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【県民健康調査】三代目座長は満場一致で〝山下チルドレン〟の高村昇氏 事故発生直後から「被曝リスクなし」連呼 中立性問う質問は県職員が全力でブロック~第44回検討委

原発事故後に福島県が実施している「県民健康調査」の第44回検討委員会が13日午後、福島市内のホテルで開かれた。星北斗氏が今夏の参院選に自民党公認で出馬するため座長を辞任。高村昇委員(長崎大学原爆後障害医療研究所教授)が山下俊一氏(2011年5月~2013年2月)、星氏(2013年6月~2021年10月)に続き三代目の座長に選出された。しかし記者会見では、事故発生直後から山下氏と福島県内で〝安全講演〟を行った高村氏の中立性を問う質問を県職員がブロックするなど、疑問の多い船出となった。なお、甲状腺検査での「悪性ないし悪性疑いの判定数」(昨年9月末現在)は274人だった(うち227人が手術実施)。
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【「高村先生以外にはいない」】
 まるで事前に綿密な打ち合わせがされていたかと思えるほど、座長選出はスムーズだった。
 福島県保健福祉部の国分守部長が仮議長を務めた。
 「設置要綱第3条第4項によりまして、『座長は委員互選』となっております。ご提案はございますでしょうか」
 佐藤勝彦委員(福島県病院協会長、大原記念財団理事長)が高村委員を推した。
 「高村委員をご推薦させていただきたい。高村先生は以前から委員を長く務められていますし、放射線障害の専門家でもあります。さらに、福島県復興のためにご尽力されている。高村先生以外にはいないのではないかと私は思います」
 リモート参加の室月淳委員(宮城県立こども病院産科科長)が困惑した様子ながらも「高村座長」を支持した。
 「稲葉先生(稲葉俊哉座長代行、広島大学原爆放射線医科学研究所教授)が突然お辞めになって…てっきり稲葉先生が座長をされると思っていたんですけれども、ちょっと突然のことで困ってしまった人もいます。で、ま、10年検討委員会が続いてかなりメンバー変わってきて、私も古株の方になってきましたが、やっぱりここは高村先生しかいらっしゃらないと思うんですよね。当初から福島に直接関わってやってこられて経緯とか知っていて、是非ともお引き受けいただきたいなと思っております」
 他に意見はなく、高村委員も拒まなかった。
 「高村委員からもご承諾いただいたということでございますので、高村委員に座長をお務めいただくということでいかがでしょうか?」
 国分部長がそう言うと、承認の拍手が起きた。こうして、高村委員が新たな座長に選ばれた。
 「長崎大学の高村でございます。座長を務めさせていただくことになりました。私、この委員を9年近くやっていますが、やはり『県民の不安に寄り添い、県民の健康を見守る』という、この調査の本来の目的を果たすべく、委員の先生方とあるいは医大や県の皆様方とより良い県民健康調査というものを行っていくために議論をしていきたい。ご協力のほど、よろしくお願い致します」

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4人もの委員が任期途中でやめているにもかかわらず、福島県県民健康調査課の佐藤敬課長は理由について「一身上の都合」としか答えるばかりで詳細な説明はなかった=ザ・セレクトン福島

【山下氏と〝安全講演〟行脚】
 座長代行は、高村座長が「ぜひ福島の方で、そして、この県民健康調査のなかでやはり『双葉郡』というのは非常に重要な位置を占める」として、原発事故発生当時、双葉厚生病院長として患者避難に奔走した重富秀一委員(双葉郡医師会副会長)を〝指名〟。重富委員は「突然のお話しで面食らっているのですが…」としながら受諾。議事に入った。
 しかし、福島県からは星座長や稲葉座長代行など4人の委員がなぜ任期途中で辞めたのか、説明は一切なかった。
 記者会見で質したが、福島県県民健康調査課の佐藤敬課長は理由について「『一身上の都合』でございます」と答えるのみ。高村委員を次の座長に据えるよう事前の打ち合わせはなかったのか質問しても「座長の選出につきましては、要項によりまして委員の互選となっております。本日ご覧いただいた通りの選出となっております」とだけ回答。委員会の開催が前回から7カ月空いた理由については、佐藤課長は「新型コロナウイルス感染症や地震の発生によって年4回開催とすべきところを年3回となってしまった」と説明した。
 高村氏の座長就任を巡っては他の委員から異論がなかったばかりか、地元紙「福島民報」の記者は会見で「長らく福島県民の健康を守る活動にご尽力されてきた」と〝評価〟した。
 一方でフリーランス記者からは異論が噴出した。それは、高村氏が原発事故発生直後に山下俊一氏とともに福島入りして県の「放射線健康リスク管理アドバイザー」に就任。被曝リスクへの不安を抱いていた県民に対し「子どもであれば2カ月、大人でも3カ月程度で体内の放射性セシウム137は半分になる」、「100 ミリシーベルトを下回る場合、現在の科学ではガンや疾患のリスクの上昇が証明されていない。一方、煙草を吸う人のガンになるリスクは、1000mSvの放射線を被曝するのと同程度のリスク」、「鼻血が止まらなくなったなど急性の症状が出現する被曝線量は500から1000mSv以上。福島の人がそのような線量を被曝しているとは考えられない」などと〝安全講演〟を行った経緯があるからだ。2020年4月からは「東日本大震災・原子力災害伝承館」(双葉町)の初代館長(非常勤)として「復興プロセスの情報発信」に注力している。
 飯舘村で行った講演について「多くの村民が『このまま行けばすぐに元に戻る』という錯覚を引き起こしていた3月25日、県の放射線リスクアドバイザー高村昇氏(長崎大学)による講演があり、早くも事実上の安全宣言がなされた。これを契機に多くの村民が安全を確信し、避難民の帰村も増えた…後に問題とされる低放射線量被曝や村内産の農産物による内部被曝についても安全論が展開された」(糸長,浩司「飯舘村の放射能汚染被害・避難実態と支援アクション」より)との指摘もある。

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(上)「東日本大震災・原子力災害伝承館」の初代館長も務めている高村氏
(中)飯舘村の広報紙には、高村氏が2011年3月25日に村内で行った〝安全講演〟の内容が掲載されている
(下)高村氏は環境省発行の冊子「なすびのギモン 健康影響編」にも登場。原発事故による被曝リスクを否定している

【被曝不安に寄り添うのか】
 委員の1人は閉会後、高村氏の座長就任について「委員のなかで一番古いから」としながらも、山下氏とともに福島県内各地で〝安全講演〟を展開したことについては渋い表情を見せた。初めから「被曝影響なし」と言い続ける人物が、原発事故後の県民健康を注視する検討委員会の座長で中立性が担保されるのか。
 記者会見でその点を出席委員に質そうとしたが、司会役の県職員に阻まれた。
 「申し訳ありませんけれども、本日の議事議題に関係ありませんので、お答えを控えさせていただきます」
 座長選出が〝出来レース〟ではないかとの指摘については高村座長が答えたが、答えになっていなかった。
 「私自身は実は数日前から福島に来ておりまして、先ほども言いましたけど富岡町の住民に対する支援とかそういったことをやっておりましたので、実は昨日とか今日(長崎から)来たわけではございません」
 2011年3月21日に福島県福島市で開かれた講演会で「放射線の影響は、実はニコニコ笑っている人には来ません。クヨクヨしている人に来ます。これは明確な動物実験で分かっています」と言い放った山下俊一氏が初代座長。
 二代目の星北斗氏は、原発事故被害を矮小化して原発再稼働を進めたい与党・自民党の公認候補として参院選に出馬する。
 そして〝山下チルドレン〟として〝安全講演〟行脚した高村氏が三代目の座長に就任した。これで、本当に被曝影響を検討などできるのだろうか。他の委員や地元メディアは疑問を抱かないのか。
 26日には、東京地裁で「311子ども甲状腺がん裁判」の第1回口頭弁論が開かれる。新座長の高村氏は「県民の不安に寄り添い、県民の健康を見守る」と何度も口にしたが、その裏では誰に寄り添っているのか。注視する必要がある。



(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)
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