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【原発避難者から住まいを奪うな】東京都も国家公務員宿舎の区域外避難者へ〝追い出し訴訟〟 被告は、いわき市から避難した鴨下さん~5日に東京地裁で第7回口頭弁論

原発事故後の区域外避難者(いわゆる〝自主避難者〟)に対する〝追い出し訴訟〟を起こしているのは福島県だけではない。東京都も昨年2月、福島県いわき市から避難し都内の国家公務員宿舎に入居した鴨下祐也さん(「福島原発被害東京訴訟」原告団長)を相手取り、退去と約186万円の支払いを求めて提訴。東京地裁で係争中なのだ。3月20日午前には、第6回口頭弁論が同地裁606号法廷(金澤秀樹裁判長)で行われ、次の弁論は今月5日に開かれる。東京都は避難の権利も国際人権法もガン無視し、原発避難者を追い詰めていく。
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【「被曝避けるための避難継続」】
 「約1年前に突然、提訴されました。私たちの避難元・いわき市は政府の避難指示区域外でしたが、当然ながら放射能は避難指示区域内にとどまることはなく、県境も越えて全国に拡がりました。残念ながら現在でも、原状回復にはほど遠い状況です。被曝を避けて健康に暮らすためには避難を続けるしかありません」
 3月の弁論期日。開廷前に裁判所前で行われた集会で、鴨下さんは訴えた。
 「いわき市は比較的汚染の程度が低いとはいえ、原発事故前に比べれば高い汚染が続いています。戻れば被曝します。政府の避難指示が出なかったとか復興してきたとか、被曝リスクにはそういうことは関係ありません。線量が低いからといって、戻ってわざわざ被曝したくない。自分や家族の健康を考えれば、残念ながら戻ることはできません」
 東京都には何度も避難継続の理由を説明してきたという。
 「私だけでなく、同じように国家公務員宿舎に残っている方々も一緒に伝えました。繰り返し説明して理解を求めてきました。無理矢理追い出すようなことはしないという話でしたが、一昨年の暮れあたりから、どうやら国が東京都をせっついていたと聞いています。『避難者が出て行かないのは東京都の怠慢だ』とまで言われたそうです。原発事故の加害者である国が、東京都に対して『原発避難者を追い出せ』と圧力をかけていたのは本当に理不尽だと思います。東京都はやりたくない訴訟をやっているわけです。であれば取り下げてもらいたいと何度も申し入れましたが、そうはなりませんでした」
 岸田政権の進める〝原発回帰〟に原発避難者は邪魔だということか。
 「なぜ国は東京都をせっついてまで、被曝を回避しようとしている避難者を追い出そうとするのか。本当に納得がいきません。国は被曝が無害であるかのような広報はやめて、汚染や被曝リスクという事実をはっきりとさせたうえで、今からでも避難できるような政策を実行していただきたい。この追い出し訴訟は逆行する動きです。何とか良い判決を得られるように、皆さんのご協力をお願い致します」

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「汚染や被曝リスクという事実をはっきりとさせたうえで、今からでも避難できるような政策を実行していただきたい」と訴える鴨下さん=東京地裁前

【「福島県が適切に決定したこと」】
 提訴日は2022年2月8日。国家公務員宿舎からの退去や家賃相当損害金約186万円の支払いを求めている(鴨下さんは今年1月27日、東京都に対し明け渡しの届け出を提出した。現在は退去済み)。
 原告東京都は、今年3月までに4つの準備書面を提出。主に以下のように主張している。
 ◆「災害救助法の適用を行って救助を行うか否かの判断は、被災県知事が行う」
 「福島県知事は2016年7月15日付の各都道府県知事宛て『東日本大震災に係る応急仮設住宅の供与期間の延長について(依頼)』で、いわき市からの避難者については…2017年3月末をもって供与期間が終了となる旨を示した」(以上、第1準備書面)

 ◆「被災県(福島県)の応援要請がなくなった場合に、それ以上の供与はできない」
 「東京都は、再三にわたって明け渡しを求めてきた」
 「被告も、本件建物等を使用できないことを十分に認識していた」
 「東京都は国に対して、本件建物等について使用料を支払ったことはない」(以上、第2準備書面)

 ◆「社会権規約第11条1項は…政治的責任を負うことを宣明したものであって、個人に対し即時に具体的権利を付与すべきことを定めたものではない」
 「国内避難に関する指導原則も同様に、具体的権利を付与するものではない」
 「一般的に、新たな債務を負担する場合には、現実に支払いが済んでいなくても損害賠償請求における損害が発生したと認められる」
 「東京都は、国から明示的に本件建物等の返還請求を受けた事実はない」
 「東京都は、国からの返還請求の有無にかかわらず、許可書に基づき、本件建物等を国に返還する義務を負っている」(以上、第3準備書面)

 ◆「日本国憲法第13条および第22条1項は、『公共の福祉に反しない限り』と限定されているとおり無制約のものではない」
 「憲法は、個々の国民に具体的な請求権や抗弁を与えるものではないから、憲法に基づいて本件建物等についての直接的な占有権限を導くことはできない」
 「被災県(福島県)の政策判断の妥当性の有無が、原告と被告との間における期間満了による一時使用借関係の終了の効果発生を阻止するものではない」
 「福島県は、第42回新生ふくしま復興推進本部会議(2015年6月15日)における判断過程を経て、2017年3月31日に応急仮設住宅の供与の終了を適切に決定した」(以上、第4準備書面)

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次回弁論期日は5日11時、東京地裁606号法廷で行われる予定

【「国際人権法上、避難継続認めるべき」】
 代理人を務める平松真二郎弁護士は、閉廷後にオンラインで行われた報告集会で「少なくとも鴨下さんの本人尋問は採用を求めます」と今後の展開について語った。。
 「こちらは国際人権法の観点から避難継続が認められるべきであるという主張を展開しています。それに対して東京都が第4準備書面で反論。憲法違反や国際人権法違反については『理由がない』と言ってきています。2017年3月末で住宅の無償提供を打ち切った政策判断についても『合理性がある』、『誤った判断ではない』と主張してきました。原発事故、放射能災害の特殊性をまったく無視した主張を展開しているので、次回期日までに批判をしていくことになろうかと考えています」
 東京都が「福島県からの応援要請がなくなった」ことを〝追い出し〟の根拠にしている点については、「災害救助法では、福島県から東京都に『福島県から避難している人に住宅を提供して欲しい』と要請をする手続きになっていて、福島県が県民に対する住宅提供を2017年4月以降はしなくて良いよという判断を東京都に伝えた。だから東京都としてはもう住宅を提供しなくて良いという判断をしただけですよ、という反論です。自分たちが判断して決めたことではない、ということで他人のせいにしているのです」と批判した。
  平松弁護士は、福島県が区域外避難者への住宅無償提供を2017年3月末で打ち切った背後には国の存在があると指摘。そのうえで「避難者を保護するべき義務が国にあるにもかかわらず、国(復興庁)が『これ以上やらなくていいんだ』と決めていることが不合理。それが、今後のこちらの反論の根幹になるでしょう」と話した。
 一方で、原発事故に伴う区域外避難者に対する〝追い出し訴訟〟では、裁判所が避難者の居住権や避難の合理性に正面から向き合わず、避難者に退去や支払いを命じる判決が相次いでいる。平松弁護士は「福島地裁での明け渡し訴訟の経過などを見ていると、裁判所の判断自体はなかなか国際人権法などに立ち至らないで判断してしまっています。明け渡し請求自体が権利の濫用、信義則に反しているという法律論で突破するのはかなり困難だと思われます」とも語った。



(了)
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