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【浪江原発訴訟】「原発事故なければ娘はソフトボールを続けられた…」男性原告が涙の意見陳述「事故前の生活を返せ!」~福島地裁で第18回口頭弁論、次回6月の期日で結審

集団ADRでの和解案(慰謝料一律増額)を東京電力が6回にわたって拒否し続けた問題で、浪江町民が国や東電を相手取って起こした「浪江原発訴訟」の第18回口頭弁論が18日午後、福島地裁203号法廷(小川理佳裁判長)で行われた。60代の男性原告が意見陳述。「原発事故前の浪江町と私たちの生活を返して欲しい」と涙ながらに訴えた。2018年11月27日の提訴から4年半あまり。裁判は次回6月28日の期日で結審し、浪江町民たちは来年3月までには言い渡される見通しの判決を待つことになる。
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【転校繰り返し不登校に】
 「昨年8月と12月の期日で本人尋問を予定していましたが、新型コロナウイルス感染症と身内の不幸を理由に2回とも裁判所に来ることができませんでした。本日は、原発事故によって私と私の家族が受けた被害について意見陳述します」
 ようやく法廷に立つことができた畑中豊さん(61)=英語教諭=は、ひと言ひと言に想いを込めるように語り始めた。
 浪江町に生まれ育ち、震災・原発事故が起きるまでは浪江町の中浜地区に両親、妻、3人の子ども(長女=中学1年生、次女=小学4年生、長男=幼稚園年少)の3世代7人で生活していた。2人の娘はソフトボールチームに所属していたという。
 「長女と次女は、浪江東中学校やスポーツ少年団『請戸ヤングス』で毎日、ソフトボールに打ち込んでいました。どちらも県大会や全国大会に出場するような伝統ある名門チームでした。『請戸ヤングス』の監督やコーチは請戸漁港の漁師や魚屋さんなど地元の人たち。そのつながりで長女も次女も毎年、請戸の安波祭での田植踊りに参加させてもらっていました」
 浪江町のホームページには、震災・原発事故前に浪江東中学校や「請戸ヤングス」が試合で得た多数のトロフィーや賞状が写真で記録されている。裁判には、長女が選手宣誓する写真が証拠として提出された。子どもたちからソフトボールを奪ったのが原発事故だった。
 「私たち家族は避難を余儀なくされました。避難先を転々とし、子どもたちは転校を繰り返しました。長女も次女もソフトボールを諦めざるを得なくなってしまいました。ソフトボールは彼女たちの生活そのものだったので、続けさせてあげたかったです。家族としても、応援を続けさせてもらいたかったです」
 子どもたちの話になると、畑中さんは涙を流した。顔が真っ赤になっているのが傍聴席からも分かった。嗚咽をこらえるように陳述を続けた。
 「原発事故は子どもたちの精神面にも大きな影響を与えました。長女は、2校目の転校先中学校で『学校に行かない』と言い出しました。避難で友だちと離ればなれになり、避難先の新しい環境になじめず、人間関係でもストレスを抱えながら精一杯がんばっていたのだと思います。長男も同様に、避難先の小学校で一時不登校になってしまいました」
 やはり教諭である妻と仕事を調整し、できるだけ子どもたちの傍にいるように努めたという。

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意見陳述を終え、畑中さんは「今日は意見が言えて良かったが、とても緊張した。途中息苦しくなり、乗り切れてホッとしている」と語った=福島市市民会館

【「原発事故さえなければ」】
 浪江町のまとめでは、自宅のあった中浜地区は津波で13人が亡くなった。一方、畑中さんが「自宅があった浪江町中浜は、津波被災地でもあります。津波による行方不明者のなかに知り合いもいましたが、原発事故のせいで捜索ができませんでした。多くの救えた命があったと思うと、とても悔しいです」と語ったように、原発事故が津波被害者の捜索を阻んだのも事実だ。アニメーション映画「無念」では、当時の消防団員たちの悔しさが描かれている。
 第3回口頭弁論では、女性原告が次のように語った
 「救助活動をしていた方々は、強い放射能、暗闇での捜索、がれきの危険な足場、二次被害の恐れのため、中断を余儀なくされました。断腸の想いで『すまない、許してくれ。明日必ず助けに来るから』と神に祈りつつ後にしたという事を、後になって聞きました。助けられたはずの命を助ける事が出来なかった事実があった事を忘れてはなりません。放射能さえ無ければ兄は助かっていたかもしれないのです。放射能が憎い、東京電力が憎いです」
 畑中さんは言う。
 「この裁判で、東電は私たちのような津波被災地の原告については『津波のせいで避難したのだ』、『津波のせいでコミュニティが破壊されたのだ』と主張していると聞いています。しかし、津波被害だけであれば短期間の避難で済んだはずです。中浜地区も避難指示解除準備区域に指定され、いつ解除されるのか長い間分かりませんでした。浪江町は、原発事故で町全体が強制避難の対象となりました。もし津波被害だけであれば、町全体のコミュニティは破壊されていなかったはずです」
 子どもたちだけでなく、自身も「避難先でのコミュニティへの適応が難しかった。避難先では会話ができる知人もいないので孤立することが多く、〝借りてきた猫〟のように周囲の顔色をうかがいながら、さびしく行事に参加していた」という。望むのは、原発事故に奪われたそれまでの生活を取り戻すことだ。
 「原発事故さえなければ、私も家族もこのようなつらい想いをしなくて済んだのです。原発事故前の浪江町と私たちの生活を返して欲しいと、心から思います」

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ソフトボール大会で選手宣誓をした長女。子どもたちも原発事故で多くのものを奪われた=2009年撮影

【「和解案拒否、許せぬ」】
 原告、被告ともに主張はほぼ出尽くしており、この日の弁論は12分ほどで終わった。原告側は第41、42準備書面を陳述。最終準備書面を5月末までに裁判所に提出する。
 濱野泰嘉弁護士(弁護団事務局長)によると、今回の2つの準備書面は「原告それぞれの個別の細かな賠償の事情について〝後出しジャンケン〟的に準備書面を出して来た。それに対して『既に原告本人尋問も終わっているのに遅い』、『このタイミングで出されても、こちらは適切な反論ができない。やり方が卑怯だ』ということで却下を求める異議申し立てをした」という。
 弁護団長の日置雅晴弁護士は「4年以上続けてきた裁判が、いよいよ次回で結審予定。最後の公判になるので、できるだけ多くの方で傍聴席を埋めて欲しい」と呼びかけた。
 この裁判は、2013年5月29日に浪江町民1万5700人余が申し立てた集団ADRで、東電が原子力損害賠償紛争解決センター(ADRセンター)が提示した和解案を実に6回も拒否。ADRセンターが再三にわたって受諾を勧告しても、東電の姿勢が変わらなかったことを受けて起こされた。
 提訴日は2018年11月27日。訴訟の狙いは①国と東電の原発事故における責任を明らかにする②浪江町民の一律解決③浪江町民の被害の甚大さを広く訴え、慰謝料に反映させる④東電のADR和解案拒否に対する追及─の4点。原発事故による損害賠償として「コミュニティ破壊慰謝料」、「避難慰謝料」、「被曝不安慰謝料」を合わせた1100万円、集団ADRの和解案を東電が違法に拒否したことによる精神的損害として110万円の計1210万円を一律に支払うよう請求している。
 2019年5月の第1回口頭弁論で、原告団長の鈴木正一さんは東電が自らたてた「3つの誓い」を実行していないことに触れ、「国から公的援助を受けるため、ADRにおける和解案の尊重を約束し、誓いました。それにもかかわらず、和解案を6回にわたり拒否し続けました。東電は、自分でした約束・誓いを破ったのです。許せない暴挙です」と怒りを口にした。
 東電が誓いを破った結果、集団ADRに加わった町民のうち864人が亡くなったという。
 昨年6月に始まった原告本人尋問でも、東電側は「既に賠償金を支払いすぎている」、「避難先で充実した生活を送っている」などの主張を繰り返し、町民たちの怒りを買った。代理人弁護士が、法廷で既に支払った賠償金額を1円単位まで口にするほどで、とても加害企業とは思えない姿勢に終始している。



(了)
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鈴木博喜

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