fc2ブログ

記事一覧

【女川原発運転差止請求訴訟】24日仙台地裁が判決言い渡し 「司法の良心に期待」と原告団長 「不十分な避難計画下での再稼働など駄目」

東北電力が2024年2月にも計画している女川原子力発電所2号機(宮城県女川町、石巻市)再稼働に反対し、宮城県や石巻市が策定した原発事故発生時の広域避難計画には実効性がないとして石巻市民17人が運転差止を求めて起こした「女川原発運転差止請求訴訟」は24日、仙台地方裁判所(齊藤充洋裁判長)で判決が言い渡される。判決前日に81歳の誕生日を迎える原告団長の原伸雄さん。「岸田政権の原発回帰にくさびを打ち込むような判決を得たい」と勝利判決を心待ちにしている。
20230519173813c6d.jpg

【「政府や最高裁に忖度するな」】
「いよいよになりました。大変緊張しています」
 電話取材に応じた原告団長の原伸雄さん(80)=石巻市在住=は語った。
 「裁判所には、これまでの法廷での審理を真正面から受け止めた判決を出して欲しいですね」
 昨年11月の弁論期日で行った最後の意見陳述では「避難計画は渋滞問題など多岐にわたる問題があり、設計ミスと言わざるを得ない代物」などと主張。①検査場所(スクリーニング場)が機能しない②バスでの避難など不可能―と改めて強調した。
 「問題はやはり、裁判所が政府や最高裁に対して忖度せず、これまで提出された書面や証拠に正面から向き合ってくれるかどうかということですね。こういう不十分な避難計画の下で女川原発を再稼働しようとしている行政に対して〝待った〟をかけられるのは司法しかありません。岸田政権が原発再稼働にまい進しているなかで、裁判所が良心に従って判断してくれるかどうかにかかっています」
 原さんたちは2018年4月、石巻市民で「女川原発の避難計画を考える会」を結成すると、行政が計画している避難経路を実際に試走してみた。「その結果、全くの机上の計画でしかないことが明らかになりました」(原さん)。
 試走で得られた課題を質問状にまとめたうえで、宮城県と石巻市に説明会の開催を求めた。しかし、住民との対話も課題解消への取り組みも不十分なまま、内閣府は2020年6月17日、広域避難計画を含む女川原発の緊急時対応は「合理的・具体的と確認」し、国の原子力防災会議も、この「確認」を了承してしまう。そして国の〝お墨付き〟を得た宮城県の村井嘉浩知事は同年11月、再稼働への「同意」を表明した。
 原さんは2021年11月の第1回口頭弁論で、こう意見陳述している。
 「万が一のとき、放射能被曝を最小限にするためには、住民にとって避難計画が最後の砦です」
 〝最後の砦〟を司法はどう判断するのか。 
 「最高裁の『6・17判決』など非常に心配な流れはありますが、こういう状況だからこそ岸田政権の原発回帰にくさびを打ち込むような判決を得たいですね」

20230515115318d5c.jpg

202305191805154d2.jpg

20230520104253f51.jpg

202305201050172ba.jpg
①判決を前に「岸田政権の原発回帰にくさびを打ち込むような判決を得たい」と語った原告団長の原伸雄さん
②裁判では「避難計画の不備」に絞って主張を展開した
③最新の原告団ニュースでは「勝利を確信」と書いた
④万が一の事故が起きたら検査場所(スクリーニング場)など機能しない。住民を輸送するバスもスムーズに運行できない─。「被曝を避けるための避難計画で逆に被曝を強いられることになる」と弁護団長の小野寺弁護士は訴える


【「水戸地裁判決に続け」】
 提訴は2021年5月28日。東北電力を相手取り、女川原発2号炉の運転差止を求めている。原告は、女川原発から16~25kmの範囲に住んでいる石巻市民17人。その1人、原田まち子さんは「原告団ニュース第1号」に、こう綴っている。
 「石巻市の避難計画は、知れば知るほど杜撰としか言いようがありません。原発30km圏から脱出する前に大渋滞に巻き込まれ、放射線を浴びながら車内にいることしかできなくなってしまいます」
 再稼働前に裁判所の判断を得るべく、弁論では争点を「避難計画の不備」に徹底して絞った。その結果、一昨年11月の第1回口頭弁論から1年で結審することができた。この間、避難計画の不備を立証するため、79回におよぶ情報公開請求で外堀を埋めていった。
 弁護団長を務める小野寺信一弁護士は言う。
 「一般的に、原発の安全性は5層の防護で守られていると言われています。1層から4層は事故を起こさない、放射性物質を環境中に放出させないような仕組み。これは原子力規制委員会の規制を受けています。しかし、5層は規制委ではなく自治体(今回で言えば宮城県や石巻市)が管轄。避難計画をつくって被害を最小限に抑えます。本件訴訟の特徴は、5層の避難計画のみに着目し、それを理由に運転差止を求めている点です」
 最終的に、避難計画の実効性が欠けているポイントを①住民は検査場所(スクリーニング場)に向かって良いのか②一時集合場所でバスを待ち、来たバスに乗って良いのか─の2点に絞った。
 「水戸地裁は2021年3月に言い渡した判決で、『深層防護の第1から第5の防護レベルのいずれかが欠落し又は不十分な場合には,発電用原子炉施設が安全であるということはできず,周辺住民の生命,身体が害される具体的危険があるというべき』などと、避難計画の不備だけを理由に原告を勝たせています(東海第二原子力発電所運転差止等請求訴訟)。われわれもいけるんじゃないか。まさにわれわれの言わんとしていることを水戸地裁が断言してくれた」と小野寺弁護士は語る。

2023051511383903f.jpg

20230520103607790.jpg

20230520103705767.jpg

20230520103717252.jpg
裁判で意見書を提出した上岡直見さん。講演会では「もともと無理なことを、あたかもできるかのようにしている。避難の実効性の向上など期待できない。宮城県や市町村は再稼働に同意する状態にないと考えている」と強調した

【「もともと無理なこと」】
 結審から1カ月後の昨年12月、石巻市内で上岡直見さん(環境経済研究所代表)の講演会が行われた。
 上岡さんは、本訴訟で「原子力災害における避難とは一般公衆に対する被曝を避けるための行動である以上、単に最終避難所に到達することが目的ではなく、そこに到達するまでに許容できない被曝を受けるとずれば、そもそも避難の目的を達することができない」などと60ページ超の意見書を提出している。また、新潟県「原子力災害時の避難方法に関する検証委員会」の委員も務めた。
 講演で「防護措置を必要とすること自体が『原発の具体的な危険性』にあたる」と語った上岡さん。「避難の実効性とは何か。あくまで国の原子力防災会議で『具体的・合理的であると考えられる』と言うだけ。内容的には誰も担保していない。避難の過程で年1ミリシーベルトを超えるのであれば避難計画の実効性はない」と強調した。
 「避難すると言っても避難できますか?地震で道路の損傷、ブロック塀や家屋の倒壊が起きます。車で避難道に出られない。渋滞問題もある」
 「バスで輸送すると言うが、バスは大半が仙台に集中している。石巻や女川まで来てくれるのか。たぶん来ないだろう。福祉施設からの搬送も大変だ。ストレッチャー1台車両に乗せるのに5~6分かかる。80人の利用者がいれば、単純計算で全員を施設から出すのに7時間もかかることになる」
 そんな状態で原発の再稼働など認められるはずがない。
 「もともと無理なことを、あたかもできるかのようにしている。避難の実効性の向上など期待できない。宮城県や市町村は再稼働に同意する状態にないと考えている」
 原告団長の原さんは言う。
 「実は判決日前日の23日に81歳になるんです」
 勝利判決が何よりの誕生日プレゼントになる。



(了)
スポンサーサイト



プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)
https://www.facebook.com/taminokoe/


福島取材への御支援をお願い致します。

・auじぶん銀行 あいいろ支店 普通2460943 鈴木博喜
 (銀行コード0039 支店番号106)

・ゆうちょ銀行 普通 店番098 口座番号0537346

最新記事

最新コメント

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ニュース
40位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
時事
16位
アクセスランキングを見る>>

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ニュース
40位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
時事
16位
アクセスランキングを見る>>