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【原発避難者から住まいを奪うな】11人の原告が「国家公務員宿舎の明け渡し義務なし」などの確認請求を追加 内堀知事の〝追い出し訴訟議案〟に対抗~住まいの権利裁判

2011年3月の原発事故発生後に福島県から区域外避難し、国家公務員宿舎への入居を続けている県民の追い出しを福島県が加速させている問題で、今年3月に避難者11人が福島県を相手取って東京地裁に起こした損害賠償請求訴訟(住まいの権利裁判)に、明け渡し義務や家賃などの支払い義務が存在しないことを求める「訴えの追加的変更」を6月29日に申し立て、受理された。内堀雅雄知事が6月議会に提出した〝追い出し訴訟議案〟への対抗措置。原発事故さえなければ避難する必要もなかった人々が改めて訴える。「そもそも原発事故による避難じゃないか」。
住まいの権利裁判

【「住宅打ち切りは違法」】
  原告は福島県の避難指示区域外から避難し、都内や埼玉県内の国家公務員宿舎に入居し退去できないでいる(1世帯は退去済み)11人。今年3月11日、福島県を相手取り①福島県知事が応急仮設住宅としての住宅無償提供を2017年3月31日で打ち切った②福島県が避難先で災害復興住宅を建設しなかった③2019年4月1日以降、福島県が原告らを不法占拠者として扱い、親族訪問などの嫌がらせをした―によって精神的苦痛を味わったとして、1人100万円、計1100万円の損害賠償を請求する訴えを東京地裁に起こした。
 29日付で東京地裁民事5部に提出された「訴えの追加的変更申立書」(以下、申立書)では、原告(区域外避難者)たちは今回、①転居した1人を除いて入居中の住居(国家公務員宿舎)を福島県に明け渡す義務がないことの確認②転居した1人を含む全員が、住宅無償提供が打ち切られた翌日の2017年4月1日以降、使用料(家賃)や損害金を福島県に支払う義務がないことの確認─を請求に追加している。
 つまり、原発事故に伴う避難者の「居住権」について福島県と徹底的に争うことになる。精神的苦痛というレベルではなく、明け渡しの義務が存在しないことを司法に認めさせようというのだ。
 申立書では、福島県の内堀雅雄知事による区域外避難者への住宅無償提供打ち切り決定は①原発事故の発生により国内避難民となった者が入居した応急仮設住宅について継続的な居住が保障されるという原告らの居住権を侵害する②全ての実行可能な代替案が検討されるなどの「例外的措置として許容される強制退去」の要件を満たしていないことは明らか─などの理由を挙げて「違法を免れない」と主張。「原告らは、本件各住居において引き続き無償で居住する権利を有する」と結論づけている。

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記者会見に出席した2人の原告は異口同音に福島県の対応を批判。「そもそも私たちは原発事故による避難者なのに、なぜ家賃をしはらわなければならないのか」と訴えた

【無断で親族宅訪問】
 弁護団長を務める井戸謙一弁護士は提訴後の報告集会で「区域外避難者たちは不法占拠者なのか?いや、そうじゃないんだ。国際的に認められた国内避難民であって、国際人権上は居住権が保障されているんだ。むしろそれを保障せず不法占拠者だと言っている国が間違えている─ということが分かってきた。それを司法の場で訴えたいということで避難者たちは決意を固めた。この国は避難者の存在自体が邪魔で仕方がない、何とか避難者という存在をなくしてしまいたいと考えているとしか思えない。原発事故被災者に対する非人道的な施策の是非を正面から問う裁判になると思う」と語っていた。
 1回目の口頭弁論期日も7月25日に決まったが、福島県の対応が事態を大きく変えた。現在開かれている福島県議会6月議会に、退去済みの1人を除く10人の原告に対する〝追い出し訴訟議案〟を提出したのだ。
 各会派に対する事前説明の資料には「県に対し損害賠償を求めて今年3月に訴えを起こしたため、話し合いによる解決が困難であると判断」と書かれている。そこには、避難当事者や支援者から激しく批判された「親族宅への書面送付と無断訪問」というサラ金の取り立てのような行動に対する反省など微塵もない。まさに〝目には目を〟と言わんばかりの応戦だ。
 しかも、県議会は共産党を除いて〝オール与党〟状態。自民党や公明党だけでなく、立憲民主党系の会派「県民連合」も「県民の理解を得にくい」などとして区域外避難者への住宅提供係属には一貫して消極的だ。だから、既に福島地裁での審理が進んでいる4世帯への〝追い出し訴訟〟(うち1世帯は退去後に和解が成立)に関する議案も賛成多数であっさり可決した。今回も議論が尽くされないまま可決される公算が高い。内堀知事の強気の姿勢、原発事故被災県が県外避難した県民を訴えるという異常事態を支えているのは県議会なのだ。
 県知事にも県議会にも見放された格好の区域外避難者たち。我慢ならぬと動いたのが、今回の「訴えの追加的変更」だった。

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(上)6月議会にあたり、福島県県当局が県議会各会派に配った資料。「話し合いによる解決が困難」、「転居支援を頑なに拒否」という言葉が並ぶ
(下)提訴後の記者会見で、代理人を務める柳原敏夫弁護士は改めて原発事故避難者の居住権について説明した(右は光前幸一弁護士)=東京・霞が関の司法記者クラブ

【「原発避難じゃないか…」】
 提訴後の記者会見には、2人の男性原告も出席。浜通りから避難したAさん(40代)は「非正規雇用(派遣労働)でなかなかお金が貯められないなか、家賃2倍請求など県からの要求がエスカレート。実家を訪問して親に恫喝に近いような言い方をした」などと県の対応を批判した。
 南相馬市原町区から避難したBさん(50代)は「あくまでも原発事故による避難なのに、なぜ途中で有償になるのか納得できなかった。県職員から脅されるような形で契約書にサインしたが、原発避難なのになぜ家賃を支払わなければいけないのか。家賃2倍請求までされて、どこへ行けばいいのか。福島に戻れと強制されるのか。紹介された物件も家賃が7万円、8万円と自分の給料からするとかなり高額で転居は難しかった」と語った。
 会見の司会を務めた瀬戸大作さん(「避難の協同センター」事務局長、「反貧困ネットワーク」事務局長)によると、国家公務員宿舎「東雲住宅」に入居している9人の原告全員が非正規雇用で働いており、1カ月の手取りが10万円に達しない避難者もいるという。「そういうなかで家賃2倍請求までされて、明らかに居住権の侵害だ」(瀬戸さん)。
 「話し合いに応じてもらえない」という福島県の言い分について、Bさんは「こちらは弁護士経由で話し合いに応じる用意があるのに、話し合いの申し込みも何ら来ていない。明らかに偽っているとしか思えない。いくらでも話し合う」と反論。
 また、特に自民党系県議から「自力で転居した区域外避難者もいる」との声も根強いが、これについてもBさんは「悪意のある言葉。そもそも私たちは原発事故による避難者ですから。自力でどうにかしろという考え方自体が、原発避難者の立場を理解していないと思う」と話した。
 今秋の県知事選への立候補表明のなかで「就任2期目においても〝現場主義〟の理念の下、県内各地に足を運び、県民のみなさんの切実な想いを伺いながら、それらを県政に反映させる努力を続けてまいりました」と胸を張った内堀知事。しかし、区域外避難者への対応だけは「非現場主義」のようだ。



(了)
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鈴木博喜

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