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【自主避難者から住まいを奪うな】「住宅無償提供延長を」「加害者が一方的に打ち切るな」「避難の権利認めろ」~全国の避難者が永田町に駆け付け怒りの訴え

原発事故による政府の避難指示が出ていない地域から避難している〝自主避難者〟が20日、全国から東京・永田町の参議院会館に集まり、国と福島県が決めた2017年3月末での住宅の無償提供打ち切りに反対する院内集会を開いた。避難者たちは、被曝リスク回避のための「避難の権利」は基本的人権であるとし「避難元に戻るか否かは当事者で決める」と憤る。住まいは生活の基盤だが、福島県の用意した〝新たな支援策〟も2年限りの家賃補助が軸で、必死に働くほど収入要件を超えて対象から外れるという矛盾をはらむ。集会には野党国会議員も顔を出したが、打ち切り期限まで5カ月。打ち切りを撤回させられるか、政治家の本気度も問われている。


【「収入要件超で都営住宅入れない」】
 生まれてから9カ月の愛娘は、母の胸に抱かれて愛くるしい笑顔を振りまいていた。心無い中傷を受ける、と顔は撮影しないという条件でマイクの前に立った30代のKさん(福島県いわき市)は、夫と離れて東京都内での母子避難を続けている。6歳の長女は来春、小学校に入学するが、住まいが決まらないため通う小学校も決められない状態が続いている。
 「都営住宅に申し込もうとしたら、収入要件(15万8000円、後に21万4000円に緩和)を数万円超えていると連絡が入りました。娘が周囲から『どの小学校に通うかまだ決まらないと?』と言われてしまうのがつらいです。今の都営住宅に暮らし続けたいです。途方に暮れています」と訴えた。
 同じくいわき市のHさん(男性)は、避難先の沖縄県から駆け付けた。「住宅の無償提供打ち切りについて沖縄で説明が開かれたのは今月の16日ですよ。打ち切りまで5カ月しか無いのに、どうやって新しい住まいを決められると言うのでしょうか。将来の事をゆっくり考える時間が欲しいです。無償提供を延長してください」と求めた。福島市から京都府に避難中のUさん(女性)も「普段はフタをしている気持ち」が一気にあふれ出て涙を流した。「住宅の無償提供以外にほとんど支援が無い中で5年以上、本当に苦労してきました。そもそも、住宅支援すら受けられていない避難者も多いのです。こんなに物事は動かないのかとがっかりする事も多いが、あきらめません。避難の権利という基本的人権を勝ち取りたい」と語った。
 Tさん(女性)は、南相馬市原町区から千葉県松戸市に避難している。「私たちは〝自主避難者〟という呼び方でくくられているが、実際は〝強制自主避難者〟だ。一度や二度の除染作業で汚染は無くなりますか?美辞麗句を並べて避難者を苦しめるのはやめてください」と語る。帰還して被曝を強いられるか、避難を続けて貧困に陥るか。Tさんは「この場に内堀(雅雄)福島県知事がいれば良かった」と悔しがった。その内堀知事は渡米中。福島民友の報道によると、講演で「海外では『福島県に人が住めない』との誤解が多いが、県土の95%は震災前と同様の生活が営まれ、残り5%でも一日も早く通常の生活を取り戻せるよう懸命に復興を進めている」と語ったという。




(上)生後9カ月の愛娘を抱いて参加したKさん。「長女は来春、小学生になるが、住宅が決まらないので学校も決まっていない。今の住まいで暮らし続けたい」と語った
(下)福島市内で農業に従事していたNさんは「土に触れる者にとって放射能汚染は深刻な問題」と語った。「今からでも避難したいという農業仲間も福島にはいる。そういう人たちにも公的支援をして欲しい」と訴えた

【「打ち切りは〝強制送還〟だ」】
 福島県郡山市から大阪府に避難している森松明希子さん(42)は、関西圏への避難者が詠んだ川柳を紹介しながら「決めるのは被災した当事者です。加害側が勝手に元の家に帰る時期を決めないで欲しい」と強い口調で話した。
 川柳では「帰還指示/だったら汚染/ゼロにして」、「福島に/帰る人だけ/金一封」、「汚染帰還/決めた議員が/住めばいい」など、避難者の想いがストレートに表現されている。「復興庁/避難者消したら/復興か」とも。自身も6歳と8歳の母親である森松さんは言う。「帰りたくないんです。住宅の無償提供打ち切りは福島に強制送還するに等しいんです。子どもを守りたいというお母さんの声に耳を傾けて欲しい。声をあげたくてもあげられない人もいます。避難したくても出来なかった人もいるのです」。
 広島県から駆け付けたNさん(男性)は、有機農業に携わりたいと会社員をやめて福島市に移住した。「放射能汚染さえなければ、と本当に思う」と悔しさを口にする。「土に触れる者にとって、放射能汚染は深刻な問題なんです。農家の仲間は『福島に帰って来い』と言わなくなった。『40~50年は駄目だろう』と言うようになった」。さらに「今からでも避難したいと言う農業仲間もいる。畑に出ると調子が悪くなるそうです。そういう人たちにも公的支援をして欲しい。私たちの声を聴いてください。住宅の無償提供を打ち切らないでください」と訴えた。
 夫を福島県郡山市に残して北海道に避難しているSさんは、高校生の次男と二人暮らし、長男は大学進学を機に都内で暮らしている。「子どもを育てるために一生懸命に働きます。しかし、福島県の打ち出した〝支援策〟は2015年度の所得で審査されます。私は収入要件を上回ってしまいました。でも、今年の収入は減ってしまったので、今年の所得で判断してもらえれば家賃補助を受けられます」と厳しい状況を語った。「いったん立ち止まって、おかしな施策をやめていただきたい」と話した。
 原発事故による〝自主避難者〟は福島県ばかりでない。茨城県から大阪府に避難しているHさん(男性)もその一人。「一方的に大阪市から退去を求められている避難者もいる。このままいけば来春から10万円を超す家賃が発生し、エアコンも撤去され、敷金なども含めると50万円も用意しなければならない人もいる。住宅の無償提供を求めたい」と力をこめた。




福島県郡山市から大阪府に避難中の森松明希子さんは、関西への避難者が詠んだ川柳を披露しながら「避難元に帰る時期を、加害者が勝手に決めるな。子どもを守り続けたいというお母さんの声に耳を傾けて欲しい」と語気を強めた=写真はいずれも東京都千代田区永田町の参議院会館

【7割が望む無償提供延長】
 院内集会は、福島県選出の森まさ子参院議員(自民党)が会議室を確保。民進党や共産党などの議員が顔を出した。山添拓参院議員(共産党)は、弁護士として原発事故後の福島県を訪れた経験から「事故を過去のものにしようとする施策は絶対に許されない」と語った。池内さおり衆院議員(同)も、自身が暮らす東京都北区に避難してきた南相馬市の夫婦を例に挙げ「故郷が一変して落胆していた。ご主人は持病の悪化とうつ病で先日、亡くなった。住宅無償提供の打ち切りなどあってはならない」と訴えた。
 山本太郎参院議員(自由党)は「避難を認めるということは、原発事故による影響を認めることになるから住宅の無償提供を打ち切るんです。しかし、加害者が線引きをするなんてあり得ますか?子どもを守りたいという一心で逃げた人々は未来永劫、生活を保障しろ」を怒りを口にした。福島みずほ参院議員(社民党)も「打ち切りを国会の中で撤回させていない事は、本当に申し訳ない」と謝ったうえで「政府は、東京五輪までに日本に原発事故など無かった事にしようとしている。加害者が勝手に打ち切る事は許されない」と政府の姿勢を批判した。
 原発事故当時の首相だった菅直人衆院議員(民進党)は「財源が無いからではなくて、原発事故があったという事を無理やりに忘れさせようとする政策の一環だ」と述べ、住宅の無償提供打ち切りを「酷い仕打ち。何とか押しとどめなければいけない」と語った。
 院内集会の準備を進めてきた「ひなん生活をまもる会」代表の鴨下祐也代表は「避難者の多くは現在の住まいに住み続けることを望んでいる。このままでは、来年の3月31日は避難者消去の始まりになってしまう」と無償提供延長を求めた。「東京災害支援ネット」(とずねっと)が今夏、東京都や山形県への避難者を対象に実施したアンケート調査では、約7割が無償提供延長を希望しているという。
 福島県田村市から東京都内に避難しているKさん(女性)は言う。「避難者の中には、自宅の庭の土がいまだに5μSv/hを超えている人もいる。子どもの甲状腺には多くののう胞が見つかり『A2』と判定され、福島には帰りたくないと言っている。人間として避難する権利があるんです。住宅の無償提供打ち切りはやめていただきたい」と訴えた。
 国会開会中のため途中退室したが、集会には17人の国会議員が出席した(秘書の代理出席も含む)。このままいけば、5カ月後には〝自主避難者〟は住まいを奪われる。今こそ、政治家の「本気度」が問われている。



(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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