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【ウクライナ侵攻】「一刻も早く戦争を止めなければ…」ウクライナ出身の福島大学特任教授が二本松市で講演 「プーチン大統領はユダヤ人を虐殺したヒトラーと同じだ」とも

ウクライナ出身で、福島大学「環境放射能研究所」特任教授のマーク・ジェレズニヤクさんが21日午後、福島県二本松市内で行われた緊急集会「ウクライナに平和を 今こそ九条を生かそう」(二本松九条の会などの主催)で講演し、日本の人道支援に感謝しつつ「プーチン大統領はヒトラーと同じ」、「『アイヌの人たちはロシア人』、『北海道はロシアの領土』などとロシアの指導者が言ったらどうか。想像をしていただきたい」などと語った。70回以上ウクライナを訪れている木村真三さん(二本松市放射線アドバイザー)も「戦争だけは避けて欲しい。命を守る活動を応援したい」と講演。原発さえ〝人質〟にするプーチン大統領を非難した。
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【娘はキエフに残りボランティア】
 福島第一原発事故から2年後の2013年11月に来日。環境水文学の研究を続けているジェレズニヤクさん。来日前は、チェルノブイリ原発事故で放出された放射性物質が川でどのように拡散していくかを研究していた。来日から9年。いま遠く離れて暮らしている妻と娘を心配している。
 「娘は今も首都キエフにとどまって生活し、ボランティア活動をしています。できることなら避難して欲しいと思っていますが、必要な役割を果たしていると受け止めています」
 そう自分に言い聞かせるよう語り、「何の理由もなく『ジェノサイド』と言って良いようなことをするおかしな指導者と話し合いができますか?」と聴衆に問いかけた。
 「ナチスドイツのヒトラーが当時やったことは、今で言う『フェイクニュース』。私たちの民族が最も素晴らしいんだ、最も偉いんだ、他はどうでも良いという思想をドイツ人に植え付けてしまった。ドイツ人が最も立派な民族であって、ユダヤ人は存在するべきではない。スラブ人は奴隷などをすれば良いのだという内容のことを書いていました。そして実際にユダヤ人を虐殺しました。キエフのなかにあるバビ・ヤールでは1941年、ユダヤ人というだけでものすごい数の人が殺されてしまいました。父はユダヤ人。友人はナチスドイツに殺されてしまいました。どうして、そんな酷いことができるようになったのでしょうか。あのとき、ユダヤ人には何ができたでしょうか。ヒトラーと話し合えたと思いますか?」
 ロシアのプーチン大統領もヒトラーと同じだという。
 「私自身も『フェイクニュース』がまかり通る国に住んでいたのです。それが旧ソ連です。かつてウクライナはソ連の一部でした。私たちは『アメリカは悪い国なんだ』、『日本はそのアメリカに追従する国なんだ』という教育を受けてきました。実は今回の戦争が始まる2カ月ほど前にプーチンが書いた文章があるのですが、ヒトラーと全く同じことを書いているのです。『ウクライナ人という民族は存在しないんだ』ということです。ウクライナにいる〝親ロシア〟ではない人々を全滅させるような方向に向かっています」

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キエフにとどまっている妻や娘を想いながら「一刻も早く戦争を止めなければなりません」と語った福島大学「環境放射能研究所」特任教授のマーク・ジェレズニヤクさん=二本松市福祉センター

【「日本の人道支援に感謝」】
 ジェレズニヤクさんは、聴衆に向かって何度も「想像して欲しい」と語りかけた。
 「25年くらいたった後の未来のことです。中国の指導者が『日本では漢字を使っていますね。ということは日本は中国の一部ですね』というようなことを言い出したらどうでしょう。『日本人など存在しない』、『日本の国土は中国の一部である』というような法律が、日本を無視して制定されたら皆さんはどう思いますか?そうすることで今、ウクライナで起きている状況が想像できるのではないでしょうか。まさにそういうことなのです」
 「もうひとつ想像していただきたい。『アイヌの人たちはロシア人である』とロシアが一方的に宣言したらどうでしょうか。『北海道はロシアの領土なんだ』とロシアの指導者が言ったらどうでしょうか。想像をしていただきたいんです。全く同じことなんです」
  残念ながら、福島では実際にこれと似た状況が起きてしまっている。他国からの侵略でも戦争でもなく原発事故。放射能汚染で住み慣れた故郷を追われた人々がいる。いつになったら帰れるのか、見通しの立たない人々が数多くいる。
 講演中、ジェレズニヤクさんは何度も何度も、日本からの支援に対する感謝を口にした。 
 「日本の皆さんに心からお礼を申し上げたいです。多くの支援をしてくださっていることを認識しています。日本が武力的な支援をできないことは重々分かっております。人道的な観点で本当に多くの助けをいただいており、感謝しています。一刻も早く戦争を止めなければなりません。ウクライナは独立国だということを理解するまでロシアに経済的圧力をかけ続けることが大切です」
 私たち日本人には何ができるのだろうか。講演後、ジェレズニヤクさんに尋ねた。
 「私自身、個人でできることは限られていると感じています。でも、一人一人の声で政治を動かし、ロシア国民に目を覚ますよう経済制裁を続けていくことは大事です。政治の力というのは本当に大きい。あきらめず声をあげていくということ、あとはウクライナ大使館への寄付。これを周囲に広めていただければありがたいです」

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木村真三さんは「戦争だけは避けて欲しい。僕は医学者。人の命を守ることを優先したい。命を守る活動を応援したい」と語った

【「命守る活動を応援したい」】
 集会では、獨協医科大学准教授で、二本松市の放射線アドバイザーを務める木村真三さんも講演した。これまで22年間で70回ほどウクライナを訪れている。
 「ウクライナには多くの友人がいます。17日には、キエフから地震のお見舞いが届きました。『私たちも大変だけど皆さんも大変です。どうぞご自愛ください』と。こういうことができる人たちを守らなければならないんです。血気盛んに『頑張れ』と言うことなどできません。命があれば何でもできる。やり直しもきく。だから死ぬな。速く日本に来い、とずっと言い続けています。これが僕のやるべきことだと考えています。僕は一人一人の顔が見えるところで仕事をしてきました。顔も何も見えないところで仕事をしている人たちとは違う。見舞いの連絡をくれた友人は糖尿病で、インシュリン注射をしなければいけない。でも、それすら避難シェルターのなかで分け合っている状況なんです。そういう人たちを助けるために何をするべきか…」
 現地では『サマショール』と呼ばれる人々と交流してきた。
 「親友から『サマゴン(自家製ウォッカ)を飲みながら年寄りたちと会話をするのが人として意味がある』と言われたのがきっかけでした。1991年にチェルノブイリ法が成立して、チェルノブイリ原発から30km圏内は人が住んではいけないことになりました。でも、事故翌年の1987年には戻ってきていたお年寄りたちがいたのです。彼らの話を聴いていると、みな同じようなことを口にするんです。『たとえ放射能に汚染されてもここは最高さ』と。福島の避難地域の方々が言っていることと同じじゃないかと思いました。今のサマショールを見るということは、25年後の帰還困難区域の人たちの姿である可能性があるわけです。だから密着してお付き合いしました。残念ながら、コロナ禍で2020年1月以降は行かれていません」
 やはり原発が心配だ。
 「ロシアは原発を人質にとっているんです。ザポリージャ原発は6基あるうちの1基が稼働していた。そこの教育訓練棟にミサイルを撃ち込んだ。いつでも落とせるぞという脅しなんです。また、チェルノブイリ原発の外部電源が喪失しました。使用済み燃料の冷却が一時止まってしまったんです。ベラルーシからの電源供給で復帰しましたが、福島第一原発4号機と同じなんですよ。4号機でも使用済み核燃料の冷却が一時止まったんです。核兵器を使わなくても、原発を武器に使おうとしているのがロシアなのです。これ以上抵抗を続けると最悪のことが起きる可能性がある。なぜロシア軍はチェルノブイリに戦略的に入ったか。停戦合意の材料に使う可能性があります」
 そして、こう力をこめた。
 「戦争だけは避けて欲しい。僕は医学者です。人の命を守ることを優先したい。ロシアとウクライナのどちらが良いとか悪いとかではなく、命を守る活動を応援したい」



(了)
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鈴木博喜

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