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【復興五輪?】小池都知事の交流センター〝視察〟に飯舘村民から怒りの声。「きれいなハコもの見て何が分かる?」「線量計持って村内歩いて!」

東京都の小池百合子知事が2日、福島県を訪れ、Jヴィレッジやふたば復興診療所、福島県産米の全量全袋検査場、飯舘村の交流センター「ふれ愛館」などを約4時間かけて駆け足で視察。夕方には福島県庁で内堀雅雄知事と会談した。「被災地の実情を把握し復興をより効果的に後押しする」のが視察の目的だが、新しく建設されたハコものだけしか見てもらえなかった飯舘村民からは「視察する場所を間違えている」、「線量計持って村内を歩いて」などと怒りの声が上がった。福島県庁では、オリンピック旗を手に「復興五輪」と何度も繰り返した小池都知事。だが、原発事故被害者の「本当の声」は、ハコものから聞こえては来ない。


【「繁栄の陰で泣いてる人がいる」】
 おばあは怒っていた。福島県伊達市にある「伊達東仮設住宅」。隣接する畑で、ダイコンやコマツナを収穫しながら原発事故への怒りを口にした。
 「交流センターなんか見たって何が分かる?仮設さ来なきゃ分かんねえべ。東京五輪どころじゃないよ。死ぬ思いをしたんだから」
 元の住まいは佐須行政区。酪農に従事し、牛の糞を利用した有機農業も行っていた。仮設住宅に避難し、地元の畑を借りた。畑仕事は生き甲斐。ニンジンやナス、ゴーヤー、アズキ、ゴボウと様々な野菜を育て、周囲に分けてきた。「飯舘は寒冷地。厳しい環境を皆で助け合って生きて来たんだ。までい、だな。だから米や野菜なんて金出して買わなかったよ。それを壊したのが原発事故さ」
 収穫した野菜を一輪車にのせて〝自宅〟まで運ぶ。だが、ここでの畑仕事も「この冬が最後」と遠くを見つめた。村が2017年3月末での避難指示解除(帰還困難区域を除く)に関して国と合意をしたからだ。
 「飯舘村はホットスポット。村には帰らないと決めていた時期もあった。孫も呼べないしね。でもね、どんなにぼっこれていても(壊れていても)、天井の隙間から月明かりが見えるような家であっても、やっぱりわが家なんだ。仮設住宅は、あくまでも〝よそ様の家〟なんだよね、ありがたいけどさ」
 村に戻るという決断。その裏には「住み慣れた村で死にてえ」との想いがある。決して村が安全な状態になったなどとは思わない。「いくら除染したって山が汚れちまったんだから、雨が降ればいくらでも流れてくる。線量なんて下がりっこないよ。子どもたちに負の遺産を残してしまったんだなあ」。再来年春の村内学校再開なんてあり得ないと考える。でも…。それでもやっぱり村を愛している。元気なうちに戻りたい。様々な葛藤が複雑に絡み合って出した結論。だからこそ、小池都知事には真新しい交流センターなどではなく、もっと泥臭い、現実の村の姿を見て欲しいと願うのだ。
 「福島の原発でつくられた電力は、福島ではなくて東京のための電力だったんだべ。戦後の焦土から立ち直った東京が、あんなに華やかで繁栄してきた背後には、福島の原発があったんだべした。その原発があんなことになって、繁栄の陰で泣いてる人がいる事を忘れないで欲しいよなあ」
 おばあは小首をちょこんと傾げてこちらを見つめた。笑っているような、泣いているような、何とも言えない目をしていた。


飯舘村内のビニールハウスで生産された夏イチゴが材料の紅茶「いいたて までいな いちご」を飲み「おいしい」と語った小池都知事。だが、きれいな建物内で紅茶を飲んでも、村民の苦しみは理解できない=飯舘村交流センター「ふれ愛館」

【4年後へ「復興五輪」一色】
 15時。職員や数人の村民がまばらな拍手で出迎える中、小池都知事はバスを降りて飯舘村交流センター「ふれ愛館」に入った。村長選挙で6選を果たしたばかりの菅野典雄村長が満面の笑みでホールやキッチンスタジオを案内する。もちろん、菅野村長の肝いりで購入した彫刻の紹介も欠かさない。キッチンスタジオでは、村の女性たちが村のブランド品である紅茶「いいたて までいな いちご」とお菓子をふるまってもてなした。菅野村長が、身を乗り出しながら村の〝復興〟を説明し、小池都知事は「おいしい」と紅茶を味わった。16時半には福島県庁で内堀知事との会談が控えている。都知事の「飯舘村視察」は15分ほどで終了した。村民から「村に似つかわしくない」と不評の交流センターを後にした都知事は、村の何を「理解」できただろうか。
 福島県庁。小池都知事は「江戸切子」を贈り、内堀知事は「川俣シルクのストール」を手渡した。いつものように内堀知事が「風評払拭」を口にすれば、心得ている小池都知事も「『天のつぶ』(福島県のオリジナル米)は美味しかったですよ。しっかりPRしたい」と応じた。17時すぎからは県庁内広場で東京五輪のオリンピック旗、パラリンピック旗の贈呈セレモニーが行われ、動員された福島市立福島第一小学校の児童らが盛り上げる中、小池都知事は「2020年には『福島は元気ですよ、復興しましたよ』と世界中に伝えて欲しい。私たちは応援していますよ」とスピーチ。丸川珠代五輪担当相も「野球・ソフトボールの福島開催に向けて努力したい」と「復興五輪」の意義を強調した。
 児童たちが万国旗の小旗を振る。オリンピック旗は11日まで県庁に展示された後、郡山市など福島県内6市町を巡回して12月末に東京都に返還される。内堀知事は「福島のプライドを持って復興に向かって進んでいく」と拳を振り上げた。来春の避難指示解除(帰還困難区域を除く)、県外自主避難者への住宅無償提供打ち切り。そして「復興五輪」。Jヴィレッジから南相馬市を経て飯舘村、福島県庁と続くルートからは、五輪の聖火リレーも透けて見えてくる。こうして原発事故や汚染、被曝リスクや避難者などが覆い隠されていく。「復興」の名の下に。


仮設住宅で暮らす飯舘村のおばあは言った。「あの原発で作られた電力は東京のためだべした。都会の繁栄の陰で泣いている人がいる事を分かって欲しい」。しかし残念ながら、小池都知事の耳には届かない=福島県伊達市

【「帰還困難区域にも入って」】
 東北本線・松川駅からほど近い仮設住宅(福島市)では、60代の女性(臼石行政区)が「ちゃんと線量計を持って村内を歩いて、数値の上昇を実感して欲しいよね。街の中心部だけじゃなくてね」と語った。
 「交流センターだけ見てもね…。センターやコンビニがある県道沿いはきれいになった。そんなところを見ても、村の現実は少しも分からないよね。長泥行政区は帰還困難区域だから、いまだにバリケードがあって門番が立っている。そういう場所にも足を運んで欲しい。せめてバリケードの前まで、いや、中にもちゃんと入って変わり果てた村の風景を見て欲しいわね」
 石垣のように高く積み上げられたフレコンバッグ。交流センター前のモニタリングポストが示す数値とは大きく〝実際の汚染〟を見て欲しいと考えるのは当然だ。国の方針に忠実な菅野典雄村長。村民の帰還に尽力する姿勢は、10月の選挙で結果としては〝支持〟された格好にはなっている。しかし、女性は「確かに現職が勝った。でも厳しい意見も多かったのよ。だから581票しか差がつかなかった。それが現実の村民の想いですよね」。
 その菅野村長は小池都知事を出迎える直前、私の顔を見ると「また来たの?悪い記事ばかり書いてるね」と怒った。もちろん復興は必要だ。しかし、その方向性がずれている事になぜ気づかないのか。子育て中の母親は「もっと若者の意見を聴いて」と訴える。別の父親は「小池都知事が交流センターを視察? 新聞・TV用の一過性のパフォーマンスにしか見ていません」と話した。仮設住宅の若者からも「交流センターに行くなら、仮設住宅を訪問したほうがよっぽど良い」という声があがった。村幹部ですら「トイレ休憩ですよ。一応、村長が案内するけれど…」と語ったほどだ。
 視察に同行した東京都の担当者は「飯舘村は来年3月末に避難指示解除を控えている。住民帰還に向けた取り組みの1つとして交流センターを選んだ」と説明した。当の小池都知事は、ぶら下がり取材で記者クラブからの質問に「浜通りは原発事故直後と比べるとずいぶん変わった。でも、帰還できない人が多く、まだまだ寂しい」と答えた。本当に福島の復興を後押しするのなら、放射能汚染や被曝リスクから目を逸らしてはいけない。公共事業重点型の「ハコもの復興五輪」が原発事故から10年後に開かれても、一部の業界と人間の懐を満たして終わるだけだ。


(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)

大手メディアが無視する「汚染」、「被曝」、「避難」を追い続けています。

福島取材にはコストがかかります。
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