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【134カ月目の飯舘村はいま】放射線量の掲示は管理事務内だけ 「急ピッチで準備進める」は何だったのか~被曝リスク情報不十分なままオートキャンプ場の利用始まる

「ていねいにやる」はしかし、実際には不十分なままだった―。避難指示解除後も放射能汚染が残る福島県相馬郡飯舘村の「村民の森あいの沢」で4月23日、オートキャンプ場の利用が始まったが、測定した空間線量を掲示しているものの測定地点は4カ所。しかも、数値は管理事務所内に入らないと確認できない。村幹部はホームページでの情報提供にも言及していたが、いまだ実現していない。現地を訪れるまで空間線量すら分からなければ、特に幼い子どもを連れて行くべきか判断する材料すら得られない。結局、被曝リスクに関する情報提供が不十分なまま、〝復興の起爆剤〟としてのオートキャンプ場の利用が走り出してしまった。
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【未除染エリアも表示なし】
 4月23日のオープンを前に、飯舘村・村づくり推進課の佐藤正幸課長は次のように話していた。
 「しっかり管理して、空間線量も測っている。結果については受付でお示しする。確かに放射線管理区域より高い部分もあるが、この状況で大丈夫だという方に使っていただきたい。引き続き測定は続けており、受付や電話申し込みの際に示せるようにする。図面でも空間線量を表示できるよう指示している。土曜日から使い始めるが現在準備中。初日までにはホームページ上にも掲載できるよう急ピッチで準備を進めている。管理棟に掲示するか、問い合わせの際に案内するか、準備中だがしっかりやります。立て看板や柵なども急ピッチで進めている」
 実際に訪れてみると、確かに高さ1メートルの空間線量は4カ所で測定しているものの、数値を確認するためには管理事務所の建物に入らないといけない。外部からは一切、数値を確認できない。外部から確認できるのは、管理事務所前に設置されたモニタリングポスト(毎時0・4マイクロシーベルト前後)だけ。しかし、管理事務所前は「オートキャンプ場周辺」の空間線量と比べると3分の1ほどだから、あまり参考にならない。
 オートキャンプ場から少し離れるとロープが張られている。「除染していないエリアには立ち入らないように」という〝警告〟で、手元の線量計は毎時0・9マイクロシーベルトを上回った。しかし、なぜロープが張られているか、理由は全く示されていない。
 利用者に配られる「ご利用案内」には「当キャンプ場は、放射線量低減作業が行き届いていないエリアがあるため、裏面キャンプ場マップに示す、立ち入り制限エリアへの進入を禁止しております。お子様が迷い込まないよう十分ご注意ください」と書かれているが、裏面のマップをみても、どこが「立ち入り制限エリア」なのか、表記されていないので分からない。
 佐藤課長は「使いたい人には安全性を確認して利用してもらえるよう急ピッチで進め、初日には間に合わせる。今後、ホームページ上にも掲載するよう準備している。表示しないと安心してもらえない。ていねいに対応する」とも話していたが、実際には放射線量や被曝リスクに関する情報提供が不十分なままでの利用開始だった。

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被曝リスクに関する情報公開が不十分なまま利用が始まった飯舘村のオートキャンプ場。未除染エリアとの境にはロープが張られているが、なぜ規制されているか表示はない

【「被曝リスクを理解し利用を」】
 4月20日号でも報じたように、オートキャンプ場の利用再開を巡っては被曝リスクを心配する声が少なくない。
 〝測定の鬼〟と呼ばれる飯舘村民の伊藤延由さんは「放射線管理区域よりも汚染されている場所をオートキャンプ場にするなんて考えられない。ましてや子どもを連れてくるなんて…」と、基本的にはオートキャンプ場の再開には否定的だ。
 少し離れた「自然体験の森」の土壌は、今年3月の伊藤さんの測定で1平方メートルあたり39万ベクレルを超えた。これから整備されると思われる旧キャンプ場では1平方メートルあたり500万ベクレル超だった。放射線管理区域の基準である「1平方メートルあたり4万ベクレル」をはるかに上回っている。だから、仮に村外からの客を誘致するのであれば、せめて空間線量や土壌汚染などの被曝リスクに関する情報をフルオープンにするべきだ、と伊藤さんは考えている。
 「とにかく情報公開が第一。利用開始を告知している村のホームページでも全く放射能に触れていないし、現地に来てもモニタリングポスト以外はない。飯舘村にある放射性物質は無害だと言うのか?周囲から放射線が飛んでくるような場所が子どもたちも遊ぶ場としてふさわしいとは思えない。『安全・安心・健康』に関しては予防原則に従うべきだが、原発事故に関しては全く無視されている。オートキャンプ場として誘客するのなら、せめて空間線量を表示するべきだ。徹底的に測って、その結果をフルオープンにする。きちんと判断材料を提供して、被曝リスクを理解したうえで自己判断で遊びに来るのは良いと思う」
 村議会でも、渡邊計村議が「線量計をつけられないんだったら、看板を置いて何月何日に線量を測りましたよと。いくらいくらありましたよと。あとはそこで遊ばせるか、遊ばせないかは親御さんが判断することであるわけで、ただ、何も書いていない状況であそこの線量がいくらあるか分からない」と指摘している。村幹部は今年3月の村議会で「安心して村内に訪れていただき今の村を楽しんでいただけるよう、放射線量の数値公表に努めてまいります」と答弁しているが、放射線量を示す看板はオートキャンプ場内には設置されていない。

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外から一目して分かる放射線量は、管理事務所前のモニタリングポストだけ。オートキャンプ場利用者に手渡される「ご利用案内」には右下に小さく「立入制限エリア」への進入禁止を伝える文言があるだけで、具体的な数値や被曝リスクに関する情報は不十分と言わざるを得ない

【利用者「全然気にならない」】
 「そもそも飯舘村のオートキャンプ場を利用する人は放射線量や被曝リスクなど心配していない」という声もあるだろう。それはある意味、事実だ。
 夫とともにキャンプをした福島県中通りの女性は「放射線量ですか?多少は気になりますけど1泊だけだし、私たちが寝るのは車のなかですから。屋外で寝るわけではないので…」と話した。
 また、1人キャンプをしていた伊達市の男性は朝食を食べながら「正直なところ、一晩くらいならそんなに気にならないかな。原発事故がなければこんなに素晴らしい環境はないですからね」と笑った。
 浪江町の男性は妻と愛犬とともに訪れたが「放射線量なんか全然気になりません」と言い切った。
 「自然放射線も浴びてますからね。情報を全部出していただければ良いのかなと思います。あまり怖がりすぎて原子力を利用しなくなってしまったら温暖化も進んでしまいます」
 では、被曝リスクへの注意喚起は不要なのだろうか。少量でも被曝リスクはある、できるだけ被曝は避ける。それが原則ではないのか。
 高橋祐一副村長が「村の重要な観光・交流の拠点でありますので、今後も幅広くご意見をいただきながら検討を重ね、より利用しやすく皆様に喜んでいただける施設となるよう努力してまいりたいと考えております。また、村内外に広く情報発信をしながら、交流人口、関係人口の拡大を図ってまいります」と村議会で答弁しているように、〝復興の起爆剤〟としてオートキャンプ場を活用したいおであればなおさら、ネガティヴな情報発信も積極的に行うべきだろう。
 徹底した測定と情報発信。それは飯舘村民を守ることであり、村外から遊びに来る人たちを守ること。そのうえで国に徹底した除染を求める。そうでなければ村の復興など〝虚構〟にすぎない。放射能汚染と被曝リスクという眼前の現実を直視して欲しい。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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