連合さんとで持ち寄ったものでの着地点。政党とすればいろいろあるでしょう。それらを表現するとああなる」と解説した。
 また、五者協議会に共産党が入ってない点については「元々〝非自民・反共産〟の集まりですから」と話すにとどまった。
 共産党は今回の参院選も〝野党共闘〟に加わる方針。一方の五者協議会側は「今回は今までのような〝共闘〟は難しいでしょう。このあいだのこと(総選挙)もあるので…」とみている。
 今夏の参院選は、1議席を巡って自民党が県民健康調査検討委員会座長で福島県医師会副会長の星北斗氏を公認候補として擁立。6年前の野党統一候補で四選を目指す増子輝彦氏(無所属)、元法務大臣で6年前の選挙で落選した岩城光英氏(無所属)も立候補を表明している。



(了)
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鈴木博喜

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