【143カ月目の汚染水はいま】「理解」深まったと言えるのか〝常磐もの〟イベント会場で聞いてみた 海洋放出に賛成?反対?
- 2023/02/27
- 13:41
反対の声を無視して7月にも強行されようとしている原発汚染水の海洋放出計画。海外の国々からも反対の勧告が出されているが、首都圏に暮らす人々は海洋放出計画に賛成なのか反対なのか、そもそも知らないのか。26日まで都内で行われた「発見!ふくしまお魚まつり」会場で〝常磐もの〟を味わう人々40人にシール投票してもらった。国も東電も「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」との言葉を撤回していないが、「理解」などとても深まっていない現状が改めて分かった。こんな状況で本当に海に流して良いのだろうか。

【「情報が伝わってこない」】
もっとも多かったのが「分からない」(40・0%)だった。
「こういう話(海洋放出計画)があるということ自体を聞いたことがない」(20代男性、東京都)、「情報が全然伝わってこない」(30代男性、東京都)、「計画自体を知らないです。こういう情報って自分からアクセスしないと入って来ないですよね」(20代男性、東京都)、「聞いたことはありますが、素人にも分かりやすく噛み砕いた情報が欲しい」(40代男性、東京都)との声が目立った。
また、こんな意見も。
「計画そのものは知っていますが、賛成か反対かを判断するには情報がなさ過ぎます。『国際基準をクリアしているから海に流しても大丈夫』と国や東電は言っているようですが、それが本当なのかどうか分からないです。一方で、じゃあ膨大な量の水をどうすれば良いんですか?とも思います」(50代男性、東京都)
この夏にも流し始めそうだということを伝えると「そんな近々の話なんですか?」と驚いたのは埼玉県の40代女性。
「きれいにしているのなら、しっかり浄化処理されているのなら問題ないような気もするし…。でも、本当にきちんと処理されるのかどうか良く分からないですよね」
東京都の30代男性も、筆者に「既に海に流しているんですか?」と〝逆質問〟した。
「そもそも震災・原発事故発生から12年経って、原発事故関連のニュースが減りましたよね」
政府と東電は2015年、福島県漁業協同組合連合会(福島県漁連)に対し「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と文書で約束している。西村康稔経済産業大臣も、昨年8月に福島県の内堀雅雄知事を表敬訪問した際に「福島県漁連に対する『関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない』そうした方針はしっかり遵守していきたい」と述べている。
しかし、国民の「理解」を得ているとは言い難いのが実情だ。


(上)東電は特設サイトを開設して〝海洋放出の安全性〟をアピールしているしているが、まだまだ「理解」や「同意」が拡がっているとは言い難い
(下)福島県いわき市小名浜を中心に、「これ以上海を汚すな」の声は根強い
【国や東電への不信感も】
次に多かったのが「反対」(32・5%)。
「海が汚れてしまって、こういう美味しいものを食べられなくなってしまったら嫌だなと思うので反対」(20代男性、神奈川県)、「海洋資源は汚さず、きちんと保護する方が良いのではないか」(30代男性、埼玉県)、「美味しい魚を食べられなくなったら嫌だなと思う」(30代女性、東京都)などの声が聞かれた。
福島県中通りで生まれ育ったという30代女性は「きれいな海が好きなので」と「反対」にシールを貼った。
「海や人体に問題ないかどうかは今の時点では分からないんじゃないかな」と話したのは、福岡県から訪れた60代女性。東京都の20代男性は「何で海に流すんですかね。彼女が海のものが好きなので、汚染水を流されて、それを食べることでもし病気になったら嫌です」と反対の理由を口にした。
和歌山県出身の40代男性は、国や東電への不信感を理由に挙げた。
「海洋放出について専門的なことは分かりません。でも、こういう場合、必ず国や事業者は『問題ない』と言うものですよね。故郷の和歌山では火力発電所から排出される煙で待機が汚染し、梅の木が枯れたり生育不良になったりする被害が生じて問題になりました。でも、電力会社は昼間は汚れた煙は出してませんよと言うんです。でも、夜になったら真っ黒い煙が出ているのを僕も目にしましたから。国や事業者に都合良い情報が出されるということを間近で見て来たんです。だから今回も国や東電を信用できません」
「小名浜機船底曳網漁業協同組合」の理事は昨年7月、いわき市小名浜で開かれた集会でこう述べている。
「われわれは『関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない』という確約を文書でもらっています。それなのに政府が海洋放出決定を発表するのはあまりにも無謀。そもそも、海に流して大丈夫なのか。『他の原発でもトリチウムを流している』と言うが、他の原発は正常に動いており、ほぼトリチウムのみ。なかには取り除けない放射性物質もあります。原発の問題については多くの意見を聴きながら物事を決めるべきです」


好天に誘われるようにイベント会場は多くの来場者で埋め尽くされた。〝常磐もの〟も飛ぶように売れたが、一方で海洋放出計画については「よく分からない」との答えが多かった=代々木公園
【「タンク保管は限界」】
「賛成」は最も少なかった(27・5%)。
「もう流さないとしょうがない。タンクを置く場所も限られているだろうし」(30代男性、東京都)、「ちゃんと薄めて流すんでしょ?問題ないって聞いたけど…。ほかにやりようもないんですよね?いつまでもあそこに置いておくわけにもいおかないでしょう」(30代女性、東京都)、「限界ですね。これ以上ためておけない。このままずっと陸上保管するのは無理です。IAEAの示す基準を満たしていれば問題ないんじゃないかな」(50代男性、東京都)が主な理由だった。
九州在住の60代男性は「基準値よりかなり低くして流すのだから問題ない。韓国の原発こそ高い濃度の水を流していると聞いたよ。韓国が問題ないなら、こっちだって問題ないでしょ?」と話した。
「『汚染水』という表現が間違っている。『処理水』だから。汚れていないから海に流しても問題ない」(20代男性、神奈川県)という意見も。妻が会津地方出身という都内の80代男性も「知ってるよ。ニュースでやってるよね。汚染水はさ、これはしょうがないんだよ。しょうがない。いつまでもたまり続けちゃうんだから、海に流すしかないんだよ。それに安全な水だと思ってるから心配してないよ」ときっぱりと答えた。
都内在住の60代夫婦は、夫が賛成、妻は反対に投じた。
「何で賛成できるの?だって魚に…。海に流すのは原発の水でしょ?10年後20年後、どういう結果になるかなんて分からないじゃないですか。最初から賛成してしまうのは私には無理」と話す妻に対し、夫はこう言った。
「いやいやいや、この水は安全なの。ちゃんと処理しているから。そもそも『汚染水』じゃなくて『処理水』だから。だから僕は賛成」
福島県浜通り出身という女性は「なんとなく聞いたことはあります。放出する水って、安全だと分かって海に流すんですよね、確認が取れているんですよね?」と筆者に念を押すように「賛成」にシールを貼った。そして、願いを込めるように言った。
「福島ばかりに負担を負わせないで欲しいですね。できれば全国の皆さんが海洋放出に賛成してくれたら良いなって思います」
7月にも強行される見通しの海洋放出計画を「遠い福島の話だから関係ない」で済ませてはいけない。海はつながっている。あなたの問題でもある。無関心が一番いけない。
(了)

【「情報が伝わってこない」】
もっとも多かったのが「分からない」(40・0%)だった。
「こういう話(海洋放出計画)があるということ自体を聞いたことがない」(20代男性、東京都)、「情報が全然伝わってこない」(30代男性、東京都)、「計画自体を知らないです。こういう情報って自分からアクセスしないと入って来ないですよね」(20代男性、東京都)、「聞いたことはありますが、素人にも分かりやすく噛み砕いた情報が欲しい」(40代男性、東京都)との声が目立った。
また、こんな意見も。
「計画そのものは知っていますが、賛成か反対かを判断するには情報がなさ過ぎます。『国際基準をクリアしているから海に流しても大丈夫』と国や東電は言っているようですが、それが本当なのかどうか分からないです。一方で、じゃあ膨大な量の水をどうすれば良いんですか?とも思います」(50代男性、東京都)
この夏にも流し始めそうだということを伝えると「そんな近々の話なんですか?」と驚いたのは埼玉県の40代女性。
「きれいにしているのなら、しっかり浄化処理されているのなら問題ないような気もするし…。でも、本当にきちんと処理されるのかどうか良く分からないですよね」
東京都の30代男性も、筆者に「既に海に流しているんですか?」と〝逆質問〟した。
「そもそも震災・原発事故発生から12年経って、原発事故関連のニュースが減りましたよね」
政府と東電は2015年、福島県漁業協同組合連合会(福島県漁連)に対し「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と文書で約束している。西村康稔経済産業大臣も、昨年8月に福島県の内堀雅雄知事を表敬訪問した際に「福島県漁連に対する『関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない』そうした方針はしっかり遵守していきたい」と述べている。
しかし、国民の「理解」を得ているとは言い難いのが実情だ。


(上)東電は特設サイトを開設して〝海洋放出の安全性〟をアピールしているしているが、まだまだ「理解」や「同意」が拡がっているとは言い難い
(下)福島県いわき市小名浜を中心に、「これ以上海を汚すな」の声は根強い
【国や東電への不信感も】
次に多かったのが「反対」(32・5%)。
「海が汚れてしまって、こういう美味しいものを食べられなくなってしまったら嫌だなと思うので反対」(20代男性、神奈川県)、「海洋資源は汚さず、きちんと保護する方が良いのではないか」(30代男性、埼玉県)、「美味しい魚を食べられなくなったら嫌だなと思う」(30代女性、東京都)などの声が聞かれた。
福島県中通りで生まれ育ったという30代女性は「きれいな海が好きなので」と「反対」にシールを貼った。
「海や人体に問題ないかどうかは今の時点では分からないんじゃないかな」と話したのは、福岡県から訪れた60代女性。東京都の20代男性は「何で海に流すんですかね。彼女が海のものが好きなので、汚染水を流されて、それを食べることでもし病気になったら嫌です」と反対の理由を口にした。
和歌山県出身の40代男性は、国や東電への不信感を理由に挙げた。
「海洋放出について専門的なことは分かりません。でも、こういう場合、必ず国や事業者は『問題ない』と言うものですよね。故郷の和歌山では火力発電所から排出される煙で待機が汚染し、梅の木が枯れたり生育不良になったりする被害が生じて問題になりました。でも、電力会社は昼間は汚れた煙は出してませんよと言うんです。でも、夜になったら真っ黒い煙が出ているのを僕も目にしましたから。国や事業者に都合良い情報が出されるということを間近で見て来たんです。だから今回も国や東電を信用できません」
「小名浜機船底曳網漁業協同組合」の理事は昨年7月、いわき市小名浜で開かれた集会でこう述べている。
「われわれは『関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない』という確約を文書でもらっています。それなのに政府が海洋放出決定を発表するのはあまりにも無謀。そもそも、海に流して大丈夫なのか。『他の原発でもトリチウムを流している』と言うが、他の原発は正常に動いており、ほぼトリチウムのみ。なかには取り除けない放射性物質もあります。原発の問題については多くの意見を聴きながら物事を決めるべきです」


好天に誘われるようにイベント会場は多くの来場者で埋め尽くされた。〝常磐もの〟も飛ぶように売れたが、一方で海洋放出計画については「よく分からない」との答えが多かった=代々木公園
【「タンク保管は限界」】
「賛成」は最も少なかった(27・5%)。
「もう流さないとしょうがない。タンクを置く場所も限られているだろうし」(30代男性、東京都)、「ちゃんと薄めて流すんでしょ?問題ないって聞いたけど…。ほかにやりようもないんですよね?いつまでもあそこに置いておくわけにもいおかないでしょう」(30代女性、東京都)、「限界ですね。これ以上ためておけない。このままずっと陸上保管するのは無理です。IAEAの示す基準を満たしていれば問題ないんじゃないかな」(50代男性、東京都)が主な理由だった。
九州在住の60代男性は「基準値よりかなり低くして流すのだから問題ない。韓国の原発こそ高い濃度の水を流していると聞いたよ。韓国が問題ないなら、こっちだって問題ないでしょ?」と話した。
「『汚染水』という表現が間違っている。『処理水』だから。汚れていないから海に流しても問題ない」(20代男性、神奈川県)という意見も。妻が会津地方出身という都内の80代男性も「知ってるよ。ニュースでやってるよね。汚染水はさ、これはしょうがないんだよ。しょうがない。いつまでもたまり続けちゃうんだから、海に流すしかないんだよ。それに安全な水だと思ってるから心配してないよ」ときっぱりと答えた。
都内在住の60代夫婦は、夫が賛成、妻は反対に投じた。
「何で賛成できるの?だって魚に…。海に流すのは原発の水でしょ?10年後20年後、どういう結果になるかなんて分からないじゃないですか。最初から賛成してしまうのは私には無理」と話す妻に対し、夫はこう言った。
「いやいやいや、この水は安全なの。ちゃんと処理しているから。そもそも『汚染水』じゃなくて『処理水』だから。だから僕は賛成」
福島県浜通り出身という女性は「なんとなく聞いたことはあります。放出する水って、安全だと分かって海に流すんですよね、確認が取れているんですよね?」と筆者に念を押すように「賛成」にシールを貼った。そして、願いを込めるように言った。
「福島ばかりに負担を負わせないで欲しいですね。できれば全国の皆さんが海洋放出に賛成してくれたら良いなって思います」
7月にも強行される見通しの海洋放出計画を「遠い福島の話だから関係ない」で済ませてはいけない。海はつながっている。あなたの問題でもある。無関心が一番いけない。
(了)
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